メモリーを「寝かせず、立てる」

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薄いメモリーのチップを、パンケーキのように寝かせて積み上げるのではなく、本棚の本のように立てて並べる。ソフトバンクの子会社SAIMEMORY(サイメモリ)が開発する次世代メモリー「ZAM(ザム)」は、そんな発想で、AIの計算機を悩ませる熱と電力の壁を越えようとしている。

その本棚を、工場で組み上げられる製品に仕立てる相棒が決まった。長野市に本社を置く半導体パッケージの老舗、新光電気工業である。両社は9月28日、ZAMの研究開発から製造技術の確立、将来の商用化までを見据えた基本合意書を結んだと発表した。

サイメモリが描くのは、メモリーの設計図だ。新光電気が持つのは、チップを基板に載せ、電気と熱の通り道を作り込む「実装」の技術である。どれほど独創的なメモリーでも、壊さずに組み立てられ、同じ品質で大量に作れなければ製品にはならない。今回の合意で、ZAMは研究室の構想から、工場で作るものへと一歩近づいた。

サイメモリの山口秀哉社長は、研究開発から商用化までを見据えた提携で合意できたことを「大変心強く感じています」とコメントした。新光電気の倉嶋進社長は、両社で「日本が培ってきた技術と知見を結集」し、次世代メモリーの社会実装を進めると述べている。目標は、2027年度中に試作品を作り、2029年度中に実用化することだ。

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AIの計算機は「メモリー待ち」で止まる

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AIの計算を担うGPUは、腕のいい料理人のようなものだ。どれだけ手が速くても、食材が手元に届かなければ包丁は止まる。その食材を置いておく棚にあたるのが、メモリーである。生成AIは、巨大なモデルと大量のデータを、メモリーとGPUの間で絶え間なく行き来させる。計算そのものより、この運搬が全体の速さと電気代を左右する場面が増えた。業界ではこれを「メモリーの壁」と呼ぶ。

いまの答えが、HBM(広帯域メモリー)だ。記憶用のチップであるDRAMを薄く削って十数枚を平らに積み重ね、GPUのすぐ隣に置く。最新世代のHBM4は12枚から16枚を積み、1個で毎秒2テラバイトを超えるデータを送り出す。

ただ、積めば積むほど、真ん中の階に熱がこもる。チップとチップの間に、熱を通しにくい層が何枚も挟まるからだ。高さにも上限がある。HBMは、ロジック半導体のウエハー1枚と同じ厚み、0.8ミリ弱に収めるのが業界の約束事になっている。層を増やすには、1枚1枚をさらに薄く削るしかない。平らに積む方式は20層程度が限界とされ、山口社長は日経クロステックの取材に「HBMは2030年ごろ、熱の問題で限界に近づく」と語った。

しかも、HBMを作れるのは世界で3社しかない。調査会社カウンターポイントによると、2026年4〜6月期の売上高シェアは、韓国のSKハイニックスがほぼ半分、同じく韓国のサムスン電子が3分の1を占め、残りを米マイクロンが握る。3社がAI向けに生産を振り向けた結果、パソコンやサーバー用の普通のDRAMまで品薄になった。台湾の調査会社トレンドフォースによると、汎用DRAMの契約価格は2026年1〜3月期に、前の四半期からほぼ2倍に跳ね上がった。

日本は1980年代、DRAMで世界を席巻した。しかし最後に残ったエルピーダメモリが2012年に経営破綻してマイクロンの傘下に入り、国内からDRAMメーカーは消えた。サイメモリの朝倉淳子コーポレート本部長によると、ソフトバンクの宮川潤一社長は「かつてメモリやDRAMといえば日本だったが、今や海外ばかりだ」とよく口にしているという。

