ペルー大統領選、超僅差でフジモリ氏当選へ ― まず何が起きたのか

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - ペルー大統領選、超僅差でフジモリ氏当選へ ― まず何が起きたのか - 章扉

最初に、なぜ遠いペルーの選挙が日本株の話になるのかを押さえておきたい。ペルーは世界有数の銅・亜鉛・銀の産出国であり、日本の商社や非鉄メーカーはこの国の巨大銅山に何十年も前から出資し、コマツは現地の鉱山に超大型機械を売り続けている。つまり「誰がペルーを統治し、鉱業をどう扱うか」は、東京証券取引所に上場する複数の企業の資産価値とキャッシュフローに直結する。だからこそ、今回の大統領選はマーケットの注目を集めてきた。

その選挙が、ラテンアメリカ史上でも稀にみる接戦の末に決着しようとしている。2026年4月12〜13日の第1回投票では過半数を取った候補がおらず、上位2人による決選投票が6月7日に実施された。米Wikipedia等がまとめた開票率99.88%時点の集計によれば、右派「人民勢力(Fuerza Popular)」党首のケイコ・フジモリ氏が9,209,041票(50.12%)、左派「ともにペルーを(Juntos por el Perú)」のロベルト・サンチェス氏が9,164,453票(49.88%)で、その差はわずか44,588票、得票率にして約0.24ポイントだった。第1回投票ではフジモリ氏が17.19%で首位、サンチェス氏が12.04%で2位、右派のラファエル・ロペス・アリアガ氏が11.91%で3位につけていた。

開票は1週間以上の「胃が痛くなるような」競り合いとなり、集計の途中ではサンチェス氏が50.055%でわずかに上回る局面もあったが、最終盤で在外票などが反映されるにつれフジモリ氏が逆転不可能なリードを築いた。米ウォール・ストリート・ジャーナルは6月11日の段階で「統計的に勝敗は決した」としてフジモリ氏の勝利を報じている。ただし2026年6月下旬の時点で、選挙管理を司る全国選挙審判所(JNE)による正式な当選宣言(proclamación)はまだ確定していない。当局は投開票から30日以内、すなわち7月28日の独立記念日に予定される新大統領就任に間に合うよう最終集計を終える方針を示しており、フジモリ氏は「事実上の当選者」として扱われている。タイトルの「当選濃厚」とは、この正式確定を待つ最終段階の状況を指す。

接戦ゆえに残された火種も大きい。アルジャジーラやロイターによれば、サンチェス氏は敗北を認めず、在外公館での投票手続きが変更されたことが「不正な利益」をフジモリ氏にもたらしたとして、6月7日の在外投票の無効をJNEに申し立てた。同氏は「フジモリ政権を承認しない」「政治的・社会的闘争、民衆的・愛国的抵抗の運動を宣言する」と述べており、就任後の社会不安のリスクをにじませている。さらに、今回の選挙で復活した二院制議会では、人民勢力が上院60議席中22、下院130議席中41を得て第1党となったものの単独過半数には届かず、サンチェス氏の「ともにペルーを」も上院14・下院32と一定の勢力を確保した。フジモリ氏は分断された議会との「統治可能性(governability)」という難題を抱えてのスタートになる。

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日系3世のケイコ・フジモリ氏とは ― 「フジモリ主義」と親鉱業の経済政策

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 日系3世のケイコ・フジモリ氏とは ― 「フジモリ主義」と親鉱業の経済政策 - 章扉

タイトルにある「日系」の意味から説明したい。ケイコ・ソフィア・フジモリ・ヒグチ氏は1975年5月25日にリマで生まれた、日系移民を両親に持つペルー人政治家である。父は1990〜2000年に大統領を務めたアルベルト・フジモリ氏で、その両親(ケイコ氏の祖父母)は日本(熊本)からの移民だった。つまりケイコ氏は日系3世にあたる。母スサナ・ヒグチ氏も日系で、両親の別居に伴い、ケイコ氏は1994年、19歳の若さでペルーのファーストレディー(大統領夫人代行)を務めた経歴を持つ。父アルベルト氏は2024年9月に死去しており、今回の当選は「フジモリ王朝」の政治への復権という文脈でも語られている。

