マイクロソフトの画面を据え付ける会社で、社長が入れ替わった

朝、会社のパソコンを開く。Teamsには会議の通知が並び、Outlookには返信待ちのメールがたまり、画面の端ではCopilotが、長い資料の要約を差し出してくる。
この見慣れた画面を、世界の大企業に一社ずつ据え付けて回ってきた会社がある。米シアトルに本社を置くアバナード(Avanade)だ。社員は6万人を超え、26カ国で7,000を超える企業や団体を顧客に持つ。
その会社で、この2月、社長が入れ替わった。アバナードに11年あまり在籍し、2024年からCEOを務めたロドリゴ・カゼルタ(Rodrigo Caserta)氏がマイクロソフトに移り、南北アメリカで中堅・中小企業への販売と、販売パートナーの網を率いる幹部になった。代わりにやって来たのは、アクセンチュアに28年あまり勤め、同社とマイクロソフトの取引を世界で取り仕切ってきたクリス・ハワース(Chris Howarth)氏だ。
アバナードは、アクセンチュアとマイクロソフトが2000年に共同で作った会社である。社長が株主の一方へ移り、もう一方の株主から新しい社長が来た。カゼルタ氏の前任のパメラ・メイナード氏も2024年にマイクロソフトの役員に転じており、トップが2代続けてマイクロソフトへ渡ったことになる。
それから4か月余りたった6月、アクセンチュアは中堅企業向けの新事業「アクセンチュア・エッジ」を立ち上げ、その中でマイクロソフトの仕事はアバナードに任せると明言した。AIの普及でITサービスの値段が下がり始めたいま、三者の間で起きた人の入れ替えは、中堅企業という次の戦場に向けた布陣になっている。
アバナードとは——マイクロソフト製品の「専門工事会社」

家づくりでいえば、施主の相談に乗り、家全体の設計と工事を取り仕切るのがゼネコン。キッチンや空調の機器を作るのがメーカー。そして、その機器の癖を知り尽くし、確実に取り付けて動かすのが専門工事会社だ。企業のIT投資でいえば、ゼネコンにあたるのがコンサル大手のアクセンチュア、メーカーがマイクロソフト、専門工事会社がアバナードという関係になる。
仕事の中身は幅広い。数万人の社員が使うメールやTeamsを一斉に切り替える。社内のサーバーで動かしてきたシステムを、マイクロソフトのクラウド「Azure(アジュール)」に引っ越させる。会計や販売管理の仕組みを、業務ソフトの「Dynamics 365」で作り直す。そしていま最も引き合いが強いのが、生成AIのCopilotや、仕事を自動でこなすAIエージェントを、企業の業務に組み込む仕事だ。
日本での例に、日本航空の社内向け生成AI「JAL-AI」がある。社内の規程や整備部門のマニュアルを読み込み、社員の質問に答える仕組みだ。回答の精度に悩んでいたこのプロジェクトは、2024年1月にアバナードの支援で立て直された。2024年度には間接部門の社員のほぼ全員が使うまでに広がり、空港のカウンターで危険物を持ち込めるかどうかを調べるアプリなども生まれた。
アバナードには、もう一つの顔がある。マイクロソフトの新製品を世界でいち早く自社に入れて試す「クライアント・ゼロ」、つまり最初の顧客という役回りだ。まず自分たちで使い、つまずく所を洗い出してから客先に持ち込む。こうした実績を背景に、アクセンチュアと組んで、マイクロソフトが世界のシステムインテグレーターから選ぶ年間最優秀パートナー賞を、過去最多の20回受けてきた。
売上高は公表していない。英業界紙チャネルウェブ(ChannelWeb)は2025年、大企業向けの事業だけで30億〜40億ドル(約4,700億〜6,300億円)規模にのぼると報じている。
資本関係——ハンドルはアクセンチュア、技術はマイクロソフト