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ZAMの仕組み――立てて並べ、磁界でつなぐ

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ZAMの「Z」は、縦方向を表すZ軸のことだ。HBMがDRAMを平らに積むのに対し、ZAMはDRAMを立てて、横に何枚も並べる。本棚に差した本のように、チップの薄い縁が上を向いて並ぶ。こうするとチップで生まれた熱は、熱を遮る層を通らずに、シリコンの中を上へまっすぐ抜けていく。平積みで問題になった「真ん中の階の熱」が生まれにくく、理屈の上では並べる枚数の上限がなくなる。

難しいのは、立てた薄いチップを、下にある制御用のチップとどうつなぐかだ。はんだで接着するのは物理的に難しい。そこでZAMは、配線を使わずに磁界で信号を渡す。駅の改札でICカードをかざすと、触れなくてもデータが行き来する。あれと同じように、チップに作り込んだ小さなコイルどうしを磁界で結び、無線で通信する。「磁界結合無線通信」と呼ばれる技術だ。サイメモリによると、チップを立てて並べる構造そのものも、東京大学が長く研究してきた技術を応用している。

ここに、米インテルが持ち込んだ二つの技術が重なる。一つは、読み出しのムダを減らす工夫だ。従来のDRAMは、わずかなデータを読むにも、それを含む大きな区画を丸ごと呼び起こす。朝倉本部長はこれを「1行の文章を読むために、1ページを丸ごと読み込むようなもの」とたとえる。インテルは、もっと小さな区画を起こすだけで済む設計を作った。もう一つが「Via-in-One(ビア・イン・ワン)」と呼ぶ接続技術で、8〜9枚のDRAMを貼り合わせ、まとめて一気に貫いて電気的につなぐ。

どちらも、インテルが米エネルギー省の支援を受けて進めてきた先進メモリー技術の研究プログラムと、その中の次世代DRAM接合の取り組みから生まれた。インテル・フェローのジョシュア・フライマン氏は2月の都内のイベントで、2016年ごろの既存のDRAMは求める要件を満たしておらず、メモリーメーカーは自社の設計を変えることに関心がなかったと振り返った。だから自分たちで研究を始めたのだという。

6月にハワイで開かれた国際学会、VLSIシンポジウムでは、サイメモリがインテル、台湾の力晶積成電子製造(PSMC)とともに、この接続技術の成果を発表した。DRAMの層を9枚重ね、層と層の間のシリコンを髪の毛の太さの数十分の一、約3マイクロメートルまで薄くした試作だ。トレンドフォースによると、10ギガバイトの構成で毎秒5テラバイト余りを送れるという試算も示された。HBM4の2倍を超える水準である。

英専門誌エレクトロニクス・ウィークリーによると、サイメモリの目標は、容量がHBMの2〜3倍、消費電力は半分、価格はHBM並みかそれ以下というものだ。サイメモリ自身は開発中を理由に具体的な数値を出していないが、計算上は同じ価格帯のHBMより高い性能を実現できているとしている。

使い方はHBMとほぼ同じで、GPUなどの演算チップの隣に置く。ただし、そのまま差し替えられるわけではない。ZAMのかたまり、いわゆる「キューブ」と演算チップの間には、橋渡し役の「ホストダイ」が要る。サイメモリはその参照用の設計を用意し、半導体メーカーに作ってもらう想定だ。メモリーを制御する機能の一部はキューブの側に組み込み、採用する側の手間をできるだけ減らす。

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組み立ての難所と、日米台の分業

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チップを立てて並べ、磁界で信号を渡すメモリーは、世の中にまだ存在しない。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業で予定されている開発項目を見ると、どこが難所かがわかる。新しいウエハー接合で何層も重ねること、重ねる位置の精度を上げること、立てたブロックの側面に電極を作ること、そしてキューブとホストダイをつなぐことだ。量産に入れば、ここに歩留まりと品質の確保が加わる。マイナビのTECH+は、新光電気の参加を、試作から量産へ移るための体制づくりとみている。

