キーワード: OpenAI, ソフトバンクG, ARM, IPO, シリコンバレーVC, Anthropic, Sarah Friar, 孫正義
4月28日に何が起きたか — 数字で見る暴落の規模

ソフトバンクグループ(東証9984)の株価は4月28日の東京市場で取引時間を通じて売り込まれ、前日比 9.86%安の5,268円 で引けた。Bloomberg Intelligence系の集計でも「2025年11月以来およそ6か月ぶりの下落率」と評価された。日経225の採用銘柄では最も寄与度の大きい下げ要因となり、ソフトバンク子会社のArm Holdings(NASDAQ: ARM)も前日の米国時間に急落しており、ts2.tech・FX Leaders・Benzinga等が下落幅をおよそ6〜8%(時価で6.3%、終盤近くで8%との集計あり)と伝えている。
連れ安したのはOpenAIに紐づくクラウド・半導体銘柄である。WSJの報道直後、Oracleはおよそ4〜7%安、CoreWeaveは5〜7%安、Nvidia・AMDも1.6〜4%程度の下げを記録したとCNBC、Bloomberg、Sherwood News、Investing.comが伝えており、媒体・時間帯で水準にぶれがあるが、いずれも「AIキャペックスのバリューチェーン全体が同時に売られた」という構図は一致している。Bloomberg IntelligenceのアナリストAnurag Rana氏は同日、「収益とユーザーの目標未達はAIインフラ・エコシステム全体に波及し、なかでもOracleが最も脆弱になる」とコメントした。
引き金となった報道
引き金は、WSJが米東部時間4月27日深夜に出した独自取材記事である。Sherwood News、Reuters、CNBC、Fortuneが追随報道で内容を要約しているところを総合すると、要点は次の通りに整理される。第一に、OpenAIは2025年末までにChatGPTの週間アクティブユーザーを10億人に到達させるという社内目標を達成できなかった。第二に、ChatGPT単体の年次売上目標も未達となり、終盤にGoogle Geminiが消費者市場で急伸したことが影響した。第三に、2026年に入ってからは複数の月次売上目標を逃しており、コーディング・エンタープライズ領域でAnthropicに継続的に競り負けている。
最も市場が反応したのは、OpenAI最高財務責任者(CFO)であるSarah Friar氏の社内発言とされる部分である。WSJおよびそれを引いたReuters・CNBC・The Information・Inc.は、「収益成長が加速しなければ将来のコンピュート契約の支払いに困難が生じる可能性がある」とFriar氏が同僚に警告し、ボードが現在コンピュート契約を以前より厳しく精査していると報じている。OpenAIは即座に反応し、広報担当のSteve Sharpe氏が「prime clickbait(典型的な釣り見出し)」と一蹴。CEOのSam Altman氏とFriar氏は連名で「コンピュート購入については完全に整合している(totally aligned)」とする声明を出した。ただしThe Next Webが指摘するように、この声明は「報じられた個別の数値・事実への反論ではなく、コミュニケーション戦略上のメッセージング」であり、未達そのものを否定したものではない点に留意が必要である。Fortune・The Information・WinBuzzer等によれば、Friar氏は支出規律と2026年内IPOの見送りを社内で主張する一方、Altman氏は約6,000億ドル(約90兆円)規模の長期コンピュート確保と上場前倒しを譲らず、両者の対立は支出規模・上場時期の双方に及んでいるとされ、一部報道はFriar氏が投資家ミーティングから外されたとまで伝えている。
なお、ソフトバンクGの株価はこの未達報道に至る前から既に脆弱な地合いを抱えていた。S&Pグローバル・レーティングは3月3日、同社の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げ、追加300億ドル(約4.5兆円)のOpenAI出資が流動性と投資資産の質を悪化させると警告した。さらに4月23日にはBloombergが、ソフトバンクGがOpenAI株を担保にした100億ドル(約1.5兆円)規模のマージン・ローン(金利SOFR+425bp相当、年率約7.88%)を金融機関と協議中と報じている。OpenAIの位置づけが孫正義氏のAI戦略の中核に据えられる一方、レバレッジ依存の深さに対する市場の警戒感はWSJ報道の前から既に積み上がっており、4月28日の暴落はその不安が一気に火を噴いた格好である。
ソフトバンクの「OpenAI集中投資」構造

