「都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026」とは

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026開催を発表 - 「都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026」とは - 章扉

都知事杯オープンデータ・ハッカソンは、東京都が主催し、都や区市町村が公開している「オープンデータ」を素材に、社会課題を解決するデジタルサービスやアイデアを企画・開発して競い合うコンテストである。2021年に始まり、2026年で6回目を迎える。運営事務局はみずほリサーチ&テクノロジーズが担い、シビックテックのコミュニティとも連携しながら進行する。

まず押さえておきたいのは、これが「週末に徹夜で何かを作って終わり」という一般的な短期ハッカソンとはまったく性格が異なる、という点である。アイデアを練るワークショップから始まり、二日間の開発合宿、オンラインでの一次審査、最終プレゼンテーション、そして勝ち残ったチームが実際にサービスを世に出す「社会実装フェーズ」まで、半年近くにわたって伴走する長丁場のプログラムになっている。東京都にとっては、行政データを積極的に開放し、都民や民間の技術者・デザイナーと協働して新しいサービスを生み出すことで、都民のQOL(生活の質)向上につなげる狙いがある。

具体的にどんなものが生まれてきたのかをイメージするために、過去の受賞作を挙げておきたい。2025年度に最優秀賞を獲得した「YORUMICHI(よるみち)」は、夜間光のデータや犯罪情報といったオープンデータを重ね合わせ、夜道でもできるだけ安全に歩けるルートを提案するWebサービスだった。2024年度に頂点に立った「リアルタイム高解像度 熱中症リスクダッシュボード」は、3D都市モデルを使って街区単位の細かさで熱中症リスクを可視化し、「命を守る技術」と評価された。生活困窮者がどんな支援制度を、いくら受け取れる可能性があるかを入力情報から提示する「支援みつもりヤドカリくん」(2023年度最優秀賞)のように、福祉の現場に踏み込んだ作品もある。いずれも、役所のサイトに眠っていたデータを、市民が本当に使えるサービスへと翻訳した好例だといえる。

規模も着実に育っている。直近の2025年度には1,327名が参加し、最終的に9件のサービスが実装にこぎ着けた。第1回からの累計では延べ37のサービスが社会実装されている。応募は東京都在住者に限られず、個人でもチームでも、エンジニアでなくても参加できる。今年度は「生成AI時代、ハッカソンは初心者こそチャンス」を合言葉に、技術的なハードルを下げて多様な挑戦者を呼び込もうとしている。

半年がかりのプログラム——長期間に及ぶスケジュール

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2026年大会の最大の特徴は、その息の長さである。エントリーの受付は2026年6月12日(金)14時に始まり、2026年7月27日(月)17時に締め切られる。そこから本番の二日間を経て、翌2027年3月の成果発表会まで、実に約9か月にわたってプログラムが続いていく。

出発点となるのが「テーマ募集」だ。今年度は、何を課題として解くかというテーマ自体を都民から広く募る試みが新設された。意見の募集は6月12日14時から6月22日17時まで、「東京アプリ」と特設サイト上で行われ、集まった声を踏まえて選定されたテーマは7月上旬に公開される予定である。参加者はこのテーマに沿って提案することもできる。課題設定の段階から市民を巻き込む、参加型の課題形成といえる。

8月に入ると、本格的な助走期間に当たる「キックオフウィーク」が始まる。8月6日のキックオフイベントを皮切りに、8月7日から19日にかけて全4回のワークショップや生成AIのハンズオンが実施され、アイデアの磨き方やデータの探し方、開発の勘所を学べる構成になっている。そして8月22日(土)10時から20時、23日(日)10時から17時の二日間が、開発の山場となるハッカソン本番である。23日の夕方にはクロージングイベントも予定されている。作品の提出自体は7月10日から8月23日まで受け付けられ、必ずしも二日間の会場に張り付く必要はなく、オンライン参加でも構わない。

審査は二段構えだ。8月26日から30日にかけて、各チームがオンラインまたは現地でプレゼンテーションを収録する「First Stage(一次審査)」が行われ、その結果は9月下旬に公表される。ここを勝ち抜いた24チームが、10月17日(土)の「Final Stage」で審査委員を前に最終プレゼンに臨み、表彰式で各賞が決まる。さらに翌2027年3月27日(土)には、実装まで漕ぎ着けたサービスをお披露目する「Demo Day(成果発表会)」が控えている。コンテストの華やかな表彰で終わらず、その後の実装までを射程に入れているのが、この大会の設計思想を象徴している。

