前面パネルから、部品が消えた

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データセンター用のネットワークスイッチを正面から見ると、親指ほどの大きさの金属の部品が、64本ぎっしりと差し込まれている。この部品を一本残らず引き抜いてしまったスイッチが、いま実際にAIデータセンターへ出荷されている。

差し込まれていたのは光トランシーバーと呼ばれる小さな変換器だ。スイッチの中心にあるチップは電気で計算しているが、隣のラックまで数十メートル、電気の信号をそのまま銅線で送ると途中でぐしゃぐしゃに崩れてしまう。そこで前面パネルまで電気で運び、そこに刺さった変換器で光に変えて、光ファイバーへ送り出す。この変換器が、いま業界で最も高価な消耗品になっている。セミアナリシスの試算では、1.6テラビット級のものが1個およそ1,000ドル(約16万円)で、スイッチ1台分をそろえると7万ドル(約1,100万円)を超える。

問題は値段だけではない。チップから前面パネルまでは、基板の上を数十センチ。この数十センチを電気で走らせるために、信号の濁りを補正する専用の演算チップ(DSP)を積み、それが電気を食う。800ギガビット分を運ぶのに、変換器1個あたり15ワット前後。スイッチ1台で64個並べれば、それだけで1キロワット近くが「運ぶこと」だけに消えていく。

CPO(Co-Packaged Optics、共封止光学)は、この数十センチを数ミリに縮めてしまう発想だ。変換器の心臓部だけを取り出して「光エンジン」という小さな部品にし、スイッチチップと同じパッケージの中、チップのすぐ隣に並べて封じ込める。電気が走る距離が数ミリになれば信号は崩れないので、補正用のDSPが要らなくなる。メタが2025年9月末の国際会議ECOCで発表した実測では、従来の800ギガビット用トランシーバーが約15ワットだったのに対し、ブロードコムのCPOスイッチでは光エンジンと光源を合わせて約5.4ワット。同じ帯域を運ぶ電力が65%減った。

港のコンテナで言えば、船着き場のはるか手前でトラックからコンテナを積み替えていたのを、船のすぐ横まで持っていって直接クレーンで載せるようにした、という話に近い。運ぶものは変わらない。積み替える場所だけが変わって、その分の燃料が丸ごと浮く。

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なぜ「2026年」だったのか

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CPOという構想自体は新しくない。2010年代後半には論文も試作品もあった。当時実装されなかったのは、単純に、銅線のままで足りていたからだ。三井物産戦略研究所が2026年1月に公表したレポートは、この点をはっきり書いている。当時は「速度を求めるユーザーが少なく」、短い距離なら銅線のほうがコストでも信頼性でも有利だった、と。

その前提を壊したのがAIだ。生成AIの学習と推論は、GPUを数万台、いまや数十万台という単位でつなぎ、そのあいだで絶えず大量のデータをやり取りする。つなぐ本数が増えれば増えるほど、「運ぶこと」に消える電力の総量が効いてくる。データセンターの電力そのものが確保できなくなってきた局面で、運搬に使う電力を3分の1に落とせるという話は、性能の改善ではなく調達の問題になる。同じ電力枠の中でGPUを何台動かせるか、が直接変わるからだ。

もう一つが物理的な場所の問題だ。トランシーバーは前面パネルにしか置けないので、パネルの面積が本数の上限を決めてしまう。CPOはパッケージから直接ファイバーを引き出すので、この上限が外れる。同じ大きさの箱から、より多くの光ファイバーを出せる。

市場調査のライトカウンティングは2026年1月時点の見通しで、2026年から2028年にかけて出荷される800ギガビットおよび1.6テラビットのポートのうち、3割以上がCPOまたはLPO(DSPを省いた簡易型の光モジュール)になると予測している。同社はAIクラスタ向けの光トランシーバー市場そのものが2025年の165億ドル(約2兆6,200億円)から2026年に260億ドル(約4兆1,300億円)へ、6割増えるとも見ている。IDTechExはCPO市場が2036年に200億ドル(約3兆1,800億円)を超え、年率37%で伸びると試算する。

三井物産戦略研究所は2026年を「本格的な量産・実装フェーズに入る年」と位置づけ、「次世代AIインフラの主導権争いの起点になる」と書いた。その主導権を握りにいっているのが、スイッチを作るブロードコム、光エンジンを製造するTSMC、そしてAIインフラ全体を設計するNVIDIAの3社である。