新光電気は1946年の創業で、パソコンやサーバーのCPUを載せるパッケージ基板を主力とし、米インテルや米AMDを大口顧客に持つ。半導体製造装置の中でウエハーを吸い付けて固定するセラミック製の部品、静電チャックも稼ぎ頭だ。2025年には、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下ファンドが大日本印刷、三井化学とともに約6,850億円で買収し、上場を廃止した。

AI向けには、GPUとHBMをつなぐ中継板の役割を、高価なシリコンではなく樹脂の基板に作り込む「i-THOP」や、ガラスを芯にした基板を開発している。i-THOPの量産に向けては長野県千曲市に新しい棟を建てており、経済安全保障推進法にもとづく国の支援を受けて、2029年7月の供給開始を目指す。

新光電気は日経クロステックの取材に、光電融合の分野で、TSMCが受けないスタートアップの製品や試作品といった少量の案件を取りにいくと語っている。試作から始まるZAMは、まさにその型に当てはまる。サイメモリはメモリー開発の拠点を長野県に置いており、新光電気の本拠地と同じ県で開発が進む。新光電気の名前は、2025年末の時点で英国の専門誌が協力企業として伝えていた。今回の基本合意で、その関係が正式な形になった。

ZAMを支える陣容は、日本、米国、台湾にまたがる。設計と知的財産はサイメモリが持ち、基盤技術はインテルが提供する。試作と製造はPSMCが支えると、トレンドフォースは台湾紙の報道として伝えている。理化学研究所は、スーパーコンピューター「京」と「富岳」の開発で培った知見を生かし、ZAMの性能を評価する仕組みを作る。サイメモリは、ZAMに合った製造装置を装置メーカーと開発する必要があるとも説明している。

今回の合意は、発表文の言葉を借りれば「パートナーシップの構築に向けた」基本合意である。役割分担の細部や量産の場所、生産能力、商用化後の顧客、ライセンスの形は、まだ明らかにされていない。

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HBM三強と、次の座を狙う挑戦者たち

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ZAMが実用化を目指す2029年度は、HBMの側でも大きな世代交代が重なる時期だ。

EE Times Japanが世界半導体市場統計のデータとして伝えたところでは、メモリーの世界出荷額は2026年5月の1カ月だけで633億ドル(約9兆9,000億円)に達し、10年前の11倍を超えた。この膨張の中心にいるのがHBM三強である。首位のSKハイニックスをサムスン電子が猛追しており、カウンターポイントによると、サムスンは2026年2月に競合より先にHBM4の量産出荷を始め、4〜6月期にシェアを大きく伸ばした。

三強も、熱の壁に手をこまぬいているわけではない。SKハイニックスは5月、HBMの内部に冷却用の部材を組み込み、熱の逃げにくさを30%下げる「iHBM」を発表し、次世代のHBM5に取り入れるとした。チップ同士を銅で直接つなぐ「ハイブリッド接合」も、積層数をさらに増やす切り札とされる。SKハイニックスは8月、次のHBM4Eではまだこの技術を使わないと説明し、カウンターポイントは、HBM5で本格的に使われるのは2029年から2030年ごろとみている。ZAMの登場時期と、ちょうど重なる。

メモリーの種類そのものを変えようとする動きもある。米サンディスクとSKハイニックスは、DRAMの代わりにフラッシュメモリーを積み上げる「HBF」の標準化を進め、2026年8月に最初の仕様を公開した。HBMとSSDの間を埋める大容量の層として、AIの推論向けの需要を狙う。インテル自身も、ZAMとは別に「XBM」と呼ぶ次世代メモリーを研究している。

ZAMは、止まった的ではなく、動き続ける的を狙っている。改良を重ねた先の世代のHBMと、別方式の挑戦者の両方に、性能と価格で勝たなければならない。

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サイメモリの歩み――インテルの持ち込みから国の支援案件へ