時期プログラム
2026/6/12〜7/27エントリー申込受付
2026/6/12〜6/22テーマ募集(結果は7月上旬公開)
2026/8/6〜8/19キックオフウィーク(全4回・生成AIハンズオン等)
2026/8/22〜8/23ハッカソン本番(2日間)
2026/8/26〜8/30First Stage(一次審査・プレゼン収録)
2026年9月下旬First Stage結果公開(24チームが進出)
2026/10/17Final Stage・表彰式
2027/3/27Demo Day(成果発表会)

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026開催を発表 - 半年がかりのプログラム——長期間に及ぶスケジュール - 図表1

燃料となる「東京都オープンデータカタログサイト」

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このハッカソンの燃料となるのが、東京都オープンデータカタログサイトである。これは、東京都および都内の区市町村が保有する行政データを、誰でも二次利用できる形で一元的に公開しているポータルだ。都の各局に加え、23の特別区、26市、5町、8村が提供者として名を連ね、掲載されているデータセットは公開時点で1万件を超える。利用にあたってはクリエイティブ・コモンズ表示(CC BY 4.0)などのライセンスが採用されており、出典を示せば加工も再配布も自由にできる。アプリやサービスに組み込んでも問題ない、という法的なお墨付きがあることが、ハッカソンの土台として重要な意味を持つ。

掲載データはおおむね15の分野に整理されている。地震や水害に備える「防災」、住宅や税・消費生活に関わる「くらし・住まい」、病院や健診を含む「健康・医療」、介護や生活支援の「高齢者・福祉」、保育や学校に関する「子供・若者・教育」、そして「スポーツ」「文化・芸術」「環境・自然」「観光」「産業・仕事」が並ぶ。さらに、行政自身のDXに関わる「デジタル・最新技術」、道路や都市計画を扱う「インフラ・まちづくり」、「水道・下水道」、バスや鉄道などの「交通」、そして予算・決算や統計を収める「行財政」まで、都市の営みを丸ごと網羅している。なかでもデータ件数が最も多いのは行財政分野で、約3,900件に及ぶ。

データの「種類」も多彩だ。フォーマットとしてはCSVやExcel(XLS/XLSX)といった表形式のファイルが中心だが、地図上に表示できるGeoJSON、機械可読性の高いRDF、そしてPDFやJPEG、ZIP、HTML、テキストまで幅広く提供されている。中身に目を向ければ、土地利用や都市計画を示すGIS(地理情報)データ、浸水予測図、緑地のデータといった空間情報から、施設の一覧や統計表まで、実に多様だ。先ほどの受賞作に引きつけて言えば、「YORUMICHI」は夜間光や犯罪に関するデータを、熱中症ダッシュボードは3D都市モデルや気象データを、それぞれこのカタログサイト(および民間データ)から引いてきた、というわけである。なお2026年大会では、オープンデータだけでなく民間データを組み合わせた提案も歓迎されている。

裏を返せば、CSVとPDFとExcelが混在し、自治体ごとに様式が揺れている現実とも向き合うことになる。データの前処理や名寄せそのものが価値になる場面も多く、後述するように、データの差分を抽出して整備を助けるツールが受賞したこともある。「きれいに整ったデータが降ってくる」のではなく、「散らばった現実のデータを使えるようにする」ところから腕の見せどころが始まる、と捉えておくとよい。

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賞の体系——全8賞への刷新

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2026年大会では、賞の体系が全8賞へと刷新された。頂点に立つのは最優秀賞である「都知事杯」、そして視聴者・参加者の投票で決まる「オーディエンス賞」で、この二つは公式に名称が示されている。残る賞の詳細な区分は今後公表される見込みだが、賞の数そのものは、前年度の10賞から8賞へと再編された。