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ブロードコム、三度目の正直

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CPOスイッチを実際に量産出荷しているのは、いまのところブロードコムだけだ。しかもこれは3回目の挑戦である。

最初のHumboldtは、25.6テラビットのスイッチに光エンジンを載せた、いわば練習用のプラットフォームだった。2代目のBaillyはTomahawk 5をベースにした51.2テラビットで、これが業界で初めて量産に乗ったCPOスイッチになった。そして3代目が、2025年10月8日に出荷開始が発表されたTomahawk 6 – Davissonである。

Davissonは102.4テラビット。6.4テラビットの光エンジンを16個、スイッチチップの周囲に配置している。1本のレーンあたりの速度が100ギガビットから200ギガビットへ倍になり、スイッチ全体の帯域も倍になった。ブロードコムは、従来の差し込み式トランシーバーと比べて光インターコネクトの消費電力がおよそ70%減ると説明している。

このDavissonで注目すべきは性能よりも、レーザーの扱い方だ。光エンジンをパッケージに封じ込めても、光を作り出すレーザー光源だけはパッケージの外に出し、前面から抜き差しできるモジュール(ELSFP)にしてある。現場のデータでは、光の系統で最も壊れやすいのがレーザーだからだ。熱を出すスイッチチップの真横に、熱に弱いレーザーを置きたくないという理由もある。壊れる部品だけを外に出して交換可能にしておく――この妥協が、CPOを実験室から出す条件になった。

信頼性については、メタが2025年のECOCで、ブロードコムの51.2テラビットCPOスイッチを使った評価結果を発表している。400ギガビット換算で累計100万ポート時間を超える運用で、リンクが一瞬切れる「フラップ」がゼロ。ブロードコムの光システム部門を率いるニア・マーガリット氏は「リンク断のない100万時間の達成は、品質への取り組みの強い裏づけだ」とコメントした。AIの学習ジョブは1本のリンクが数秒落ちるだけで全体が止まるので、この指標は電力削減と同じくらい重い。

会社全体の数字も追い風だ。2026年6月3日の決算説明で、ブロードコムはAI半導体の四半期売上が108億ドル(約1兆7,200億円)、前年同期比143%増だったと発表し、次の四半期は160億ドル(約2兆5,400億円)、2026年度通期で560億ドル(約8兆9,000億円)、2027年度は1,000億ドル(約15兆9,000億円)超を見込むとした。このうちネットワーク部分がAI売上の4割近くを占める。CEOのホック・タン氏は、1.6テラビット用のDSPやレーザーを含めた光の部材で「業界の事実上の標準」だと述べ、次世代の200テラビットスイッチをその四半期中にテープアウトすると明かした。第4世代のCPOはレーンあたり400ギガビットを狙って開発中だ。

次の答え合わせは、2026年9月2日の第3四半期決算である。

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TSMC ― 光を請け負う側に回った

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CPOの話でTSMCが出てくる理由は、一言でいえば「光の部品を、半導体の後工程で作るものに変えてしまったから」だ。

TSMCのCOUPE(Compact Universal Photonic Engine)は、光を扱う回路を載せたチップと、それを電気的に制御するチップを、SoICと呼ばれる3次元接合技術で上下に貼り合わせる。従来のように基板の上に横並びで置いて配線でつなぐのではなく、バンプを介さずに面で直接くっつけるので、あいだの抵抗と容量が極端に小さくなる。セミアナリシスは、この無バンプ接合によって同じ電力で23倍以上の帯域密度が得られると評価している。TSMC自身は、基板搭載版のCOUPEについて、基板上に差し込み式トランシーバーを置いた場合と比べて電力効率が2倍、遅延が10分の1になると説明している。

ロードマップは段階を踏んでいる。まず2025年に、従来型の差し込み式モジュールにCOUPEを入れて量産条件を固め、2026年後半に「COUPE on Substrate」――パッケージ基板の上にスイッチASICと並べて光エンジンを置く構成――を量産に乗せる。その次が、CoWoSのインターポーザ上でGPUやHBMと同じ土俵に光エンジンを載せる世代になる。

