要旨
Googleは2026年5月19日のGoogle I/O 2026で、エージェントファースト開発プラットフォーム「Antigravity 2.0」を発表した。デスクトップアプリ・CLI・SDK・Managed Agents API・Enterprise Agent Platformという五つの面で構成され、Gemini 3.5 Flashを既定エンジンとして搭載する。シリコンバレーでは「IDE中心の時代の終わり」を告げる象徴的なリリースとして受け止められ、複数エージェントの並列実行を前提とする新しい開発スタイルが定着し始めている。本稿では誕生からの歩み、2.0で大きく変わった点、テックエンジニアの受け止め方、そして具体的な利用フローと使いこなしのコツを多角的に整理する。
Google Antigravityとは何か:エージェントファースト時代のIDE
Google Antigravityは、Google DeepMindとGoogle Cloud部門が共同で開発した「エージェントファースト」設計の開発プラットフォームである。従来のIDEがコードエディタを中心に据え、AIをサイドパネルの補助役として配置していたのに対し、Antigravityはエージェント(自律的なAIワーカー)を中心に据え、エディタやブラウザ、ターミナルはエージェントが操作する対象としてレイアウトされている。Wikipediaに掲載された英文公式記録によれば、初期のAntigravityはVisual Studio Codeをベースにした高度な改変フォークとして実装されており、Google製品としては比較的珍しいオープンソース系の出自を持つ。
プラットフォームが扱う中心概念は「Artifacts(成果物)」である。エージェントは単にコードを生成するだけでなく、タスクリスト、実装プラン、コード差分、ブラウザの操作録画、スクリーンショット、ウォークスルー文書といった検証可能な成果物を生成する。これによって開発者は、エージェントが「何を考え」「何をどう実行したか」を一望できるようになっている。Google公式の開発者ブログでは、この設計について「モデルがツールを使う様子を生のトレースで眺める時代から、検証可能な成果物として受け取る時代へ移行する」と説明されている。
Antigravityが対応するモデルもまた多様だ。既定のGemini 3.5 Flash・Gemini 3.1 Proに加え、AnthropicのClaude Sonnet 4.6・Claude Opus 4.6、さらにオープンソースのGPT-OSS-120Bも公式に利用できる。Googleが自社プラットフォーム上で競合のフラッグシップモデルを公式サポートするのは異例で、これは「エージェントの基盤となる開発体験そのものを押さえに行く」という戦略的判断の表れと見なされている。
Antigravityの歩み:誕生から2.0までの軌跡
Antigravityが世に出たのは2025年11月18日、Gemini 3シリーズの発表と同時のことだった。当時のバージョンは1.11.2で、Mac・Windows・Linux向けにパブリックプレビューとして無料公開された。Google CloudのコンステレーションリサーチによるレポートやFortune誌の解説記事では「Cursor、Cognition Devin、Claude Codeに対するGoogleの正面回答」と位置付けられ、Gemini 3 Proの推論力とエージェント能力を最大限に引き出すための専用環境として注目を集めた。
当初のAntigravity 1.x系では、エディタビュー(従来型のVS Code風UI)とマネージャービュー(複数エージェントを束ねるオーケストレーション画面)という二つのモードを切り替えて使うのが基本だった。マネージャービューでは1人の開発者が複数のエージェントへ同時にタスクを割り当て、各エージェントの進捗を「Mission Control(管制塔)」のような画面で監視できる。VentureBeatが報じた通り、これは「非同期かつ検証可能な開発ワークフロー」という新しいパラダイムを開発者に提案した初期の試みだった。
その後、半年あまりの間に1.20系まで継続的にアップデートが進み、Gemini 3.1 Proの取り込みや「skills.md」「agents.md」と呼ばれるカスタマイズファイルの導入、ブラウザ拡張機能の追加などが行われた。AntigravityはVS Codeの拡張機能エコシステムをほぼ継承しつつ、エージェントランタイムをGo言語で書き直すなど、内部実装を独自方向へ進めていった。そして2026年5月19日、Google I/O 2026の基調講演でAntigravity 2.0が公式発表され、構造そのものが大きく組み変わることになる。

Antigravity 2.0で何が変わったのか:5つのサーフェスへ
Google公式ブログ「I/O 2026 developer highlights」で明示された通り、Antigravity 2.0最大の変化は「単一IDE」から「五つの面(サーフェス)を持つプラットフォーム」へと進化したことだ。具体的には、エージェント運用に最適化された新しいデスクトップアプリケーション、Goで書き直された軽量CLIツール、開発者が独自のエージェントを定義できるSDK、APIコール一つでサンドボックスLinux環境ごとエージェントを起動できるManaged Agents API、そしてGoogle Cloud基盤に統合されたGemini Enterprise Agent Platformという五つが同時に提供される構成へ転換した。
