値がつかなかった朝

ソフトバンクG株価、1か月で25%超の下落。OpenAIの43.6兆円の赤字、CoreWeave(コアウィーブ)の暴落、SBエナジーIPO延期。何が起こっているのか - 値がつかなかった朝 - 章扉

売り注文が積み上がり、ソフトバンクグループの株には、取引が始まってもしばらく値がつかなかった。

週明け19日の東京市場。ようやく売り買いが成立すると、株価はそこからさらに下げ、一時は前の週末より6.5%安い4622円をつけた。7月末以来の安値だ。終値は4845円まで戻したが、10月1日に6701円あった株価は、3週間足らずで3割近く下がった。会社全体の株の値打ち、つまり時価総額は、この間に10兆円以上消えた。6月につけた上場来の高値からは、4割以上安い。

この朝の売りには、2つの理由が重なっていた。1つは、前の週末の米国市場で、半導体などのハイテク株が大きく売られたこと。もう1つは、週末に伝わったニュースだ。ソフトバンクグループが、米国の警備会社の最大手アライド・ユニバーサルの買収を検討しているという。米ブルームバーグ通信が最初に報じたもので、株式の価値で約180億ドル(約2兆8000億円)、相手の借金を含めると300億ドル(約4兆7000億円)近い規模になりうる。警備の仕事の一部を、いずれロボットに置き換える構想だという。

下げは、ここに至るまで3つの波になって押し寄せていた。

最初の波は10月9日だった。出資先の米OpenAIの売上が、市場で語られていた数字より200億ドル(約3兆2000億円)も少ないと、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が前日に報じ、株価は一時7%を超えて下げた。2つ目は3連休明けの13日で、1日で8.5%下げた。3つ目が15日だ。前の晩、米国でAI向けのクラウド会社コアウィーブ(CoreWeave)の株と社債が投げ売られ、米国の物価も予想を上回った。日経平均株価の下げ幅は3318円と史上3番目の大きさになり、ソフトバンクグループ株は9%を超えて下げた。

値下がりしているのは、ソフトバンクグループの株だけではない。同社は、虎の子である英半導体設計大手アームの株の8割強を、借金の担保として差し入れている。そのアーム株も、6月末から3分の1以上値下がりした。

OpenAIの巨額の赤字見通し、コアウィーブの暴落、傘下の米SBエナジーの上場延期、そして担保に入ったアーム株。ばらばらに見えるこれらのニュースは、一本の糸でつながっている。

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4つの会社をつなぐ一本の糸

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高さ2メートルほどの黒い金属の棚に、米エヌビディアのAI向け半導体、GPUが72個並んでいる。棚1台で一般家庭数百軒分の電気を使い、値段は数億円。ChatGPTが質問に一瞬で答えられるのは、こうした棚が世界中のデータセンターで何万台も動いているからだ。

OpenAIは、この棚の多くを自分では持っていない。借りている。貸しているのは「ネオクラウド」と呼ばれる新しいタイプのクラウド会社や、データセンターを丸ごと建てて貸す開発会社だ。

ネオクラウドの代表格がコアウィーブである。GPUを大量に買い込んでデータセンターに並べ、OpenAIやマイクロソフト、メタに時間貸しする。いわばGPUの大家だ。OpenAIとの契約は、総額で少なくとも220億ドル(約3兆5000億円)にのぼる。OpenAIは2025年に契約を結んだ際、3億5000万ドル(約550億円)分のコアウィーブ株も受け取り、上得意であると同時に株主にもなった。

SBエナジーは、ソフトバンクグループが過半を持つ米国の会社だ。もとは太陽光発電の会社だったが、いまはテキサス州とオハイオ州で、OpenAIのための巨大なデータセンターと、それを動かす発電所を建てている。

そしてソフトバンクグループは、OpenAIに累計646億ドル(約10兆2000億円)を投じ、株式の約13%を持つ大株主である。

レストランにたとえると分かりやすい。行列の絶えない人気店(OpenAI)が、巨大な厨房を何年も借りる契約を次々に結ぶ。大家(コアウィーブやSBエナジー)は、その賃貸契約書を銀行に見せてお金を借り、厨房を建てる。人気店の大株主(ソフトバンクグループ)は、自分でも大家の会社を一つ持ち、さらに手持ちの株を担保にお金を借りて、人気店にお金を注ぎ込んでいる。

この仕組みは、人気店の売上が伸び続け、お金を借りる金利が低いうちはよく回る。10月に起きたのは、その2つの前提が同時に揺らいだことだった。人気店の売上が思ったより少なく見え、金利が上がったのである。

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OpenAIの「43.6兆円」を分解する

ソフトバンクG株価、1か月で25%超の下落。OpenAIの43.6兆円の赤字、CoreWeave(コアウィーブ)の暴落、SBエナジーIPO延期。何が起こっているのか - OpenAIの「43.6兆円」を分解する - 章扉