ここで効いてくるのが、NVIDIAもブロードコムも、このCOUPEを使っているという事実だ。ブロードコムは自社のファンアウト方式では100ギガビット毎レーンを超えられないという壁に当たり、TSMCに寄った。つまりCPOという競争は、上のレイヤーでは激しく争っているのに、その下の製造は一社に集まっている。TSMCは光の中身を設計しているわけではないが、光エンジンを作れる場所としてボトルネックの位置に立った。

もっともTSMC自身は、まだ楽な戦いだと思っていない。同社の先端パッケージ統合ディレクターであるシャン・ホウ氏は2026年4月、CPOの量産で解くべき課題として、ウエハー段階での光の検査、ファイバーアレイの実装、そして高速な光パッケージの組み立ての3つを挙げ、「サプライチェーン全体で足並みをそろえた技術革新が必要になる」と述べている。TSMCはASEとともに、業界団体SEMIが立ち上げたシリコンフォトニクス産業アライアンスの共同リードも務める。サムスンは光エンジンの投入を2027年、CPOの一括受託を2029年としており、追う側との差は2〜3年ある。

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NVIDIA ― 「使えるところは銅、使うしかないところは光」

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NVIDIAは2025年3月のGTCで、CPOを載せたスイッチを2つ発表した。InfiniBand版のQuantum-X Photonicsと、Ethernet版のSpectrum-X Photonicsである。前者は800ギガビットのポートを144本持ち、シリコンフォトニクスを冷やすために液冷を前提にした設計になっている。

Ethernet版は2026年に本格生産へ入った。NVIDIAは、レーザーの本数が従来の4分の1で済み、光の電力効率が5倍、AIの稼働継続時間が5倍、導入までの時間が1.3倍速くなると説明している。レーザーの数が減ることがそのまま故障率の低下になるので、この3つは別々の効果ではなく、同じ一つの設計判断から出ている。初期の採用先としてCoreWeave、Lambda、Oracle Cloud Infrastructureの名前が挙がっている。

供給網の顔ぶれが、この製品の性格をよく表している。シリコンフォトニクスのウエハーはTSMC、チップスケールの実装と検査は台湾のSPIL、レーザーチップはルメンタム、レーザーモジュールの組み立ては台湾のTFC、スイッチ本体の最終組み立てはフォックスコン。NVIDIAはさらに、コーニング、住友電気工業、センコーアドバンスコンポーネンツ、Fabrinetなどを含めたエコシステムを公表している。自社で光学部品を作るのではなく、既存の光通信産業を丸ごと自分の設計に巻き込む形だ。

そのうえでNVIDIAは、2026年3月2日にコヒレントとルメンタムへそれぞれ20億ドル(約3,180億円)、合計40億ドル(約6,360億円)を出資すると発表した。いずれも複数年の購買コミットメントと、将来の生産能力へのアクセス権を含む非独占契約である。3月31日にはマーベルにも20億ドル(約3,180億円)を出資し、シリコンフォトニクスでの協業とNVLink Fusionへの参加を発表した。部品を買うのではなく、部品を作る能力そのものに資本を入れている。

ただし、CPOをどこまで使うかについて、NVIDIAは慎重だ。2026年3月のGTCで、ジェンスン・フアン氏は「使えるところでは銅を使い、使うしかないところで光を使う」という言い方をした。ラックの中でGPU同士をつなぐNVLinkは、いまも銅のままだ。電力ゼロ、低遅延、そして壊れない――短い距離では銅が依然として強い。同社ネットワーク部門のギラッド・シャイナー氏も「使えるのであれば、銅が最良の接続手段だ」と述べている。

光がラックの中に入ってくるのは、その先だ。2027年のRubin Ultra世代では、8つのラックをまとめた576GPU構成で銅と光が混在する。そして2028年のFeynman世代で、NVLinkスイッチそのものにCPOが載り、1,152GPUを一つの単位として扱う構成が視野に入る。ラック間をつなぐ「スケールアウト」で先にCPOを試し、GPU同士をつなぐ「スケールアップ」へ持ち込むのは最後、という順番になっている。

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シリコンバレーの金は「つなぐ側」へ流れた

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投資家の側から見ると、2026年のCPOはGPU投資の続きではなく、その隣で起きた別のブームだ。