ケイコ氏にとって今回は2011年・2016年・2021年に続く4度目の大統領選挑戦であり、いずれも決選投票で惜敗してきた末の悲願達成となる。当選すれば、ペルー史上初めて選挙で選ばれた女性大統領となる。父譲りの「フジモリ主義(Fujimorismo)」を掲げ、国際メディアや研究者からは保守ないし極右と評されることが多い。汚職疑惑(オデブレヒト事件に絡むマネーロンダリング疑惑)を長く抱えてきたが、憲法裁判所が同事件を退けたことを受け、2025年10月30日に正式に立候補を表明した経緯がある。

投資家にとって重要なのは、その経済・鉱業政策が明確に「親ビジネス・親鉱業」である点だ。鉱業専門メディアやロイターの報道を総合すると、フジモリ氏の鉱業公約は、鉱業ロイヤルティの40%を鉱山周辺の地元コミュニティへ配分して地域の合意形成を促すこと、戦略的に重要と分類されるプロジェクトには迅速な許認可の仕組みを設けること、そして利益を国外送金せずペルー国内に再投資する企業への税優遇を導入すること、の3本柱からなる。彼女は経済運営をテクノクラート(実務専門家)に委ね、住民の反対や行政の遅滞で停滞している大型鉱山プロジェクトの「目詰まり」を解消しようとするとみられている。格付け会社ムーディーズは、フジモリ氏の勝利はペルーの現行のマクロ経済の枠組みと信用の安定を維持するとの見方を示した。

これと好対照だったのが対立候補サンチェス氏である。同氏は天然資源への国家管理の強化、新憲法の制定、既存の鉱業契約の見直しを主張する介入主義的な左派であり、市場はこれを強く警戒した。実際、4月12日の第1回投票以降、ペルーの通貨ソルはラテンアメリカで最も成績の悪い通貨となったが、アナリストはサンチェス氏の台頭をその主因に挙げている。フジモリ氏の勝利が確実視されたことは、この「左派ショック」の巻き戻し、すなわち鉱業セクターにとっての安堵材料となる。

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ペルー鉱業の全体像 ― なぜ銅・亜鉛・金で世界有数なのか

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - ペルー鉱業の全体像 ― なぜ銅・亜鉛・金で世界有数なのか - 章扉

各社の話に入る前に、ペルー鉱業そのものの姿を具体例で押さえておきたい。ペルーはチリに次ぐ世界第2〜3位の銅生産国であり、亜鉛と銀でも世界上位、金でも有数の産出国である。鉱業は同国の輸出の6割前後、GDPの約1割、そして財政収入の柱を占める。だからこそ、米ジェフリーズが指摘するように「どの党が政権を取っても銅開発は国家の優先事項であり続ける」という構造があり、政治の振れ幅はあっても鉱業そのものが否定されにくい。

なお銅の生産規模ではチリが圧倒的な世界首位で、ペルーはこれに次ぐ第2〜3位(コンゴ民主共和国と競う)という位置にある。具体的な銅山の名前と所有者を挙げると、産業の地図が見えてくる。南部アレキパ州のセロベルデは米フリーポート・マクモランが約55%を握る operator で、住友勢が21%、地場のブエナベンチュラが約19.6%を持つ。同鉱山だけでペルーの銅生産の約19%、モリブデンの約34%を占める巨大鉱山だ。中部アンカシュ州のアンタミナはBHP・グレンコア・テック・三菱商事が共同保有し、2025年に銅368千トンと亜鉛384千トンを産出した銅・亜鉛の複合鉱山である。南部アプリマック州のラスバンバスは中国のMMG・CITICなどが保有し2025年に411.3千トンを産出したが、地域住民の道路封鎖など社会紛争が絶えず、2024年の抗議で操業が止まり2025年4月にようやく再開した経緯がある。そして南部モケグア州のケジャベコは、英アングロ・アメリカンが60%、三菱商事が40%を持つ、2022年9月に商業生産入りした世界最大級の新規銅山だ。

