AIsmiley(アイスマイリー)とは

株式会社アイスマイリーは、2018年3月9日設立、社員の半数以上がJDLAのG検定や生成AI関連資格を保有している。社名は「AI」と「Smiley」を組み合わせたもので、AIの発展と普及に貢献し、人と企業を笑顔にするというビジョンに由来する。
事業の中核はAIポータルメディア「AIsmiley」の運営である。月間300万PV規模のメディアに500件を超えるAI製品・サービスが掲載され、導入を検討する企業が製品を比較・検索し、資料請求や問い合わせを行う。ここで生まれたリードが、AIプロダクトの導入支援・プロモーション支援、DX推進コンサルティングへとつながる。メディアが集客装置として機能し、その下流に有料サービスがぶら下がる構造で、いわゆる比較メディア型のリードジェネレーションモデルに近い。
板羽氏はこの構造を「AIポータルメディア」「AI博覧会」「AIsmiley Community」の3本柱として整理している。メディアがオンラインの入口、AI博覧会がリアルの商談機会、そしてAIsmiley Communityが継続的な関係維持を担う設計だ。AIsmiley Communityは非エンジニアのビジネス職を対象に、ChatGPTやGeminiといった主要な生成AIを業務に落とし込むノウハウ、社内説得やガイドライン整備といった組織的導入の知見を共有する実践型コミュニティで、2026年5月21日に東京・渋谷で第1回オフラインイベントを開催した。参加費は初月無料、翌月以降は月額5,500円(税込)としている。
投資家の目線で見て興味深いのは、この会社が外部からの大型資金調達をほとんど行わずに規模を拡大している点である。資本金は1,499万円と設立時から大きくは動いておらず、スタートアップデータベース各社にも大型調達の記録は見当たらない。展示会事業は出展料が前受金として入る構造のため運転資本が回りやすく、メディアが集客を内製できるなら広告宣伝費も圧縮できる。年間5〜6本の大型展示会を回しながら外部資本に依存しない体制は、SaaS型スタートアップとはまったく異なる資本効率のモデルだと言える。板羽氏は日本の「デジタル赤字」(サービス収支におけるデジタル関連の赤字)を5〜7兆円規模と捉え、国産AIプロダクトを海外に売り出すことでこれを縮小したいという問題意識も語っている。

AI博覧会 Summer 2026 ― 10回目、100社200製品、入場無料

「AI博覧会 Summer 2026」の会期は2026年8月26日(水)10:00〜18:00と8月27日(木)10:00〜17:00の2日間。会場は新宿住友ビル 三角広場である。出展社数は100社、展示製品・ソリューションは約200点以上、カンファレンスは40講演以上、想定来場者数は2日間で1万人。入場は無料だが事前登録が必須で、登録後にマイページから来場者バッジを印刷して持参する運用になっている。複数名で来場する場合は1人につき1つのメールアドレスが必要となる。
今回で10回目の開催となり、過去9回の累計来場者は5万7千人を超えた。各回の実績を並べると成長曲線がはっきり見える。Spring 2024(お茶の水ソラシティ)3,270人、Summer 2024(ベルサール渋谷ファースト)2,533人、Osaka 2025(マイドームおおさか)3,393人、Spring 2025(東京都立産業貿易センター浜松町館)6,314人、Summer 2025(東京国際フォーラム)10,294人、AIエージェント博(お茶の水ソラシティ)4,666人、Osaka 2026(マイドームおおさか)8,106人、Spring 2026(東京国際フォーラム)12,154人、Nagoya 2026(名古屋コンベンションホール)6,453人。合計すると57,183人となり、公表されている「累計5万7千人以上」と一致する。2024年春の3,270人から2年でSpring 2026の12,154人へと約3.7倍になっており、生成AI導入の裾野拡大がそのまま来場者数に表れている。
後援は8団体で、日本ディープラーニング協会、Generative AI Japan、生成AI活用普及協会、金融データ活用推進協会、ソフトウェア協会、リテールAI協会、生成AI協会、データサイエンティスト協会が名を連ねる。スポンサーはプラチナがSalesforce、シルバーが株式会社WEEL、株式会社PKSHA Technology、ウイングアーク1st株式会社、株式会社Colorkrew、株式会社Co-Labo AIという構成だ。
今回の新機軸として「業界・職種別のAI導入相談カウンター」が設置される。アイスマイリーのコンシェルジュが来場者の課題や導入目的をヒアリングし、ニーズに合った出展企業を紹介する仕組みで、既存の「商談予約」機能(来場前に出展社との商談枠を確保できる仕組み)と組み合わせることで、偶然のブース訪問に依存しない商談設計を狙っている。出展対象品目は、ロボット・フィジカルAI、AIエージェント、生成AI、LLM、RAG構築、ファインチューニング、マルチモーダルAI、ChatGPT連携、ライティング支援、画像生成AI、動画生成AI、議事録作成AI、画像認識、需要予測、アノテーション、AI-OCR、AI受託開発、ボイスボット、バーチャルヒューマン、エッジAI、データ分析、リスキリング、外観検査、顔認証と幅広い。
会場選定にも意味がある。Summer 2025とSpring 2026は東京国際フォーラム ホールEを使っていたが、今回は新宿住友ビルの三角広場に移った。無柱の大空間アトリウムで、二足歩行ヒューマノイドの実機デモのように天井高と床面積を要する展示に向く。フィジカルAI・ロボットゾーンを前面に押し出す今回の構成と会場特性は整合している。
競合環境も押さえておきたい。RX Japanが主催する「AI・人工知能EXPO NEO 2026」は2026年8月5日・6日に東京国際フォーラム ホールEで開催され、出展100社・来場1万人を見込む規模だった。AI博覧会 Summer 2026とは会期がわずか3週間差、規模想定もほぼ同じである。RX Japanの旗艦である「NexTech Week 2026【春】」は2026年4月15日〜17日に東京ビッグサイト西展示棟で開催され、33,612人(前回比121%)を集めた。同展では「AI・人工知能EXPO」が10回目を迎え、「ヒューマノイドロボットEXPO」が初開催されている。年間3万人級の総合展を回すRX Japanと、1万人級の専門展を年5〜6本回すアイスマイリー。前者は面の広さ、後者はメディア連動によるリードの質で勝負する構図になっている。