2026年3月3日、光インターコネクトのAyar Labsがシリーズ Eで5億ドル(約800億円)を調達した。リードはニューバーガー・バーマン、評価額は37.5億ドル(約6,000億円)、累計調達額は8.7億ドル(約1,380億円)になった。新規投資家にARKインベスト、インサイト・パートナーズ、カタール投資庁、セコイア、Alchip、メディアテックが並び、既存投資家としてNVIDIAとAMDのコーポレートVCも続けて参加している。同社の製品はTeraPHYという汎用の光I/Oチップレットと、SuperNovaという外付け光源で、GPUやASICのパッケージに光の入出力を直接生やすという発想だ。ニューバーガー・バーマンのゲイブ・カヒル氏は「データセンター内の接続が、AIインフラ構築で最も重要なボトルネックとして急速に浮上した」と述べている。

さらに大きかったのが8月6日だ。2024年初頭に創業したLumilensがステルスを抜け、シリーズ Cで7億ドル(約1,110億円)超、累計9億ドル(約1,430億円)超、評価額55.1億ドル(約8,800億円)を公表した。共同リードはアトレイデス・マネジメント、ベイン・キャピタル・ベンチャーズメリテック、セリグマン・ベンチャーズ、スパーク・キャピタル。創業者のアンカー・シングラ氏は、コントレイル・システムズをジュニパーに売却した連続起業家で、CTOには光通信大手出身のシリコンフォトニクス技術者が就いている。ラック間をつなぐ光モジュールはすでにあるハイパースケーラーの本番環境へ出荷済みで、ラック内をつなぐNPO/CPOをこれから出す、という構えだ。シングラ氏の言葉が、この分野の投資テーマをそのまま要約している――「AIの制約は、GPUが手に入るかどうかから、つなぐ容量があるかどうかへ移った」。メイフィールドのナビン・チャッダ氏は、創業24か月で50億ドル超の評価額と数十億ドル規模の受注に届いた例を「見たことがない」と評した。

外付けレーザーという地味な領域にも金が入っている。Xscape Photonicsは2026年3月11日に3,700万ドル(約59億円)を追加調達してシリーズ A累計を8,100万ドル(約129億円)とし、8色の波長を同時に出せる冗長構成の外付け光源モジュール「FalconX」を発表した。ここにもNVIDIAが投資家として入っている。

そしてこの1年、独立系の有力スタートアップは次々と大手に吸収された。AMDは2025年5月にシリコンフォトニクスのEnosemiを、シエナは2025年9月にNubis Communicationsを2億7,000万ドル(約430億円)で、そしてマーベルは2025年12月にCelestial AIを前払い32.5億ドル(約5,170億円)――現金10億ドルと約2,720万株――で買収すると発表し、2026年2月2日に完了した。売上目標の達成次第で総額55億ドル(約8,750億円)まで増える条件が付いている。光インターコネクトは、もはやVCが単独で育てて上場させる領域ではなく、半導体大手が資本で囲い込む領域になった。

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レーザーが足りない ― 部品メーカーの決算が語ること

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CPOが本物かどうかを、宣伝ではなく数字で確かめられる場所がある。光源メーカーの決算だ。

ルメンタムは2026年8月11日、2026会計年度第4四半期の売上が10億1,000万ドル(約1,610億円)、前年同期比109%増だったと発表した。非GAAPの粗利率が初めて50%を超え、次の四半期は12億5,000万ドル(約2,000億円)を見込む。同社が長期目標としていた粗利率の水準に、想定より1四半期以上早く到達した。

注目すべきはCEOのマイケル・ハールストン氏の言い回しだ。CPOおよびNPO向けの高出力レーザーについて、「需要のシグナルが強まっており、供給能力に対して我々はさらに大きく後れを取っている」と述べている。ポンプレーザーは事実上売り切れ、インジウムリン基板の不足に対応するためAXTと新たな供給契約を結んだ。同社は外付け光源モジュールとして初の正式な発注を受けており、納入は2027年後半だという。

