店は開いたまま、持ち主だけが替わる

日本トイザらス、東京地裁に民事再生法の適用を申請。ドン・キホーテを展開するPPIHグループへ事業譲渡 - 店は開いたまま、持ち主だけが替わる - 章扉

Rの文字が左右反対を向いた、あのカラフルな看板のおもちゃ屋が、ドン・キホーテのグループに入る。

日本トイザらスは10月1日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。同じ日に、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、略してPPIHのグループと、事業を丸ごと譲り渡す契約を結んだ。負債はおよそ132億円、債権者は約1,160に上る。おもちゃ量販店の倒産としては過去最大だ。

それでも、店のシャッターは下りない。全国158の「トイザらス」と「ベビーザらス」、そしてネット通販は、いつもどおり営業を続けている。10月30日には、店とネット通販の事業が、PPIHの完全子会社オペレーションシェアードサービスに引き継がれる予定だ。PPIHは、従業員もできる限り全員を引き継ぐとしている。11月からは全店で「どこよりも早いクリスマス企画」が始まる。棚のおもちゃはそのままに、店の持ち主だけが入れ替わる。

民事再生は、会社をたたんでしまう破産とは違う。裁判所の監督を受けながら、事業を続けたまま借金を整理する手続きだ。今回は申し立ての時点で、すでに買い手が決まっていた。店舗、従業員、在庫、ネット通販といった「事業の中身」だけを新しい持ち主に移し、借金は古い会社の側に残す。古い会社は、譲渡で受け取るお金などを元手に、銀行や取引先への返済を進める。

手続き中の仕入れ資金は、メインバンクの三菱UFJ銀行が「DIPファイナンス」と呼ばれる融資で支える。取引先に対しては、裁判所の許可を得たうえで、取引を続けてもらうことを条件に、100万円以下の代金を期日どおり支払う方針だ。クリスマスを目前に、商品の流れを止めないための設計である。

このニュースには、ひとつ大きな謎がある。おもちゃの市場そのものは、過去最高を更新し続けているのだ。日本玩具協会によると、2025年度の国内玩具市場は1兆1,664億円。子どもの数が減り続けるなかで、この5年でおよそ1.4倍に膨らんだ。市場が伸びているのに、最大手の専門店が倒れた。お金の流れる先が、子ども向けの大きな店から、大人の趣味と小さな専門店へと移ったからだ。

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日本トイザらスとはどんな会社か

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郊外の幹線道路沿い、広い駐車場の奥に、倉庫のような大きな建物がある。入り口には大きなショッピングカートが並び、天井近くまで積み上げた棚に、ブロック、人形、ミニカー、ボードゲーム、子ども用の自転車までがぎっしりと詰まっている。マスコットはキリンの「ジェフリー」。これがトイザらスの典型的な姿だ。標準的な店の広さはおよそ2,200平方メートル。テニスコート8面分ほどの広さに、子どもの欲しいものが「何でもある」。

隣には、ベビーカーやチャイルドシート、紙おむつ、肌着をそろえた「ベビーザらス」が並ぶことも多い。出産の準備に始まり、赤ちゃん用品、幼児のおもちゃ、小学生のゲームへ。子どもの成長に合わせて、家族が何年も通い続ける。それがトイザらスの描いた商売だった。

一つの分野の商品を、圧倒的な品ぞろえと安さで売り、町の小さな店を寄せつけない。こうした業態は「カテゴリーキラー」と呼ばれ、トイザらスはその代表格だった。ちなみに「トイザらス」の「ら」だけが平仮名なのは、英語のロゴでRが鏡文字になっているのを日本語で表すためだと、同社は説明している。

今年6月末時点で、店舗は158、従業員はおよそ3,900人いる。しかし売上高は、ピークだった2007年1月期の約1,944億円から、2025年12月期には752億円へと、4割を切る水準まで縮んだ。最終損益は8期連続の赤字。直近の期は、本業のもうけを示す営業損益で約28億円、最終損益で約38億円の赤字だった。

株主は、香港に本拠を置くトイザらス・アジアだ。中国本土、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、タイでトイザらスを運営し、香港のフォン・グループ系の小売会社が筆頭株主として経営に深く関わってきた。日本は、そのアジア事業の中で最も大きな市場の一つだった。