出展企業 APTO ― フィジカルAIの「データ供給網」を国産で握る

株式会社APTOは、AI開発の精度を左右する「データ」に特化した開発支援事業を展開している。
主力サービスは3層構成だ。「harBest」はクラウドワーカーを活用したデータ収集・アノテーションのプラットフォームで、自然言語、画像・動画、音声など幅広い形式に対応する。企業がデータをアップロードすればクラウドワーカーがアノテーションを完了させるため、派遣スタッフを雇う必要がない。「harBest Dataset」はAI開発初期のボトルネックを解消するための既製データセット提供、「harBest Expert」は医療・製造・金融・法律といった専門領域の有識者の知見を用いて、LLMのファインチューニング用の高品質な指示データを作成するサービスである。対応データ形式にはPhysical AI Data、3D(LiDAR)Data、テキスト、音声、動画、画像が並ぶ。公式サイトには富士通、NTTデータ、ソフトバンク、キヤノン、パナソニック、リコーなどの顧客ロゴが掲示されており、リード投資家である三井住友海上キャピタルのインタビューでは理研やオリックス、通信キャリアなどの名前も挙がっている。
AI博覧会 Summer 2026では、フィジカルAI・ロボットゾーンのブースF-3に出展する。展示の目玉は、実機ロボットを用いた模倣学習データの収集プロセスの実演と、NVIDIA Isaac Simを活用したシミュレーション生成・データ拡張のデモである。実世界で集めた少量のデータを仮想環境で増幅する、いわゆるデータ中心(Data-Centric)のAI開発フローを、来場者が目の前で確認できる形にしている。ブースにはデータ準備の課題に対応する専門スタッフも配置される。
投資家サイドの評価も明確だ。三井住友海上キャピタルは2020年12月、APTOがまだサービスを立ち上げていない段階でリード投資を行い、その後のラウンドでも一貫してリードを継続している。初回調達は同社(MSIVC2020V投資事業有限責任組合)とANOBAKA(旧KVP)、エンジェル投資家などから約6,000万円だった。高品氏はインタビューで、津軽弁のような地域方言を例に「日本国内でしか作れないAIデータがある」と述べ、非代替性のある領域に張る戦略を語っている。
2026年の動きは加速している。5月には日本語LLMの安全性向上を目的とした学習データセットと安全性チューニングモデルをHugging Faceで公開した。約1万8千件の日本語安全性データを用い、会話のターン数が増えるほど安全性が劣化するという問題に対応するためマルチターン形式でデータセットを設計している点が特徴で、英語圏で開発された安全性手法をそのまま持ち込んでも十分な結果が得られないという前提に立っている。6月には米Qualcommがアジア太平洋地域で実施する「Qualcomm AI Program for Innovators(QAIPI)2026 - APAC」の15社に選出された。日本からはAPTOのほかKanjuTech、KimPax、MY ROBOTS、XNOVAの計5社が選ばれている。このほか4月にNVIDIA GTC 2026で登壇、5月にHumanoids Summit 2026への出展と人工知能学会全国大会(JSAI2026)のコアスポンサー、6月にAWS Summit Japan 2026出展と、エッジAIからフィジカルAIまで露出を広げている。


