シリコンフォトニクスとは何か

シリコンフォトニクスを一言で言えば、「光の部品を、半導体の作り方でつくる」技術である。
私たちが日常的に使っている半導体チップは、シリコンウェハーの上に、リソグラフィと成膜とエッチングを繰り返して、トランジスタや配線という「電気の部品」を数十億個も作り込んでいる。シリコンフォトニクスは、この製造インフラをそのまま使って、電気の部品ではなく「光の部品」をシリコン基板の上に作り込む。光を通す導波路、光を曲げる分岐器、電気信号を光の強弱に変える変調器、光を電気に戻す受光素子、そして複数の波長を束ねたり分けたりする合分波器である。サイバネットの技術解説が整理しているように、シリコンと二酸化ケイ素の屈折率差を使って光をコア部分に閉じ込め、全反射で低損失に伝搬させるのが導波路の原理であり、これを電子回路と同じ土俵に載せることがシリコンフォトニクスの本質である。
なぜ今これが必要とされているのか。理由はきわめて即物的で、電気配線が熱と電力の壁にぶつかったからだ。AIデータセンターでは何万枚ものGPUを一体の計算機として動かす必要があるが、GPU同士、あるいはスイッチとサーバーの間を銅線で結ぶと、速度を上げるほど信号が減衰し、それを補うための電力と発熱が指数関数的に増える。光であれば、同じ距離を桁違いに少ない電力で、桁違いに多くのデータを運べる。だから業界は、光の侵入深度を一段ずつ深くしている。まず「基板の外」を光にするプラガブル光トランシーバ、次に「スイッチICのすぐ隣」を光にするNPO(ニア・パッケージド・オプティクス)、さらに「ICのパッケージの中」に光を引き込むCPO(コ・パッケージド・オプティクス)、そして最終的には「チップの入出力そのもの」を光にする光I/Oという順序である。
この流れは2026年に入って一気に実装フェーズへ移った。ブロードコムは、TSMCのCOUPEと呼ばれる光エンジンを16個搭載し、100テラビット超を光で丸ごとスイッチングする「Tomahawk 6 – Davisson」の出荷を開始した。エヌビディアは、Quantum-X InfiniBandスイッチを2026年前半、Spectrum-X Ethernetスイッチを2026年後半に投入する計画を公表している。国内では、NTTイノベーティブデバイスがIOWN構想の中核として光電融合デバイスの商用展開を進めており、日経クロステックによれば光電融合スイッチの商用サンプル提供は2026年の年末が目標に置かれている。研究室の技術が、いま量産ラインの設計図に落ちている。
市場規模の見立ても、この1年で明確に上振れした。米国の光通信技術展示会OFC2026でアップデートされた業界予想では、2030年の光トランシーバ市場は従来予想の倍にあたる500億ドル、日本円でおよそ8兆円へと引き上げられた。パッケージの中に光を取り込むCPOも3倍の150億ドル、光回路スイッチも2倍の40億ドルへと軒並み上方修正されている。調査会社ライトカウンティングは2026年5月のニュースレターで、「2026年は、シリコンフォトニクス変調器を使ったトランシーバの売上が、総額400億ドル市場の半分を初めて超える最初の年になる」と述べている。同社によれば光チップ市場は2025年から2031年にかけて約4倍に拡大し、そのうち4割強をシリコンフォトニクスが占める見通しだ。


AI光インターコネクトのバリューチェーン——光学薄膜はどこに効くのか

ここで、本稿の主役であるオプトランがなぜこの物語に登場するのかを説明しなければならない。同社は半導体チップを作る会社でも、光トランシーバを作る会社でもない。作っているのは「光学薄膜を成膜する装置」である。
光学薄膜とは、レンズやフィルタ、ミラー、ガラスといった光学部品の表面に付ける、ナノメートル単位の極薄の膜のことだ。屈折率の異なる膜を何層も積み重ねると、光の干渉によって「この波長だけ通す」「この波長だけ跳ね返す」という機能が生まれる。メガネの反射防止コーティング、自動車のバックミラーの防眩コート、一眼レフのレンズ、LED照明の増反射膜——身の回りの光学製品のほぼすべてに、この技術が使われている。
そして光通信の世界では、この多層膜がWDM(波長分割多重)の心臓部になる。1本の光ファイバーに複数の波長の光を同時に流し、受け側で波長ごとに分離する。この分離を担うのがTFF(薄膜フィルタ)で、数十層から数百層の誘電体多層膜をガラス基板に真空蒸着やイオンアシスト蒸着で積み上げて作る。オプトランはまさにこのDWDM(高密度波長分割多重)用光部品向け蒸着装置を祖業として1999年に生まれた会社である。
オプトランが2026年8月7日の決算説明資料で「AI光インターコネクトのバリューチェーン」と題して示した技術マップは、同社の立ち位置を明快に説明している。蒸着装置はレンズの反射防止膜やWDM用の光学薄膜を担い、レーザーや光フィルター、光モジュールに向かう。スパッタ装置は金属電極、透明導電膜、機能膜を担い、シリコンフォトニクスの光集積回路や薄膜ニオブ酸リチウム、光エンジンに向かう。ALD装置はパッシベーションやバリア膜、ナノレベルの反射防止膜を担い、シリコンフォトニクスとCPOの信頼性を支える。エッチング装置は導波路と誘電体の加工を、GCIB装置は表面のトリミングと平滑化と活性化——つまり基板接合やパッケージ、光学調整——を担う。そしてナノインプリントは微細ナノパターンと選択成膜を担い、メタグレーティングや光I/Oに向かう。
要するに、シリコンフォトニクスの製造工程のうち、リソグラフィやイオン注入といった「半導体の本流」ではなく、光が実際に通る界面まわりの成膜・表面加工・微細加工という「光学に隣接した工程」に、オプトランの装置群がまとまって刺さる構図になっている。これが同社の主張する「光学薄膜+機能膜+表面工学+微細ナノ加工を横断する技術ポートフォリオ」の中身である。