この「賞の体系」は、大会の成熟とともに毎年のように姿を変えてきた経緯がある。第1回(2021年)と第2回(2022年)は部門を設けない単一の枠組みだったが、2023年に部門制が導入され、2024年には「サービス開発部門」「ビジュアライズ部門」「アイデア提案部門」という3部門体制へと整理された。これは、完成度の高いアプリだけでなく、データの可視化や、まだ形になっていないアイデアそのものも評価しようという発想である。2025年にはさらに、若い才能を後押しする「学生賞」が新設され、賞の総数は10に達していた。

具体例として、2024年度の受賞構成を見ると体系の輪郭がつかみやすい。最優秀賞(都知事杯)はオーディエンス賞とのダブル受賞となり、3つの部門賞ではサービス開発部門に「みえるーむ」(activecore)、ビジュアライズ部門に東京都の地価データを可視化した作品(4689)、アイデア提案部門に乗り換え案内の再発明を狙う「ホントーの乗り換え案内」(MINKAI)が選ばれた。加えて審査委員特別賞として、自治体の標準データセットとの差分を抽出する実務的なツール(行政課題解決賞・エクセル見比べ隊)、カーボンテック関連の提案(ビジネス賞・from Choufu)、AIでゴミを分類する作品(技術賞・Trash Classifier with AI)、バリアフリートイレ探索アプリ(サービスデザイン賞・The Hacking Debt)が表彰された。最優秀の一作だけでなく、技術・ビジネス・デザイン・行政実務といった複数の物差しで光るものを拾い上げる——それがこの賞の体系の眼目である。

賞と並んで実利的なのが、Final Stageに進出した24チームへの特典だ。デジタル証明である「オープンバッジ」と、チームあたり「東京ポイント」500ポイントが付与されるほか、年度末までサービス実装を支援するメンタリングが用意され、さらにGovTech東京と連携して、行政での採用を見据えた技術検証の機会も提供される。賞金の多寡よりも、「作ったものを本当に社会に実装するまで面倒を見る」点に価値の重心がある。

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審査委員長・宮坂学副知事と審査員の顔ぶれ

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審査委員長を務めるのは、東京都副知事の宮坂学である。1967年生まれ、山口県防府市の出身で、同志社大学経済学部を卒業後、1997年にヤフー株式会社へ入社した。2012年に同社の代表取締役社長(CEO)に就任し、検索やポータルを軸にした日本最大級のインターネット企業を率いた人物だ。2018年に取締役会長へ退き、2019年にヤフーを離れると、同年7月に東京都参与、9月には民間出身の副知事として都庁入りした。小池百合子知事のもとでデジタル化を担うCIO的な役割を担い、Wi-FiもなくFAXが現役だった「原始時代」とも評された都庁の業務を、ペーパーレス化(紙の使用やFAXを大幅に削減)から作り直してきた。

宮坂副知事の関心は一貫して「行政の道具と仕組みをアップデートする」ことにある。本人の言葉を借りれば「道具を変える」「船をつくる」——個々の施策以前に、職員が使う道具や組織のOSそのものを変える、という発想だ。2023年9月には、都のデジタル分野を技術面から支える外郭団体「GovTech東京」が発足し、その理事長に就任した。都が掲げる構造改革「シン・トセイ」の中で、宮坂氏は「オープンデータ徹底活用プロジェクト」や「スタートアップ・シビックテックとの協働推進プロジェクト」を主導しており、スタートアップ都市・東京を掲げる国際カンファレンス「SusHi Tech Tokyo」の実行委員長や、アートとテクノロジーの拠点であるシビック・クリエイティブ・ベース東京(CCBT)のスーパーバイザーも務める。オープンデータを開き、市民や企業の手に渡して新しい価値を生む——このハッカソンは、まさに彼の問題意識の延長線上にある取り組みであり、審査委員長として毎回その頂点に立っている。

