そもそも「アバター」とは何か — メタバースの身体を具体例で理解する

経産省、日本発のアバターの国際規格、ガイドライン、用語定義のISO/IEC 24216-1:2026発行を発表。日本のアニメや2.5次元文化を後押し - そもそも「アバター」とは何か — メタバースの身体を具体例で理解する - 章扉

議論に入る前に、まず「アバター」という言葉が指すものを具体例で押さえておきたい。アバターとは、サイバー空間のなかで利用者自身を表す「もう一つの身体」である。今回発行された国際規格はこれを端的に「利用者を表す図形オブジェクト(graphical object)」と定義している。

具体例を挙げれば、その広がりが一気に見えてくる。ゲームで自分好みの顔や髪型を作り込む「キャラメイク」(『あつまれ どうぶつの森』の住民や『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクター作成)は、最も身近なアバターだ。スマートフォンに目を向ければ、アップルのMemoji(ミー文字)やニンテンドーのMiiも同じ系譜にある。さらにVTuberとして活動する配信者は、リアルタイムで動く3Dや2Dのアバターを介して数百万人のファンと接している。ホロライブやにじさんじといった大手事務所のタレントはもちろん、後述するバーチャル美少女ねむ氏もその一人だ。

ソーシャルVRの世界では、アバターの役割はさらに本質的になる。VRChatやクラスター、GREE系のREALITYといったプラットフォームでは、ユーザーはアバターの姿でイベントに参加し、他者と会話し、経済活動まで行う。企業のバーチャル展示会やバーチャル接客、医療・教育の遠隔トレーニングでも、人はアバターをまとって空間に「入る」。メタ(旧フェイスブック)が研究する超高精細な「Codec Avatars」から、記号的にデフォルメされたアニメ調キャラクターまで、その表現の幅は極めて広い。

これほど社会に浸透していながら、実は「アバターとは何か」「どんな種類があり、どこに配慮すべきか」を語るための共通の物差しは、これまで世界のどこにも存在しなかった。各社・各プラットフォームがそれぞれの言葉で語り、比較も議論も噛み合わない――その空白を埋めるために作られたのが、今回の国際規格である。

ISO/IEC 24216-1:2026とは何か — 「共通言語」としての国際規格

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経済産業省が2026年6月29日に発行を公表した規格の正式名称は「ISO/IEC 24216-1:2026 Information technology — User interface requirements and guidelines on avatars — Part 1: General(情報技術-アバターに関するユーザーインターフェース要求事項及びガイドライン-第1部:総則)」。ISOとIECの合同技術委員会JTC 1の傘下、ユーザーインターフェースを扱う専門委員会「SC 35」で審議され、2026年5月に国際規格として発行された。

この規格が定めるのは、大きく五つの事項である。すなわち、(1)アバターの定義、(2)アバターのデザインおよび機能の分類、(3)身体リアリティの分類と評価、(4)倫理的・社会的配慮事項、(5)アバター利用時の配慮事項だ。外観や視点、身体追跡・表情表現・非言語コミュニケーションといった機能を共通の分類体系で整理し、文化的背景やジェンダー、多様性への配慮、利用者への説明責任までを一つの枠組みに収めている。

ここで最も誤解されやすく、同時に最も重要な点を強調しておく必要がある。この規格は3Dモデルのファイル形式を統一するものではない。検討委員を務めたバーチャル美少女ねむ氏がX(旧ツイッター)上で繰り返し説明したように、本規格は「ファイルフォーマットの話ではなくて、もっと広く、アバターを利用した体験全般」を対象とする。技術実装の規格ではなく、アバターについて「語れるようにする」ための概念と語彙のレイヤーを整える営みなのだ。分析メディアのinnovatopiaはこれを「メタバースの身体を定義した初の包括規格」と表現している。そして今回の「Part 1: General(総則)」はあくまでシリーズの第一弾であり、委員会の議論は継続し、規格は今後さらに拡張されていく。

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VRM、glTF、MPEG-I — アバター標準の「三層構造」を解きほぐす

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では、VTuberやメタバースで実際に使われるVRMのような「ファイルフォーマット」と、今回の規格はどう関係するのか。これを理解する鍵は、アバターをめぐる標準が「三つの層」に分かれていると捉えることにある。