デスクトップアプリの2.0は、もはやコードエディタ中心の画面ではない。中心に据えられるのは複数エージェントのオーケストレーションで、ユーザーは並列に走る最大5体のエージェントに「ミッション」を割り当て、その進捗・成果物・承認待ち項目を一画面で管理する。新機能として目を引くのが「ダイナミック・サブエージェント」で、これはメインのオーケストレータが状況に応じて専門サブエージェントを動的に定義・起動し、コンテキストウィンドウを汚さずに並列処理を行う仕組みである。MarkTechPostやSiliconANGLEの解説によれば、これは大規模リファクタリングや複数モジュールにまたがる変更に効果を発揮するという。
CLI(コマンド名は「agy」)の刷新も特筆すべき点である。Google Developers Blogで公表された移行アナウンス「Transitioning Gemini CLI to Antigravity CLI」によれば、従来のGemini CLI(個人向け)は2026年6月18日にサポート終了となり、Antigravity CLIへ統合される。新CLIはGoで書かれており、起動が体感的に瞬時で、長時間セッションでも応答性を保つ。さらに非同期サブエージェント機能を備え、ターミナルからでもデスクトップ版と同等のエージェント体験を享受できるようになった。DEV Communityに掲載された開発者の検証記事でも「Gemini CLI時代と比べてレスポンスが目に見えて速くなった」と評価されている。
SDKおよびManaged Agents APIの追加は、特に大規模システム開発を担うエンジニアにとって意味が大きい。SDKはGoogle社内のプロダクトを動かしているのと同じエージェントハーネスへの直接アクセスを提供し、開発者は自社インフラ上で独自仕様のエージェントを動かせる。Managed Agents APIではGemini APIに対する単一の呼び出しだけで、推論・ツール使用・コード実行を行う隔離Linux環境を即座に立ち上げられる。Google Cloudが公開した「I/O '26 news for agent developers」でも、これは「Agent Platformのインフラストラクチャ層をフルマネージドで提供する初の汎用API」だと強調された。
Enterprise Agent Platform(旧Vertex AI Agent Builder)との接続は、企業導入の文脈でとくに重要だ。Google Cloudの組織アカウントを持つ顧客は、Antigravity 2.0およびAntigravity CLIから直接Google Cloudプロジェクトに接続でき、すべての推論を自社のセキュアな境界の内側で実行できる。Google Cloudの標準データ保護・ToSが適用されるため、これまで「コード生成系AIをエンタープライズに入れにくい」と感じてきた組織にも導入の道が開けることになった。

Gemini 3.5 Flashが切り拓く高速エージェント時代
Antigravity 2.0の心臓部に位置するのが、同日に発表されたGemini 3.5 Flashである。Googleの公式発表によれば、Gemini 3.5 Flashは「Gemini 3.1 Proを多くのベンチマークで上回りつつ、他社のフロンティアモデルと比べて4倍高速」という性能特性を持つ。これは「最も賢いモデル」ではなく「最も賢く・最も速く・最も安いモデル」というポジションを取ることで、エージェントが何百回もモデルを呼び出すワークロードを現実的なコストで成立させるための戦略的設計だ。TechCrunchによる分析記事「With Gemini 3.5 Flash, Google bets its next AI wave on agents, not chatbots」は、この方針を「Googleがチャットボットからエージェントへ完全に軸足を移した宣言だ」と評している。
具体的なベンチマーク数値も興味深い。LiveCodeBench Proでは2,887(Gemini 3.1 Pro時点で2,439)に達し、SWE-Bench Verifiedでも80.6%という高水準を記録している。さらにModelRift社の公開した実用ベンチマーク「OpenSCAD Pantheonベンチマーク」では、Antigravity 2.0 + Gemini 3.5 Flash(High推論モード)がCodex 5.5 High・Claude Sonnet・Claude Opus・Cursor Composerを退けて首位に立った。テストは「パンテオン神殿の二枚の参照画像を見て、OpenSCAD形式の.scadファイルを生成し、CLIでレンダリングしながら自己反復で品質を高める」という条件であり、Antigravityは他のエージェントが画像参照のみで作業する中で、実在のパンテオンの寸法パラメータを自律的に検索しに行くという挙動を見せて高評価を得た。
Google I/O 2026の基調講演では、Director of Software EngineeringのVarun Mohan氏とDeepMind技術スタッフのLogan Kilpatrick氏が、Antigravity 2.0で「動作するオペレーティングシステムを12時間でゼロから構築する」というデモを実演した。DEV Communityで紹介されたこの事例では、メインオーケストレータがOSの構築タスクをメモリ管理・プロセススケジューラ・テスト実行などの粒度に分解し、93体のサブエージェントへ並列に割り当てて完成にこぎつけた。API使用料は1,000ドル未満(約15万円未満)で、エンジニアリングマネージャーの役割を完全にAIへ委ねる新しい開発体制の片鱗を示した。