出展企業 ドーナッツロボティクス ― 「持たざる者」の国産ヒューマノイド戦略

ドーナッツロボティクス株式会社は、もともとは翻訳機能を備えた受付ロボット「cinnamon」や翻訳機能付きスマートマスク「C-FACE」で知られていたが、現在の主戦場はヒューマノイドに移っている。
2026年1月21日に発表した「cinnamon 1」は、量産型の二足歩行ヒューマノイドである。身長は約169〜170cm、体重約70kgと成人男性並みで、初期販売価格は約1,800万円が見込まれている。カメラ4台とLiDARで周囲を認識し、マイクとスピーカーで音声によるやり取りが可能、連続稼働時間は3〜4時間で屋外作業にも対応する。最大の特徴は同社が特許を持つ「サイレント ジェスチャー コントロール」で、声を発することなく手振りや指の動きだけでロボットに指示を伝えられる。騒音の激しい建設・土木現場や、静粛性が求められる環境、さらには難聴者の利用まで想定した技術である。自律行動のためのAIとしてVLA(Vision-Language-Action)の搭載を予定している。
同社の戦略は割り切りが効いている。機体は海外企業からのOEM提供を受け、そこに自社AIを載せる。ITmedia AI+の取材では、OEM先が中国のロボット開発企業であること、ただし社名は非開示であることが報じられ、記事タイトル自体が「『日本ブランド』だけど中身は中国製?」と問いを立てている。日経ビジネスはこれを「体は中国、脳は米国」と表現し、ハードウェアは中国OEM、AIは米国製の大規模言語モデルと自社開発VLAという地理的分業として整理した。同社はTesla、Figure AI、Unitree Roboticsに比肩するベンチャーマネーや政府支援を持たない「持たざる者」であることを認めた上で、地政学的な緊張を逆手に取り、日本ブランドの「最も安全なヒューマノイド」というポジションで差別化を図る。ITmediaによれば2026年内に約50台を投入して動作データを蓄積し、2028年に自社VLMの完成を目指す。センサーの国内調達や国内組み立ての検討も進めるという。日経ビジネスは同社が2027年の米国上場を目指していると報じている。
事業提携も具体的だ。2025年10月20日、東証グロース上場のエムビーエス(MBS)と資本業務提携を発表した。MBSは建築・リフォーム業界における独占販売代理店権を取得し、ゼネコン、建設会社、リフォーム会社への全国展開を担う。想定用途は足場資材の運搬・設置、外壁塗装・塗り替えの補助、現場の警備・監視などで、12カ月以内にプロトタイプ開発と現地実験、12〜24カ月でPoCと実用型モデル開発、24カ月以降に商用化・全国展開という段階計画が示されている。MBSは自社管理現場で得られたデータを「VLAデータセンター」に集約し、建設特化のAIを最適化する構想を掲げる。日経ビジネスは、MBSが1億円を出資したと報じている。さらに2026年3月26日には、東証グロース上場のエス・エム・エス・データテック(証券コード317A)がドーナッツロボティクスの第三者割当増資を引き受けると適時開示した。
AI博覧会 Summer 2026では、小野氏が初日8月26日10:00〜10:40の基調講演「最強のヒューマノイドは日本から生まれる」に登壇し、cinnamon 1の世界展開戦略を語る。フィジカルAIが世界の投資トレンドとなり、ヒューマノイド開発競争で米中の二極が先行しているという現状認識のもと、日本勢がどこで勝つかを示す内容になる。