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「黒船」の上陸から35年の歩み

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1991年12月20日、茨城県阿見町。日本1号店「トイザらス荒川沖店」の前には、開店前から1,000人を超える行列ができた。店内にはアメリカサイズのショッピングカートが何百台も並び、商品の4割以上が輸入品だったと、当時の米ボルチモア・サン紙は伝えている。

会社の設立は1989年。米国のトイザらスと日本マクドナルドの合弁だった。当時の日本には、大型店の出店を厳しく抑える大規模小売店舗法、いわゆる大店法があった。地元の商店の同意がなければ、大きな店はなかなか開けない。トイザらスの出店計画は日米の貿易摩擦の焦点になり、日米構造協議の場で、アメリカ政府が規制の緩和を迫った。国内の玩具問屋や町のおもちゃ屋は、ペリー来航になぞらえて「黒船」と恐れた。

翌1992年1月、奈良県橿原市に開いた2号店には、来日中のブッシュ大統領が駆けつけた。一軒のおもちゃ屋の開店に、アメリカの現職大統領が顔を出したのだ。トイザらスは問屋を通さずにメーカーと直接取引し、大量に仕入れて安く売った。日本経済新聞は後に、この上陸を「流通規制に風穴」「価格破壊」と振り返っている。

勢いは続いた。2000年にジャスダック市場に上場し、同じ年に国内100号店を開いた。2002年にはベビー用品の「ベビーザらス」を始め、2007年1月期に売上高が過去最高を記録する。

転機は2010年代に訪れた。2010年に上場を廃止し、2017年4月には香港のトイザらス・アジアのグループに加わった。その年の9月、アメリカの本社が、日本の民事再生や会社更生にあたる連邦破産法11条の適用を申請し、翌年にはアメリカの全店が閉鎖に追い込まれた。それでも日本は、財務的に独立した会社として営業を続けた。2018年11月、日本を含むアジア事業は、アメリカ本社グループの社債を持っていた投資ファンドなどの債権者グループと、フォン・グループ系の小売会社が共同で持つ形に移った。

だが、本業の足元は崩れていた。家電量販店が駅前の大型店でおもちゃ売り場を広げ、ポイント還元で客を集めた。ネット通販は、値段を一瞬で比べられるようにした。そして子どもそのものが減った。トイザらスが上陸した1991年に約122万人だった出生数は、2025年には約67万人。半分近くまで落ち込んでいる。

会社も手をこまぬいていたわけではない。2023年には京都駅前の店を改装し、大人向けの売り場と、大人もくつろげる広場を設けた。2025年3月には東京・お台場に、大人を狙った初の「キダルト専門店」を開いた。キダルトとは、キッドとアダルトを合わせた言葉で、子ども心を持ち続ける大人を指す。今年7月に上野マルイに開いた店は、売り場がわずか約100平方メートルの小さな店だが、開店前に約100人が並び、初日の売上高は計画の3.8倍に達した。方向は間違っていなかった。ただ、それは郊外の標準的な店の20分の1ほどの、ごく小さな成功だった。

経営陣は揺れ続けた。月刊誌FACTAによると、2022年に就任した社長は1年余りで退き、その後を継いだ、スポーツ用品やアパレルの日本法人トップを歴任した「プロ経営者」も、今年1月に辞任した。後任に就いたのは、2002年から2014年までトイザらス・アジアの最高経営責任者を務めたピーター・シャッツ氏だ。親会社の中枢にいた人物が、自ら日本の社長に乗り込んだ。

その後、危険を知らせる信号が相次いだ。帝国データバンクによると、一部の金融機関が債権譲渡登記を、親会社が動産譲渡登記を設定した。どちらも、お金を貸した側が、売上代金や在庫といった資産を押さえにかかるときに使う手続きだ。東京商工リサーチは、売上のうち現金ですぐに入るのは3割にとどまり、残りはクレジット会社や電子決済会社を経由して後から入金される形になっていたと指摘する。7月30日付で、三菱UFJ銀行が譲渡登記を設定した。FACTAは、一部の仕入れ先が取引の条件として保証金を求め始めたとも伝えている。

そして10月1日、日本トイザらスは自力での再建を断念した。会社は、少子化を踏まえた事業転換の遅れと、ネット通販企業などとの激しい価格競争で売上が落ち込んだと説明している。

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業界の状況と競合:市場は過去最高、伸びたのは「大人」と「小さな専門店」