オプトランという会社——「モノではなくノウハウを売る」

オプトランは1999年8月25日設立、本社は埼玉県鶴ヶ島市、資本金4億円、連結従業員620名。東証プライム上場で、証券コードは6235。会社四季報は特色を「光学薄膜装置を製販、プロセス設定とアフターサービスまでの一貫に強み。中国生産・販売が柱」と記す。2025年12月期の連結事業構成は成膜装置が100%、海外売上比率は97%である。
製品ラインナップは幅広い。主力のイオンアシスト蒸着装置OTFCシリーズを軸に、連続式や汎用型、超多層膜用の各種蒸着装置、光学膜用のスパッタ成膜装置、リアクティブプラズマ蒸着装置、プラズマ原子層堆積装置、ドライエッチング装置、ガスクラスターイオントリミング装置までを揃え、さらに装置の心臓部にあたるイオンソースと光学モニタも自社で作っている。
具体的に何が作られているかを見ると、この会社の性格がわかりやすい。スマートフォンでは、カメラモジュールのレンズ反射防止膜、赤外線カットフィルタ、顔認証用のバンドパスフィルタ、タッチパネル表面の防汚膜、筐体裏面のカラー加飾膜。自動車では、車載カメラやヘッドアップディスプレイ、車載ディスプレイ向けの反射防止膜やバンドパスフィルタ。LED照明では増反射膜と透明導電膜と圧電膜。ほかに医療機器、防犯カメラ、スマートグラス、通信デバイス、そして光通信のバンドパスフィルタである。
なかでも同社の技術水準を象徴するのが顔認証用フィルタである。黒く見えるガラス部の裏に、赤外線だけを透過させる膜を作る。1層あたり約100ナノメートルの薄膜を50層以上積み重ね、しかも膜厚のむらは0.3%以内に抑えなければ性能が出ない。この分野でオプトランは長らく他社の追随を許さない状態にあったと報じられている。
そしてビジネスモデルの核心は、装置そのものではない。埼玉りそな銀行系のシンクタンクが発行する『埼玉りそな経済情報』2025年9月号のインタビューで、範賓(はん ひん)社長は同社のポリシーを「モノではなくノウハウを売る」と表現している。顧客ごとに異なる仕様、高難易度の光学薄膜の要望に対し、蓄積した成膜データをもとに光学薄膜の設計と成膜条件のプログラミングを行い、それに合わせて装置を開発し、装置を動かすノウハウごと顧客に渡す。社員の相当数がセールスエンジニアとして顧客に張り付き、顧客の近くで開発・製造する体制を敷いているのは、このモデルを成立させるためである。日本、台湾、中国、ベトナム、フィンランド、米国に拠点を置いているのも、「アメリカの最終製品メーカーの近くで仕様を詰め、製造現場のアジアで作る」という同社の商流に対応したものだ。
創業秘話——シンクロンで却下された「200層」から生まれた会社