この国の鉱業の「伸びしろ」を示すのが開発パイプラインである。ペルー・エネルギー鉱山省(MINEM)が公表した2026年版のリストは、19州にまたがる66件、総額640億ドル超(約9.6兆円)に上る。このうち成熟段階にある約75億ドル(約1.1兆円)分が2026年内に着工する見込みだ。代表例としては、グルポ・メヒコ傘下サザン・カッパーのティアマリア(18億ドル=約2,700億円、年12万トン、2026年末〜2027年初に生産開始予定)、同社のミチキージャイ(25億ドル=約3,750億円、年22.5万トン)やロスチャンカス(年銅13万トン・モリブデン7,500トン)、カナダのテック・リソーシズのサフラナル(年12.8万トン、2029年開始予定)などがある。サザン・カッパーだけでも今後10年でペルーに103億ドル(約1.5兆円)超を投じる計画だ。フジモリ氏の「迅速な許認可」公約が機能すれば、この巨大なパイプラインの実現確度が高まる、というのが強気論の核心である。

一方で、ペルー鉱業の構造的な弱点も直視しておく必要がある。第一に、ラスバンバスやティアマリア(過去に住民の激しい反対で何度も中断した)に象徴される社会紛争・住民反対であり、これが「埋蔵量はあるのに掘れない」ギャップを生んできた。第二に、違法・非公式採掘の蔓延である。複数の報道によれば、現在ペルーでは違法採掘による金生産がブエナベンチュラやホッホシルト、ニューモントといった正規の大手鉱山会社の合計を上回るとみられ、これは治安・環境・財政のいずれにも影を落とす難題だ。フジモリ氏の親鉱業姿勢が評価されるのは、まさにこうした政治・社会リスクを引き下げる期待があるからにほかならない。亜鉛ではアンタミナやセロリンドなどが、金ではヤナコチャ(ニューモント・ブエナベンチュラ)などが主力で、銅・亜鉛・金のいずれの相場が史上最高値圏にある現在、ペルーという生産地の安定性は世界の供給見通しを左右する。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - ペルー鉱業の全体像 ― なぜ銅・亜鉛・金で世界有数なのか - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - ペルー鉱業の全体像 ― なぜ銅・亜鉛・金で世界有数なのか - 図表2

三菱商事(8058)― ケジャベコとアンタミナ、ペルー銅の最大の受益者

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 三菱商事(8058)― ケジャベコとアンタミナ、ペルー銅の最大の受益者 - 章扉

ここから各社の「中身」に入る。まず三菱商事だが、同社のような総合商社とは、原料の生産から流通・販売までバリューチェーンの各所に出資し、モノを動かして稼ぐ業態である。鉱業でいえば、鉱山そのものに出資して持分の利益を取り込みつつ、産出した金属の取引も手がける。今回の6社のなかで、ペルー銅への直接的な賭けが最も大きいのが三菱商事だ。

その中核がケジャベコ鉱山である。三菱商事は2012年にまず18.1%の権益を取得し、2018年に追加で21.9%を取得して持分を40%に引き上げた。この2018年の追加取得の対価は、一時金5億ドル(約750億円)に加え、処理量が一定水準に達した場合の最大1億ドル(約150億円)の条件付き対価で、合計最大6億ドル(約900億円)だった。ケジャベコはモケグア州の露天掘りで、初期10年で年平均約30万トンの銅を産出し、鉱山寿命は約36年に及ぶ世界最大級の新規銅山だ。2022年9月に商業生産入りし、アングロ・アメリカンの2026年2月のレポートでは、生産開始からわずか4年で投資回収(capital payback)の節目を2026年に迎える見通しとされた。三菱商事の持分(40%)に按分すれば、年およそ12万トン規模の銅が同社に帰属する計算になる。

三菱商事はさらに、アンタミナ鉱山の10%も保有している。これは銅だけでなく亜鉛も産出する複合鉱山であり、つまり三菱商事一社でタイトルの「銅・亜鉛」の双方をペルーでカバーしていることになる。チリに目を転じれば、世界最大の銅山エスコンディーダに8.25%、ロスペランブレスに5%、ロスブロンセスなどを擁するアングロ・アメリカン・スールに20.44%を持つ。同社の決算資料によれば、持分ベースの銅生産量は2025暦年で約326千トンに達し、会社側は2030年度以降に年40万トン超へ引き上げる目標を掲げている。三菱商事は、構造的に銅にロング(強気のポジション)を取り続けている資源商社なのだ。

