一行打ち込むと、歌が丸ごと返ってくる

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「雨の日に、窓辺でぼんやりしている音楽」。検索窓のような入力欄にこの一行を打ち込んで待つと、二分ほどで、歌詞もメロディも伴奏も、そして歌っている声までついた一曲が返ってくる。ピアノが鳴り、女性ボーカルが入り、サビでコーラスが重なる。BPMもキーも指定していないし、コード進行の知識も要らない。打ち込んだのは日本語で言えば十数文字の、ただの気分の描写だけだ。

これがアリババが2026年8月17日にベータ公開した音楽生成AI「HappyShrimp 1.0」、中国名「快乐虾米(クァイラー・シャーミー)」である。PCのブラウザから使え、中国国内向けの happyshrimp.cn と海外向けの happyshrimp.ai が同じ日に立ち上がった。新規登録すると無料クレジットが配られ、そこから何曲か試せる。

できることは大きく二つある。ひとつは、いま書いたように何もない状態から一曲まるごと作ること。もうひとつは、自分で書いた歌詞を貼りつけて、それに曲をつけて歌わせること。歌なしのインスト曲だけを作らせることもできる。アリババ自身の発表によれば、対応するジャンルは中国風の楽曲からポップス、R&B、ヒップホップ、ロック、ファンク、エレクトロニック、クラシック、ジャズまで広がる。

面白いのは受け付ける言葉の粒度だ。「1970年代のソウル、黒人男性ボーカル、アナログ録音の温かい質感」という玄人好みの注文も通るし、「カーアクション映画の主題歌、男女のラップ・デュエット」のような場面の指定でも通る。「高校の友達に贈る歌」「捨てられた幽霊のひとりごと」といった、音楽用語がひとつも入っていない文章でも、モデルの側が「それはどういう音になるべきか」を推し量って組み立てる。タグを並べて機械に指示するのではなく、話し言葉のまま渡していい、という設計思想である。

5年前に葬った名前が、AIになって戻ってきた

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「シャーミー」という名前に、中国のネット世代は反応する。虾米音乐(シャーミー音楽)は、アリババが2013年に買収して運営していた音楽ストリーミングサービスだ。マニアックな選曲と精度の高いレコメンドで熱心なファンを抱えていたが、2021年2月5日にサービスを終了している。

畳まざるを得なかった理由ははっきりしている。楽曲の独占配信権をテンセントが押さえてしまったからだ。テンセントは2016年に中国音楽集団を傘下に収め、レーベルとの独占契約を積み上げて、2017年時点で中国の音楽ストリーミング市場の7割超を握るに至った。権利を買えなければ、いくらUIが良くても曲が並ばない。アリババは虾米を閉じ、代わりに2019年、ネットイース・クラウド・ミュージックへ7億ドル(約1,090億円)規模とされる出資をして、自前の配信からは事実上退場した。

その名前が、5年半後にAIとして戻ってきた。ただし今度は「他人の曲を並べる場所」ではなく「曲そのものを作る機械」としてである。権利者に頭を下げてカタログを借りる商売で負けたので、カタログを必要としない側に回った、と言い換えることもできる。

命名にも社内の流儀がある。アリババは2026年4月に動画生成モデル「HappyHorse(快乐马)」を出し、6月には対話しながら世界を作り替える世界モデル「HappyOyster(快乐蚝)」を出した。馬、牡蠣、そして海老。マルチモーダル系のプロダクトに「Happy+生き物」の名を与えるシリーズの三番目が、この音楽モデルということになる。

これらを束ねているのが、2026年3月に発足したAlibaba Token Hub(ATH)という事業グループだ。通義実験室、Qwen、MaaS事業、AI創新といったバラバラだったAI部隊を一本化し、グループCEOの呉泳銘が自ら率いる。トークン、つまりAIが処理し吐き出す計算の最小単位を「作り、配り、使わせる」ことに全社の資源を寄せる、という宣言である。HappyShrimpはその旗の下から出てきた最初の音楽プロダクトになる。

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「部品を作って貼り合わせる」のをやめた

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技術面でアリババが強調しているのは、端到端(エンド・ツー・エンド)の全曲生成、という一点だ。