アバナードの大株主は、創業から今日までこの二社だ。2000年3月の発表時、マイクロソフトは現金で3億8,500万ドル(約600億円)を出した。当時アンダーセン・コンサルティングと名乗っていたアクセンチュアは、現金の代わりに、人材の訓練やノウハウ、知的財産を持ち寄った。社名は英語の「アベニュー(大通り)」と「プロムナード(遊歩道)」を組み合わせた造語で、インターネット時代の商売へ続く道を表している。
二社の関係は、早い段階でアクセンチュアの側に傾いた。2001年末、アバナードがマイクロソフトから優先株の一部を買い戻したことで、アクセンチュアの持ち分が高まり、アバナードはアクセンチュアの連結子会社になった。アバナードは非上場だが、2006年から2008年にかけて、米証券取引委員会(SEC)に年次報告書を出していた時期があり、そこに当時の姿が残っている。2007年8月の時点で、株式のおよそ75%をアクセンチュアが、およそ20%をマイクロソフトが持ち、残りを社員が持っていた。2005年の株主間の取り決めでは、一定の事態が起きたとき、アクセンチュアが残る株式のほぼすべてを時価で買い取れる権利も定められた。
同じ報告書には、こんな一文がある。「当社はアクセンチュアに支配されているため、独自の戦略を立てる力は限られ、事業の方向性はアクセンチュア全体の戦略によって決められることがある」。当時の売上の3分の2はアクセンチュア経由の仕事で、マイクロソフト自身も売上の7%を占める顧客だった。
構図は今も変わらない。アクセンチュアが過半を握り、マイクロソフトは少数株主にとどまる。取締役会の議長は、アクセンチュアで最高戦略・サービス責任者を務めるマニッシュ・シャルマ(Manish Sharma)氏だ。アクセンチュアの決算書には、「主にアバナードの少数株主の取り分」と注記された利益が載っている。2026年8月期は1億4,800万ドル(約230億円)で、前の期からほとんど変わっていない。持ち分の割合が同じなら、アバナードのもうけは横ばいだったことになる。
マイクロソフトから見たアバナードは、自ら出資する会社であり、自社製品を広めてくれる最大級のパートナーであり、ときには仕事を頼む取引先でもある。この三重の関係が、今回の人事を読み解く鍵になる。

CEO交代の中身——三角形の中で人が動いた

前CEOのカゼルタ氏はブラジル出身だ。ブラジルの業務ソフト大手で副社長などを務めたあとアバナードに移り、ブラジル法人の責任者や「成長市場」部門のトップを歴任し、シンガポールにも駐在した。2024年9月にCEOに就くと、「ニュー・ホライズン」と名付けた戦略を打ち出す。年商5億〜50億ドル(約790億〜7,900億円)の中堅企業については、アクセンチュアを通さず、アバナード自身が見込み客の発掘から営業、契約後のお付き合いまで一貫して受け持つという方針だ。
そのカゼルタ氏が移ったのは、マイクロソフトで中小・中堅企業とパートナー販売を担う部門、英語の頭文字でSME&Cと呼ばれる組織の、南北アメリカの責任者のポストである。マイクロソフトは2025年初め、規模を問わずどんな顧客もAIの価値を引き出せるようにするとして、この組織を新設した。自社の営業だけでは回りきれない無数の中堅・中小企業に、販売代理店やシステム会社などのパートナーを通じて製品を届ける部門だ。2025年12月には、利用者300人までの企業向けに、Copilotを1人月額21ドル(約3,300円)で使えるプランを出した。それまでの30ドル(約4,700円)から3割下げている。
後任のハワース氏は、1997年にアクセンチュアに入った英国人で、ウェールズを拠点にしている。社内で最大級の顧客企業を担当する責任者を務めたのち、同社のマイクロソフト事業部門「アクセンチュア・マイクロソフト・ビジネス・グループ」の世界統括として、5年以上にわたってアバナードと深く関わってきた。この部門は2019年、アバナードと一体で4万5,000人を超えるマイクロソフト専門の人材を束ねる組織として発足したものだ。ハワース氏はアバナードの取締役も務めていた。
目を引くのは、ハワース氏がCEOになった後も、アクセンチュアとマイクロソフトの関係全体の責任者を兼ね続ける点だ。アクセンチュアの発表は、大企業から中小企業まで、あらゆる顧客層でアバナードが両社の成長に欠かせない役割を担っているためだと説明している。アクセンチュアのマイクロソフト窓口と、アバナードの社長とが、一人の人物に重なったことになる。
取締役会議長のシャルマ氏は、この人事が「戦略と勢いの継続性を確かなものにする」と述べた。ハワース氏は「ロドリゴがマイクロソフトに移ることで、私たちの提携はさらに強まる」と語っている。
マイクロソフトの側では、南北アメリカの中堅・中小企業への販売を、アバナードの中堅企業戦略を設計した本人が率いる。アバナードの側では、アクセンチュアでマイクロソフトとの取引を仕切ってきた人物が社長になった。三社をつなぐ配管の要所に、互いの事情を知り尽くした人が座ったわけだ。