一番下の実装・データ形式の層には、複数の規格がすでに競い合っている。まず土台となるのが、クロノス・グループ(Khronos Group)が策定した3D表現の共通形式「glTF 2.0」で、これは国際規格ISO/IEC 12113:2022としてすでに標準化されている。日本発のVRMは、このglTFのバイナリ形式(glb)をベースに、人型アバター特有の情報――ヒューマノイドボーンの構造、表情、そして利用条件を示すライセンス情報など、FBXや汎用glTFでは標準化されていない要素――を扱えるように拡張したファイル形式だ。バーチャルキャストなどが立ち上げたVRMコンソーシアムが推進し、2024年10月にはglTFの本家クロノス・グループとの連携を発表、VRMをKhronosの公式拡張(Ratified Extension)として位置づけ、国際規格として認知される道を切り拓こうとしている。さらに、動画圧縮規格MPEGを手がけるグループは、アバターの資産形式とアニメーション配信形式を定める「Avatar Representation Format(ARF)」をISO/IEC 23090-39として策定中で、2025年12月8日にDIS(国際規格原案)の投票段階に入った。これはアバターのベース形式とアニメーションのストリーム形式を規定し、複数のアプリやメタバース間でアバターを持ち運べるようにする、いわば国際版の相互運用フォーマットである。加えて、人型アニメーションを規定する古参のISO/IEC 19774(H-Anim)も同じ層に位置する。

これらに対して、今回のISO/IEC 24216-1はひとつ上の「概念・語彙」の層を担う。VRMやARFが「アバターをどう記述し、どう持ち運ぶか」という実装を扱うのに対し、24216-1は「そもそもアバターとは何か、どう分類され、どんな倫理的配慮が必要か」を定める。辞書と文法にあたるのが24216で、ファイル形式にあたるのがVRMやglTF、ARFだと考えると分かりやすい。両者は競合ではなく補完関係にあり、規格はフォーマットに依存しない中立的な位置に立つ。重要なのは、VRMコンソーシアムのメンバー自身が今回の検討委員会に加わっている点だ。フォーマットを作る当事者たちが、その上位にある共通言語の策定にも関与したことで、日本のアバター標準は実装層と概念層の両面から国際的な足場を築きつつある。

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誰が作ったのか — 産総研、国内メタバース事業者、そしてエバンジェリスト

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この規格を日本発たらしめたのは、産学官を横断する検討体制だった。旗振り役を務めたのは産業技術総合研究所(産総研)の人間社会拡張研究部門で、同部門が事務局を担う「拡張体験デザイン協会(DAAX)」のなかに「アバター国際標準化の国内検討委員会」が2022年から設けられ、ここで規格原案が練られた。ISO/IEC JTC 1/SC 35への提案とプロジェクトエディタ(規格文書の取りまとめ役)は産総研の大山潤爾主任研究員が担い、慶應義塾大学の杉本麻樹教授、京都先端科学大学の原田佑規准教授ら学識者が学術的な裏付けを与えた。

注目すべきは、その委員会に名を連ねた顔ぶれである。DAAXの標準化活動には、国内最大級のメタバースプラットフォームを運営するクラスター、通信大手のKDDI、サイバーエージェント、VRMコンソーシアムとバーチャルキャスト、百貨店の三越伊勢丹、広告最大手の博報堂DYホールディングス、業界団体のMetaverse Japan、そして東京大学・筑波大学・慶應義塾大学・京都先端科学大学・建築設計事務所のノイズといった多彩な組織が参加した。国内の主要メタバース事業者、公的研究機関、大学、コンテンツ・広告・小売の実務家が一堂に会し、それぞれの現場感覚を規格に持ち込んだのである。

そして象徴的だったのが、「メタバース文化エバンジェリスト」を名乗るバーチャル美少女ねむ氏の参加だ。同氏は2017年にデビューした世界最古の個人系VTuberの一人で、著書『メタバース進化論』でITエンジニア本大賞2023を受賞、2025年には「Forbes JAPAN NEXT100」にも選ばれた論客である。委員会には「『中の人』としてではなく、アバターとボイスチェンジャーを利用して、一人のVTuber・メタバース住人である仮想人格『バーチャル美少女ねむ』として」参加したと明かしている。現実の生身の人間ではなく、アバターそのものが国際規格の議論に加わったこの構図は、規格が守ろうとしている価値観――「人は現実の身体を超えて、自由な存在として生きられる」という感覚――を体現していた。

なぜ「日本発」に意味があるのか — アニメ・2.5次元文化と身体所有感

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規格を主導したのが日本であることには、単なる国威発揚を超えた戦略的な意味がある。バーチャル美少女ねむ氏は、アニメや漫画、ゲーム、VTuberといった日本の文化が「人は現実の身体を超えて、自由な存在として生きられる」という感覚を長年にわたって世界へ提示してきた、と指摘する。そのうえで、海外ではアバターというと現実の自分を精密に複製するフォトリアル志向に主眼が置かれがちで、日本では当たり前のアニメ的なデフォルメや漫画記号的な表現がしばしば見過ごされてきた、と問題提起する。国際規格のなかにアニメ調アバターの表現を正当な選択肢として位置づけることこそ、日本が規格化を主導する意義だという主張だ。