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始まりは、インテルからの持ちかけだった。朝倉本部長によると、ソフトバンクは日本最大規模のAIデータセンターを建設するなかで、メモリーがコストを押し上げ、性能向上の足かせになっていることを問題視していた。そこへインテルから、開発してきた次世代技術で新しい構造のメモリーを作りたいという話が来た。ソフトバンク自身は半導体会社ではない。そこで出資と経営人材の派遣、パートナー企業の取りまとめを引き受け、まとめ役として2024年12月にサイメモリを立ち上げた。社名の「SAI」は、才能や天才の「才」にちなむと山口社長は説明している。

社長の山口氏は、東芝の半導体部門で米国の販売会社のトップなどを務め、半導体商社レスターの幹部を経た人物だ。最高技術責任者には、インテルでシニア・プリンシパル・エンジニアを務めたスティーブン・モライン氏が就いた。取締役には、半導体材料大手JSRで社長と会長を務めた小柴満信氏も名を連ねる。

存在が表に出たのは2025年5月だ。テレビ東京が、ソフトバンクがインテルや東京大学と組んでメモリー開発会社を立ち上げ、約30億円を出資して筆頭株主になると報じた。会社は同年7月に本格的に動き出し、12月には日本経済新聞が富士通の参加を報じた。

2026年は、表舞台に立った年になった。2月2日にインテルと協業契約を結び、翌日にインテル日本法人が開いたイベントで初めて公の場に登場した。インテルが開発したメモリーの試作品を披露しながら、山口社長は「性能と熱のトレードオフを突破したい」と語り、協業先は今後少しずつ発表すると予告した。

4月には、開発計画がNEDOの助成事業に採択された。提案は1件で、サイメモリが代表、インテル日本法人が共同提案者、理研が共同研究先という体制だ。同時に、富士通、日本政策投資銀行、理研、ソフトバンクを引受先とするシリーズAの資金調達も発表した。日本経済新聞によると、出資は計40億円程度で、初期の開発費の約半分を国が援助する。テレビ東京は、経済産業省の支援を最大38億円と報じている。

6月の国際学会での発表を経て、9月の新光電気との基本合意にたどり着いた。設立からおよそ1年9カ月で、設計、製造、実装、評価、そして将来の買い手の候補までが、一つの輪につながり始めた。

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強み――熱の物理、確かな出自、最初の買い手

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一つめの強みは、物理の筋がいいことだ。HBMの最大の悩みである熱に対し、冷やし方を工夫するのではなく、熱がこもらない形に置き換えている。積層数の上限という、HBMが改良を重ねても逃れにくい制約を、構造ごと外しにいく。

二つめは、技術の出自が確かなことだ。土台は、米エネルギー省の資金で国立研究所とともに検証されてきたインテルの研究である。米サンディア国立研究所の研究者は、容量と電力の制約から広帯域メモリーを使えずにいたシステムにも、その利用を広げる技術になると評価している。

三つめは、最初の買い手の候補がはっきりしていることだ。ソフトバンクは北海道苫小牧市と大阪府堺市で大規模なAIデータセンターの建設を進めており、朝倉本部長によると、宮川社長はZAMが実用化すればそこで使うと公言している。さらに日経クロステックによると、理研は2030年ごろの稼働を目指す次世代スーパーコンピューター「富岳NEXT」で、ZAMが要求仕様を満たせば採用を前向きに検討する。富岳NEXTは、富士通のCPUと米エヌビディアのGPUを組み合わせる計画だ。その開発を手がける理研の松岡聡氏は、課題は「メモリーの帯域幅、遅延、容量、電力、そしてコストだ」と語っている。

四つめは、工場を持たない身軽さだ。サイメモリは自らをファブレス、つまり工場を持たないメーカーと位置づけ、まずは製造を外部に委託し、いずれは技術ライセンスの事業も育てるとしている。巨額の設備投資を背負わずに済み、成功すれば世界のメモリーメーカーから使用料を得る道も開ける。