シリコンバレーのテックエンジニアはどう受け止めたか
シリコンバレーのテックエンジニアの反応は、技術的賞賛と運用面への注文が併存するというのが正直なところだ。ただし大きな潮流として、Antigravity 2.0が「コーディングAIの主戦場を一段引き上げた」という点では業界の見解はおおむね一致している。
技術面では、HackerNewsのスレッド「Google Antigravity 2.0」を中心に「これまでで最も野心的な開発ツールの一つ」「複数エージェントを本当に並列で走らせるという発想が実装レベルで成立している」「ベンチマークでの自己検証が秀逸」といった肯定的なコメントが多数寄せられた。前述のOpenSCADベンチマークでAntigravity 2.0が一位を取った件もHackerNewsで議論され、エンジニアの一人は「3Dモデルを最初の試行でほぼ完全に印刷できる完成度で出力した」と報告している。SiliconANGLEの分析記事は、こうしたエンジニアの実体験を踏まえて「エージェント・ネイティブなソフトウェア開発の加速」と評価した。
シリコンバレーで影響力を持つMediumの著名アナリストは、Antigravity 2.0を「シリコンバレーのあらゆる開発者プラットフォームに対する宣戦布告」と位置付けた。CursorやReplit、Cognition Labsといったエージェントコーディング系スタートアップに対して、Googleが「IDE・CLI・SDK・API・エンタープライズ基盤」を一度に揃えて投入したことは、これまで「機能を一つずつ追い上げる」戦略を取ってきた競合への明確なプレッシャーとなった。エンタープライズ採用を担うCTO層からは「Vertex AIすなわち現Gemini Enterprise Agent Platformとシームレスに接続できる点が、Cursor・Claude Codeに対する明確な差別化要因になる」というコメントが目立つ。
一方で、自動更新によるバージョン2.0への強制移行や、初日に旧IDEワークフローと一部互換が崩れた点をめぐっては、現場のエンジニアから戸惑いの声も上がった。これに対してGoogleはアップデート後すぐに2.0.1パッチを公開し、HackerNewsのスレッドにて開発チームが直接フィードバックを拾う姿勢を見せた。エンジニアたちは「機能としての方向性は正しく、移行運用さえ整えば長期的に有望」という評価で落ち着きを取り戻しつつあり、Gemini 3.5 Flashの登場とあわせて「2026年下半期のデファクト開発スタックの一つになる」と見る向きが強まっている。

利用の流れ:インストールから初回エージェント起動まで
Antigravity 2.0を実際に使い始める手順は驚くほどシンプルだ。Google公式の配布ページ(antigravity.google/download)から、自分のマシンに合った版(macOSはApple SiliconのARM64版もしくはIntelのx64版、Windowsはx64版・ARM64版、Linuxはdnfやaptに対応した版)をダウンロードする。SecondTalentのインストールガイドによれば、ダウンロードからエージェントの初実行までおおむね10分程度で到達でき、クレジットカード登録なしで無料利用を始められる。
インストール後の初回起動では、Googleアカウントでのサインインを求められる。続いて開発モードを選択する画面が現れ、「Editor-First(コードを自分で書きつつエージェントの提案を受ける従来寄りの体験)」と「Agent-First(マネージャービューを中心とし、エージェントへタスクを委ねる体験)」を選べる。2.0からはAgent-Firstが既定の推奨モードとなった。プロジェクトを開くと、画面左側にMission Control(マネージャービュー)、右側にエディタ・ブラウザ・ターミナルなどの実行リソースが配置される。
最初のタスクを与える際は、自然言語で目的をそのまま書けばよい。例えば「Reactで作られたこのToDoアプリにダークモード切り替えボタンを追加し、設定はlocalStorageに保存し、Cypressでテストを書いて検証してほしい」と入力すると、エージェントはまず実装プランをArtifactsとして提示し、ユーザーの承認後にコード差分・テスト・ブラウザ操作の録画を順に生成していく。途中で「画面右上ではなく左下に置きたい」と追記すれば、エージェントはコンテキストを保ったまま方針を修正する。Google公式コードラボ「Getting Started with Google Antigravity」でも、こうした対話型の流れが推奨されている。
CLIから入るルートも増えた。ターミナルでagyコマンドを叩けば、デスクトップ版と同じエージェントハーネスにアクセスでき、agy inspectで現在の設定を確認できる。~/.config/antigravity/config.tomlを編集することでモデルをgemini-3.5-flashやclaude-opusへ切り替えたり、自前のエンドポイントを指定したりすることも可能だ。DataCampのCLIチュートリアルによれば、デフォルトでは「request-review」モードが有効で、エージェントは破壊的操作の前に必ず承認を求める安全寄りの設定になっている。慣れてきたら/permissionsでモードを緩めて、エージェントに任せる範囲を広げていく形が推奨される。