財務面の体力も厚い。2026年5月公表の通期決算(2026年3月期)で、純利益は8,004億円と、会社自身の従来予想7,000億円を上回って着地した(前期比では前年度の一過性利益の反動による減益だが、本業の資源・銅事業は堅調だった)。2027年3月期は1.1兆円への大幅増益を見込む。資源分野の中核である金属資源セグメントの純利益は2,045億円で、このうち銅事業はチリ銅(アングロ・アメリカン・スール)で過去の減損の一部戻し入れ532億円などを取り込み、開示対象会社合計で1,499億円と前期から861億円増えた。株主還元も積極的で、2025年4月に1兆円の自社株買いを発表し、配当も1株110円から125円へ累進的に引き上げる方針だ。著名投資家ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイは三菱商事株の議決権ベースの保有を10.23%まで引き上げており、バフェット氏のCEO退任後もグレッグ・アベル体制の下で5大商社株を長期保有する方針を表明している。株価は6月26日時点で4,403円、時価総額は約16.1兆円である(2024年1月の株式3分割後の数値)。後述するように、三菱商事はシリコンバレー発のAI鉱物探査スタートアップKoBold Metalsの出資者でもあり、銅の上流側で「旧来型の鉱山権益」と「新しいAI探査」の両方に足をかけている点が興味深い。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 三菱商事(8058)― ケジャベコとアンタミナ、ペルー銅の最大の受益者 - 図表1

住友金属鉱山(5713)・住友商事(8053)― セロベルデと「鉱山から電池材料まで」

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 住友金属鉱山(5713)・住友商事(8053)― セロベルデと「鉱山から電池材料まで」 - 章扉

「住友」と名のつく2社は性格が異なるので、まずそこを分けておきたい。住友金属鉱山(SMM、5713)は、鉱山開発・非鉄製錬・電池材料を手がける「メーカー」であり、銅・ニッケル・金を掘って精錬し、さらにEV向け電池材料まで一貫してつくる。一方の住友商事(8053)は総合商社で、鉱物資源は数ある事業セグメントの一つだ。両社は同じ鉱山に並んで出資する関係にある。

両社のペルーにおける旗艦資産がセロベルデである。前述の通りフリーポートが約55%を持つこの鉱山で、住友勢は「SMMセロベルデ・ネザーランド」という器を通じて21%を保有する。その内訳は、SMM自身の経済的持分が16.8%、残る約4.2%を住友商事が持つ。セロベルデはペルー銅生産の約19%・モリブデンの約34%を占める同国最大級の銅山で、選鉱処理量は日量41万トン超に達する。両社にとって、ペルー銅の中核を成す資産である。

SMMの強みは、この銅事業を含む「川上から電池材料まで」の垂直統合にある。銅では米モレンシ25%、チリのカンデラリア16%、成長の柱と位置づけるチリのケブラダブランカ(QB2)25%などを持ち、2030年に銅の権益生産を年30万トンへ引き上げる長期目標を掲げる。ニッケルではフィリピンのコーラルベイやタガニートでHPAL(高圧酸浸出)法による生産を行い、その先でテスラ車にも使われるパナソニック向けのNCA系正極材を供給する、世界有数の電池材料メーカーでもある。金では、日本で唯一の商業規模の金山である鹿児島の菱刈鉱山(鉱石品位は世界平均の数倍にあたる約20g/t、年産約3.5トン)に加え、カナダのコテ金山に30%出資する。つまりSMMは、タイトルの「銅・亜鉛・金」のうち銅と金を直接、そして相場の追い風を最も全身で受ける銘柄の一つだ。実際、2026年3月期のSMMの親会社株主帰属利益は1,763億円と過去最高を記録した。記録的な銅価格と金価格の急騰、コテ金山の立ち上げが牽引した一方、ニッケルは供給過剰で相場が低迷し足を引っ張った。会社側の2027年3月期予想は1,390億円と、保守的な価格前提を反映して前期から減益を見込む。配当は1株228円。株価は2026年3月2日に1万3,300円の最高値をつけた。最大のリスクはインドネシア発のニッケル供給過剰で、SMM自身も2026年の世界ニッケル市場が3年連続の供給超過になると見込んでいる。