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いま日本で一番売れているおもちゃは、人形でもミニカーでもない。トレーディングカードだ。日本玩具協会によると、2025年度のカードゲームとトレーディングカードの市場は3,384億円。おもちゃ市場全体のおよそ3割を占め、8年続けて伸びている。プラモデルやフィギュアなどのホビーもおよそ1,960億円に伸び、ぬいぐるみは1年で4割近く増えた。一方で、テレビアニメや映画のキャラクター玩具は1割以上減った。

伸びているのは、大人が自分のために買うおもちゃだ。15歳未満の子どもは、今年4月時点で1,329万人。45年連続で減っている。それでも市場が膨らむのは、キダルトがお金を使っているからだ。明治安田総合研究所が総務省の家計調査を分析したところ、2024年に一人暮らしの働く世帯がおもちゃに使ったお金は、年間およそ1万4,500円。10年前の約3.5倍で、子どものいる世帯を含む二人以上の世帯を上回った。

世界でも同じ流れが進む。米調査会社サーカナによると、2025年の世界のおもちゃ市場は1,230億ドル(約19兆円)で、前の年から8%伸びた。15歳以上に向けた売上は、全体のほぼ2割を占める。

問題は、その大人たちがどこでおもちゃを買っているかだ。帝国データバンクによると、2025年度の全国の玩具店の市場は7,620億円と過去最高だった。しかし中身を分けてみると、2020年度からの5年間で、カプセルトイの専門店の売上はおよそ3.9倍、トレーディングカードの専門店はおよそ3.1倍に増えた。昔ながらのおもちゃ屋は約1.5倍にとどまる。前の年からの増加分の7割超を、この二つの専門店が稼ぎ出した。帝国データバンクは、これからのおもちゃ屋には「何でもある店」から「行く理由のある店」への転換が求められると指摘する。

トイザらスを取り囲んだ競争相手は、一つではない。駅前に大型店を構える家電量販店は、ゲーム機と一緒におもちゃを売り、ポイント還元で客を引きつけた。アマゾンなどのネット通販は、重いおもちゃを家まで届け、値段の比較を一瞬で済ませた。イオンのような大型スーパーやショッピングモールにも売り場がある。人気の新商品はメーカーの直販でも売られるようになり、郊外の大型店は売れ筋の確保にも苦しんだ。ベビー用品では、ショッピングモールに強いアカチャンホンポや、全国に1,000店を超える西松屋がいる。アカチャンホンポは2025年にセブン&アイ・ホールディングスの手を離れ、米投資ファンドのベインキャピタルが過半を握る会社の傘下で、黒字を保っている。

韓国の経済紙ファイナンシャル・ニュースは、皮肉な構図を指摘している。トイザらスがこじ開けた大型店の規制緩和が、のちに家電量販店やイオンのような巨大な競争相手を育て、トイザらス自身の市場を削っていったというのだ。

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ドンキはトイザらスをどう作り変えるのか

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買い手のPPIHは、ディスカウントストアのドン・キホーテ、大型店のMEGAドン・キホーテ、総合スーパーのアピタやピアゴを抱える小売大手だ。2026年6月期の売上高は2兆4,452億円、営業利益は1,748億円と、どちらも過去最高を更新した。今年7月には首都圏のスーパー、Olympicグループを完全子会社にするなど、食品の強化を進めてきた。

それでもドンキの本来の強みは、食品以外の雑貨や日用品にある。PPIHは、ある分野で圧倒的な存在感をつくり、その分野そのものが客を呼び込む「マグネット」になる、という考え方を掲げる。「〇〇といえばドンキ」の〇〇に、おもちゃを加えようというわけだ。トイザらスを加えると、グループのおもちゃの売上高はおよそ1,500億円になる。最高マーケティング責任者を務める森谷健史常務執行役員は会見で、「リアル店舗の玩具市場において、圧倒的ナンバーワンのポジションを獲得することができる」と語った。仕入れの規模が大きくなれば、人気商品を安定して確保でき、メーカーとの条件交渉も有利になる。限定商品や先行販売、自社企画の商品も増やす。

もう一つの狙いは客層だ。森屋秀樹社長は、日本トイザらスが持つ「乳幼児から子供、ファミリー層に至る幅広い層の顧客接点」が加わることで、新しい客層の獲得と、ライフタイムバリュー、つまり一人の客が生涯にもたらす売上の拡大につながると説明した。ドンキは学生や若い大人、訪日客との接点が多い一方、小さな子どもを連れた家族は手薄だった。日本経済新聞は、PPIHがドンキに苦手意識を持つ約3,000万人に照準を合わせ、トイザらスでイメージの刷新を狙うと報じている。たとえば、ベビーカーを買いに来た夫婦が、数年後にはおもちゃを買い、子どもが中学生になればトレカを買いに来る。その間、親はドンキで日用品を買う。生まれる前から大人になるまでの買い物を、グループの中で受け止める構想だ。