ソフトバンクの2月27日付プレスリリースに基づくと、同社はSoftBank Vision Fund 2(SVF2)を経由して総額300億ドル(約4.5兆円)の追加投資にコミットしており、これを4月1日・7月1日・10月1日の各100億ドル(約1.5兆円)三分割で実行する設計を取っている。これによりソフトバンクのOpenAIに対する累計投資額は 646億ドル(約9.7兆円) に達し、持分比率は約13%になる見込みだ。投資はブリッジ・ローンと既存資産の活用で当面繋ぎ、TechCrunchの報道によれば400億ドル(約6兆円)規模の融資契約も組成された。さらに4月28日時点でBloombergは、OpenAI持分を担保にした100億ドル(約1.5兆円)のマージン・ローンを検討中と伝えた。
この構造は2つの意味で「ピュアプレイ化」を進めた。第一に、Vision Fundの含み益の主因がOpenAI評価益にほぼ一極集中している。ソフトバンクの2026年2月12日Q3 FY2025決算では、Vision Fund部門が四半期で42億ドル(約6,300億円)の評価益を計上し、その大半をOpenAIが押し上げたと同社CFOの後藤芳光氏が説明していた。第二に、Arm(保有比率87.1%)と合わせると、ソフトバンクの簿価・NAV(純資産価値)は事実上、OpenAIとArmという2銘柄でほぼ説明できる構造になっている。Nikkei Asiaは4月28日の関連記事で「投資家はソフトバンクの巨大なOpenAI賭け(big OpenAI bet)に懸念を強めている」と表現し、Arm単体の不調も同時に効いて株価を二重に押し下げたと分析した。
シリコンバレーVCの受け止め — 表向きの強気と、水面下の選別
現時点で、a16z(Andreessen Horowitz)やSequoia Capital、Founders Fundといった主要VCがOpenAI個別案件に関する公式コメントを出した形跡は確認できない。ただし、4月時点で観測可能な行動と発言を辿ると、表向きの強気と水面下の選別という二層構造が浮かび上がる。
表向きには、Sequoia Capitalは4月にAI領域に重点配分する70億ドル(約1.05兆円)規模の新ファンドをクローズし、a16zは150億ドル(約2.25兆円)規模を集めた既存ファンドからAI全層(DatabricksなどインフラからCharacter.AIなどアプリ層まで)に投資を続けている。SaaStr が4月末にまとめた「Great VC Reshuffle」分析では、メガファンド勢はOpenAIを含む基盤モデルメーカーへの投資ポジションを引き揚げる動きは見せておらず、「シリーズBの3分の2が失敗するというデータがあっても、AI最上位レイヤーへの集中はむしろ強まっている」と指摘している。
しかし、水面下の信号はやや異なる。Bloombergが4月1日に出した記事「OpenAI Share Demand Drops on Secondary Market as Anthropic Gets Investors」では、二次流通市場でOpenAI株の売り注文が買い注文を上回り、一部では「ほとんど売却不能(almost impossible to unload)」とまで描写された。Forge GlobalにおけるOpenAIの含意評価は4月24日時点で約8,800億ドル(約132兆円)と、2026年初の調達ラウンドの8,520億ドル(約128兆円)からわずか3%上昇に留まった一方、Anthropicは同日に約1兆ドル(約150兆円)を付けてOpenAIを評価額で抜いた。CaplightはQ1のセカンダリで「OpenAIは買い手より売り手のほうが多い銘柄」となったと報告している。シリコンバレーのVCがOpenAIから「離反」したわけではなく、ポートフォリオ内のAI比率を維持しつつ、勝ち馬の重み付けをAnthropic寄りに調整しているというのが、より実態に近い読み筋である。
公式コメントとして拾えた著名投資家の発言も「過剰反応」という方向で揃う。Deepwater Asset ManagementのマネージングパートナーGene Munster氏はFortune取材に対し「これは過剰分析の例。事業は前年比でほぼ倍成長しており、いずれ数兆ドル規模の上場企業になる」とコメント。Gabelli FundsのポートフォリオマネージャーJohn Belton氏は「すでに知られていた話の蒸し返しに過ぎず、AIセクター全体の支出ペースが揺らぐ材料ではない」(Reuters・Axios経由)、Equity Armor InvestmentsのCEO Luke Rahbari氏は「予測の精度を考えれば未達自体に過大な意味はない」(Reuters)と評した。CrossCheck ManagementのTodd Schoenberger氏が「波及効果は無視できない」と警鐘を鳴らす一方、Allan Small Financial GroupのAllan Small氏は「AI全体の鈍化ではなく、単なる競争激化」と整理した。要するに、シリコンバレーの主流VCは「物語は崩れていない」が「OpenAI一銘柄での集中ロングは合理的でない」という両構えに移行しているように見える。
各紙・各サイトの論調の比較 — 「クリックベイト論争」の構図