ここで、タイトルにある「2.5次元文化」との接続が見えてくる。2.5次元とは、2次元のアニメ・漫画・ゲームのキャラクターを、3次元の身体性をもって現実世界に立ち上げる文化――2.5次元ミュージカルやVTuberがその代表格――を指す。アバターとは、まさにこの「2次元的なキャラクターに3次元的な身体を与える」営みそのものであり、VTuberであるねむ氏の参加はその象徴だった。日本が世界に誇るキャラクター文化と、それを身体化する技術との結節点にアバターがあるからこそ、この規格は「アニメや2.5次元文化を後押しする」ものと位置づけられる。

この文化的な主張を、産総研は学術的なエビデンスで補強した。規格が採り入れた「身体所有感(body ownership、アバターを自分の身体だと感じる感覚)」や「身体リアリティ」という概念は、産総研が蓄積してきた人間拡張の研究知見に基づく。フォトリアルであることが必ずしも身体所有感を高めるわけではなく、デフォルメされたアニメ調アバターにも固有の身体性が宿るという知見は、日本のデフォルメ文化が育んだ身体観を国際標準の土俵に乗せる裏付けとなった。産総研は本規格の意義として、種類や機能を説明する共通基準がなかった状況を改善して利用者保護と体験品質を高めること、そして日本が強みを持つアニメ調アバターなど日本文化の国際的理解と市場拡大を促すことを挙げている。文化を情緒ではなく規格という社会実装の回路に乗せた点に、この標準の新しさがある。

各紙・各サイトはどう報じたか

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今回の発表は、いわゆる大手経済紙が大きく扱う派手なM&Aニュースとは性格を異にする、地味だが構造的に重要な標準化の話題である。そのため報道の主役は、政府・研究機関の一次発表と、XR・メタバースに強い専門メディア、そして当事者である実務家の発信だった。

一次情報としては、経済産業省の発表ページと産総研のプレスリリースが事実関係を淡々と伝えた。専門メディアではMogura VR Newsが「日本発のアバター国際ISO規格が発行 アバター全般が対象に」と報じ、規格が特定用途ではなくアバター全般をカバーする点を強調した。より踏み込んだ分析を展開したのがinnovatopiaで、この規格の本質を「ファイルフォーマットの話ではなく、概念の整理だ」と読み解き、身体所有感や文化・ジェンダーへの配慮といった測定の難しい領域に公式な語彙を与えることの社会的意義を論じた。同メディアはさらに、AIガバナンスのISO/IEC規格が欧州規制の基盤となった前例を引きながら、「問題が起きたときに参照できる言葉が、すでに用意されていた」という形で規格の価値が後から効いてくる可能性を指摘している。

当事者の発信も活発だった。委員を務めたねむ氏はnoteとプレスリリース(配信は所属のブイノス)で規格化の意義を詳述し、別の実務家(note投稿者の玉兎氏)は「アバター国際標準は文化を社会実装へつなぐ規格だった」と評した。投資家にとって示唆的なのは、innovatopiaが提示した見立て――ISO 9001が実質的な品質保証というより「信頼のシグナル」として機能しているのと同様に、この規格も「ISO準拠」という差別化ラベルとして消費されうる――という指摘だ。共通言語ができることで、自社サービスを「ISO規格準拠」と打ち出せるようになる。標準は、コンプライアンスであると同時にマーケティングの資産にもなる。

投資家の視点 — アバター経済圏の実像と資金の流れ

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規格そのものは直接売上を生まないが、その背後には巨大で成長著しいアバター経済圏が広がっている。ここを押さえないと、なぜ産総研から百貨店まで多様なプレイヤーが標準化に労力を割いたのかは見えてこない。

市場規模の全体像はこうだ。メタバース市場の世界推計は調査会社によって大きく割れるものの、Fortune Business Insightsなどは2026年の世界市場を2,000億ドル(約30兆円)超と試算する。国内では、日本経済新聞が報じた民間予測が2026年度に1兆円超えを見込む。より地に足のついた数字として参照できるのが、2.5次元経済圏の中核であるVTuber市場だ。矢野経済研究所によれば、国内VTuber市場は2023年度に800億円、2025年度には前年度比120%の1,260億円に達する見通しで、内訳はグッズ販売が過半を占め、ライブストリーミング、企業タイアップやIPライセンスのBtoB、イベントが続く。世界のVTuber市場も2025年の約29億ドル(約4,300億円)から2026年に約33億ドル(約5,000億円)へと二桁成長が続く。アバターは、この経済圏の入口に立つインターフェースそのものである。