その他の審査員は、例年6名前後で構成され、「行政の内側」と「民間の多様な専門性」を組み合わせる顔ぶれになっているのが特徴だ。骨格となるのは、宮坂副知事に加え、技術行政の責任者である東京都デジタルサービス局長と、GovTech東京の技術幹部(CTO・井原正博氏は近年の常連)という行政・技術側の三者である。そこに、シビックテックや起業、デザイン、研究の各分野から実務家が招かれる。たとえば2024年度には、ベンチャー支援で知られるウィズグループの奥田浩美氏、日本IBMの戸倉彩氏、デジタルアーカイブやデータ可視化研究で著名な東京大学大学院の渡邉英徳教授らが審査に加わった。直近の2025年度は、くふうカンパニーCSOの閑歳孝子氏、地理空間データ基盤を手がけるEukaryaの田村賢哉CEO、プロデューサーの西村真里子氏(HEART CATCH)らが名を連ねている。エンジニア、デザイナー、起業家、研究者、行政——立場の異なる目で多角的に評価される設計になっているわけだ。

なお2026年大会では、募集を盛り上げる登壇イベントにも豪華な顔ぶれが並ぶ。7月10日の第1回には、Gen-AXの砂金信一郎氏、日本マイクロソフトのちょまど氏、シンシアリーの國本知里氏が「初心者こそチャンス」を語り、7月15日の第2回には、Tablyの及川卓也氏、AIセーフティ・インスティテュート副所長でIPAデジタル基盤センター長の平本健二氏、千葉工業大学の岡瑞起教授、そしてコード・フォー・ジャパン代表理事の関治之氏が、オープンデータの実装をテーマに登壇する。

これまでの受賞作とその傾向

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最優秀賞である都知事杯の歴代受賞作を並べると、この大会がどんなテーマに価値を置いてきたかが見えてくる。第1回(2021年)はチームToDCSの「PECO navi TOKYO」、第2回(2022年)はZガードの「上京物語」が頂点に立った。第3回(2023年)は、生活困窮の予防を掲げるproj-inclusive×一般社団法人防窮研究所の「支援みつもりヤドカリくん」、第4回(2024年)はHITSの「リアルタイム高解像度 熱中症リスクダッシュボード」、そして第5回(2025年)は、夜道の安全を提案するAlissの「YORUMICHI」が選ばれている。

受賞作を俯瞰すると、いくつかの明確な傾向が浮かび上がる。第一に、「命と安全を守る」テーマの強さである。夜道の安全、街区単位の熱中症リスクといった、人の生死や健康に直結するテーマが最優秀に選ばれてきた。気候変動による猛暑という都市的な切実さも、繰り返し主題になっている。第二に、社会的に弱い立場の人々への眼差しだ。生活困窮者向けの支援制度マッチング、子育て相談のLINEボット「キクゾー」、バリアフリートイレの探索アプリなど、見過ごされがちなニーズを掬い上げる作品が高く評価されている。第三に、データそのものを扱う技巧——地価データの可視化や、自治体データの差分抽出ツールのように、「データを使えるようにする」こと自体を価値に変える方向性も一貫して存在する。

そしてもう一つ、近年際立つのが「学生・若手の台頭」と「AIの常態化」である。2025年度に最優秀賞を射止めたAlissは、複数の大学に在籍する学生が組んだチームだった。同年に学生賞(チャリNaviを開発したTeam Nexus)が新設されたことと併せて、若い世代が主役級の存在感を放ち始めている。また、ファイナリストの相当数が機能の一部に生成AIを組み込むようになっており、AIを使うこと自体は差別化要因ではなくなりつつある。むしろ、AIをどんな課題に、どれだけ的確に当てるかが問われる段階に入ったといえる。

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026開催を発表 - これまでの受賞作とその傾向 - 図表1

エンジニアの視点で読む2026年大会

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ここからは、各メディアや技術者コミュニティの報じ方を踏まえつつ、エンジニアの視点でこの大会の本質を読み解いていく。CodeZineやICT教育ニュースといった専門メディアが結果を継続的に報じ、受賞チームが所属する愛知工業大学や成蹊大学はプレスリリースで快挙を発表し、技術賞を獲った日建設計総合研究所のような企業も受賞を広報する。加えて、ZennやQiita、noteには参加者自身による「参加記」が積み上がっている。これらを横断して見えてくるのは、この大会が一般的なハッカソンの常識からかなりズレた、独特の競技だという事実だ。