報道のフレーミングは媒体ごとに明確に異なる。WSJは「未達という事実」と「内部対立」を同等に重視し、Friar氏のコンピュート支払い懸念を中核に据えた。Reutersは「Friar発言+Altman・Friar連名声明」のコントラストを強調し、両者が「totally aligned」と主張する一方で、報道の事実関係を直接否定していない点を指摘した。CNBC、SiliconANGLE、Sherwood Newsはどちらかというと株価インパクト中心の整理に寄せ、Oracle・CoreWeave・Nvidia・SoftBank・ARMの下落幅を並べて伝えた。
Fortuneは2本立てで、1本はFriar–Altman対立とAI業界全体の660億ドル(推計660億ドルではなく、Google・Meta・Amazon・Microsoftの2026年AIインフラ投資合計推計の 6,600億ドル(約99兆円) を指す)に焦点を当て、もう1本でDeepwater Munster氏の「過剰反応」論を取り上げ、市場の二極化を象徴する記事構成にした。Bloomberg Opinionは4月19日付の論考「IPO Hopes: SoftBank Is Going All In on OpenAI, But at What Cost?」で、すでにWSJ報道前から「ソフトバンクがOpenAIに賭ける度合いが過大ではないか」と問題提起していた経緯がある。
日本側ではNikkei・Bloomberg日本版・Yahoo!ファイナンスがほぼ同時並行で「OpenAI関連株が下落、目標未達と報道—ソフトバンクGやオラクル安い」というニュースを出し、Nikkeiは別記事で「マイクロソフトとソフトバンクG、『OpenAIリスク』が株価の重荷」と整理した。日本国内では「OpenAIへの投資集中=ソフトバンクG株のリスクファクター」というフレーミングが定着しつつある。一方、米国側ではAxios「AI investors stay bullish after OpenAI revenue miss」、Inc. Magazine「Spooking Investors Ahead of Its Rumored $1 Trillion IPO」のように、IPO直前の心理面に踏み込む論調が目立つ。InvestorPlace、TradingKey、TechCrunchはそれぞれOpenAIの上場予定を再確認しつつ、「Q4 2026〜2027年Q2にずれ込む可能性」をシナリオ別に解説した。
OpenAI自身の「prime clickbait」反論は、米国メディアの間でも温度差を生んだ。SiliconANGLEとThe Next Webは「事実否定ではない」と冷静に距離を取り、CNBCとReutersは肉声引用に留めた。Fortuneは社説的に「IPO直前のオプティクス(見え方)として最悪」と評し、未達そのものより「ガバナンス上の対立を露呈したこと」の方が市場心理に効いたと整理している。
上場計画にも暗雲
OpenAIの上場プロセスはここ半年で立て続けに延期シグナルが積み重なってきた。The Information、TradingKey、BusinessTodayが4月初旬に伝えていた通り、Friar氏は2026年初頭の社内では「2026年内の上場準備は組織・手続き面で間に合わない」と複数の関係者に話していたとされる。一方Sam Altman氏は2,000〜6,000億ドル(約30〜90兆円)の長期コンピュート確保を念頭に上場前倒しを志向、社内での意見対立がWSJ報道の二次的な発火点になったと見られる。
上場時期についての公開情報は媒体間でばらつくため、現時点で確定的な日付は存在しない。Reutersはセキュリティ・ファイリング(S-1類似書類)が2026年後半、市場デビューが2027年とのシナリオを提示。CMC Markets、Tradingkey、ZeroHedgeは「2027年内、評価額1兆ドル(約150兆円)規模」を本線として整理。Motley Fool、Yahoo Financeは「Q4 2026〜2027年Q1」をベースケースに置く。要約すると、最速ケース(Q4 2026)と本線ケース(2027年)と慎重ケース(さらに後ろ倒し)の3シナリオが併存しており、WSJ報道はこのうち本線・慎重ケースの確度を引き上げる方向に作用した。
ソフトバンク側のIPO計画への波及は、より具体的だ。同社はOpenAI出資のために最大400億ドル(約6兆円)の融資を組成し、さらに100億ドル(約1.5兆円)規模のOpenAI担保ローンを検討している。OpenAI評価が想定通り上振れし、上場で実現益化する前提が成立しなければ、この融資のカバレッジ比率と返済原資設計は崩れる。シリコンバレーのVC視点で見ると、ソフトバンクは「LP(リミテッド・パートナー)的にはOpenAI集中ファンド、GP(ジェネラル・パートナー)的にはピュアプレイの上場エクイティ」となっており、OpenAIの上場時期が後ろ倒しになるほど、ソフトバンクの含み益から実現益への転換タイミングが遠のく。これが「ソフトバンクG株式の上場計画にも暗雲」という見出しの実体である(なお厳密には、ソフトバンクGそのものの上場ではなく、OpenAI上場の遅延がソフトバンクGの将来計画に暗雲を投げる、と解釈するのが市場の標準的な読み方である)。