コヒレントも8月に2026会計年度を締めた。第4四半期売上は20億5,000万ドル(約3,260億円)、データセンター・通信部門は前年同期比で6割近く伸びた。CEOのジム・アンダーソン氏は「CPOの需要が後ろ倒しになったことは一切ない」と明言し、「主要な大口顧客のほぼ全社がCPOかNPOのプログラムを走らせている」「この3〜6か月で関与の密度が急に上がった」と説明した。同社はCPO関連の売上が2026年10〜12月期から立ち始め、GPU間をつなぐ用途では2027年後半からと見ている。同社が供給するのはレーザーだけではなく、外付け光源モジュール、アイソレータ、偏波保持ファイバー、ファイバー接続アセンブリ、そしてシリコンフォトニクスのPICまで、光の入口から出口までひと通りだ。1台あたりの搭載金額はCPOでもNPOでも大きく変わらない、という説明もしている。

マーベルは8月27日、2027会計年度第2四半期の売上が過去最高の27億3,900万ドル(約4,360億円)だったと発表し、2028会計年度の売上見通しを165億ドルから180億ドル(約2兆8,600億円)へ引き上げた。CEOのマット・マーフィー氏は、引き上げ幅15億ドル(約2,390億円)の大きな部分がスケールアップ向け光技術から来ていると説明している。同社はCelestial AI由来の技術について、2028会計年度後半から売上が立ち、第4四半期に年率5億ドル(約800億円)規模へ、翌年度には倍増するという道筋を示している。

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6月9日の急落と、「NPO」という中間駅

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もっとも、この流れが一本調子だったわけではない。

2026年6月9日、調査会社セミアナリシスが、NVIDIAの800ボルト直流給電とCPOの本格量産が2028年から2029年頃までずれ込む可能性があると指摘したレポートを公表した。米国の光通信株はその日のうちに崩れた。アプライド・オプトエレクトロニクスが約17%安、POETテクノロジーズが約12%安、コヒレントが約11%安、マーベルが約7.6%安、シエナが約7%安、ルメンタムが約8%安。翌10日にはアジア市場へ波及した。

議論の核心は歩留まりの掛け算だ。光エンジンを1個実装する成功率が95%だとしても、32個を一つのパッケージに並べれば、全部が生きている確率は0.95の32乗、およそ19%にしかならない。5台作って1台しかまともに動かない計算になり、しかも1個が死ねば高価なスイッチASICごと捨てることになる。この「一蓮托生」がCPOの構造的な弱点である、というのがレポートの主張だった。

これに対する反論も出た。冗長設計と選別工程を無視した計算だという指摘に加え、NVIDIAの高出力連続波レーザーの調達見通しが1月時点の約4,000万個から4〜5月には1億個へ引き上げられていること、ルメンタムが「過去最大の外付け光源モジュール受注」を公表していることなどを根拠に、供給網の実データはむしろ前倒しを示していると論じるものだ。実際、その後の8月にコヒレントのCEOが「CPOの需要が後ろ倒しになったことは一切ない」と明言し、NVIDIAはEthernet版CPOスイッチの本格生産を発表している。

この論争のなかで急に存在感を増したのが、NPO(Near-Packaged Optics、近接実装光学)という中間解だ。光エンジンをスイッチASICと同じ基板の上に置くところまではCPOと同じだが、ASICのパッケージには溶接せず、ソケットに挿す形にする。電気の距離は数センチ止まりでDSPは省けるので電力の利点はほぼそのまま得られ、それでいて壊れた光エンジンだけを現場で差し替えられる。故障の影響範囲も1ソケットに閉じる。セミアナリシスは8月10日、この3点を挙げてNPOを移行期の現実解として位置づけた。

規格の動きもこれに合っている。2026年3月12日、シエナ、コヒレント、マーベル、モレックス、サムテック、TeraHopの6社がOpen CPX MSAを設立した。狙いは、光エンジンを差し込むソケットとコネクタの共通仕様をつくり、複数ベンダーの光エンジンを相互に入れ替えられるようにすることだ。最初の対象は6.4テラビットの光エンジンで、電気側は200ギガビット×32チャネル。インテル、クアルコム、TEコネクティビティ、ビアビなどが賛同企業に名を連ねている。CPOかNPOかという二択ではなく、同じソケット規格の上で両方を扱えるようにする、という設計思想である。マーベルのマーフィー氏も8月27日の決算説明で、CPOとNPOは競合ではなく補完だと述べた。