住友商事は、より分散の効いた総合商社として銅を「数あるレバーの一つ」として持つ。鉱物資源ではセロベルデの約4.2%をはじめ、SMMと並走する形で各JVに少数出資する。もっとも近年は非資源分野への利益シフトを進めており、2026年3月期の利益の約8割は非資源事業が稼いだ。その同期の親会社株主帰属利益は6,003億円と過去最高(前期比+6.8%)で、市場予想を上回った。あわせて800億円の自社株買い、1対4の株式分割、年間配当150円を打ち出している。2027年3月期は630億円と2期連続の最高益を見込む。要するに、ペルー銅への純度では住友商事よりSMMの方が高く、SMMは「鉱山から電池材料まで」の一貫体制が、住友商事は「総合商社としての分散」が、それぞれの強みだといえる。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 住友金属鉱山(5713)・住友商事(8053)― セロベルデと「鉱山から電池材料まで」 - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 住友金属鉱山(5713)・住友商事(8053)― セロベルデと「鉱山から電池材料まで」 - 図表2

三井物産(8031)・三井金属鉱業(5706)― ペルーは「亜鉛」、銅は「チリ」という含意

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 三井物産(8031)・三井金属鉱業(5706)― ペルーは「亜鉛」、銅は「チリ」という含意 - 章扉

ここは、他のまとめ記事があまり踏み込まない肝心な点なので、丁寧に解説したい。タイトルでは三井勢もペルー銅の受益者として並んでいるが、実際の権益構造を一次情報で辿ると、三井のストーリーはやや異なる。

総合商社の三井物産(8031)にとって、銅の旗艦鉱山はペルーではなくチリのコジャワシである。三井物産はアングロ・アメリカン44%・グレンコア44%と並んでコジャワシに12%を出資する。さらにチリではロスブロンセスなどを擁するアングロ・アメリカン・スールに約9.5%の間接持分を持ち、2025年9月には隣接するコデルコのアンディーナ鉱山との共同鉱山計画(2030年開始、合計で年12万トン増産)に合意した。注意したいのは、しばしば「三井がチリのカセロネス銅山を取得した」と誤って語られる点で、事実は逆である。三井物産と三井金属はカセロネスを2020〜2021年にかけてJX金属(当時JX日鉱日石金属)へ売却しており、同鉱山は現在JX(約49%)とカナダのルンディン・マイニング(51%)が保有する。つまり三井物産の銅は、ペルー直接ではなく「チリ+世界の銅相場」へのエクスポージャーが主体なのだ。

では三井勢はペルーに無縁かというと、そうではない。鍵は「亜鉛」にある。三井金属と三井物産は、ペルーで亜鉛・鉛を産出するワンサラ鉱山とパルカ鉱山を運営するサンタルイサ鉱業を共同保有している(持分は概ね三井金属70%・三井物産30%とされる)。これがタイトルの「亜鉛」に対応する、両社の直接的なペルー権益である。

三井金属鉱業(5706)の正体は、実は鉱山会社というより「素材・製錬メーカー」だ。同社の収益の本当のエンジンは、AIサーバーやICパッケージ基板に使われる極薄の電解銅箔「MicroThin」などの機能材料であり、これに自動車部品・触媒、そして亜鉛・銅などの製錬が続く。亜鉛製錬では神岡(年約6.4万トンの亜鉛地金)などを持つが、神岡は鉱石が枯渇して今は製錬専業で、その坑道跡にはニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」がある、という土地柄だ。三井金属は2021年に銅鉱山事業から撤退しており、JX系の製錬合弁パン・パシフィック・カッパー(PPC)に出資する形で銅製錬に関与する。そのPPCは、2025年12月に未開発のペルー・ケチュア銅プロジェクトをグレンコアに売却し、2026年5月には三菱マテリアルの銅精鉱事業を統合する再編が最終合意され、三井金属の出資比率は32.2%から21.9%へ変わる。