オプトランの創業者は孫大雄(そん だいゆう)氏、現在は名誉会長である。中国出身で、のちに日本に帰化した。
投資家向けの会社説明会資料や『埼玉りそな経済情報』の記事、複数の企業分析記事が伝えるところによれば、孫氏は1948年に上海郊外で生まれ、文化大革命の時期に農村へ8年間下放された経験を持つ。その後、蘇州大学で機械工学を修め、国営製薬会社で製造機械のエンジニアとして働いた。1987年に来日し、埼玉大学大学院で真空成膜技術を学ぶ。そして横浜の真空薄膜形成装置メーカー、株式会社シンクロンに入社し、研究開発部門で光学成膜装置の開発に従事した。
転機は1996年である。開発課長だった孫氏は、プロジェクトチームリーダーとしてDWDMフィルター製造装置の開発に取り組み、日本で初めてその開発に成功したとされる。1平方ミリメートルのガラスに200層を成膜し、光ファイバーの波長を分離する——当時の光通信ブームの真っ只中で、技術的には画期的な成果だった。ところがシンクロンはこれを製品化しない判断を下す。この「全否定」が起業の引き金になった。
1999年8月25日、東京都大田区に各種光学成膜装置の製造販売を目的として株式会社オプトランが設立される。翌9月には埼玉県川越市に第1工場を新設した。日本の中小企業の技術集積を活かせる場所として、埼玉が選ばれている。
そこからの立ち上がりは速かった。2000年3月、光通信用多層膜フィルタ成膜装置の販売を開始。同年12月には成膜装置部品の製造販売を目的に上海に子会社を設立し、早々に中国へ生産の足場を置いた。翌2001年にはイオンアシスト蒸着装置のOTFCシリーズを投入し、川越に第2工場を新設、イオンソースの自社生産も始めている。2004年にはイオンソースが「第16回中小企業優秀新技術・新製品賞」を受賞し、2006年には第一回渋沢栄一ベンチャードリーム賞を受けた。
2006年に汎用型のGenerシリーズを出し、2007年8月には光学薄膜装置の生産を川越から上海へ順次移管。デジタルカメラ、プロジェクター、そしてLED照明と、応用分野を3年に一度のペースで乗り換えていった。範社長はこの時期の経営方針を「3年に1度を目標にして、新たな事業展開を目指していました。これは相当困難なことなのですが、世界規模でシェアを拡大するために必要なことでした」と振り返っている。
2009年には光学膜用のスパッタ成膜装置、2011年には反応性プラズマ成膜装置を出した。2010年10月にはアルバックと、日本を除く全世界での光学薄膜用成膜装置の販売で業務提携し、アルバックがオプトラン株の13%を取得して筆頭株主となった。2013年には上海と台湾に販売会社を設立、2014年8月には米国法人を設立している。同じ2014年の11月には、中国の光学薄膜部品大手・浙江水晶光電科技がオプトラン株の20%超を取得して筆頭株主となった。この年の3月には孫大雄氏が社長を退いて代表取締役会長となり、林為平(りん いへい)氏が社長を継いでいる。
同社を一段上の企業に押し上げたのが、北米のスマートフォンメーカーへの全面採用である。関係の始まりは2011年、2014年に防汚膜向けスパッタ装置を初受注し、2016年にバックガラスと生体認証向けで本格採用が決まった。iPhone 8とiPhone Xでガラス筐体が採用されたことが決定打となり、2017年12月期は売上高が前年の2.2倍にあたる333億円、営業利益が3.1倍の73億円に急拡大した。受注高は525億円と、いまなお破られていない過去最高である。設立18年で光学薄膜装置のシェア3割を取り初の首位に立った、と伝えられるのがこの年だ。そして2017年12月、東京証券取引所市場第一部に上場した。
上場後は投資と提携で技術を買い足す段階に入る。2017年に中国の光学部品メーカーへ出資し、2018年にはフィンランドのAfly Solution、2019年には真空機器メーカーの安徽繁楓新能源科技へ出資。2019年8月にはAfly社のALD技術と自社プラズマ技術を融合したプラズマ原子層堆積装置を投入し、2021年にはドライエッチング装置を実用化、同年9月には光電子向け装置を担う子会社を上海に設立した。2022年3月、林為平氏が取締役会長に、範賓氏が代表取締役社長執行役員に就任する。2023年7月にはAIメカテックとの合弁でナノリソティックスを設立し、ベトナムにも現地法人を設立。同年8月、本社を川越から鶴ヶ島へ移した。2025年2月にはAIメカテックへ出資して資本業務提携に踏み切っている。
範社長は同社創業期の入社組である。学会で孫氏と知り合い、「世界最高技術の膜を作りたい。そのためには成膜技術だけでなく最高品質の装置も開発しなければならない。この会社ならそれができると思い入社しました」と語る。工学博士。社長就任時に掲げた目標は、「会社を大きく成長させることよりも強い企業、100年続く企業にしていくこと。そして、当社の技術で業界や社会に貢献していくこと」の二つだったという。

2026年12月期上期の実像——受注は最高水準、損益は赤字転落

第2次創業の宣言は、決して業績の絶頂で放たれたものではない。むしろ逆である。
2025年12月期は、売上高こそ338億円と前年比4.5%増で計画を上回ったが、利益は総崩れだった。営業利益は33億円とほぼ半減、経常利益は32億円と6割減、最終利益も30億円と半減している。棚卸資産減損や貸倒引当金といった一時費用が13億円、出資先の安徽繁楓新能源科技が上場申請に伴い持分法適用会社から外れた影響が10億円のマイナス、浙江晶馳光電科技の開発負担増が5.5億円のマイナスと、重石が重なった。売上高総利益率は2023年12月期の50.1%から2024年12月期に44.7%、そして33.8%へと急落している。会社は一時要因を除けば37.6%だと説明するが、それでも構造的な低下である。最大の犯人は収益性の高いALD装置の失速で、売上高に占めるALD装置の比率は2023年12月期の34%から2025年12月期には3%まで落ちた。
その底から、受注が急反転した。2025年12月期の受注高は実質ベースで412億円と前年比4割増で過去3番目の水準まで戻り、2026年12月期に入って加速する。1〜3月期は148億円で前年同期比7割増、4〜6月期は159億円で8割増と、前四半期比では8四半期連続の増加となった。会社の社内計画に対して、4〜6月期だけで50億円以上の過達である。6月末の受注残高は480億円と前年同期比8割増で、過去最高だった2022年12月期の492億円に迫った。顧客からの前受金にあたる契約負債も245億円と過去最高を更新している。
牽引役は完全に入れ替わった。4〜6月期の受注内訳を見ると、AIスマートフォン領域は31億円で前年比26.1%減と減速したのに対し、光学部品は97億円と前年の3.5倍に伸びた。このうち光通信関連は前年の9倍に膨らみ、光学部品の7割強を占めている。半導体光学融合・電子デバイスはペロブスカイト太陽電池関連の貢献で11億円と前年のほぼ3倍、EV/コネクテッドカーは9億円で3割増だった。会社は通期の事業領域別受注計画を大きく組み替え、光通信を期初計画の50億円程度から5倍強の200億円へ上方修正する一方、AIスマートフォンを140億円程度から120億円程度へ、自動車関連を70億円程度から半減へと引き下げた。
一方、損益はまだ追いついていない。4〜6月期は売上高89億円で前年比5割増、営業利益も6割増と伸びたが、経常利益の伸びは2割弱にとどまり、最終利益に至っては8割近く減っている。上期累計では、売上高158億円と前年同期比14.5%増を確保しながら、営業利益はほぼ横ばい、経常利益は3割超の減益、そして中間損益はわずかに赤字へ転落した。売上高総利益率は4〜6月期で32.3%。会社は「未検収案件の回収が一部遅延し、監査において減損対象になったこと」を主因に挙げ、3Q以降に回収が進めば減損は減殺されるとしている。持分法投資損益も上期は2.7億円の損失で、AIメカテックの黒字が浙江晶馳光電科技の赤字を打ち消しきれなかった。
装置の受注から検収までのリードタイムは9カ月。つまり上期に積み上がった受注の大半は、2026年12月期ではなく2027年12月期の売上として計上される。会社が受注の大幅上振れにもかかわらず通期業績予想——売上高382億円、営業利益62億円、経常利益74億円、純利益56億円——を据え置いたのは、その時間差を素直に反映した結果である。
貸借対照表では別の変化が起きた。6月末の総資産は1,406億円と、2025年12月末の861億円から一気に膨らんだ。純資産も576億円から939億円へと363億円増えている。投資有価証券が42億円から471億円へ跳ね上がったためだ。原因は、出資先のマイクロOLED専業メーカーSeeYA Technology(視涯科技)が2026年3月25日に上海証券取引所の科創板へ上場したことだ。オプトランの出資比率は3.89%にすぎないが、時価評価によりSeeYA関連だけでその他投資評価差額金が6月末で346億円に達した。上期の包括利益は370億円、1株当たり純資産は1,439円から2,348円へ跳ね上がった。自己資本比率は66.6%を維持している。