出展企業 住友電工情報システム ― 検索基盤をMCPでAIエージェントに開く

住友電工情報システム株式会社は、住友電気工業を中核とする住友電工グループの情報システム会社である。AI博覧会 Summer 2026にはブースA-2で出展し、エンタープライズサーチ「QuickSolution」と文書管理・情報共有システム「楽々Document Plus」を展示する。
QuickSolutionは発売から25周年を迎えた純国産のエンタープライズサーチで、同社は4つの市場調査でシェア1位を獲得したとしている。ファイルサーバや社内システム、クラウドサービスに散在する情報を横断的に検索でき、数百TB規模に対応、1サーバで100TB規模を2〜3秒で検索できる性能を持つ。2026年7月7日、同社はQuickSolutionが2026年8月からMCP(Model Context Protocol)サーバの提供を開始すると発表した。これによりMicrosoft 365 Copilot、Gemini Spark、OpenAI Codex、Claude CoworkといったMCP対応のAIエージェントから、オンプレミスとクラウドに分散した社内情報を横断検索できるようになる。
もう一方の楽々Document Plusは、2026年2月27日発売のVer.6.9でAI-OCRに対応し、手書き文字の読み取りとその全文検索が可能になった。ファイルをアップロードすると生成AIが属性情報を自動抽出して登録する機能も加わり、AI-ChatとAI-OCRの二本立てで生成AI連携を強化している。ITトレンドの年間ランキング文書管理システム部門で1位を獲得した実績もある。同社はこのほか「楽々Webデータベース」のサポートサイトに生成AI連携のマニュアル検索機能を公開(2026年5月22日)するなど、既存プロダクト群への生成AI実装を面で進めている。
投資家の視点でいえば、ここは生成AI時代のスタックの中でもっとも地味で、もっとも粘着性の高い層である。RAGの精度を決めるのは生成モデルではなく検索とデータ整備であり、そこはオンプレ資産と権限管理を抱える大企業ほど外部SaaSに丸投げできない。MCPという共通プロトコルが普及するほど、「どのモデルを使うか」は流動的になる一方で、「どの検索基盤がAIに給水するか」は固定されやすい。25年分の導入実績を持つ国産ベンダーが、モデル層の覇権争いから距離を置いたままAIエージェント時代の必須インフラに滑り込む構図になっている。

出展企業 BIRD INITIATIVE ― 大企業のR&Dを外に出すスタジオ

BIRD INITIATIVE株式会社は、NECを筆頭に、大林組、日本産業パートナーズ、日本投資アドバイザー、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、東京大学協創プラットフォーム開発の異業種6社が出資して設立され、その後DRONE FUNDが加わって株主は7社体制となった。事業内容はR&D起点の新規事業創出、カーブアウト支援、AIプロダクトの開発・提供である。
同社が「スタートアップスタジオ」を名乗る根拠は実績にある。2023年4月1日、自動交渉AI×ドローンのプロジェクトがIntent Exchange株式会社として、AIシミュレータ「assimee」のプロジェクトがビットクォーク株式会社として、それぞれカーブアウトした。2025年1月には因果分析技術を活用するhootfolioが、BIRD INITIATIVEの支援を受けてNECからカーブアウトして事業を開始している。同社サイトでは、カーブアウト3社が2年間で累計6億円を調達したとしている。サービスラインは、CPF段階のアイデア創出を扱うインキュベーションプログラム、PSF〜PMF段階の仮説検証、会社設立と資金調達を支援するカーブアウトスタジオ、組織のイノベーション枠組みを構築するイノベーショングランドデザインという4層構成だ。
AI博覧会 Summer 2026への出展は2026年7月22日に告知された。展示の中心となるのが新規事業支援AI「BIIM Cloud for Business」で、2025年8月20日に正式リリースされた。新規事業開発における試行錯誤をAIの力で10倍加速するというコンセプトのもと、事業機会を特定するための網羅的な調査機能、フリーテキストや業界・特許・予算といった詳細入力、既存のコンセプトシートや事業計画書からの多面的なアイデア創出、ビジネスモデルキャンバス(BMC)などのフレームワーク適用、TRL/BRLによる評価までをカバーする。2026年5月8日には大型アップデートを実施し、Eight EXPO 2026夏、AI World 2026 大阪、AI博覧会 Nagoya 2026(ブースS-18)などで実演を重ねてきた。
大企業の研究所に眠る技術と特許を、外部資本を入れられる形の会社に切り出す。この領域は日本でCVCが最も苦手としてきたところで、NECという事業会社が主導し、日本産業パートナーズのようなPEファンド、東大IPCのような大学系ファンド、DRONE FUNDのような領域特化VCが同じ株主として並ぶ座組み自体が珍しい。BIIM Cloudは、その支援ノウハウをソフトウェアとして外販する試みでもある。