価格設計も理解しておきたい。Google公式の価格ページによれば、Antigravity 2.0は依然として無料枠(日次20回のエージェント要求)から始められ、本格的な実務利用に進むと月額20ドル(約3,000円)のGoogle AI Pro、月額100ドル(約1万5,000円)のGoogle AI Ultra(5倍枠)、月額200ドル(約3万円)のAI Ultra最上位プラン(20倍枠)の三段階で構成される。AI Pro・Ultra加入者は25ドル(約3,800円)・50ドル(約7,500円)・200ドル(約3万円)刻みのトップアップクレジットを購入することもでき、月内に大規模ジョブを集中して走らせる開発者にも柔軟に対応する。

使いこなしのコツ:効果的なプロンプトとArtifactsの読み解き方
Antigravityの真価を引き出す最初のコツは、エージェントへの指示を「ロール・タスク・制約・出力フォーマット・入力」の五要素で構造化することだ。AntigravityLabの解析記事によれば、テンプレート化したプロンプトに切り替えた開発者は推論精度が平均35%向上したと報告されている。例えば「あなたはNext.js 15のシニア開発者である」「次のページコンポーネントに無限スクロールを追加せよ」「TypeScriptの厳密モードを維持しつつ、SWRは使わずTanStack Queryを採用」「diffで提示し、テストはPlaywrightで」「対象のファイルは/app/feed/page.tsx」というように、役割と条件を明示的に書き分けると、Artifactsの精度が目に見えて高まる。
二つ目のコツは、Artifactsを「読み流さず、必ず順番に検証する」習慣をつけることだ。エージェントは作業前にImplementation Plan(実装プラン)、作業中にTask List(進捗チェックリスト)、作業後にWalkthrough(変更要約と検証手順)を生成する。VertexDigestのアーティファクト解説によれば、プランを先に承認し、コード差分は途中で確認し、最後にウォークスルーの録画とスクリーンショットで動作確認するという三段階のレビューフローが、最も品質劣化を抑える運用パターンだという。録画が自分の懸念するエッジケースを網羅していない場合は、ウォークスルーを差し戻して「ユニットテストを追加してやり直し」と指示すれば、エージェントは新たなサブタスクを開始して再提出する。
三つ目は「ビジュアル入力を活用する」ことだ。Antigravityは画像とテキストの両方を解釈できるGeminiモデルを基盤としているため、デザインのスクリーンショットをそのままドラッグして「この通りに実装して」と指示することができる。AntigravityLabの内部メトリクスでは、画像を一緒に提示することでAIの回答精度が平均42%上がるとの報告がある。Figmaのスクリーンショット、エラー画面のキャプチャ、手書きのワイヤーフレーム写真など、視覚情報は積極的に与えてよい。
四つ目は「並列タスクは分離可能な単位に分けて投げる」ことだ。Mission Controlでは同時に最大5体のエージェントを動かせるが、同じファイルを編集する二つのエージェントを同時に走らせると最後のマージで衝突する。Google Cloud Communityに掲載された運用ベストプラクティスでは、フロントエンド・バックエンド・テスト・ドキュメント・パフォーマンス改善のように、関心領域が重ならない単位で分解するのが望ましいとされている。
五つ目はカスタムルールの活用だ。Google公式のCodelabs「Build Autonomous Developer Pipelines using agents.md and skills.md in Antigravity」では、プロジェクトルートにAGENTS.md(またはGEMINI.md)を置いてチーム共通のコーディング規約を書き込み、skills/ディレクトリに「DBマイグレーションを生成するスキル」「APIスキーマからクライアントSDKを生成するスキル」などを定義する手法が紹介されている。/workflows配下に「/start-cycle」「/release」のようなスラッシュコマンド型ワークフローを登録しておけば、複雑な多段パイプラインも一発で起動できる。
テックエンジニア視点での実践活用:CLI・SDK・Managed Agents
シリコンバレーの中上級エンジニア層の関心は、デスクトップ版よりもむしろCLI・SDK・Managed Agents APIに集まっている。なぜなら、これらは既存のCI/CDパイプラインや内製ツールへエージェントを組み込むための部品として極めて筋がよいからだ。
CLI(agy)の最初の活用ポイントは、CI/CDジョブからの呼び出しである。例えばGitHub Actionsのワークフロー内でagy run "本PRの差分を読み、抜けているテストケースを追加し、コミットして」のように起動すれば、人手を介さずに自動テスト補完を回せる。Goで書かれたバイナリは起動が速く、トークン消費の追跡もリアルタイムでagy inspectから取得できるため、コスト管理にも向く。DEV Communityの解説記事では「Gemini CLI時代と比較してジョブ全体が体感30%以上速くなった」と報告されている。