財務面では、三井物産の2026年3月期の純利益は8,340億円(前期比-7.4%)で、金属・鉱物資源セグメントは2,536億円。2027年3月期は9,200億円への増益を見込む。バークシャーは三井物産株も10%超まで買い増している。株価は約4,700円、時価総額は約12.9兆円だ。三井金属の同期純利益は913億円と過去最高(前期から約266億円増)で、この期の利益は亜鉛・銅価格と在庫評価益で「金属(製錬)」部門が牽引したが、中長期の成長エンジンはAI向け銅箔を擁する機能材料部門にある。株価は約4万6,000円台、時価総額は約2.66兆円である。総じて三井勢は、銅スーパーサイクルとペルー亜鉛の恩恵を受けるものの、ペルー「銅」への直接エクスポージャーという一点では三菱商事や住友勢に見劣りする ―― この差は、銘柄選別の実務では決して小さくない。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 三井物産(8031)・三井金属鉱業(5706)― ペルーは「亜鉛」、銅は「チリ」という含意 - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 三井物産(8031)・三井金属鉱業(5706)― ペルーは「亜鉛」、銅は「チリ」という含意 - 図表2

コマツ(6301)― 誰が勝っても儲かる「つるはしとシャベル」

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - コマツ(6301)― 誰が勝っても儲かる「つるはしとシャベル」 - 章扉

資源ブームで最も確実に儲かるのは、金を掘る人ではなく、その人に「つるはしとシャベル」を売る人だ ―― 古い相場格言だが、コマツはまさにこの位置にいる。コマツは米キャタピラーに次ぐ世界2位の建設・鉱山機械メーカーで、鉱山向けには積載量290トン級の「930E」に代表される超大型ダンプトラック、P&Hブランドの電気式ロープショベルや大型ドリル、ホイールローダー、そして地下鉱山機械を供給する。地下鉱山やP&Hショベルの事業は、2017年に約37億ドル(約5,500億円)で買収した米ジョイ・グローバル(現コマツマイニング)に由来し、これによりコマツはキャタピラーに対抗する総合鉱山機械メーカーになった。

コマツの強みは、特定の鉱山や政権の勝敗に賭けなくてよい点にある。今回の他の5社は「自分が出資する鉱山が勝つこと」を必要とするが、コマツはペルーが銅を掘りさえすれば、どの会社のどの鉱山であっても機械と交換部品・サービスで稼げる。ペルーでは三井物産60%・コマツ40%の合弁会社コマツ三井マキナリアス・ペルー(KMMP)を通じて、積載量300トン超の超大型ダンプトラック市場で6割超のシェアを握る、現地の銅生産に不可欠な存在だ。2026年に入ってからの動きも象徴的で、1月にはアンタミナが「世界最大」とされるP&H4800XPC電気ショベルをペルーで初めて稼働させ、6月にはサザン・カッパーのティアマリアが、コマツの自律走行システム「FrontRunner」を採用してペルー初の無人運転鉱山になると発表された(930Eを18台などを投入、操業は2027年第3四半期予定)。

この自律運転(AHS)と電動化こそ、コマツに「テック企業」的な側面を与える要素だ。コマツは2026年4月、超大型自律走行トラックの稼働台数が累計1,000台に達し、これを達成した初のOEMになったと発表した。自律運転の実証はチリのコデルコ(ガブリエラ・ミストラル鉱山、2007〜08年〜)で世界に先駆けて始まった歴史がある。さらにディーゼル・トロリー・電池・水素を切り替えられる「パワー・アグノスティック」な次世代トラックを2030年頃を目標に開発し、BHP・リオ・ティント・コデルコ・ボリデンらと温室効果ガス削減の協業(GHGアライアンス)を進める。鉱山の自動化・脱炭素は、AIデータセンター向けの銅需要と同じく「AI・電化」が生むテーマであり、コマツはその担い手でもある。

財務では、2026年3月期の売上高は4兆1,328億円、営業利益は5,673億円(前期比-13.7%)、純利益は3,764億円だった。鉱山機械の売上は1兆9,044億円で全社の約46%を占め、中南米の売上は7,769億円と前年から12.0%増えて最も伸びた地域となった。2027年3月期は営業利益5,080億円とやや減益の見通しで、為替前提は1ドル150円、米関税の影響は前期の約816億円から約378億円へ縮小すると見込む。株価は2026年2月13日に7,840円の最高値をつけた後、足元では6,500円前後、時価総額は約5.9兆円である。鉱山機械は本体販売だけでなく、交換部品とサービスという継続課金的で利幅の厚い後工程(アフターマーケット)を生む点も、コマツの収益安定性の源泉だ。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - コマツ(6301)― 誰が勝っても儲かる「つるはしとシャベル」 - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - コマツ(6301)― 誰が勝っても儲かる「つるはしとシャベル」 - 図表2