創業から26年の歩み

アバナードが生まれたのは2000年、ITバブルの絶頂期だった。マイクロソフトには、企業向けの基本ソフト「Windows 2000」を大企業のシステムに売り込むため、導入まで請け負える相棒が必要だった。当時のスティーブ・バルマーCEOは「この市場に本当にうまく応えられる提携は、これまで組めなかった」と語り、新会社は3年で年商10億ドル(約1,600億円)、最初の2年で3,000人を採用するという目標を掲げた。
現実の歩みは、もっと地道だった。2007年8月期の売上高は6億3,000万ドル余り(約1,000億円)。その3分の2はアクセンチュア経由の仕事で、アクセンチュアのマイクロソフト専門部隊という色合いが濃かった。
規模を広げたのは、2008年からの11年間だ。創業メンバーのアダム・ウォービー氏がCEOを務めたこの時代に、売上はおよそ3倍になり、社員は3万6,000人を超えた。会計や顧客管理のソフト「Dynamics」に強い会社を欧米で次々と買い、2017年には米国のデジタル開発会社インフュージョンを傘下に収めた。2019年2月には、先に触れたアクセンチュアのマイクロソフト事業部門が、アバナードと一体の組織として動き出している。
2019年9月にCEOを継いだメイナード氏は、5年で事業規模を倍にした。コロナ禍で在宅勤務が一気に広がり、Teamsをはじめとするマイクロソフト製品への需要が膨らんだ時期と重なる。メイナード氏は2024年8月末に退任し、マイクロソフトで初めての「最高AI変革責任者」に就いた。
2024年9月からのカゼルタ氏の時代には、狙いが中堅企業へ移った。2025年の創業25周年をはさんで、インドネシアへの進出、シンガポールのトータル・イービズ・ソリューションズ(Total eBiz Solutions)の買収、その拠点を足がかりにしたインドへの進出と、アジアでの足場づくりが続いた。そして2026年2月、バトンがハワース氏に渡る。10月には、社内外のAI活用を統括する最高AI責任者に、ベン・ビース(Ben Beath)氏を任命した。

20年続く日本法人

アバナードの日本法人は2005年7月に生まれ、2025年に20周年を迎えた。設立当初は200人ほどの小さな所帯だったが、2022年には800人ほどに、2025年にはおよそ1,600人のコンサルタントと技術者を抱えるまでになった。この3年で倍になった計算だ。
成長を押し上げたのは、コロナ禍だった。在宅勤務が一気に広がり、Teamsなどの導入の相談が相次いだ。日本法人はそれ以前から自社で在宅勤務の環境を整えており、社内にたまった知見が、そのまま客先への提案になった。2022年の時点でも社員の9割がリモートで働き、前の年度の成長率は40%に達していた。
2022年9月には世代交代もあった。約8年半にわたって社長を務めた安間裕氏が会長に退き、鈴木淳一氏が社長に就いた。鈴木氏は国内のシステム会社を経て、2008年に技術者としてアバナードに入った生え抜きだ。
仕事の軸は、本社と同じくマイクロソフトの製品群にある。先に触れた日本航空のJAL-AIのほか、ソニーセミコンダクタソリューションズとは、AI処理を組み込んだイメージセンサーで店舗の様子をデータとして分析する仕組みを手がけた。山形県酒田市とは、地方に住む女性がオンラインで都市の仕事を請け負えるよう、IT人材を育てる取り組みを続けている。
鈴木氏は「生成AIやAIエージェントは、労働力人口が減っている日本こそ積極的に取り入れるべき技術だ」と語り、10年後の30周年に向けて「日本におけるマイクロソフト×AIのリーディングカンパニー」を目指すと掲げる。
新体制のもとで、日本法人の立ち位置はどうなるのか。ハワース氏が7月のチャネルウェブのインタビューで、アジア太平洋の成長の舞台として名前を挙げたのは、インドやインドネシアだった。一方、新任の最高AI責任者のビース氏は、オーストラリアで共同創業したデジタル制作会社がアバナードに買収されたあと、アジア太平洋のデジタル開発拠点をシンガポール、日本、ブラジルへと広げた人物だ。11月25日に東京で開かれるアバナードの「Beyond AI フォーラム 2026」では、鈴木社長とともに基調講演に立つ。