そしてもう一つ、まったく別の解を推す陣営がいる。アリスタネットワークスだ。同社は2026年3月11日、XPOという液冷式の差し込み型光モジュールを発表した。1モジュールで12.8テラビット、1.6テラビットのOSFPと比べて前面パネルの密度が4倍、1ラックユニットあたり204.8テラビットに届く。モジュールに冷却プレートを組み込み、400ワットまで冷やせる。共同創業者でチーフアーキテクトのアンドレアス・ベヒトルスハイム氏は「密度、冷却能力、信頼性を根本的に改善することで課題を解く」と述べ、マイクロソフトのAIシステムアーキテクチャ担当バイスプレジデントであるマシュー・マティーナ氏も、多様な光のエコシステムを可能にする形状規格になりうると支持を表明した。40社を超える光部品メーカーが賛同し、量産は2027年を見込む。差し込み式のまま、あと一世代粘る、という賭けだ。

ただしベヒトルスハイム氏自身、2026年8月のOCPアジア太平洋サミットのパネルで、前面パネル方式が物理的な限界に達するのは49.6テラビット世代、いまから1年半ほど先だと期限を切っている。差し込み式が永遠に続くとは、推進派も思っていない。

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壊れたときにどうするか、という一番地味な問題

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技術的な難所を並べると、ほとんどが「精度」と「壊れたとき」に集約される。

まず精度。光ファイバーとシリコンフォトニクスのチップを結合するには、1マイクロメートル――1ミリの1000分の1――の単位で位置を合わせる必要がある。ずれれば光が入らない。しかもスイッチ1台で数百本のファイバーを、この精度で並べて固定しなければならない。三井物産戦略研究所がこの実装技術を日本企業の勝ち筋として名指ししているのは、まさにここが量産のボトルネックだからだ。

次に熱。レーザーは温度が変わると出す光の波長がずれる。そのレーザーを、大量に発熱するスイッチASICのすぐ隣に置くわけにはいかない。だから業界は外付け光源に収束した。ただし外に出せば、コネクタや結合部で光が減るぶんを出力で補う必要があり、外付け光源の消費電力の7割前後をレーザー自体が占めることになる。電力を減らすためにCPOにしたのに、光源側では電力を増やす方向に働く。ルメンタムとコヒレントの高出力レーザーが取り合いになっているのは、この構造のためだ。

そして検査。従来のトランシーバーは、完成品として1個ずつ検査してから箱に入れられた。CPOでは光エンジンがパッケージの中に入ってしまうので、実装する前の段階で「これは確実に動く」と保証しなければならない。ウエハーの状態で光の特性を測る技術が要る。アドバンテストは2026年6月23日、シリコンフォトニクスのファウンドリであるOpenLightと組み、量産向けの電気・光複合テスト手法を開発すると発表した。TSMCが挙げた3つの課題の1つ目が、まさにこのウエハーレベル検査である。

最後に、運用だ。差し込み式なら、壊れた1個を抜いて新しいものを挿せば数分で復旧する。CPOでは、光エンジンが1個死ぬと64本のポートが同時に落ちる可能性がある。しかも返却された光モジュールの8割は、調べても異常が再現しないという業界の実情がある。そういう「なんとなく調子が悪い」故障を、抜き差しで切り分けられなくなる。ハイパースケーラーの現実的な対処は、ポートを5〜10%多めに用意しておき、死んだ経路は迂回させて、修理を急がないという運用に寄っている。予備として倉庫に置くものが数百ドルのモジュールではなく、数百本のファイバーが生えたスイッチ本体になる、という変化も効いてくる。

コストも、まだ勝ち切ってはいない。セミアナリシスの試算では、スイッチ1台あたりで見ると光エンジンの部材コストはトランシーバーをそろえるより3万5,000〜4万ドル(約560万〜640万円)安いが、スイッチベンダーの粗利が上に乗ると、最終的な販売価格ではトランシーバーを買い足す場合と大差なくなることがある。ラック間をつなぐ用途に限れば、クラスタ全体のコスト削減効果は数%にとどまるという計算だ。同社が「CPOの本当の市場はスケールアップ側だ」と結論しているのは、この数字が理由である。

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日本勢はどこに立っているか

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日本の立ち位置は、スイッチそのものよりも、その内側の部材と実装にある。