シリコンバレーVCの視点 ― 「AI・電化スーパーサイクル」と戦略資源としての銅

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - シリコンバレーVCの視点 ― 「AI・電化スーパーサイクル」と戦略資源としての銅 - 章扉

ここで一段引いて、なぜ今このペルー選挙がこれほど重いのかを、シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)の視点で整理したい。結論を先に言えば、銅はAI時代の「戦略資源」になりつつあり、その限界的な1トンはますますアンデスから出てくるからだ。

需要側の論理はこうだ。ゴールドマン・サックスは、AIが2030年までにデータセンターの電力需要を165%増やすと試算する。そして電力を送るには ―― 送電網から変圧器、サーバーラックに至るまで ―― すべてに銅が要る。同社はグリッドと電力インフラだけで2030年までの銅需要増の6割超を占め、これは「もう一つの米国分の需要」を世界に積み増すに等しいとみる。JPモルガンは、データセンター起因の銅需要だけで2026年に47.5万トン(前年比+約11万トン)に達すると予想する。ゴールドマンは銅を2026年に最も成長余地の大きいコモディティと位置づけ、2035年にはLME価格が1トン1万5,000ドル(約225万円)に達すると見込む。

相場はすでにこの物語を織り込み始めている。米トレーディング・エコノミクスによれば、COMEX銅は2026年6月26日時点で1ポンド6.15ドル前後(前年比約21%高)で、6月には一時1ポンド6.67ドルの史上最高値を付けた。これはトン換算でおよそ1万3,000ドル台(約200万円/トン)に相当し、2025年12月にLMEが付けた当時の最高値1万1,771ドル(約177万円)をさらに上回る水準だ。背景には、チリの鉱石品位低下や新規大型鉱山の枯渇という構造的な供給不足がある。なお米国はセクション232に基づき2025年8月以降、銅の半製品や派生製品に50%関税を課す一方で精錬銅(地金)は当面除外しており、2026年4月にはこの関税が見直された。商務長官は6月30日までに精錬銅市場に関する報告を大統領に提出することになっており、その結果次第では地金にも関税が及ぶ可能性がある ―― これは銅の物流と価格を左右する目前の材料だ。

そしてVCの動きこそ、この記事の核心である。AIインフラ、米国の製造業復権(American Dynamism)、気候という三つの投資テーマが重なる「重要鉱物(critical minerals)」に、シリコンバレーの資金が雪崩を打って流入している。その象徴がKoBold Metals(コボルト・メタルズ)だ。同社はAIと機械学習で銅などの鉱床を探し当てるスタートアップで、2025年1月に5億3,700万ドル(約810億円)のシリーズCを調達し、企業価値は29億6,000万ドル(約4,400億円)に達した。累計調達は約12.2億ドル(約1,830億円、直近は2025年10月の2.8億ドル)に上る。出資者の顔ぶれが象徴的で、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)グロース、BONDキャピタル、ビル・ゲイツ氏のブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ、エクイノール、BHPベンチャーズ、デュラブル・キャピタル、Tロウ・プライス ―― そして三菱商事(8058)が名を連ねる。KoBoldはザンビアで大型銅鉱床(ミンゴンバ)を掘り当てており、3〜4年内のIPOも取り沙汰される。

ここで点と点がつながる。シリコンバレーがKoBoldに資金を投じるのと同じ論理 ―― すなわち「AIと電化が銅を奪い合う時代に、新しい銅をどう見つけ、どう確保するか」 ―― が、日本の商社が何十年も前から握ってきたアンデス銅権益を、突如として一級の「AIインフラ資産」に見せている。三菱商事はその両側に立っている稀有な存在で、ケジャベコという旧来型の40%権益を持ちながら、KoBoldというAI探査スタートアップにも出資している。世界2〜3位の銅生産国に親鉱業・親外資の大統領が誕生することは、AIブームの「電力とハードウェア」を支える供給側のリスクを引き下げる出来事にほかならない ―― これこそ、今回の選挙が東京上場の資源株にとって重い、より深い理由である。