五つめは、日本の後工程の地の利だ。パッケージ基板、基板に使う絶縁フィルム、ウエハーを薄く削る装置など、チップを組み立てる工程の材料と装置では、日本企業が世界の上位に並ぶ。チップを立てて並べ、側面に電極を作り、精度よく貼り合わせるZAMは、組み立ての出来が性能を大きく左右するメモリーだ。新光電気の合流は、この地の利を取り込む最初の一手になる。

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課題――無線のズレ、動く標的、資金の桁

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最大の技術課題は、無線でつなぐ部分にある。朝倉本部長は、チップを物理的に固定しないためにズレが生じやすく、並べる枚数が増えるほどズレも大きくなると説明する。そのズレを管理して確実に通信させることが目下の課題で、それを越えた先に、量産レベルで実現するというもう一つの壁が待つ。テック媒体のTechRadarも、何層もの貼り合わせを欠陥なく量産するのは実証されていない難題であり、第三者が確かめられる試作品もまだ示されていないと指摘した。

二つめは、工場を持たないことの裏返しだ。DRAMそのものは、誰かに作ってもらう必要がある。試作を支えるPSMCは今年、台湾の工場の一つを18億ドル(約2,800億円)でマイクロンに売却した。AIブームで、メモリーの製造能力は大手に吸い寄せられている。

三つめは、動く標的である。英Blocks & Filesは、ZAMが商用化する2030年ごろには、比べる相手はHBM5かその先の世代になっているだろうと書いた。HBMと完全な互換がないため、採用する側はホストダイを設計しなければならず、GPUメーカーの厳しい認定も通る必要がある。

四つめは、資金と人の厚みだ。2027年度までの開発費は約80億円とされる。マイクロンが台湾の工場用地と建屋ひとつに払った額の、およそ35分の1にすぎない。量産に進むには、けた違いの資金が要る。テレビ東京によると、経産省は試作や量産に向けて支援の増額も検討している。日経クロステックによると社員はまだ小所帯で、設計技術者の採用を本格化させている段階だ。

五つめは、地政学だ。米政府は2025年8月、インテル株の9.9%を取得して筆頭株主になった。テレビ東京は、米国内での製造回帰を掲げる政権が、次世代メモリーの製造を米国内で行うよう求める可能性も指摘している。

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投資家の目で読む――株主名簿が語ること

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サイメモリの株主の顔ぶれは、日本のディープテック投資の縮図のようだ。親会社のソフトバンク。将来の顧客にもなりうる富士通。国の出資を一部使って成長資金を供給する、日本政策投資銀行の「特定投資業務」。そして、自らの研究成果を生かす企業に出資できる法律にもとづいて出資した理研である。公表された引受先に、独立系のベンチャーキャピタルの名前はない。

周りを見渡すと、国の資金はさらに幾重にも入っている。初期の開発費の約半分はNEDOの助成でまかなわれ、組み立てを担う新光電気は政府系ファンドJICの傘下にある。日本経済新聞は、ラピダスのような国策会社化も選択肢の一つだと報じた。日経クロステックは、米国発の技術を日本が取り込み、国が支える構図がラピダスと相似形だと分析している。

この形には長所と短所がある。長所は、試作から量産まで何年もかかる開発に、市場の浮き沈みに左右されずに付き合える資金であることだ。短所は、会社の値段を市場が決める場面がまだないこと、そして出口の姿が見えにくいことである。株式公開なのか、ソフトバンクの中で育てるのか、国策会社になるのか。投資家にとっては、それ自体が見極めどころになる。

事業モデルの手本は、意外と近くにある。携帯電話大手ソフトバンクの親会社、ソフトバンクグループが持つ英アームは、自らはチップを作らず、設計図の使用料で世界のスマートフォンの頭脳を押さえた。委託製造から始めてライセンスで稼ぐというサイメモリの将来像は、メモリーの世界で同じ勝ち方を狙うものと読める。ソフトバンクグループは2025年8月にインテルへ20億ドル(約3,100億円)を出資しており、グループとインテルの結びつきも深い。