従来のAI作曲は、工程を分けるのが普通だった。まず歌詞を書くモデルがある。次にメロディをつけるモデルがある。それを歌声に変換する音声合成があり、最後に伴奏を足してミックスする。工場のラインのように部品を作って組み立てる方式で、各工程はそれぞれ優秀でも、つなぎ目に不自然さが残る。歌詞の音節がメロディに乗りきらず言葉が詰まる、伴奏と歌が別々の場所で鳴っているように聞こえる、サビに入ったのに盛り上がらない。AI楽曲を聴いたときに感じる「なんとなく作り物っぽい」の正体は、たいていこのつなぎ目にある。

HappyShrimpはそこを分けない。アリババの説明では、モデルは楽曲構成やリズムの展開、和声進行といった音楽の「文法」と、感情のトーン、エネルギーの起伏、歌詞が伝えようとしている意図といった「意味」を、ひとつの構造として同時に持つ。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、アウトロを最初から一本のタイムラインとして計画し、歌詞とメロディと編曲と歌声を同時進行で決めていく。音楽を、文法と意味と文脈を備えた一種の言語として扱う、という言い方をしている。

中国語の歌でこれが効く場面はわかりやすい。中国語には声調があるので、同じ「マ」でも音程の上下で意味が変わってしまう。歌詞を先に確定してから後付けでメロディを当てると、字とメロディの動きが喧嘩して、聴き手が歌詞を聞き取れなくなる。歌詞とメロディを同時に決められるなら、この衝突は原理的に回避しやすい。

アリババがこの領域に土地勘があるのは偶然ではない。同社は2026年1月に音声合成モデル群Qwen3-TTSをオープンソース公開し、7月にはQwen-Audio-3.0-TTSを出している。感情タグ、声のクローン、方言、そして日本語を含む多言語に対応する音声生成の蓄積が社内にある。歌声というのは要するに、旋律とリズムの制約が乗った音声である。

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王者Sunoと、法廷から生まれた新しいルール

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この市場の現在地を決めているのは、米ボストンのSunoだ。

数字だけ並べても迫力がある。2026年6月、SunoはBond Capitalが主導するシリーズDで4億ドル(約620億円)を調達し、評価額は54億ドル(約8,400億円)になった。半年前の11月に2億5,000万ドル(約390億円)を調達したときの評価額24億5,000万ドル(約3,800億円)から、7か月で倍以上である。調査会社Contrary Researchのまとめでは、年間経常収益は3億ドル(約470億円)規模、有料会員は約200万人、累計ユーザーは1億人。Billboardが調達資料をもとに報じたところでは、直近の資金調達時点で1日に700万曲以上が生成されていた。Spotifyのカタログ全体に相当する量が、2週間ごとに新しく積み上がっている計算になる。

しかしSunoとその同業Udioがここまで来た道は、法廷を経由している。2024年、全米レコード協会が3大メジャーを代理して両社を「大規模な著作権侵害」で提訴した。そこから起きたことが、この市場のルールを書き換えた。

Udioは2025年10月にユニバーサル ミュージックと和解し、11月にワーナー ミュージックとも和解した。その代償として、Udioは自由な曲作りのプラットフォームであることをやめる。生成物を外に持ち出せない「壁に囲まれた庭」に作り替え、権利処理済みの楽曲をリミックスして遊ぶファン向けサービスへ方向転換し、既存モデルは2026年中に引退させて、正規ライセンスだけで学習し直したモデルで再出発する。インディーズ系レーベルを束ねるMerlinやKobaltとも契約を結んだ。

Sunoは2025年11月にワーナーとだけ和解した。このとき、ワーナー傘下でライブ情報サービスを手がけていたSongkickをSunoが譲り受けている。ワーナー所属アーティストは、自分の名前や声、作品をAIに使わせることに同意するかどうかを選べて、同意すれば対価を受け取る。そして現行モデルは2026年内にライセンス版の新モデルへ置き換わる予定だ。ワーナーのロバート・キンセルCEOは、この新モデルが2026年中に出るという見通しを維持している。

一方でユニバーサルとソニー ミュージックはSunoとの訴訟を続けている。訴状で問題とされた楽曲数は、当初の560曲から6万1,000曲超へと膨れ上がった。米国の裁判所はまだフェアユースの是非を判断しておらず、実質的な判断が出るのはさらに先になる。