「第二の創業」の設計図

こうした状況の中で、オプトランは2026年2月13日の決算説明会で新中期経営目標を発表し、2026年からを「第2次創業」と定義した。同社は1999年に光学薄膜成膜装置企業として創業したが、まず成膜製品事業の軌道化とパートナーシップ企業との連携強化によって「光学薄膜成膜企業」へ業容を拡大し、さらにシリコンフォトニクス事業の立ち上げによって「光学融合企業」へ進化させる、という三段構えである。2026年8月7日の資料では、この最終段階の呼称は「光電融合企業」となり、中間段階も「光学薄膜装置・材料企業」と言い換えられている。
数字に落とすとこうなる。2026年12月期のグループ売上高は532億円。うち連結売上高が382億円で、これはすべて光学薄膜成膜装置である。残る150億円は持分法適用の成膜製品事業だ。2028年12月期はグループ売上高660億円に伸ばし、連結480億円の内訳は装置が440億円、シリコンフォトニクスが40億円。営業利益は100億円、営業利益率20.8%を掲げる。そして2030年12月期はグループ売上高840億円、連結640億円のうち装置が480億円、シリコンフォトニクスが160億円。営業利益140億円、最終利益120億円という絵を描く。
中期経営目標の指標そのものも組み替えられた。2025年までの「営業利益率20%以上、ROE10%以上、連結配当性向30%以上」から、2026年以降は営業利益率に代えて「最終利益率15%以上」を掲げる形に変わっている。営業利益率を外して最終利益率を主軸に据えたのは、持分法投資損益や出資先の評価益といった営業外の比重が高まる事業構造を、目標体系のほうから追認したものと読める。
この設計図を支えるのが、資本参加のネットワークである。中核は浙江晶馳光電科技で、水晶光電が51%、オプトランが49%を出資する合弁会社だ。同社は光学薄膜成膜装置を活用したスマートフォン向けカメラモジュール関連の製品事業を担い、今後3年間で216億円の設備投資を計画し、2026年12月期に売上高150億円と黒字転換を目指す。2025年12月期は先行開発投資で純損失を計上し、2026年12月期も上期は損失が続いたが、6月に単月黒字化し、3Qからスマホ関連部品の量産が本格化する。
その周囲に、ALD・エッチング・GCIB装置事業を担う上海の子会社、ナノインプリント装置事業のナノリソティックス、そして2025年2月に33.3億円を投じて17.58%を取得したAIメカテックが並ぶ。さらに真空機器の安徽繁楓新能源科技、静電吸着システムの筑波精工、新型リチウムイオン電池のIntecells、マイクロOLEDのSeeYA Technology、LiDARのSteraVisionと、少数出資が連なる。範社長の言葉を借りれば「すべてを自社で開発すると時間も費用もかかります。ですから、自社の技術が及ばない部分はその技術を持つ企業と手を組んで開発してきました」という思想の具現化である。
そしてシリコンフォトニクスについては、パートナー戦略図の最上段に「シリコンフォトニクス装置・製品事業」という枠が置かれているだけで、提携先の社名は入っていない。先行開発費として11億円が計上されているのみで、2026年12月期のシリコンフォトニクス売上計画はゼロである。