業界の状況と競合——AIで「作業時間の値段」が下がる

ITへの投資そのものは、かつてない勢いで膨らんでいる。米調査会社ガートナーは、2026年の世界のIT支出を6兆3,700億ドル(約1,000兆円)、前の年より14.2%増えると見込む。ただし伸びの中心はAI向けのデータセンター設備で、こちらは62.5%も増える。ITサービスの伸びは5.3%にとどまる。ガートナーのアナリストは「満ち潮がすべての船を持ち上げるような相場ではない」と表現した。
しかも、そのサービスの値段に、AIが下げ圧力をかけている。アクセンチュアは10月1日の決算発表で、多くの分野で価格が下がったと明かした。AIで浮いた費用の分け前を、顧客が求めているためだ。投資家の不安は株価に表れた。アクセンチュアの株価は、2025年2月の高値から2026年6月末の安値まで、およそ7割下げた。6月18日には1日で18%下げ、過去最大の下落を記録している。10月1日には予想を上回る決算を受けて16%上げ、10月21日の終値は安値のほぼ2倍の水準まで戻った。
マイクロソフトの技術を扱うサービス会社は、世界中にある。調査会社ISGが2026年にまとめた米国の評価では、アクセンチュアとアバナードに並び、コグニザント、インフォシス、TCS、ウィプロが主要な担い手として名前を連ねた。大企業向けの案件では、こうした世界の大手との競り合いが続く。
中堅企業の市場は、事情が違う。カゼルタ氏は2025年、「大手のグローバルブランドは、中堅市場ではあまり戦っていない」と語っていた。地域ごとの中小のパートナーがひしめく、ばらばらの市場だからだ。ところがここに、新しい競争相手が次々と入ってきた。一つは、先に触れたマイクロソフト自身の中小企業攻勢。二つ目は、親会社アクセンチュアが6月に立ち上げたアクセンチュア・エッジだ。年商3億〜30億ドル(約470億〜4,700億円)の企業を狙い、市場規模を2,400億ドル(約38兆円)と見積もる。7月にはグーグル・クラウドと組み、中堅企業向けのAIエージェントを売り出した。三つ目は、ベンチャーキャピタルの資金で中小のIT会社を買い集める新興勢力である。
日本に目を移すと、調査会社IDC Japanによれば、国内のITサービス市場は2024年に7兆205億円と、前の年より7.4%伸びた。売上の上位には富士通や日立製作所、NEC、NTTデータが並び、アクセンチュアは6位につける。マイクロソフト製品に強い国内勢では、東証プライム上場の日本ビジネスシステムズ(JBS)が目立つ。2025年9月期の売上高は1,726億円で、前の期より22.5%増えた。今期も6月までの9か月で27%伸びている。マイクロソフトも2024年4月、日本での46年の歴史で最大となる29億ドル(約4,600億円)の投資を発表しており、AIとクラウドの需要は日本でも厚い。