法廷を経ずに最初からライセンス側で始めた事業者もいる。ElevenLabsは、MerlinとKobaltと契約したうえで音楽モデルを立ち上げ、商用利用がクリアされていることを売りにしている。同社の評価額は2026年2月時点で110億ドル(約1.7兆円)に達した。グーグルも2026年3月にLyria 3 Proを投入し、YouTubeやGeminiという既存の巨大な出口に組み込んでいる。

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中国国内は三層構造の混戦

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HappyShrimpが飛び込んだ中国市場は、すでに三つの層でひしめいている。

一番上に、プラットフォームを持つ大手がいる。バイトダンスの「海绵音乐(スポンジ音楽)」は完全無料で提供されており、ショート動画のBGMを供給してユーザーを囲い込むための道具と割り切られている。テンセント・ミュージックはQQ音楽にAI作曲機能を埋め込んだうえ、独立アプリ「VEMUS(未音)」を出した。ネットイース・クラウド・ミュージックは「网易天音」を持ち、AI楽曲向けの分配モデルまで整えている。彼らにとってAI作曲は単体で儲ける商品ではなく、配信サービスの中に置いておく機能だ。

二番目の層が、基盤モデルを自前で持つAI企業である。昆侖万維(Kunlun Wanwei)の「Mureka」は2024年8月の登場から2年足らずでV9まで版を重ね、2025年11月時点で年換算売上は約1,200万ドル(約19億円)、中国のAI音楽事業として初めて粗利の黒字化を公表した。ただし法人顧客の9割超が海外で、国内で稼げているわけではない。MiniMaxも音楽モデルを持ち、月額36元(約840円)前後の価格で戦っている。

三番目が、音楽に特化したスタートアップだ。「音潮」やDeepMusicといった名前が、大手が拾いきれない用途の隙間を埋めている。

この構図の中でHappyShrimpの立ち位置は、二番目に近い。配信サービスを持たないアリババが、独立したプロダクトとして音楽生成を売りにいく。だからこそ初日に太合音楽集団との提携を発表したことに意味がある。太合は太合麦田や海蝶音楽といったレーベルを抱える中国有数の独立系音楽企業で、中国語楽曲の権利ビジネスでは大手だ。両社は、音楽産業のエコシステム作り、AI音楽プラットフォームの運営、そしてミュージシャンとの共同制作で組むとしている。8月28日から30日に河北省の阿那亚(アランヤ)で開かれた虾米音楽祭への出展も同時に予告され、会場の空気から着想した環境音楽をその場で生成する企画が組まれた。

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市場はどのくらいの大きさか

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比較の土台として、まず本体の音楽産業を見ておく。国際レコード産業連盟によれば、2025年の世界の録音音楽売上は317億ドル(約4.9兆円)で、11年連続の成長。有料ストリーミングの契約者は8億3,700万人に達し、売上の52.4%を占める。

そこにAIがどれだけ乗るのか。世界の作家団体を束ねるCISACがPMP Strategyに委託した試算では、AIが生成する音楽と映像コンテンツの市場は約30億ユーロ(約5,400億円)から2028年に640億ユーロ(約11.6兆円)へ、5年で20倍に膨らむ。同じ試算で、音楽分野のAI事業者の売上は2028年に40億ユーロ(約7,200億円)へ。そしてその裏側で、作曲家・作詞家の収入の24%が失われるリスクにさらされ、5年間の累計で音楽分野だけ100億ユーロ(約1.8兆円)が創作者から事業者へ移転する、と警告している。ゴールドマン・サックスは2026年6月の「Music in the Air」で、より保守的に、AI音楽の直接売上を2030年に約21億ドル(約3,300億円)と見積もっている。

ただし、この市場でいま実際に起きていることを、いちばん正直に映しているのは配信側の実測値だ。フランスのDeezerは2026年4月、1日に約7万5,000曲のAI生成トラックがアップロードされており、これが新規投稿の44%にあたると公表した。6月には1日平均9万曲に達し、投稿の半分を超えた。ところが、それらの再生数はプラットフォーム全体のわずか1〜3%にとどまる。しかもその再生の85%は不正水増しとして検出され、収益化から外されている。Apple Musicも、月間の新規投稿の3分の1超が「100%AI製」でありながら、再生シェアは0.5%を大きく下回ると述べている。