強み——6つのプラットフォームと、装置を売らない営業

オプトランの競争優位を、投資家の目線で整理すると三層になる。
第一に、プロセス技術の幅である。蒸着、スパッタ、リアクティブプラズマ、ALD、ドライエッチング、GCIBという6つの成膜・加工プラットフォームを自社で持ち、そこにナノインプリントを合弁で足した。光学薄膜専業のメーカーで、原子層レベルの成膜と、ナノレベルの微細加工と、サブナノの表面平滑化まで一社で揃えている例は多くない。シリコンフォトニクスの工程は「膜を付ける」「削る」「均す」「貼る」の組み合わせであり、この4つを横断できることが、装置単品ではなく工程パッケージで提案できる余地を生む。イオンソースと光学モニタという基幹部品を自社開発している点も、装置の性能を自社で握る構造につながっている。
第二に、参入障壁としてのプロセスノウハウである。光学薄膜装置は装置そのものより「その装置で狙った膜が出せるか」が価値であり、これは顧客ごとの膜設計データと成膜条件の蓄積に依存する。50層の生体認証フィルタで膜厚むらを0.3%以内に収める、といった水準の再現性は、装置の図面をコピーしても手に入らない。だから同社は装置を納めて終わりにせず、セールスエンジニアが顧客の現場に張り付いてノウハウを移転する。この形式知化されにくい資産が、価格競争に対する緩衝材になっている。
第三に、財務の余力である。2026年6月末で現金及び預金は391億円あり、有利子負債は長期の54億円のみ、自己資本比率は66.6%。上期の営業キャッシュフローは、契約負債の増加に支えられて73.5億円の収入となった。研究開発費は2025年12月期で38億円、売上高の11.2%という高水準を維持している。これは、業績が谷にあっても研究開発と出資を止めずに済む体力を意味する。株主還元も、1株当たり配当金を毎年2円ずつ、2024年12月期の52円から2026年12月期の56円へと積み上げつつ、自己株式取得を2年続けて実施し、総還元性向は2年連続で100%を超えた。
そしてこれらを束ねているのが、パートナー戦略という調達方法である。ALD技術はフィンランドのAfly Solutionから、ナノインプリントとインクジェット塗布はAIメカテックから、製品事業の量産能力は水晶光電との合弁から。自前主義を捨てて技術を「買う・借りる・組む」で埋めてきた履歴は、シリコンフォトニクスという未知の領域に踏み込むうえでの実績になっている。

課題——粗利率、単一の需要源、そして「まだ売上ゼロ」の新事業

同時に、看過できない弱点も並んでいる。
最も重いのは収益性の劣化である。売上高総利益率は3年で50.1%から44.7%、33.8%へと落ち、2026年12月期の4〜6月期は32.3%だった。高採算のALD装置の比率が売上ベースで34%から3%へ、そして2026年上期はほぼ消滅と言っていい水準まで落ちたことが直撃した。新型装置の比率も2025年12月期通期の43%に対し、2026年に入ってからは1〜3月期が14%、4〜6月期が32%と低い。単価と採算の高い装置が売れず、汎用装置で数量を稼ぐ構図になっている。
運転資本も重い。6月末の棚卸資産は237億円で、うち仕掛品が188億円。棚卸資産回転日数は360日に達する。9カ月のリードタイムに加え、基幹部品の品不足が指摘されており、受注が伸びるほど仕掛品が膨らむ。上期には未検収案件の回収遅延が減損として計上され、粗利率をさらに押し下げた。貸倒引当金の計上も続いている。
需要源の偏りも構造的だ。2025年12月期の連結事業は成膜装置が100%、海外売上比率は97%。受注の内訳を見ると、これまではスマートフォンのカメラモジュールが圧倒的で、AIスマートフォン領域の受注に占めるカメラモジュール比率は2023年12月期通期の5割弱から2025年12月期に85%、2026年上期には9割強まで上昇した。会社は世界のスマホ販売台数が2026年に前年比1割減の11億台へ落ち込むと見ており、自動車関連も中国の販売減速とADAS部品の価格競争で通期受注計画を半減させた。いま光通信が急伸しているが、それは「スマホ一本足」が「光通信一本足」に置き換わるリスクと表裏である。過去にも2017年12月期に受注525億円という記録を打ち立てた翌年から、2年連続で受注が減少した実績がある。
そしてシリコンフォトニクス事業そのものが、現時点では計画上の存在にとどまる。2026年12月期の売上計画はゼロ、開示されているのは11億円の先行開発費と技術マップだけで、具体的な製品名、顧客名、提携先はまだ公表されていない。2028年12月期に40億円、2030年12月期に160億円という数字は、いま何かが動いているという証拠ではなく、これから作る事業の目標値である。
ガバナンス面の変化も記録しておくべきだろう。会計監査人は2026年3月26日の定時株主総会をもって、有限責任大有監査法人からMooreみらい監査法人へ交代した。会社は「今後の事業展開等への適合や、専門性、独立性、品質管理体制及び監査報酬等について総合的に勘案した結果」と説明している。