グローバルなアバター専業スタートアップには、すでに大型のマネーが流れ込んできた。米国のGeniesは、著名人やクリエイターのデジタルアイデンティティを軸に評価額10億ドル(約1,500億円)に到達し、累計で約2億9,000万ドル(約435億円)を調達している。出資元にはシルバーレイク(Silver Lake)が主導投資家として名を連ね、ニュー・エンタープライズ・アソシエイツ(NEA)、元ディズニーCEOのボブ・アイガー氏、ユニバーサル ミュージック グループらが加わる。エストニア発のReady Player Meは、1枚の自撮りから数千のアプリ・ゲームで使える3Dアバターを生成するクロスプラットフォーム基盤を築き、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)などから累計7,200万ドル(約108億円)を調達したのち、2025年12月にネットフリックスに買収された(買収額は非開示)。ネットフリックスはこの技術を、加入者が自分のアイデンティティを複数のゲーム間で持ち運べる仕組みに活用する意向を示している。単発のアバター生成ツールではなく、プラットフォームをまたいで持続する「横断的な本人性」に価値が移りつつあることを、この買収は象徴している。

国内に目を戻すと、検討委員会にも参加したクラスターが2023年5月にシリーズDで52億円(累計66億円)を調達し、スパークス・アセット・マネジメントが主導、SBIインベストメントやオリックス、KDDI、Global Brain、GREE系のWright Flyer Live Entertainmentらが名を連ねた。KDDIやサイバーエージェント、博報堂DY、三越伊勢丹といった事業会社が標準化に関与している事実は、彼らがアバターを一過性のブームではなく、通信・広告・小売の次のインターフェースと見なしていることの裏返しでもある。

こうした資金の流れのなかに、今回の規格を置き直すとその戦略的意味が浮かび上がる。ファイル形式の主導権はglTFのクロノス・グループやMPEGといった欧米中心の枠組みが握りつつある一方、日本は「アバターとは何か」という定義・分類・倫理の概念層を先取りした。実装層で覇権を取れずとも、その上位にある共通言語と文化的正統性を押さえにいく――これは、レンダリングやファイル形式では米国勢に、しかしキャラクター文化と身体観では日本に、という棲み分けを国際標準の地図の上に描く動きだと読める。投資家にとって、この規格は「日本がアバターの文化・倫理レイヤーのオーナーシップを取りにきた」というシグナルであり、次に資金が向かう先――クロスプラットフォームの本人性、AI生成アバター、アバターIPのライセンス化、そして2.5次元IPの海外収益化――を占う羅針盤でもある。

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今後の展望 — 次に「計測」される動き

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では、いつ頃どのような新たな動きが観測されるのか。時間軸で整理すると、いくつかの明確な観測点が見えてくる。

第一に、ISO/IEC 24216シリーズ自体の拡張だ。今回はPart 1(総則)にすぎず、委員会は議論を継続すると明言している。より具体的な分類基準や評価手法、個別領域への適用を扱うPart 2以降の検討が、2026年後半から2027年にかけて進むとみられる。第二に、実装層の規格の確定である。MPEGのアバター表現形式ISO/IEC 23090-39は2025年12月にDIS段階へ入っており、正式な国際規格(IS)としての発行が近づく。これがVRMと並ぶ国際的なファイル形式の軸として立ち上がるか、あるいはVRMがクロノスの公式拡張を経てISO/IEC規格として認知される道を先に進むかは、相互運用の主導権を左右する。

第三に、業界横断の相互運用フレームワークの動向だ。クロノス・グループが主導し、メタ、エヌビディア、エピック・ゲームズ、ユニティ、マイクロソフトらが参加するメタバース標準化フォーラム(Metaverse Standards Forum)には、キャラクター/アバターの相互運用ワーキンググループが置かれ、プラットフォーム間でアバターを翻訳・移送する枠組みの整備が進む。ネットフリックスによるReady Player Me買収が示したように、「アバターの持ち運び」は今後の競争の主戦場であり、24216-1が与えた共通語彙はその交渉の土台になりうる。

そして最終的に「計測」されるべきは、この規格がどれだけ現実に参照されるかである。学術論文がアバターの定義の出典として24216を引き、行政や自治体のメタバース関連調達文書が規格を要件に挙げ、事業者が自社サービスを「ISO 24216準拠」と謳い始める――こうした引用と参照の積み重ねが、規格の実効性を測る指標となる。さらに各国の規制やプラットフォームの利用規約がアバターの倫理的配慮を問われる局面が来たとき、「すでに体系的な語彙を用意していた文書」として日本発の規格が参照されるなら、それこそが最大の成果となる。日本のアニメ・2.5次元文化が育んだ身体観を国際標準の言葉に翻訳したこの一歩が、コンテンツの海外展開と産業競争力にどこまで効いてくるか。その答えは、これからの数年をかけて静かに、しかし確実に計測されていく。


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