作る側は爆発し、聴かれる側はほぼ動いていない。この非対称が、AI音楽の現在地である。

中国のクリエイターの手取りを見ると、もっと生々しい。2026年4月に新浪財経が伝えたところでは、ネットイースはAI楽曲に1万再生あたり約20元、バイトダンス系は1,000再生あたり0.8〜1.5元、テンセントはAI楽曲に1,000再生あたり0.2〜0.4元を払う。テンセントの非AI楽曲は同じ再生数で1〜2元なので、AIというだけで単価が数分の1に落ちる。200人規模のAI音楽クリエイターの集まりを取材したところ、大半の収入は累計20元にも届いていなかった。

Alibaba(アリババ)、音声生成AI Happy Shrimp、ベータ版公開 - 市場はどのくらいの大きさか - 図表1Alibaba(アリババ)、音声生成AI Happy Shrimp、ベータ版公開 - 市場はどのくらいの大きさか - 図表2Alibaba(アリババ)、音声生成AI Happy Shrimp、ベータ版公開 - 市場はどのくらいの大きさか - 図表3

アリババの強みは、モデルではなく蛇口

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シリコンバレーの投資家がこの分野を見るときの物差しは、もう「どちらの曲が良く聞こえるか」ではない。2026年に入ってから彼らが繰り返し言っているのは、AIの濠はモデルそのものではなく、権利処理済みのデータと、出口としての配信網にある、という一点だ。モデルの性能はオープンソースの追い上げで数か月おきに横並びになる。残るのは、誰が正規に学習データを持っていて、誰がユーザーの目の前に立てるか、である。

その物差しで測ると、アリババの持ち札は重い。

資本は桁が違う。同社は3年間で3,800億元(約8.9兆円)というAIインフラ投資計画を掲げ、2026年6月末までにすでに1,900億元を使った。直近の4〜6月期だけで設備投資は676億元(約99億ドル、約1.56兆円)と前年同期比75%増になり、その負担で純利益は75%減った。それでもクラウド事業の売上は484億元(約71億ドル)と45%伸び、22四半期ぶりの高い伸び率を記録している。音楽モデル一本が採算に乗るかどうかで撤退を迫られる規模の会社ではない。

出口も持っている。Qwenアプリは2026年1月に月間1億ユーザーを超え、タオバオ、アリペイ、Amap、フリギーといったグループのサービスと深く結ばれた。直近の決算資料では、2億5,000万人がQwenアプリのエージェント機能を通じて初めてAI経由の買い物を体験したとしている。生成した曲を、広告動画に、店舗のBGMに、ライブ配信に、そのまま流し込める導線が社内にある。Sunoが自前で獲得しなければならないユーザーを、アリババはすでに抱えている。

言語も強みだ。中国語の生活語彙、感情表現、物語の言い回しを解釈して音にする、という部分は、英語圏のモデルが構造的に手薄なところである。太合との提携は、中国語楽曲の権利者を最初から味方につけるという意味で、法廷から始まったSunoやUdioとは順番が逆だ。

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開示されていないものが多すぎる

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ただし、この製品には空欄が多い。

最大の空欄は学習データである。何を学習したのか、その音源の権利をどう処理したのかを、アリババは説明していない。Music Business Worldwideは、アリババが初日にパートナーとして音楽企業の名前を出したにもかかわらず、太合との取り決めが録音物のライセンスを含むのかどうかを明らかにしていない、と指摘している。共同制作の枠組みなのか、学習用ライセンスなのかで、意味はまったく違う。

生成物の権利も曖昧なままだ。作った曲を広告に使っていいのか、配信ストアで売っていいのか、権利は誰のものになるのか。ベータ版の現時点で包括的な利用規約は示されていない。Billboardによれば、有料会員は月額14.90ドル(約2,300円)から、クレジットの追加購入は9.90ドル(約1,550円)からで、WAV形式でのダウンロード、優先処理、商用ライセンスが上位プランで解放される。参考までにSunoは月10ドル(約1,560円)のProで生成物の権利をユーザーに帰属させ、月30ドル(約4,700円)のPremierでスタジオ機能を開く。価格帯は近いが、権利の中身の説明の厚みが違う。