投資家が確かめたい点は、もう一つある。知的財産の中身だ。インテルは、この事業に技術と知的財産を提供すると説明している。ただ、どの特許をどんな条件で使えるのか、サイメモリがライセンス事業を広げたときにインテルの取り分がどうなるのかは、公表されていない。使用料で稼ぐ会社にとって、ここは企業価値の土台そのものになる。

企業価値が大きく動く節目は三つある。2027年度の試作で、山口社長が掲げる「HBMへの優位性を示せるスペック」が出るか。富岳NEXTやソフトバンクのデータセンターで、最初の採用が決まるか。そして、既存のメモリーメーカーがライセンスを受けるか。どれか一つでも実現すれば、次の資金調達の条件は大きく変わる。

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各紙・各サイトはどう報じたか

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国内で最も早く動いたのはテレビ東京だ。設立、インテルとの契約、経産省の支援方針と、節目ごとに独自の報道を重ね、ラピダスと同じく日米の国家プロジェクトに発展する可能性にも触れた。日本経済新聞は、消費電力半減という目標や80億円規模の開発費を伝え、富岳NEXTとの接点や国策会社化の可能性を掘り下げた。日経クロステックは「ラピダスと相似形の難路」という見出しで、成功はたやすくないと書いた。

技術面の報道は、EE Times Japanが厚い。サイメモリ幹部へのインタビューで構造の由来や量産の課題を引き出す一方、支援額と調達額については会社が「ノーコメント」だったと記している。マイナビのTECH+は、新光電気の参加を試作から量産への橋渡しと位置づけつつ、量産の場所や顧客はまだ公表されていないと指摘した。

海外では、見出しの熱量に差がある。米HPCwireはZAMを「HBMキラー」と呼び、米Tom's Hardwareも「HBMの対抗馬」として大きく取り上げた。一方で英Blocks & Filesは、商用化の頃にはHBM5の時代になっていると冷静に書き、TechRadarは量産の難しさを強調した。台湾のトレンドフォースやDIGITIMESは、PSMCの参加や新光電気の合流を、商用化に向けたサプライチェーンの厚みとして報じている。

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これから何が起きるか

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直近の注目点は、協業先の発表の続きだ。山口社長は2月、生産や開発、サプライチェーンのパートナーを国内外に持ち、少しずつ発表していくと予告していた。インテル、PSMC、そして新光電気と名前が出てきた。まだ名前が出ていないのは、ZAMに合わせた製造装置を共同で開発する装置メーカーである。

2027年度、つまり2027年4月から2028年3月までの間に、最初の試作品ができる。サイメモリは、この時期から評価ボードの準備や、採用する側の組み込み設計の支援を加速させるとしている。ここで示されるスペックが、すべての出発点になる。

進み具合を測る物差しは、国際学会での発表だ。NEDO事業で予定されている開発は、磁界結合の通信、ZAMの作り方、ホストダイの参照設計、性能を評価する仕組みの四つ。6月のVLSIシンポジウムでは、このうち貼り合わせの技術が表に出た。残る磁界結合の通信やホストダイについて、いつ、どこまで成果が示されるかが次の焦点になる。

インテルによると、NEDOの助成事業は3年半の開発計画で、2029年ごろまで続く計算だ。そして2029年度、2029年4月から2030年3月までに実用化を目指す。HBMの側では、ハイブリッド接合を使うHBM5が立ち上がる時期に当たる。2030年ごろには富岳NEXTが動き出す。そこにZAMが載るかどうかが、国産メモリー復活の成否を占う最初の答えになる。

薄いチップを立てて並べ、磁界でつなぐ。発想は単純だが、それを同じ品質で大量に作れるかどうかは、まったく別の問題だ。長野の実装技術が加わったことで、その問いに正面から挑む布陣がようやく整った。


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