NTTは2026年度中に、光電融合デバイスPEC-2を使ったスイッチの商用提供を始める。光エンジンを16個載せて102.4テラビット、スイッチ1台あたりの消費電力を半分に落とす設計だ。光エンジンとスイッチモジュールはNTTイノベーティブデバイスが設計・製造し、スイッチのチップはブロードコム、筐体は台湾のAccton、パッケージ基板では新光電気工業が関わる。光エンジンの生産能力は1ラインあたり月5,000個で、需要に応じて3ラインまで増やす計画になっている。ブロードコムやNVIDIAが差し込み式のレーザーで交換性を確保したのと同様、NTTのスイッチも光エンジンをソケット式にして保守性を残している。その次のPEC-3では光チップレットへ進み、2028年度に商用サンプルを予定する。社長の島田明氏は、電気の通信は距離が延びるほど消費電力が跳ね上がるのに対し、光はほとんど増えない、という点をIOWNの核心として繰り返し説明している。

部材では、NVIDIAが公表したシリコンフォトニクスのエコシステムに、住友電気工業とセンコーアドバンスコンポーネンツが名を連ねている。住友電工はCPO向けにミラーを使った低損失の光結合方式を開発し、レーザー光源としても高出力の半導体レーザーを供給する立場にある。古河電気工業はCPOのパッケージ脇に収まる小型の12心光コネクタを開発した。京セラはセラミックパッケージ、住友ベークライトはポリマー光導波路、アドバンテストとキーサイトは評価・検査という具合に、CPOを構成する要素ごとに日本企業が入っている。

政策面では、経済産業省とNEDOが2014年から2022年にかけてチップ間光通信のプロジェクトに総額228億円を投じ、2025年4月には産業技術総合研究所に光電融合の研究センターが設けられた。

三井物産戦略研究所は、この構図の意味をこう整理している。CPOによって主導権はファウンドリとOSATへ移り、光モジュールを作ってきた企業や部材メーカーは、彼らと密に組まざるを得なくなる。だから日本企業に問われるのは、単なる部品供給者でいるか、技術課題を一緒に解く共同開発パートナーの位置に食い込めるかだ、と。

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これから半年、何を見ればいいか

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直近の答え合わせは9月2日、ブロードコムの第3四半期決算である。AI半導体で160億ドル(約2兆5,400億円)というガイダンスを達成できたか、CPOスイッチの出荷が実際にどれだけ増えたか、200テラビットの次世代スイッチとレーンあたり400ギガビットの第4世代CPOがどこまで進んだかが語られる。6月の急落で示された「本当に量産できるのか」という疑問に、最も直接的に答える場になる。

9月20日から24日にはスペイン・マラガでECOCが開かれる。前年のECOCでメタが実運用データを出したことがCPOの空気を変えた経緯があり、今年は誰がどんな運用実績を持ち込むかが見どころになる。10月12日から15日には米サンノゼでOCPグローバルサミットがあり、CPO向けのオープンなシリコンフォトニクス参照設計と、GPU間接続をEthernetで標準化するESUNの議論が続く。ソケットの共通仕様がどこまで固まるかで、2027年以降の勢力図が変わる。

年内の商流としては、コヒレントが10〜12月の四半期からCPO関連の売上が立ち始めるとしており、TSMCは基板搭載版COUPEの量産を2026年後半に置いている。2027年に入ると、アリスタのXPOが量産に入り、セレスティカがハイパースケーラーから受注した1.6テラビット世代のCPOスイッチの生産が立ち上がり、ルメンタムの外付け光源モジュールが納入される。マーベルの光技術売上が本格的に立つのは2028会計年度後半だ。

そして最大の分岐点は2028年にある。ラック間をつなぐ用途でCPOが定着するところまでは、もう見えている。問題は、GPU同士を直接つなぐスケールアップ側へ光が入り込めるかどうかだ。NVIDIAはFeynman世代でNVLinkスイッチにCPOを載せる計画を示しているが、フアン氏は同時に「使えるところでは銅を使う」とも言い続けている。銅が本当に音を上げるのか、それとも差し込み式が49.6テラビット世代までもう一度粘るのか。2026年は、その答えが出る年ではなく、答えを出すための実データが初めて現場から上がってくる年だった。


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