競合とサプライチェーン

光学薄膜成膜装置の競合は、まず創業者の古巣であるシンクロン(横浜市西区みなとみらい、1951年5月設立)である。真空薄膜形成装置の専業で、高速IAD成膜装置や光学薄膜形成装置、光通信DWDM用薄膜形成装置などを持つ。決算公告ベースで公表された直近の業績は、売上高356.6億円、営業利益24.4億円、経常利益16.6億円、当期純利益8.65億円。オプトランの2025年12月期は売上高338.6億円、営業利益33.3億円だから、規模はほぼ拮抗しており、収益性ではオプトランがやや上回る一方、売上規模ではシンクロンが上回る。かつてオプトランが「シンクロンの独占を崩した挑戦者」だった構図は、いまや同格の2社が並走する構図に変わった。
海外勢では、スイスのビューラー・ライボルド・オプティクス、同じくスイスのEvatec、米国のDenton Vacuumが主要プレーヤーとして挙がる。加えて、日本ではアルバック(6728)が光学膜用途を扱っており、2010年にはオプトランと日本を除く全世界での販売提携を結び、同社株の13%を取得して筆頭株主になった経緯もある。アルバックは2024年12月末時点でオプトランの大株主上位に名を残していたが、2025年12月末の上位10名からは外れている。
サプライチェーンの構造は、この会社を評価するうえで最重要の論点かもしれない。生産の主力は埼玉県鶴ヶ島の本社工場と中国・上海工場で、加えて台湾苗栗県の工場、ベトナムの現地法人を持つ。相互関税の影響に備え、インド、日本、ベトナム、中華圏での拠点拡充を計画しており、スマートフォンのサプライチェーンがベトナムとインドへ広がるのに合わせて、インドでの成膜装置の販売地域を拡充する方針を掲げている。
一方で為替の構造は複雑だ。製造装置の輸出売上高は米ドル建て依存度が7割程度と高く、製造原価は中華圏生産への依存度が高いため人民元の変動を受ける。会社が示す感応度によれば、対ドルで1円の円高が進むと営業利益は年換算で1.5億円減り、逆に対元での円高は利益を押し上げる。2026年12月期の為替前提は1ドル148円・1元22円だが、4〜6月期の実績は1ドル159円台・1元23円台だった。この差を会社の感応度に当てはめると、ドルに対する円安による年換算17億円ほどの押し上げと、元に対する円安による15億円ほどの押し下げが、ほぼ相殺する計算になる。円安が単純な追い風にならないのが、この会社のコスト構造である。
そして最大の非財務的論点が、資本と地理の三角形である。筆頭株主は中国・深圳証券取引所に上場する浙江水晶光電科技で、議決権比率は2026年6月末の株主名簿で15.75%。同社はオプトランの「その他の関係会社」に区分されるが、会社は「経営上の制約を受けておらず、独立して事業活動を行っている」と明記している。生産は上海が主力、顧客は中華圏が中心、しかし最終需要は米国のハイパースケーラーを起点に世界へ広がる——この三角形をどう評価するかは、地政学リスクの読み方によって大きく変わる。会社は半導体・原油の価格上昇について「直接的な影響は軽微だが、間接的な影響を注視している」としている。


投資家・アナリストはどう見ているか

2026年のオプトラン株は、日本市場でも屈指の値動きを見せた。1月5日に付けた年初来安値1,889円から、5月11日の年初来高値4,910円まで、実に2.6倍の値幅である。その後は調整し、決算発表日である8月7日の終値は3,165円、8月14日の終値は3,210円だった。時価総額はおよそ1,420億円、予想PERは22.87倍、PBRは1.37倍、予想配当利回りは1.74%である。
セルサイドのカバレッジは驚くほど薄い。IFIS株予報のデータでは対象アナリストはわずか1名で、直近12カ月に公表されたレーティングはジェフリーズによる2026年6月24日の1件のみ。同社は投資判断を「Hold」から「Buy」へ引き上げ、目標株価は5,000円から4,500円へ引き下げた。株価が5月に4,910円まで駆け上がった後の調整局面で、目標株価をやや切り下げつつも上値余地が開いたと判断した格好である。IFISの想定株価レンジは、PBR基準の理論株価が4,514円、上値目途6,655円、下値目途2,374円となっている。
株主構成の動きも雄弁だ。2026年6月末の筆頭株主は浙江水晶光電科技の15.75%で、以下は日本マスタートラスト信託銀行の13.22%、日本カストディ銀行の7.36%と信託銀行が続く。個人では創業者の孫大雄氏が2.96%、林為平氏が2.29%、範賓氏が1.77%を持ち、上位10名の合計は54.26%を占める。なかでも目を引くのは、著名個人投資家で株式会社Kaihouを竹入敬蔵氏と共同で率いる井村俊哉氏が2.1%を保有し続けている点だ。
一方で、この2026年の上昇局面では内部者と親会社の売却が観測された。孫大雄氏は2026年5月18日を報告義務発生日として、保有割合を7.78%から3.77%へと半分以下に引き下げる変更報告書を提出している。提出事由には1%以上の減少に加え、担保契約等重要な契約に関する変更・締結も併記されている。浙江水晶光電科技も5月に持ち分を1ポイント引き下げた。海外機関投資家では、ウエリントン・マネージメント・カンパニーが4月末時点で1.5ポイント減らして4.13%とした一方、シュローダー・インベストメント・マネジメントは2025年11月に5.2%で新規登場し、2026年5月時点でもほぼ同水準を維持している。JSRは2025年に5.21%から1.27%へ大きく引き下げた。
メディアの取り上げ方は、テーマ株としての側面が強い。株探は2026年3月4日の特集で光電融合技術関連銘柄を並べ、AIデータセンターの接続を電気から光へ置き換える流れと、エヌビディアのCPO採用を2026年の転換点として整理した。みんかぶは2025年11月に「オプトランが急反騰、半導体光学融合・電子デバイスなど牽引し7〜9月受注高2.6倍」と報じている。個人投資家向けメディアでは、光電融合関連の一角として、膜厚精度と均一性を武器にAIデータセンター需要の恩恵を受ける装置メーカーという位置づけで紹介されることが多い。
なお、オプトランのIR資料が異例に「ブローカーレポート的」な体裁——市場予測、他社株価、バリュエーション表、感応度分析まで盛り込んだ構成——になっているのには理由がある。IR担当の常務執行役員である石野雅彦氏は、東海東京調査センターでグローバルテクノロジー調査室チーフアナリストを務めた半導体アナリスト出身である。決算資料に業界予測と競合企業の売上推移が並ぶのは、その出自を反映している。