OpenAIの実体経済 — 競合との比較で見る違和感


WSJ報道の重要さは単独の数字より「競合との対比」にある。OpenAI自身は2026年2月末時点で年率換算売上(ARR)約250億ドル(約3.75兆円)に到達したとTechCrunchやSacraが伝えており、これは2025年末の214億ドルから2か月で約17%伸びた水準だ。ChatGPTのWAUはAltman氏が2月27日に「9億」と公表した(TechCrunch)。問題は、同じ4月時点でAnthropicがARR約300億ドル(約4.5兆円)に到達したと報じられ、Tom's HardwareやTechFundingNewsがその「四半期で233%増」「Claude Codeとエンタープライズ向けAPIが牽引」という構造を伝えていることである。Menlo Venturesの調査では、エンタープライズLLM市場におけるシェアはAnthropic約32%、OpenAI約25%、Google Gemini約20%。Ramp AI Indexの3月版でも「初めてAIサービスを購入する企業のうち、Anthropicが対OpenAIのヘッドトゥヘッドで約7割勝つ」という逆転が起きている。
消費者市場でも、Fortuneが2月にまとめたApp Annie/Sensor Tower等の集計では、ChatGPTアプリのシェアは2025年1月の69.1%から2026年に45.3%へ低下、Gemini単体アプリは14.7%から25.2%へ伸長した。OpenAIが「単独首位」のポジションは、消費者・エンタープライズの両方で侵食されている。シリコンバレーVCにとって、これはOpenAI個別の財務問題というよりも「LLMのwinner-take-most仮説の修正」に近い意味を持つ。ピュアプレイで上場するOpenAIの希少性プレミアムが、AnthropicのIPO(Q4 2026を目指していると報じられている)と並走する場合、ファーストムーバーのバリューションプレミアムは想定より圧縮される可能性がある。
6,600億ドルAIキャペックスとサプライチェーンの脆弱性

OpenAIの売上未達がOracle・CoreWeave・Nvidia・ARMまでを巻き込むのは、AIインフラ投資の規模が極端に集中構造になっているためである。Fortuneの集計では、2026年だけでGoogle最大1,850億ドル(約27.8兆円)、Meta最大1,350億ドル(約20.3兆円)、Amazon約2,000億ドル(約30兆円)、Microsoft約1,400億ドル(約21兆円)と、ハイパースケーラー4社合計で 約6,600億ドル(約99兆円) がAIデータセンターに投じられる見込みだ。前年比+66%という凄まじい伸び率である。OpenAI単体ではOracleとの3,000億ドル(約45兆円)・5年契約、Amazonとの1,380億ドル(約20.7兆円)契約、Microsoftとの130億ドル(約2兆円)超の累積投資、Sam Altman氏が直接署名した約6,000億ドル(約90兆円)の長期コンピュート・コミットメントが積み上がっている。
シリコンバレーの構造分析家がしばしば指摘するように、これらのコンピュート契約はOpenAIの売上見通しに対する「先行投資」として組まれている。Vital KnowledgeのAdam Crisafulli氏が4月28日に書いたように、「OpenAIは巨大なインフラ義務を本当に履行できるのか」という問いが、Oracle・CoreWeave・ARM・Nvidiaの株価感応度を一気に高めた。シリコンバレーのVC界隈で複数のパートナーが私的に語っているのは、「OpenAIの売上未達は、AIサプライチェーンに張られた皆のレバレッジを、同時に引き締める方向に効く」という整理である。OpenAIは単なる1社の財務問題ではなく、6,600億ドル超のキャペックス・エコシステムのキープレイヤーであり、その需要見通しの修正は連鎖的にCoreWeave、Oracle、ARMの設備投資前提に反映される構造になっている。
今後いつ、何を見ればいいのか — 計測可能な次の節目
シリコンバレーVCが現時点で「次の手がかり」として注視している節目を時系列で整理すると、5月中旬のソフトバンクGの2025年度通期決算(FY2025 Q4)が直近最大のイベントとなる。同社のFY2025 Q3決算(2026年2月12日)ではOpenAI評価益が四半期業績を押し上げる構図だったため、通期決算でのOpenAI関連数値(評価方法、参照ラウンドの選択、想定持分換算)と、5月以降の社内NAV見通し説明が、市場の織り込みを左右する。