店そのものも変える。合言葉は「買う場所」から「遊ぶ場所」へ。売り場面積の約1割を「遊び場」に充て、トレーディングカードの対戦スペース、オリジナル商品のカプセルトイやクレーンゲーム、新商品を試せるコーナー、キャラクターと写真を撮れるイベント、期間限定のポップアップストアを置いていく。おもちゃ屋を、子どもから大人までが集まる「アソビ業態」に作り替えるという。品ぞろえでは、サンリオなどのキャラクターに加え、ガンプラやミニカーのような大人も楽しめる商品、さらに駄菓子や化粧品のような手頃な関連商品を広げて、来店客を増やす。

鈴木康介COOは、ドンキでは家電や雑貨を客に実際に手に取って使ってもらうと、売上が2倍、3倍に伸びる手応えがあり、おもちゃでも通用するとの考えを示した。訪日客の間で日本のおもちゃやキャラクター商品の人気が高まっていることも、追い風とみている。

PPIHは引き継ぎにあたって、三つの約束を掲げた。店を続けることで雇用を守ること。地域に欠かせない「新しい遊び場」になること。そして子どもから大人まで、「幸せなトイザらス体験」を届けることだ。

このやり方には前例がある。PPIHは2007年、会社更生法の手続きを経て再建途上にあった総合スーパーの長崎屋を傘下に収め、店を大型のMEGAドン・キホーテなどに作り替えていった。のちに完全子会社にしたユニーでは、2018年にドンキとの共同店舗に転換した最初の6店で、売上高が9割増えた。日経ビジネスは、PPIHを「赤字再生工場」と呼んでいる。ただ今回は、看板をドンキに掛け替えるのではない。トイザらスという専門店の名前を当面残したまま、中身をドンキ流に変えていくところが、これまでと違う。

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投資家の目線:約1,400億円の値札から「100億円規模」へ

日本トイザらス、東京地裁に民事再生法の適用を申請。ドン・キホーテを展開するPPIHグループへ事業譲渡 - 投資家の目線:約1,400億円の値札から「100億円規模」へ - 章扉

8年前、日本を含むトイザらスのアジア事業全体には、約9億ドル、日本円でおよそ1,400億円の値が付いていた。アメリカ本社の破綻処理で、アジア事業が債権者グループとフォン・グループ系の会社に引き取られたときの評価額だ。当時、日本はその中で最大級の市場だった。

今回、日本事業の譲渡額は公表されていない。ただ日本経済新聞や読売新聞は、100億円規模と報じている。年間売上高の1割強の値段だ。アジア事業を手にした投資家にとって、日本は価値を生む資産から、手放すべき重荷へと変わっていた。トイザらス・アジアの共同CEO代行の2人は、今回の取引によって「アジア全域の大きな機会に一段と集中できる」とコメントしている。

買い手のPPIHにとっては、小さな賭けだ。PPIHの時価総額はおよそ2兆2,000億円。100億円は、その200分の1ほどにすぎない。その金額で、全国の主要な商圏にある158の店舗網、おもちゃとベビー用品を知り尽くした約3,900人の従業員、メーカーとの取引関係、ネット通販の仕組みを手に入れる。同じ数の大型店を一から開こうとすれば、用地を探すところから何年もかかる。

しかも民事再生の中での事業譲渡なので、132億円の借金は古い会社に残る。帳簿に載っていない債務を抱え込む心配も小さい。PPIHは、閉店が決まっていた店を除く全店の引き継ぎを目指して、各店の家主に協力を求めていく。ベンチャー投資の言葉で言えば、損失の上限がおおむね見えていて、再生に成功すれば大きく化ける「オプション」を、安く買った形だ。

もちろん、買収額だけでは済まない。日本投資機構のアナリスト、大畠典仁氏は、成否を分けるのは店の数ではなく、赤字事業の改善と取得の条件だとみる。改装やシステムの統合、年末商戦に向けた在庫の積み増しにも費用がかかる。売上を取り戻すための値下げが、かえって利益を削る恐れもあると指摘する。