VCの視点で読む「第二の創業」

ここからは、事業会社ではなく投資家の帳簿としてオプトランを読み直してみたい。この会社を単なる装置メーカーとして評価すると、いくつかの重要な事実を取りこぼす。
第一に、2026年6月末のオプトランは、貸借対照表の3分の1以上が他社の株式になっている。総資産1,406億円のうち投資有価証券が471億円、出資金が67億円。上期に本業で稼いだ営業利益が10億円強なのに対し、包括利益は370億円である。数字だけを見れば、装置事業を併設したベンチャーキャピタルに近い。SeeYA Technologyの科創板上場ひとつで純資産が363億円増えたという事実は、この会社の企業価値がどこから生まれているかを冷徹に示している。
第二に、そのポートフォリオ構築の論理は、まさにVCのそれである。ALD技術はフィンランドのAfly Solutionから、ナノインプリントはAIメカテックから、量産能力は水晶光電との合弁から。少数出資で技術の選択権を買い、うまくいったものに追加投資し、上場すれば評価益を得る。オプトランがシリコンフォトニクスに自前主義で挑まないのは、能力がないからではなく、これまで20年以上そうやって新分野に入ってきたからだ。第2次創業とは「事業転換」であると同時に「投資テーゼの張り替え」でもある。
だが、VCの目線に立てばこそ見えるリスクがある。少数出資は支配ではない。浙江晶馳光電科技の49%は、損失を持分法で取り込む義務を伴うが、量産の立ち上げ時期も設備投資のペースも決めるのは51%を握る水晶光電である。中期経営目標が「グループ売上高=連結売上高+成膜製品(持分法)」という形式で提示されている点も、注意深く読む必要がある。2026年12月期の532億円のうち150億円、2030年12月期の840億円のうち200億円は、オプトランが連結しない売上である。企業価値評価の観点では、この持分法ラインは連結売上と同じ重みでは扱えない。
第三に、シリコンフォトニクス事業は本質的にコールオプションである。行使期限は2028年、行使価格は先行開発費11億円と、これから積み上がる研究開発と設備投資。原資産は、AIデータセンターの光インターコネクト市場が2030年に1,000億ドル規模へ迫るという業界予想である。ここでVCが問うべきは「どこに楔を打つか」であり、開示された技術マップから読める答えは、アプライドマテリアルズやラムリサーチと300ミリウェハーの主流工程で正面から戦うことではない。GCIBによる表面活性化と基板接合、導波路や誘電体のエッチング、メタサーフェスのナノインプリント、信頼性を担保するALDパッシベーション——半導体装置大手が本気で取りに来ていない、光学に隣接した工程を先に押さえる、というニッチ先行型の戦略である。防御可能性は高いが、同時に狙える市場規模の上限も規定する。2030年に連結売上640億円のうちシリコンフォトニクスが160億円という絵は、この現実的な射程感と整合的だ。
第四に、バリュエーションの落とし穴がある。PBR1.37倍は一見割安に見えるが、その分母である1株当たり純資産は半年で1,439円から2,348円へ跳ね上がっており、増加分のほとんどはSeeYA株の時価評価である。そのSeeYA株は、会社開示によればIPO価格から6月末までに2倍以上へ上げた後、7月末には3割超下げている。6月末時点でSeeYA関連のその他投資評価差額金は346億円だったから、7月末の株価水準がそのまま続けば、この評価差額金は単純計算で100億円規模が剥落することになる。しかも売却制限は上場後1年、つまり2027年3月まで解けない。会計上の純資産は厚いが、それは流動性がなく、かつ他社の株価に振り回される厚みである。営業ベースの実質的な簿価はもっと薄いと見るのが妥当だろう。
第五に、いま最も信頼できるシグナルは何かという問題がある。筆者の見立てでは、それは過去最高圏の受注残高ではなく、契約負債が過去最高を更新したという事実である。契約負債は顧客が前払いした現金であり、キャンセル可能な受注よりも顧客のコミットメントが強い。上期の営業キャッシュフロー73.5億円も、その契約負債の増加に支えられている。装置が売れる前に顧客が現金を置いていっている——これは需要の実在を示す、極めて硬い証拠である。
第六に、時間軸の整理が要る。リードタイム9カ月という事実は、上期の受注急増が2026年12月期の損益にはほとんど寄与しないことを意味する。光通信の受注が5倍強に上方修正されても通期業績予想が据え置かれたのは、会社が誠実にその時間差を反映した結果だ。したがって、2026年の株価がすでに織り込むべきは2027年12月期の業績である。そして2027年12月期の売上高を規定するのは、いまこの瞬間の受注ではなく、2026年後半から2027年前半にかけての受注の持続性——つまりハイパースケーラーの設備投資が2027年も伸び続けるかどうか、である。オプトランが自社資料で集計したハイパースケーラー5社の設備投資合計は、2025年の3,762億ドルから2026年に7,486億ドル、2027年には1兆ドルを超える見通しで、いずれも従来予想から上方修正が続いている。この前提が崩れたとき、9カ月のリードタイムは受注から売上への時差ではなく、下落の増幅装置に変わる。
最後に、この会社の歴史そのものが最良のリスク教材である。2017年12月期、北米スマートフォンメーカーの全面採用によって受注は525億円へと2.5倍化した。その翌期の受注は2割超減り、翌々期はさらに減った。単一の設備投資サイクルに乗った装置需要は必ず平均回帰する。オプトランが第2次創業でやろうとしているのは、まさにこの平均回帰の振幅を小さくすることだ。スマホという単一需要源に依存した結果、2025年12月期に営業利益が半減した経験を踏まえ、構造の異なる第二・第三の収益源——持分法の製品事業と、連結のシリコンフォトニクス事業——を作る。その意味で、第2次創業は攻めの宣言であると同時に、極めて防御的な事業ポートフォリオ再設計でもある。