SDKは、内製アプリケーションへエージェント機能を埋め込むのに使う。例えば社内のチケット管理ツールに「優先度の高いバグを夜間にエージェントが自動でブランチ作成し、修正案を提示する」機能を組み込む際、SDKを使えばGoogle社内プロダクトと同じエージェントハーネスを直接呼び出せる。9to5GoogleおよびTheNextWebの両社報道によれば、SDKはホスト先を問わず動作するため、AWSやAzure上で稼働する自社サービスにも組み込み可能だ。
Managed Agents APIの威力は、隔離Linux環境を即時に立ち上げてエージェントを走らせられる点にある。これにより「コードを実行して結果を確認する」種類のタスクを、ローカル環境を汚さずに大量に並列実行できる。例えば「ある依存ライブラリの新バージョンに対して、自社の全マイクロサービスのテストを回す」といったタスクは、各サービスのMaaged Agentを並列起動するだけで完結する。Google Cloudの公式リリースノートが示すように、Managed Agentsは状態を保持できるため、複数ターンにまたがる長期タスクにも適している。
スケジュールタスクの活用も中上級者向けの目玉だ。Antigravity 2.0ではcronスタイルの記法でエージェントジョブを定期実行できるため、例えば「毎朝9時にmainブランチの依存関係を更新し、テストが通れば自動でPRを作成する」「毎時0分に本番APIのヘルスチェックを行い、異常があればSlackに報告する」といった運用が標準機能で実現する。Mediumに掲載された「Bye Claude Code」と題する分析記事は、この機能をもって「コーディングエージェントが単一ターンのツールから、常駐型の自動化パイプラインへ昇格した」と総括している。
セキュリティ面の運用では、Tool Permission設定を細やかに使い分けるのが鍵となる。デフォルトの「request-review」は破壊的操作の前に必ず承認を求める安全モード、開発が乗ってきたら「agent-assisted」へ切り替えてターミナル実行を含む幅広い操作を任せ、最終的にCI環境などでは「autonomous」モードに切り替えて完全自走させる、という三段階の使い分けが定着しつつある。Gemini Enterprise Agent Platform経由で利用すれば、推論はGoogle Cloud境界内で完結し、ISO 27001・SOC 2を含むGoogle Cloudのコンプライアンスフレームを継承できる点も、企業のセキュリティ責任者から好意的に受け止められている。
最後に、ベテランエンジニアの間で共有されているノウハウとして「ピン留めモデルとフォールバックモデルを使い分ける」というテクニックがある。Gemini 3.5 Flashを既定にして大半のタスクを高速処理しつつ、特に難度の高い設計判断や複雑なリファクタリングだけGemini 3.1 ProやClaude Opus 4.6に切り替える方法だ。AntigravityCLIの/modelコマンドやデスクトップ版のモデル選択UIから簡単に切り替えられ、コストとクオリティのバランスを実務に合わせて最適化できる。

Antigravity 2.0が拓く未来:エンタープライズ展開と次の一手
Antigravity 2.0の意義は単なるツールアップデートにとどまらない。Googleがチャットボットから「アクションを取るエージェント」へと戦略軸を完全に移したことを示す象徴であり、Spark(24時間稼働する個人向けバックグラウンドエージェント)もまたAntigravityプラットフォーム上で動作する。これは個人開発者からエンタープライズ、そして消費者向けAIまで、Googleがエージェント基盤を一本化していく長期計画の一部だ。Latent Space誌の「AINews: Google I/O 2026」特集は、この点を「GoogleのAIスタックがGemini Enterprise Agent Platformを底辺に、Antigravityを開発レイヤーに、Sparkを消費者UIに据える三層構造として整理された瞬間」と表現した。
エンタープライズ展開は今後さらに加速する見通しだ。Gemini Enterprise Agent Platformへの統合により、Antigravityはコードがクラウド境界の外へ出ない構成で利用でき、規制が厳しい金融・医療・公共領域でも導入しやすくなった。Constellation ResearchやTechzineといった業界アナリストは「2026年下半期から2027年にかけて、AntigravityはエンタープライズのAI開発標準として浸透していく」と予測している。
開発者個人としても、Antigravity 2.0をきっかけに自分の働き方を見直す好機が訪れている。コードを一行ずつ書くスキルから、エージェント群へ的確に役割と制約を与えるオーケストレーションのスキルへ、求められる能力の比重がじわじわとシフトしているからだ。Antigravityは無料で始められ、CLIとSDKを通じて手元のワークフローに段階的に組み込んでいける。シリコンバレーのエンジニアたちが先行して掴みかけているこの新しい開発体験に、いま触れて慣れておくことには大きな価値がある。
Sources