出展企業 kickflow ― 稟議フローに埋め込まれるAI

株式会社kickflowの株主にはHeadline Asia、mint、グリーベンチャーズ、HENNGE株式会社、Sansan株式会社、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルが並ぶ。2023年10月にはHENNGEをリード投資家とするプレシリーズAラウンドで総額5.1億円を調達した。同ラウンドにはSansan、mint、グリーベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルのほか、商工組合中央金庫と日本政策金融公庫も参加している。HENNGEとの提携は業務提携を前提としたもので、事業会社主導のラウンドという色彩が強い。
製品は従業員数百名から数千名規模の中堅・大企業を主戦場とするクラウドワークフローで、「シンプルなのに、多機能」を掲げ、「エンタープライズ企業が一番使いやすい次世代型ワークフローシステム」として開発されてきた。組織図のバージョン管理、人事異動の事前スケジューリング、REST APIとWebhook連携、Slack・Teams・LINE WORKS・Google Chat・Chatworkとのチャット連携、自動化ルールといった機能を備える。同社は開発にあたり300社以上の課題ヒアリングを行ったとしている。
AI機能は申請者・承認者・管理者のそれぞれに配置されている。申請者向けには「AI入力補助」「AIワークフロー検索」に加え、2025年11月19日に「AI申請前レビュー」が追加された。申請者の入力内容を事前にAIがチェックし、入力指示に反する点や項目間の矛盾を自動で指摘する機能で、差し戻しの削減と承認リードタイムの短縮を狙う。管理者向けには「AIフォーム作成支援」「AI正規表現サジェスト」がある。実績面では、2024年8月から2025年7月の顧客継続率99.76%、2023年から2024年の導入企業数2倍、2024〜2025年の機能アップデート年間88回、ITトレンドの「大規模ワークフロー」カテゴリ1位(2025年)といった数字を公表している。
2026年に入ってからの動きも早い。4月にはFUJIFILM IWproとの連携機能「kickflow for FUJIFILM IWpro」の提供を開始、5月にはサイボウズのパートナー認定を取得しkintone連携機能を正式リリースした。さらにAIタレントマネジメントシステム「Talentify」を立ち上げ、組織横断の評価調整を完結させるキャリブレーション機能、目標作成補助AI、評価フォーム作成AI、360度評価の不適切回答を検知するアラートAIといったAI機能を実装している。同社は2026年に新プロダクトを1〜2本ローンチする方針を示しており、ワークフロー単品からマルチプロダクトへの転換が進行中だ。
ここには構造的な論点がある。AIエージェントが業務を実行する時代には、「誰が何を承認したか」を記録し統制する層の価値が上がる。エージェントが起票した稟議を人間が承認するのか、その逆か。ワークフローは業務効率化ツールから内部統制とAIガバナンスの接点へと位置づけが変わりつつあり、kickflowのAI機能が「申請の代筆」ではなく「申請の事前レビュー」から入っているのは、その変化を読んだ順序に見える。


その他の出展企業とスポンサー構成

プラチナスポンサーのSalesforceは、AIエージェント基盤Agentforceを軸に日本市場での攻勢を強めている。会期中の8月26日13:30〜14:10には、amptalkのマーケティング責任者・宿谷一輝氏、同社マーケティングスペシャリストのコートア ルカス氏、セールスフォース・ジャパンのグロースマーケティングマネージャー・中村龍之介氏が「AIエージェントで変わる顧客接点と成長戦略」と題して登壇する。
シルバースポンサーは5社。株式会社WEELは2017年9月設立、代表は田村洋樹氏で、生成AIに特化したメディア運営、コンサルティング・研修、システム受託開発の3事業を展開する(従業員20人、資本金2,000万5,000円)。株式会社PKSHA Technologyは東証プライム上場のAIソリューション企業、ウイングアーク1st株式会社は同じく東証プライム上場で帳票・BI基盤を提供する。株式会社Colorkrewはバックオフィス業務効率化のColorkrew Bizなどを手がけ、株式会社CO-LABO AIは生成AIを活用したデモ開発から実装・運用までを伴走する開発チームを標榜する。
そのほかの登壇・出展企業としては、国産LLM「PLaMo」を開発する株式会社Preferred Networks、Google Cloud Japan、GMOペパボ、サイバーエージェント、AI人材育成・コンペティションプラットフォームの株式会社SIGNATE、センサーデータの異常予兆検知を手がける株式会社メロン、アクセンチュアなどが名を連ねる。会場は国産LLM、生成AI、AIエージェント、フィジカルAI・ロボットといったテーマごとにゾーニングされ、来場者は各ブースでデモ機に触れながら比較検討できる。100社の全リストとタイムテーブルは公式サイトで順次公開されている。