これから何が計測されるか

短期から中期にかけて、検証可能なマイルストーンが並んでいる。
直近では、2026年8月28日に東京・九段会館テラスでオプトラン技術セミナーが開催される。テーマは「光電融合・AI・データセンターの技術動向とソリューション」で、基調講演にはNTTイノベーティブデバイスの金子明正氏、光量子コンピュータを開発するOptQCのWarit Asavanant氏、GCIB技術のIIPTの潟岡泉氏が並ぶ。IOWNを支える光学薄膜技術への期待、光量子コンピューター産業の勃興がもたらすビジネス機会、そしてGCIBによる難エッチング材料の加工と基板接合——各基調講演の後には同社講演が予定されている。なお同セミナーは顧客向けであり、投資家・アナリストおよび競合製品を扱う企業の申し込みは受け付けないと明記されている。登壇者の顔ぶれ自体が、オプトランがどの方向へ人脈を張っているかを示す情報である。中期経営目標の最上段に「モビリティ、シリコンフォトニクス、AGI/ASI、光量子、太陽光、ロボット、宇宙関連」が並び、OptQCが2025年10月にシリーズA1で15億円を調達し、2026年8月3日にはNTTと資本業務提携を締結して2030年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級の光量子コンピュータの実現を目指すと発表したことを踏まえれば、光量子コンピュータ向けの光学薄膜という新市場を同社が真剣に見ていることが読み取れる。
次に、2026年9月9日から11日まで深圳で開催される中国国際光電博覧会(CIOE 2026)。会社自身が決算説明資料で名指ししている光電産業最大級の展示会で、同時開催のイベントと合わせて5,000社を超える出展が見込まれる。ここでの引き合いの温度が、3Q以降の受注に直結する。
3Q(7〜9月期)の受注については、会社は100億円程度を想定しつつ「7月の出足は順調」としている。8四半期続いた前四半期比増加が止まるか続くかが最初の分岐点だ。同時に、浙江晶馳光電科技が3Qからスマホ関連部品の量産を本格化させ、通期で持分法投資利益への転換を実現できるかが問われる。上期に2.7億円の持分法投資損失を計上した項目が、下期にプラスへ反転するかどうかは、経常利益74億円という通期計画の達成可否に直結する。また、上期に粗利率を押し下げた未検収案件の回収が3Q以降に進み、減損が減殺されるという会社説明が実際に数字で確認できるかも重要である。3Q決算の発表は例年11月中旬である。
貸借対照表側では、SeeYA株の時価が3Qにどう振れるかが純資産と包括利益を大きく動かす。売却制限の解除は上場から1年後の2027年3月であり、それまでは含み益のまま抱え続けることになる。加えて、安徽繁楓新能源科技が上場申請を検討していると開示されており、これが実現すれば第二の評価益イベントとなる。
そして本丸のシリコンフォトニクスである。中期計画上、連結売上として最初の40億円が立つのは2028年12月期である。装置のリードタイムが9カ月であることを踏まえれば、2028年に売上を立てるための受注は2027年中に発生していなければならない。したがって2027年——遅くとも2027年前半——に、提携先の公表、製品ラインの発表、あるいは初号機の受注といった具体的な動きが出てくるかどうかが、この計画の信憑性を測る最初の実測点になる。逆に2027年が何の発表もないまま過ぎれば、2028年40億円という数字は自動的に後ろ倒しになる。
さらに長期の論点として、日本取引所グループが2024年9月に公表したTOPIX改革がある。2028年7月までに段階的に採用銘柄が絞り込まれ、継続基準は年間売買回転率と浮動株時価総額の二つを同時に満たすことが必要になる。オプトランは決算説明資料で「選定基準に該当するように対応を進めております」と明記しており、株主還元とIR活動の充実を株価向上施策として位置づけている。上位10名で54%を占める株主構成と、アナリスト1名という薄いカバレッジは、この基準に照らせば構造的な課題である。
光学薄膜という、メガネのコーティングから始まって顔認証フィルタに至った技術が、AIデータセンターの光配線という次の巨大市場に届くのか。答えが出るのは2028年だが、その予兆は2027年の受注に現れる。