- I/O 2026 developer highlights: Antigravity, Gemini API, AI Studio - Google公式ブログ
- Build with Google Antigravity, our new agentic development platform - Google Developers Blog
- An important update: Transitioning Gemini CLI to Antigravity CLI - Google Developers Blog
- Getting Started with Google Antigravity - Google Codelabs
- Build Autonomous Developer Pipelines using agents.md and skills.md in Antigravity - Google Codelabs
- I/O '26 news for agent developers on Google Cloud - Google Cloud Blog
- Google Antigravity Pricing - 公式
- Google Antigravity Documentation - Commands
- Google Antigravity - Wikipedia (英語版)
- Google launches Antigravity 2.0 with an updated desktop app and CLI tool at IO 2026 - TechCrunch
- With Gemini 3.5 Flash, Google bets its next AI wave on agents, not chatbots - TechCrunch
- Google Antigravity 2.0 becoming full agentic development suite - 9to5Google
- Google Launches Antigravity 2.0 at I/O 2026 - MarkTechPost
- With expanded Antigravity platform, Google accelerates agent-native software development - SiliconANGLE
- Gemini 3 and Antigravity, explained: Why Google's latest AI releases are a big deal - Fortune
- Google Antigravity introduces agent-first architecture for asynchronous, verifiable coding workflows - VentureBeat
- Antigravity 2.0 Tops the OpenSCAD Architectural 3D LLM Benchmark - Hacker News / ModelRift
- The $1000 Operating System: Rearchitecting the Dev Team Inside Antigravity 2.0 - DEV Community
- Antigravity CLI Tutorial - DataCamp
- Google Antigravity I/O 2026 Keynote - YouTube
- AINews: Google I/O 2026 - Latent Space
- Google Antigravity Review: DeepMind's Agent-First Bet on Faster, Safer Software Development - Scalable Path
- Google AntiGravity 2.0: Bye Claude Code - Medium / Data Science in Your Pocket
- Antigravity Prompt Engineering Mastery - Antigravity Lab
- Antigravity Artifacts Complete Guide - Antigravity Lab
- Google Antigravity 2.0: The Complete Developer Guide (2026) - BuildFastWithAI
- Google Antigravity 2.0: Agent-First Dev Platform Has Landed - APIDog
- How to Download and Install Google's Antigravity IDE - SecondTalent
- Google Antigravity 2.0 launches with CLI, SDK, and AI agents - The Next Web
- Google AI announcements from November - Google公式ブログ
- 100 things we announced at Google I/O 2026 - Google公式ブログ
- Gemini Enterprise Agent Platform (formerly Vertex AI) - Google Cloud