カンファレンス ― 40講演を貫く「実装フェーズ」への移行

カンファレンスは40講演以上が予定され、スピーカーは2波に分けて発表された。第1弾では、ドーナッツロボティクスの小野泰助氏による基調講演「最強のヒューマノイドは日本から生まれる」(8月26日10:00〜10:40)を筆頭に、Google Cloud Japan マーケティング本部 AIマーケティングスペシャリストの福井順一氏「Gemini Enterpriseで変わる企業のAI活用のヒント」(8月26日12:20〜13:00)、GMOペパボ 事業開発部 即レスAIチームの西涼那氏「成果が出るAIエージェントの導入|業務自動化事例紹介」(8月27日12:20〜13:00)、サイバーエージェント SEOラボ 研究室長の木村賢氏「進化するSEO-生成AI検索時代の新しいマーケティング戦略」(8月27日14:40〜15:20)、Preferred Networks AI Products & Solutions事業本部長の岡田利久氏「生成AI開発動向と国産LLM(ソブリンAI)の事業展開」(8月27日15:50〜16:30)が発表された。
8月3日に発表された第2弾の目玉は、チームみらい党首で参議院議員の安野貴博氏による基調講演「AI時代のDX戦略 〜変革を実際に起こすために必要な考え方〜」(8月27日10:00〜10:40)である。安野氏はAIエンジニアでありSF作家でもあり、2025年5月にチームみらいを設立、同年7月の参院選で当選して政党要件をクリアした。2026年2月の衆院選では同党から11名が新たに議席を得ている。政策側からはデジタル庁参事官(AI実装戦略総括)の山口真吾氏が「政府におけるガバメントAI源内の取組について」(8月27日15:50〜16:30)に登壇する。ガバメントAI「源内」は2026年5月時点で全府省庁の約18万人規模へ展開され、GitHubでOSSとして公開・商用利用も可能とされている、政府によるAI社会実装の起点となる取り組みだ。
このほか、アクセンチュアのAIセンター マネジング・ディレクターである中村隆太氏の「AIネイティブな経営デジタルツイン」(8月26日11:10〜11:50)、株式会社メロン取締役CTOの本田崇人氏による「【製造業向け】センサーデータを活用した異常予兆検知AIの最新事例」(8月27日11:10〜11:50)、SIGNATE 営業本部の幸野路加氏「生成AI活用2つの壁の突破術〜業務棚卸起点のAI駆動型経営〜」(8月27日13:30〜14:10)が並ぶ。第3弾スピーカーは8月7日時点で未発表で、Osaka 2026、Spring 2026、Nagoya 2026ではいずれも第3弾まで発表されている前例からすると、会期直前に追加発表される可能性が高い。
プログラム全体を俯瞰すると、ヒューマノイドと国産LLMという「技術の最前線」を両端に置きつつ、中央にガバメントAI、経営デジタルツイン、営業のAIエージェント、製造業の異常予兆検知、業務棚卸起点のAI駆動型経営という実装事例を厚く配置している。RX JapanがAI・人工知能EXPO NEOで来場者のAX(AI活用の成熟度)フェーズを可視化する仕組みを導入したのと同じく、業界全体の関心が「やるかどうか」から「どう定着させるか」へ移った現在地が、そのままプログラム設計に反映されている。