性能の客観指標もない。モデルのパラメータ数も、アーキテクチャも、他社との比較試聴の勝率も、指示への追従率も、歌詞の聞き取り精度も公表されていない。現時点で出回っている評価は、アリババ自身の主張と、個人が試した印象の集積である。

そして規制がある。中国では2025年9月1日から、AI生成コンテンツに目に見えるラベルと、メタデータに埋め込む見えない識別子の両方を付けることが義務化された。2026年4月には、この表示義務を守っていなかったとしてCapCutなど複数のプラットフォームが国家インターネット情報弁公室から指導と是正命令を受けている。音声・音楽も当然その対象だ。

学習の入口についても、中国国内で議論が固まりつつある。2026年5月に上海で開かれたAI時代のデジタル音楽著作権をめぐるフォーラムでは、中国版権協会、CISAC、ドイツのGEMAといった団体が集まり、「先授権後訓練(まず許諾を取り、それから学習する)」という原則を打ち出した。無断学習を前提にした従来のやり方を、業界ルールとして塞ぎにいく動きである。

海外向けの happyshrimp.ai を開いた以上、リスクは中国国内にとどまらない。EUではAI規則の汎用AIモデル向け義務について、欧州委員会の監督・執行権限が2026年8月2日に発効した。学習に使ったコンテンツの概要を公開し、著作権法の遵守措置を示す義務があり、違反すれば1,500万ユーロ(約27億円)か全世界売上の3%のいずれか高い方までの制裁金が科されうる。米国でもMusic Allyが、2026年5月に上院へ再提出されたNO FAKES法案が今回は音楽ストリーミングも射程に入れていると伝えている。

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次に何が動くか

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直近で最初の節目は、9月22日から24日まで杭州国際博覧センターで開かれるアリババの年次イベント、雲栖大会(Apsara Conference)だ。テーマは「Intelligence Goes Beyond」で、1,000社超が出展する。ATH発足後としては初めての大規模な自社カンファレンスであり、HappyShrimpのスマートフォンアプリ版、API提供、そして料金と商用利用条件の正式版が示されるとすれば、最も自然な場所になる。ベータの間はPCブラウザ限定という制約が残っている以上、ここでモバイルに降りてこられるかどうかが、ユーザー数の桁を決める。

11月にはアリババの7〜9月期決算が来る。見るべきはクラウドの伸び率と設備投資の水準、そして消費者向けAIの利用者数がどう語られるかだ。3年3,800億元の投資計画は残り半分を切っており、それを回収する物語の中にHappyShrimpのようなアプリケーションがどう位置づけられるかが見えてくる。

年内には、より大きな地殻変動が予定されている。Sunoがワーナーとの合意にもとづくライセンス版モデルを投入し、現行モデルを引退させる。Udioもユニバーサルとワーナー、Merlin、Kobaltの許諾だけで学習し直したプラットフォームを立ち上げる。無許諾で学習したモデルが表舞台から一斉に降りて、権利処理済みのモデルに置き換わる年になる。そこで実際にどれだけ音質と自由度が落ちるのか、ユーザーがそれを受け入れるのかは、まだ誰も知らない。ここが、無許諾で走ってきた事業者の技術的優位が本当だったのかを測る最初の試験になる。

法廷側の決着はもっと先だ。ユニバーサルとソニーがSunoを訴えている事件では、実質的な争点を裁く申し立ての期限が2027年4月に置かれている。フェアユースについての米国の司法判断は、少なくともそれ以降になる。

そしてHappyShrimp自身については、二つの数字を待つことになる。ひとつは、太合との提携が録音物のライセンスにまで及ぶのかという説明。もうひとつは、生成された曲が実際にどこで鳴っているのかという実績だ。Deezerの数字が示した通り、AI楽曲はいくらでも作れるが、ほとんど聴かれていない。アリババが本当に他社と違うことをやったと言えるのは、タオバオの商品動画で、アリペイの店頭で、あるいはグループの広告の中で、HappyShrimpの曲が当たり前に流れ始めたときである。作れる機械を持っていることと、鳴らせる場所を持っていることは、まったく別の資産だ。そして後者を持っているのが、この市場ではアリババだけである。


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