株式市場の反応は冷静だ。PPIHの株価は、8月18日の決算発表で今期の営業利益の伸びが2.4%にとどまる見通しを示したことが嫌気され、翌日に約11%下落した。その後も下げ基調が続き、トイザらスの取得を正式に発表した翌日の10月2日には、取引時間中に679円と年初来安値をつけた。3月の高値からは3割以上低い。市場の目は、100億円規模の買い物よりも、売上高2兆円を超える本業で利益の伸びが鈍ることに向いている。

キダルト市場には、別の種類のリスクもある。ヒットに左右されやすいことだ。中国のポップマートは、人形キャラクター「ラブブ」のブームで、2025年の売上高が前の年の約2.8倍の371億元(約8,700億円)に膨らんだ。それでも今年3月の決算発表の後、ラブブ頼みが続くのかという懸念から、株価は1日で2割以上下落した。大人を狙うおもちゃ売り場は、熱狂と反動の波の上に立つことになる。

事業面で決まっていないことも残る。まずは「トイザらス」という名前だ。アメリカ本社の破綻後、世界のブランドの権利は本社から切り離され、のちに米国のブランド管理会社WHPグローバルの傘下に入った。アジアの事業会社は、その使用権を得て看板を掲げてきた。PPIHは店の名前を当面そのまま残す方針を示したが、ロイターによれば屋号の継続使用は今後の協議事項で、日経ビジネスは、ブランドを使い続けられるかどうかは不透明だと指摘する。次に、各店の家主の同意。そして人だ。FACTAは、退職者が相次いでいるとの情報も伝えていた。

報道の切り口も分かれた。最初に報じたのは日本経済新聞で、9月29日に日本からの撤退と、100億円規模の取得額を伝えた。共同通信は「150店舗と雇用維持」を見出しに掲げ、帝国データバンクと東京商工リサーチは、おもちゃ量販店で過去最大の倒産として、破綻に至る兆候を掘り下げた。明治大学ビジネススクールの白鳥和生教授はJBpressで、「黒船」と呼ばれた巨人の栄枯盛衰としてこの出来事を描いた。明治安田総合研究所の木次浩二経済調査部長は読売新聞に、「立地に応じて売り場を刷新しながら、新たな消費者層を取り込めるかが成否のカギだ」と語っている。

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今後の焦点:10月30日、クリスマス商戦、そして2027年

日本トイザらス、東京地裁に民事再生法の適用を申請。ドン・キホーテを展開するPPIHグループへ事業譲渡 - 今後の焦点:10月30日、クリスマス商戦、そして2027年 - 章扉

最初の山場は10月30日だ。この日に事業譲渡を実行するには、裁判所が再生手続きの開始を決めたうえで、譲渡を許可する必要がある。民事再生法は、許可の前に、取引先などの債権者と、従業員側の意見を聴くよう定めている。

譲渡が済めば、すぐにクリスマス商戦が来る。おもちゃ屋にとって一年で最も大きな稼ぎどきだ。PPIHは11月から全店でクリスマス企画を始め、子どもだけでなく、大人の「お願い」もかなえる企画にするとしている。ドンキ流の売り場づくりが、最初に試される場面になる。

数字で答えが出るのは、その後だ。PPIHは11月12日に、7月から9月の決算を発表する。この時点ではトイザらスはまだ業績に入らないが、経営陣が取得の狙いと費用感をどこまで語るかが注目点になる。トイザらスがグループの業績に与える影響は、来年2月ごろの中間決算の発表で開示する予定だ。

日本経済新聞によると、本格的な店の改装は2027年から始まる。大人向けの商品を増やし、売り場の1割を遊び場に変えていく。並行して、衣料品売り場を縮めているアピタやMEGAドン・キホーテの空いた区画に、トイザらスの売り場を入れていく。PPIHが出店の余地があるとみる大型店は、110店を超える。屋号を使い続けられるかどうかの結論も、この先に出てくる。

借金を抱えたまま残る古い日本トイザらスは、譲渡で受け取るお金などをもとに、債権者への返済計画をまとめていく。香港のトイザらス・アジアは、中国本土や東南アジアの事業に集中する。

35年前、茨城の郊外にできた行列は、日本の流通の規制を揺さぶった。その店がいま、日本生まれのディスカウントストアの手で、子どもと大人が「遊びに来る場所」へと作り替えられようとしている。最初の答えは、今年のクリスマスの売り場に出る。


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