VC・投資家・各紙はこの市場をどう見ているか

グローバルのAI投資は、桁が変わったという表現でも足りない水準にある。Crunchbaseの集計によれば、2026年第1四半期の世界のスタートアップ調達額は約3,000億ドル(約47兆円)で四半期として過去最高を更新し、そのうち約2,420億ドル(約38兆円)、およそ80%がAI企業に流れた。2025年第1四半期のピーク時でも55%だったシェアが一気に跳ね上がった格好だ。牽引したのはOpenAIで、Bloombergは2026年3月31日、同社が1,220億ドル(約19兆2,000億円)を調達し、企業価値8,520億ドル(約134兆円)と評価されたと報じた。CNBCも同日、史上最大の調達ラウンドとして報じている。Amazonが500億ドル、NVIDIAとソフトバンクがそれぞれ300億ドルを拠出し、Amazonの投資のうち350億ドルはIPO実現またはAGI到達を条件とする構造だと報じられている。この1社のラウンドだけで、四半期の全世界ベンチャー投資の約4割に相当する。上半期で見ると、Crunchbaseは世界のスタートアップ投資が5,100億ドル(約80兆円)に達したとしている。
一方の日本はスケールがまったく異なる。INITIALの2026年上半期レポートによれば、国内スタートアップの調達総額は3,779億円で前年同期比12%増。ただし内訳を見ると、50億円以上の調達が345億円から780億円へと倍以上に伸びた一方、50億円未満は1%減となっており、資金は大型案件に集中している。AIは業種横断のタグとして31件・全体の23%を占め、もはや特定業種の部分集合ではなく独立した資金吸引力を持つカテゴリとして立ち上がった。それでも、日本の半期総額はOpenAI1社の1ラウンドの2%程度にすぎない。この落差が、AI博覧会の会場に集まる企業群の資本戦略を規定している。
だからこそ政策マネーの比重が大きい。経済産業省は2026年6月30日、ソフトバンクなどが設立した新会社「Noetra(ノエトラ)」と産業技術総合研究所に対し3,873億円を支援すると発表した。時事通信と建設通信新聞が報じたところによれば、資金は現実空間でロボットを動かす「フィジカルAI」の基盤となる国産モデルの研究開発に充てられ、開発期間は5年間、2年目以降も追加支援する方針で、2026年度分は事業費の全額を国が委託する形をとる。NEDOの「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」は2026年6月から2031年3月までの実施で、2027年度以降は毎年度のステージゲート審査で継続可否を判断する。産総研も同事業への採択を2026年6月30日に発表している。さらに2026年6月24日には「戦略17分野における主要な製品・技術等の官民投資ロードマップ」が示され、フィジカルAI(特にAIロボット)には2040年度までに官民合計10.5兆円の投資が想定された。GENIACでも、2026年5月14日に製造業データ等のAI-Ready化に関する9件とロボット基盤モデルに関する2件が採択され、6月4日には計算資源提供支援(第4期)でAI基盤モデル開発16件が採択されている。
市場規模の見立ても上方修正が続く。IDCは2026年3月、国内AI市場支出額が2025年の2兆3,725億円から2029年に6兆8,897億円へ拡大し、2024〜2029年の年間平均成長率は36.0%になると予測した。2029年にはAIが国内IT市場全体の約20%を占め、AIソフトウェア市場は年率48.9%と全体を上回る伸びを示す。2026年の国内AIインフラ投資は前年比18%増の8,210億円と見込まれている。
ただし、需要側の実態には温度差がある。2026年7月24日に公表された令和8年版情報通信白書によれば、日本企業の生成AI利用率は86.4%と前年度の55.2%から大きく伸びたが、業務変革について「組織的な取組はない」と答えた割合は日本が27.0%で、米国1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%と比べて突出して高い。中堅企業に限れば45.6%に達する。個人の生成AI利用経験率も日本は58.8%(前年26.7%)で、米国とドイツの75.6%、中国の93.6%に届かない。ツールは入れたが組織は変わっていない、という日本固有の課題が数字で示された格好で、AI博覧会が「業界・職種別のAI導入相談カウンター」を新設した背景にはこの層がある。
出展企業と直接関わる海外の投資動向も押さえておきたい。APTOが属するAI学習データ領域では、Metaが2025年6月にScale AIへ143億ドル(約2兆2,500億円)を投じて49%を取得し、同社を290億ドル(約4兆5,700億円)超と評価した。この提携後、中立性への懸念からGoogleやOpenAIが取引を縮小したと報じられている。競合のSurge AIについては、Reutersが150億ドル(約2兆3,600億円)超の評価で10億ドル規模の調達を模索していると報じ、Bloombergは2025年7月30日、少なくとも250億ドル(約3兆9,000億円)の評価での交渉と報じており、媒体によって数値が異なる。MercorはCNBCによれば2025年10月に3億5,000万ドル(約550億円)を調達し評価額100億ドル(約1兆5,800億円)に達した。データ供給網が一握りの米国企業に寡占されつつある中で、日本語や国内固有データという非代替領域に張るAPTOのポジションは、国内投資家から見れば地政学的なヘッジそのものである。
ドーナッツロボティクスが挑むヒューマノイド領域では、Figure AIが2025年9月にParkway Venture Capitalをリードとし、Brookfield Asset Management、NVIDIA、Intel Capital、Microsoft、OpenAI Startup Fund、Bezos Expeditionsなどが参加するシリーズCで10億ドル超(約1,580億円超)を調達、ポストマネー評価額390億ドル(約6兆1,000億円)に達した。2024年2月のシリーズBが6億7,500万ドル・評価額26億ドルだったことを考えると、18カ月で15倍である。この水準の資本を前提とする米中勢に対し、機体を中国OEMに、モデルを米国に頼りながら「安全性」と「日本ブランド」で切り込むドーナッツロボティクスの戦略は、資本制約から逆算した合理的な解でもある。
報道の温度差も特徴的だ。AI博覧会そのものを扱うのはロボスタ、Ledge.ai、VOIX、TECH PLAYといったテック・ロボット専門メディアと、PR TIMES/@Press/NEWSCAST/ValuePressなどのリリース配信網が中心で、全国紙の記事化はほとんどない。一方で日経ビジネスや東洋経済オンライン、ITmedia AI+は、展示会ではなく個別企業(とりわけドーナッツロボティクス)の戦略と矛盾を掘り下げる記事を出している。展示会は「場」としてはニュースになりにくく、そこに出る企業の一次情報が二次的に流通する。投資家にとっては、会期前後に集中する出展企業のプレスリリースこそが、資本政策や提携の兆候を拾うための実質的な情報源になる。