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - シリコンバレーVCの視点 ― 「AI・電化スーパーサイクル」と戦略資源としての銅 - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - シリコンバレーVCの視点 ― 「AI・電化スーパーサイクル」と戦略資源としての銅 - 図表2ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - シリコンバレーVCの視点 ― 「AI・電化スーパーサイクル」と戦略資源としての銅 - 図表3

市場の反応と今後の焦点 ― 何を、いつ見るべきか

ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 市場の反応と今後の焦点 ― 何を、いつ見るべきか - 章扉

市場の反応を整理すると、まず通貨ソルが4月の第1回投票以降ラテンアメリカ最弱となったのは、サンチェス氏の台頭という「左派リスク」の織り込みだった。フジモリ氏の勝利確実化は、その巻き戻しとして鉱業セクターに安堵をもたらす。もっとも、米ジェフリーズは「選挙が鉱業に与える影響は限定的」とも指摘する。銅開発はどの政権でも国家の優先事項であり、鉱業収入なしに政府は機能しないという経済の現実があるからだ。逆に言えば、サンチェス氏が掲げた国家管理・新憲法・契約見直しが現実になる確率が下がったことが、目先の最大の好材料である。ただし、4万票台という薄氷の勝利、分断された議会、そしてサンチェス氏の抵抗表明が残す「政治リスク・プレミアム」は当面消えない。

日本の各社への含意を、ペルー銅への純度の高い順に並べると分かりやすい。最も恩恵が大きいのは、ケジャベコ40%とアンタミナ10%を持つ三菱商事(8058)であり、次いでセロベルデ21%を握る住友勢(SMM=5713、住友商事=8053)だ。三井勢(三井物産=8031、三井金属=5706)は、銅についてはチリ(コジャワシ12%など)と世界相場への賭けが主で、ペルーでは亜鉛(サンタルイサ)の直接権益を持つという位置づけになる。コマツ(6301)は、どの鉱山が勝っても機械と部品で稼ぐ「つるはしとシャベル」として、セクター全体の設備投資の追い風を受ける。加えてSMMと三井金属は、記録的な銅・金相場の恩恵を製錬・在庫評価益の形でも受ける一方、SMMはニッケル安という固有の逆風を抱える。

今後の「いつ・何を見るか」を具体的に挙げておきたい。短期では、7月にかけてのJNEによる最終集計と正式な当選宣言、そしてサンチェス氏の在外票無効申し立てが司法・社会の場でどこまで広がるかが第一の焦点だ。続いて7月28日の独立記念日に予定される新大統領就任と、その際に発表される内閣 ―― とりわけ経済相とエネルギー・鉱山相の人選が、フジモリ氏が公約通りテクノクラート主導の親鉱業路線を敷くのかを占う実質的なシグナルになる。分断議会のもとでの統治可能性も問われる。マクロ材料としては、6月30日の米商務省による精錬銅の関税レビューが銅相場の目先のイベントだ。事業面では、2026年後半にティアマリアの初生産(コマツのAHS採用)、アンタミナの大型ショベルの立ち上げ、ケジャベコの投資回収到達、サフラナルやミチキージャイの許認可進展などが控える。決算面では、商社各社の2027年3月期第1四半期(4〜6月)が8月初旬に開示され、銅セグメントの数字やSMM・三井金属の「銅・金 対 ニッケル」の綱引きが確認できる。そしてその全体を貫くのが、AIの設備投資サイクルが牽引する銅相場の行方と、ペルーの社会紛争が再燃しないかという二つの大きな変数である。フジモリ政権の発足は、これらのリスクを和らげる方向に働く出来事として、東京の資源株にも静かに、しかし確実に効いてくる。


ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 市場の反応と今後の焦点 ― 何を、いつ見るべきか - 図表1ペルー大統領選、日系で親鉱業投資の立場のケイコ・フジモリ氏当選濃厚。恩恵受ける鉱山(銅・亜鉛・金)セクター。三菱商事(8058)、住友金属鉱山(5713)、住友商事(8053)、三井金属鉱業(5706)、三井物産(8031)、コマツ(6301) - 市場の反応と今後の焦点 ― 何を、いつ見るべきか - 図表2