その先の節目として、7月1日にはソフトバンクのSVF2経由の第2トランシェ100億ドル(約1.5兆円)が実行予定。10月1日には第3トランシェ100億ドル(約1.5兆円)が控える。各トランシェのタイミングでOpenAIの内部進捗(コンピュート契約改定、enterprise契約獲得、ChatGPT WAU)が公表されるかどうかは、市場参加者の関心が集まる点だ。
OpenAI自身のIPOプロセスについては、2026年Q3ごろまでにS-1相当の登録書類が米SECに提出されるかが第一指標となる。Reutersの本線シナリオでは2026年後半のファイリング、2027年初頭のロードショーが想定されており、Q4 2026の上場開始は前倒しシナリオとなる。Anthropicも同四半期にIPOを目指していると複数媒体が報じており、AI 2社が同時並行で上場プロセスを進める場合、引受幹事や機関投資家のアロケーションを巡る競争が本格化する。シリコンバレーのVCの間では「2026年Q4は、AIピュアプレイの上場がどれだけ希少なバリューションを取れるかの試金石」という見方が共有されている。
最後に、4月28日に同時並行で開廷したElon Musk氏とSam Altman氏の連邦裁判(オークランド連邦地裁)にも注意が必要だ。Musk氏側は1,300億ドル(約19.5兆円)の損害賠償と、Altman氏・Brockman氏のボード退任、OpenAIの非営利構造への回帰を求めている。CNN・NPR・Al Jazeeraの報道によれば、判決の方向性次第ではOpenAIの法人形態(営利化プロセス)に影響が生じる余地があり、IPO計画とも無関係ではない。WSJ未達報道、Friar–Altman対立、Musk裁判という3つの不確実要因が同じ週に重なったことが、4月28日のソフトバンクG株9.86%安というシングルデイの集中売りに化学反応を起こしたと見るのが、シリコンバレーVCの大勢的な読み筋である。
まとめ — 「物語の優位は揺らぎ、レバレッジは膨張する」
シリコンバレーVCの視点でこの一連の出来事を一文で要約すれば、「OpenAIのAIピュアプレイとしての優位は明確に揺らぎ、ソフトバンクの集中賭けはレバレッジで増幅された脆さを露呈した」となる。OpenAIは依然AIの代表選手だが、四半期で233%成長したAnthropicに対しエンタープライズLLM市場でシェアを失い、二次流通でも約1兆ドル(約150兆円)の評価額で抜かれ、ChatGPTの消費者シェアも69.1%から45.3%へGeminiに侵食された。WSJ報道でFriar氏が漏らした「コンピュート支払いの懸念」は単なる釣り見出しではなく、6,000億ドル規模のコミットメントを支える売上成長が想定通り加速しないリスクを正面から問うものである。CFOとCEOが支出規律と上場時期で対立しているという内部ガバナンスの綻びも、IPO直前の最悪のオプティクスとして市場心理に重く効いた。「数年で兆ドル規模の上場企業になる」という強気シナリオは依然成立し得るが、その確度は明確に後退した。
ソフトバンクは、累計646億ドル(約9.7兆円)の出資、約13%の想定持分、Arm との合算でほぼ単一テーマに収斂する保有構造、400億ドル(約6兆円)級のブリッジ・ローン、そしてOpenAI株を担保にした100億ドル(約1.5兆円)のマージン・ローン検討という四重のレバレッジを抱え込んだ。S&Pは3月に格付け見通しを「ネガティブ」へ引き下げ、流動性と投資資産の質の悪化を警告している。OpenAI上場が遅延するほど含み益から実現益への転換タイミングが遠のき、IPOバリューションが想定より圧縮されるほどソフトバンクのNAVは上振れの源泉を失う、という非対称な下振れリスクが構造的に積み上がっている状態だ。4月28日の9.86%安は、市場が「ソフトバンク=OpenAIピュアプレイ」という認識を一段強め、レバレッジ前提を改めて疑問視し始めた象徴的な日として記録されるだろう。今後の節目は5月中旬のソフトバンクG通期決算、7月1日と10月1日のトランシェ実行、Q3 2026のOpenAI登録書類、そしてQ4 2026〜2027年初の上場可否であり、いずれかで想定線を下回る数字が出れば、株価はさらにハイ・ベータに揺れる構図にある。シリコンバレーのVCコミュニティは、AIエコシステム全体のレバレッジを再較正する局面に入っており、OpenAIとソフトバンクは「物語に賭ける」コストを当初想定より長く・深く引き受ける覚悟を迫られている。
Sources
- SoftBank Group Stock Plunges Nearly 10% as OpenAI Growth Scare Hits Masayoshi Son's AI Bet — ts2.tech
- OpenAI shock: Oracle and CoreWeave collapsed, Softbank has its worst day in six months — Oninvest