強みと課題

強みの一つ目は、マイクロソフトとの距離の近さだ。新製品を最初に試すクライアント・ゼロの立場に加え、人のつながりも深い。前任と前々任のCEOがそろってマイクロソフトの役員になり、一人はAIによる変革を、もう一人は中堅・中小企業への販売を担っている。
二つ目は、アクセンチュアという巨大な「元請け」を持つことだ。アクセンチュアの顧客は9,000を超え、世界の大企業上位500社のおよそ4分の3を含む。アバナードの売上の4分の3はいまも大企業向けで、その多くはアクセンチュアと組む大型の変革案件である。
三つ目は、20年以上かけて積み上げた業種ごとのノウハウだ。米調査会社HFSリサーチは2024年、中堅市場に後から入ってくる競合には、この業界知識が欠けていると指摘した。
課題の一つ目は、強みの裏返しにある。アバナードはマイクロソフトの技術しか扱わない。HFSは、マイクロソフトの製品群に深く入り込むことの利点と制約を、顧客は比べるべきだとも書いている。顧客が複数のクラウドやAIを使い分ける時代に、アクセンチュアはエッジを通じてグーグルとも組めるが、アバナードの看板はマイクロソフト一本だ。
二つ目は、中堅企業の数を本当に増やせるかだ。HFSによれば、アバナードは毎年1,000社ずつ中堅企業の新しい顧客を増やす目標を掲げていた。ハワース氏が7月に明かした実績は、この1年で約600社の増加である。中堅企業の顧客はおよそ1,800社になり、売上に占める割合は2割から4分の1ほどに上がったが、増え方は目標の6割の速さにとどまる。HFSは当初から、品質を落とさずにこの数をこなせるかを疑問視していた。
三つ目は値段だ。技術者の作業時間で請求する従来の商売は、AIが作業を速くするほど売上が目減りする。カゼルタ氏は、社内で生成AIを使ってコストを下げ、中堅企業が払える価格に作り直すと説明していた。値下げと利益の両立が問われる。
四つ目は、親会社との線引きだ。アクセンチュア・エッジとアバナードは、同じ中堅企業の市場を、別々の入り口から攻める。アクセンチュアはマイクロソフトの仕事はアバナードに任せると明言したが、顧客の側から見れば、入り口が二つあることになる。2007年の報告書にあった「独自の戦略を立てる力は限られる」という一文は、いまも生きている。


各紙・アナリスト・投資家はどう見たか

今回の交代を報じたのは、主に英国や豪州、ブラジル、イタリアのIT業界紙だった。多くはアクセンチュアの発表に沿って「継続性」を前面に出した。豪ITブリーフは、二つの親会社の連携を引き締める広い動きの一環と位置づけ、英チャネルウェブは、カゼルタ氏の時代に会社の重心が大企業から中堅企業へ移ったことを強調した。ブラジルのITフォーラムは、自国出身の経営者がマイクロソフトの幹部に就くことに焦点を当て、カゼルタ氏がアバナードでの日々を「キャリアで最もやりがいのある経験」と振り返ったことを伝えている。
アナリストの関心は、人事そのものより、中堅市場という戦場に向いている。HFSリサーチは2024年の時点で、中堅企業がITサービス各社の新たな標的になると予測し、アバナードが一歩先を行くと評価した。アクセンチュア・エッジの発表に寄せて、IDCで世界のサービス調査を担当するバイスプレジデントは、大企業向けの仕組みを手直ししたものではなく、中堅市場が求める速さと採算、パートナーとの連携に合わせた専用の組織だと評している。
投資家にとってのアバナードは、アクセンチュアの財務諸表の中にある。アクセンチュアは10月16日に提出した年次報告書で、アバナードとアクセンチュア・エッジを並べて「中堅企業向けソリューション」と位置づけ、それぞれの市場に合った独自のやり方で動かす「事業ネットワーク」の一つに数えた。工場などの制御システムを守るサイバー防御のドラゴスや、英国のAI企業ファカルティと同列の事業群で、全体で売上の約6%を占める。同じ報告書によれば、アクセンチュアの売上の約65%は、マイクロソフトのような主要な技術提携先18社に関わる仕事で、その伸びは全社を上回る。ジュリー・スウィートCEOは、2027年8月期にさらに約50億ドル(約7,900億円)を買収に投じると語った。
ベンチャーキャピタルの目線で見ると、この中堅・中小の市場こそが、いま最も熱い狩り場の一つだ。米ジェネラル・カタリストは、人手に頼るサービス業をAIで作り替える戦略に15億ドル(約2,400億円)を振り向け、その一環として2025年8月、企業のIT運用を代行する会社を買い集める「タイタン」に7,400万ドル(約120億円)を投じた。試験運用では、IT運用代行の典型的な作業の38%を自動化できたという。2025年6月には、米スライブ・キャピタル系のスライブ・ホールディングスなどが、ITサービス会社を束ねる「シールド・テクノロジー・パートナーズ」を1億ドル超(約160億円超)の資金で立ち上げた。欧州でも、米投資会社ウォーバーグ・ピンカスが2月、マイクロソフトでSME&Cを世界で率いるラルフ・ハウプター氏を、欧州テクノロジー投資チームの外部シニアアドバイザーに迎えた。ソフトウェアやIT企業への投資先探しと、投資先の企業価値を高める仕事を手伝う役回りだ。
VCが買い集めるIT運用代行会社は、マイクロソフトが中堅・中小企業に製品を届けるときに頼るパートナーと同じ種類の会社だ。そしてアバナードもまた、マイクロソフト製品の再販に長けた会社を買収の候補に挙げている。カゼルタ氏が新たに率いる販売網の中で、VC資金の新興勢力とアバナードが、同じ種類の会社に手を伸ばす構図ができつつある。もっとも米テッククランチは、AIが生む見かけだけの成果物がかえって同僚の手直しを増やすという調査を引き、この賭けはVCが考えるほど簡単ではないとも論じている。
次の一手と、これからの日程