第一の論点は、「長期戦であること」がそのままエンジニアリングの質を変える、という点である。ある参加者は「これまで多くのハッカソンで自分の半径5センチの課題を解いてきたが、ここでは半径20キロの課題に挑む」と表現した。24時間で動くデモを作って終わり、ではなく、First Stageを勝ち抜いたチームは翌年3月まで社会実装フェーズで開発を続ける。つまり評価されるのは瞬発的なプロトタイプではなく、運用に耐え、改善を回し続けられるプロダクトに近い。技術選定も、Flutterでモバイルアプリを仕上げる、GitHubで加工過程を公開して信頼性を担保する、といった「その先の運用」を見据えたものになりやすい。

第二に、2026年大会が打ち出した「生成AIによる開発支援ツールの無償提供」は、エンジニア的に見ると地味だが本質的な一手だ。提供されるのは、AIコーディング環境である「OpenCode」(LLMセット)と、サービスを公開するためのホスティング基盤「Cloudflare」の有償プラン相当で、9月末まで使える。これはつまり、「コードを書く工程」と「世に出す工程」の両方をAIとエッジ基盤で肩代わりし、参加者が課題理解とデータ活用、UI/UXに集中できるようにする、という設計である。実際、過去の参加記でも「GitHub Copilotがエラーを基にコードを自動修正してくれるのが、時間の限られたハッカソンと相性抜群だった」という声があった。インフラとボイラープレートのコストをAIに寄せ、人間は「何の課題を、誰のために解くか」に注力する——2026年大会のツール構成は、そうしたAIネイティブな開発スタイルを公式に後押しするものだといえる。

第三に、技術的な巧さは「派手さ」ではなく「賢い割り切り」に宿る、という点も見逃せない。たとえば過去の受賞・ファイナリスト作品には、バス時刻表のデータをあえてAPI化せず、細切れの静的ファイルに分割してストレージに置くことで、API呼び出しのコストをほぼゼロに抑えた事例がある。サーバーレス/静的配信の発想で運用費を削るこうした工夫は、予算の限られた行政サービスを継続させるうえで極めて実践的だ。2024年の受賞作の一部はGitHubでソースが公開されており、気象データの可視化ロジックを誰でも追える。オープンデータを使い、成果もまたオープンにする——この循環が、単発のコンテストを超えた資産を都市に残していく。

そして最大の差別化要因は、「社会実装までの導線が制度として用意されている」ことである。多くのハッカソンが表彰で幕を閉じるのに対し、ここでは隔週のメンタリング、ビジネスマッチング、東京ポイントやオープンバッジの付与、そして年度末のDemo Dayまでが一本の線でつながっている。とりわけ、GovTech東京と連携した「行政採用を見据えた技術検証」は、シビックテックの長年の課題——優れたプロトタイプが行政の現場に届かない——に正面から応えようとする仕組みだ。エンジニアにとってこの大会は、腕試しの場であると同時に、自分の書いたコードが本当に都民の生活に実装されうる、数少ない公的なパイプラインなのである。賞の体系が「アプリの完成度」から「社会への実装」へと年々重心を移してきたのも、この一貫した思想の表れだといえる。

アプリの方向性などについてnewsifyを運営するルーティアが無料相談を提供

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026開催を発表 - アプリの方向性などについてnewsifyを運営するルーティアが無料相談を提供 - 章扉

最後に、newsifyを運営する株式会社ルーティアより、この都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026への参加を予定している個人・チームに向けた案内を記しておきたい。ルーティアでは、参加者の挑戦を後押しするため、無料の「壁打ち」を提供する。きっかけは、過去の受賞者へのインタビューなどで、「事前にもっと自治体の方々から意見を聞く機会が欲しかった」という声が多かったことにある。そうした事前の相談ニーズに応えるべく、アイデアの計画づくり、UI/UXの方向性、システムの設計、機能の取捨選択といったレビューから、開発をどう設計するかといった相談まで、気軽な形で受け付ける。

ZoomまたはGoogle Meetを使い、1回30分、最大2回程度を目安に、肩肘張らずに話せればと考えている。「テーマは決まったが設計で迷っている」——そんな段階でも歓迎だ。相談を希望する場合は、この動画のコメント欄、または lutia.com(エル・ユー・ティー・アイ・エー・ドットコム)のお問い合わせフォームから、気軽に連絡してほしい。若い皆さまの作品が、Final Stage、そして社会実装まで届くことを応援しています。