今後いつ、どのような動きが計測されるか

まず会期直前の8月中旬には、カンファレンス第3弾スピーカーと出展社一覧の確定情報が出る見通しである。過去のOsaka 2026、Spring 2026、Nagoya 2026ではいずれも第3弾まで発表されており、Summer 2026も同じ運用が踏襲される可能性が高い。
会期そのもので測られる指標は来場者数だ。同じ東京開催のSpring 2026が12,154人、Summer 2025が10,294人だったのに対し、今回の想定は1万人。会場が東京国際フォーラム ホールEから新宿住友ビル三角広場に変わったこと、そしてRX Japanの「AI・人工知能EXPO NEO 2026」が3週間前の8月5日・6日に同じ東京国際フォーラム ホールEで同規模の想定で開催されたことが、実数にどう影響するかが焦点になる。アイスマイリーは過去の各回で来場者数を開催報告として公表しており、9月上旬には実績値が出るとみられる。
その後のイベントカレンダーはすでに引かれている。アイスマイリー主催では2026年10月1日に「AI博覧会 Fukuoka 2026」が博多国際展示場&カンファレンスセンターで開催され、2027年にはOsaka 2027、Spring 2027、Summer 2027が続く。競合側では「NexTech Week 2026【秋】」が2026年11月11日〜13日に幕張メッセ、「AI・人工知能EXPO NEO 2027」が2027年1月7日〜8日に東京国際フォーラム ホールE(出展100社・来場1万人想定)、「NexTech Week 2027【春】」が2027年4月21日〜23日に東京ビッグサイトで開催される。年間を通じたAI展示会の供給過多が出展料単価と出展社の選別にどう効くかは、2027年前半に答えが出る。
個別企業では観測点がはっきりしている。ドーナッツロボティクスはcinnamon 1を2026年内に市場投入し、約50台の稼働から動作データを集めて2028年の自社VLM完成を目指す。MBSとの提携は12〜24カ月でPoCに入る計画で、日経ビジネスが報じた2027年の米国上場方針とあわせ、2026年後半から2027年前半にかけて資金調達か上場準備の動きが表面化する可能性がある。APTOは三井住友海上キャピタルが継続リードする調達履歴とQualcomm QAIPIでの成果、そして高品氏が示唆した新製品の発表が次の材料になる。kickflowは2026年中に新プロダクト1〜2本のローンチを予告しており、Talentifyの外部機関による脆弱性診断とISMS/ISO27001認証取得も予定されている。住友電工情報システムはQuickSolutionのMCPサーバを2026年8月から提供開始する。BIRD INITIATIVEはBIIM Cloudの継続的なアップデートと、4社目のカーブアウトが次のマイルストーンになる。
マクロでは、NEDOのフィジカルAI基盤モデル開発事業が2027年度以降の継続可否をステージゲート審査で判断する点、そしてGENIACの各採択テーマの成果公表が、政策マネーの実効性を測る指標になる。需要側では、令和8年版情報通信白書が示した「組織的な取組はない27.0%」という数字が来年度調査でどこまで下がるかが、日本のAI社会実装が本物かどうかを判定する最もわかりやすい物差しになる。AI博覧会が新設した相談カウンターは、まさにこの27%を切り崩すための装置であり、その手応えは会期後に同社が公表する開催報告と、次回Fukuoka 2026以降の出展社構成に表れるはずだ。