ハワース氏の次の一手の一つ目は、買収だ。7月の時点で、正式な入札手続きが2件、相手を一社に絞った交渉が2件、同時に進んでいると明かしている。狙うのは、地域や得意分野を補えるマイクロソフト系のパートナーで、これまでより製品販売の比率が高い会社にも関心を示した。成熟した再販の仕組みを持つ会社に興味があるという発言は、技術者の作業時間を売る商売から、ライセンスの販売と運用を組み合わせた継続的な商売へ、軸足を広げる意図と読める。
二つ目は、自社のAI化だ。10月に就いたビース最高AI責任者は、AIをめぐる議論は「投資するかどうか」から「どう価値を引き出すか」に移ったと語る。社内の業務とサービスの届け方にAIエージェントを組み込み、値下げに耐えられる体質をつくることが、その役割になる。
三つ目は、アクセンチュアとの役割分担の仕上げだ。大型の変革はアクセンチュアと組み、中堅企業には直接向き合うという二本立ては保ちつつ、エッジとの連携で、マイクロソフト以外の技術も必要な顧客をつなぐ道ができた。ハワース氏は7月、中堅企業へ重心を移す3年がかりの転換について「いまは1年半が過ぎたところだ」と語っている。道のりは、まだ折り返し地点にある。
これからの節目も、はっきりしている。11月17日から20日には、マイクロソフト最大級の顧客向けイベント「イグナイト」がサンフランシスコで開かれ、2026年のパートナー・オブ・ザ・イヤーが11月中に発表される。今年は、AIによる全社の変革を対象にした「フロンティア・トランスフォーメーション」部門が新設された。アバナードがどの賞を手にするかは、マイクロソフトからの評価を測る物差しになる。
11月25日には、東京の虎ノ門ヒルズフォーラムで「Beyond AI フォーラム 2026」が開かれる。ビース最高AI責任者と鈴木社長が基調講演に立ち、日本マイクロソフトの岡嵜禎執行役員常務を交えて、AIエージェント時代の戦略を語る。新体制が日本で何を打ち出すのかを確かめる、最初の場になる。
12月中旬には、例年どおりならアクセンチュアの9〜11月期の決算が出る。会社は売上高を189億5,000万〜196億ドル(約3兆円)と見込む。価格の下落がどこまで続くのか、中堅企業向けの事業にどう触れるのかが焦点だ。アバナードが進める4件の買収交渉も、まとまれば順次発表される。
2000年、アバナードは、マイクロソフトの製品を大企業に売り込むための合弁として生まれた。26年後のいま、その元社長はマイクロソフトで南北アメリカの中小企業向け販売網を率い、アクセンチュアのマイクロソフト窓口がアバナードを率いる。三社の間を人が行き来するたびに、アバナードの役回りは書き換えられてきた。今回書き換えられたのは、大企業の専門工事会社から、中堅企業の市場へ打って出る先兵へ、という役回りである。