- OpenAI-Linked Stocks Drop After Report of Missed Sales, User Targets — Bloomberg
- OpenAI関連株が下落、目標未達と報道―ソフトバンクGやオラクル安い — Bloomberg日本版
- OpenAI reportedly missed revenue targets. Shares of Oracle and these chip stocks are falling — CNBC
- Wall Street is panicking about OpenAI. A veteran tech analyst says everyone's overreacting — Fortune
- OpenAI CFO reportedly at odds with Sam Altman over missed revenue target—even as AI capex is set to hit $660 billion — Fortune
- Technology stocks suffer after WSJ reports that OpenAI has missed key revenue and user targets — Sherwood News
- OpenAI says it is "firing on all cylinders" after missing revenue and user targets — The Next Web
- AI investors stay bullish after OpenAI revenue miss — Axios
- AI capex-sensitive stocks fall amid rising OpenAI worries — Investing.com
- Follow-on Investments in OpenAI — SoftBank Group Corp.(公式プレスリリース)
- SoftBank Group shares lose steam as investors have qualms on big OpenAI bet — Nikkei Asia
- OpenAI Share Demand Drops on Secondary Market as Anthropic Gets Investors — Bloomberg
- Anthropic Beats OpenAI on Secondary Markets With $1 Trillion Implied Valuation — Decrypt
- OpenAI IPO Process Falling Behind? CFO Warns Not Ready to Go Public — TradingKey
- OpenAI CFO Questions 2026 IPO Readiness — The Information
- Why SoftBank's new $40B loan points to a 2026 OpenAI IPO — TechCrunch
- SoftBank books $4.2 billion gain on OpenAI bet, boosting its Vision Fund — CNBC
- ChatGPT reaches 900M weekly active users — TechCrunch
- ChatGPT's market share is slipping as Google and rivals close the gap — Fortune
- Ramp AI Index March 2026 update — Ramp
- The Great VC Reshuffle: OpenAI's $500B Restructuring, A16z's $10B Mega-Fund — SaaStr
- New leaders, new fund: Sequoia has raised $7B to expand its AI bets — TechCrunch
- OpenAI lawsuit updates: Elon Musk v. Sam Altman trial — CNBC
- OpenAI's Reported Missed Revenue Targets Are Spooking Investors Ahead of Its Rumored $1 Trillion IPO — Inc.
- What Is Going On With Arm Holdings Stock On Tuesday — Benzinga
- SoftBank's $30 Billion OpenAI Bet Spurs S&P Credit Outlook Cut — Bloomberg
- SoftBank Seeks $10 Billion Margin Loan Backed by OpenAI Shares — Bloomberg