43兆6000億円という数字の出どころは、OpenAIが7月に作成した非公開の資料だ。FTが9月18日に報じた。2026年から2030年までの5年間に、会社から出ていく現金が、入ってくる現金を2780億ドル(約43兆6000億円)上回る見通しだという。ならせば、毎日およそ240億円ずつ、手元の現金が減っていく計算になる。

この赤字は、決算書の損益とは少し性格が違う。家計にたとえれば、給料から生活費を払い、さらに家の建築代金を払ったあと、通帳の残高がどれだけ減るか、という数字だ。会計の言葉では、フリーキャッシュフローのマイナスと呼ぶ。

なぜ、それほどの現金が出ていくのか。答えは計算機である。OpenAIは2030年までに、計算資源とインフラに8560億ドル(約135兆円)を使う見通しだ。一方の売上は、今年の360億ドル(約5兆7000億円)から、2030年には10倍の3500億ドル(約55兆円)に伸ばす計画になっている。4年後には、いまのマイクロソフト1社の年間売上を上回る規模だ。それほど強気の計画でも、5年間の売上の合計は8400億ドル(約133兆円)で、計算機の代金に届かない。そこに人件費などが加わって、2780億ドルの穴が開く。

レストランで言えば、まだ客が座っていない席の分まで、厨房を先に借りている状態だ。厨房が整わなければ、新しい料理、つまり次のAIモデルは作れず、客も増えない。だから先に借りる。OpenAIの経営は、この順番で成り立っている。

見通しは、この1年で大きく動いた。1年前には、2029年までに使う現金は1150億ドル(約18兆円)とされていた。それが今年5月の資料では、2030年までで3050億ドル(約48兆円)。対象の期間が1年ずれたとはいえ、見積もりは2.5倍以上に膨らんだ。7月の資料では、2780億ドルとわずかに縮んでいる。2月の時点では、2030年に初めて黒字に転じる計画だと、米メディアのジ・インフォメーションが報じていた。

穴を埋めるお金も、無限ではない。OpenAIは今年3月、8520億ドル(約135兆円)の企業価値で1220億ドル(約19兆3000億円)を集めた。FTによれば、このペースだと、その資金は2028年に底をつく。そこでいま、1兆4000億ドル(約221兆円)の企業価値で、少なくとも300億ドル(約4兆7000億円)を追加で集める交渉をしていると、ブルームバーグは伝えている。アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドや、米資産運用最大手のブラックロックが出資を検討しているという。

この穴の大きさに、10月8日、もう一つの数字が重なった。

9月末には、OpenAIの年換算売上高は700億ドル(約11兆円)近いと伝えられていた。年換算売上高とは、直近の売上のペースを1年分に引き伸ばした数字のことだ。ところがFTによると、OpenAIが実際に投資家に示した9月末の数字は、500億ドル(約7兆9000億円)近くだった。

差が生まれた理由は、需要が消えたからではない。物差しの違いだ。デパートの催事で弁当を売ったとき、デパートの取り分を含めた売値で売上を数えるか、自分の手取りだけを数えるか。ライバルの米アンソロピックは、アマゾンやグーグルのクラウドを通じて売れた分を、売値の総額で売上に数える。OpenAIは、提携先を通じた販売をそうは数えない。OpenAIの投資家たちが、アンソロピック流の物差しに置き換えて計算した数字が、700億ドル近いという話として広まっていたのである。

OpenAI自身は強気だ。CNBCによると、OpenAIは投資家に対し、7〜9月期に年換算売上高が77%伸び、企業向けに限れば107%伸びたと説明した。ブルームバーグには、年末には700億ドルに届くという見通しを伝えている。

それでも市場は売った。この日、エヌビディア株は3%、オラクル株は6%近く、コアウィーブ株は8%近く下げた。1兆4000億ドルという値段を支える土台として、物差し一つで200億ドルも揺れる数字は、あまりに心もとなく映った。

対照的だったのがアンソロピックだ。10月14日に投資家に示した7〜9月期の売上高は168億ドル(約2兆6500億円)で、前の四半期から45%増え、調整後で黒字を確保したとブルームバーグなどが報じた。上場前の会社の値段に賭けられる暗号資産の取引所ハイパーリキッドの先物では、アンソロピックの評価額が2兆ドル(約316兆円)を上回る一方、OpenAIは一時1兆5000億ドル(約237兆円)を割り込んだと、CNBCは伝えている。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは9月、株式の上場は「今年ではない」と明言した。10月14日には、計算資源の調達を担ってきた幹部、サチン・カッティ氏の退任も明らかになった。

OpenAIの値段が揺れると、真っ先に揺れるのがソフトバンクグループだ。同社がビジョン・ファンド2号を通じて持つOpenAI株の帳簿上の価値は、6月末の時点で14兆5000億円あまりにのぼる。

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質屋に預けたアーム株

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質屋に腕時計を預けると、その値打ちに応じてお金を貸してもらえる。期限までに返せば時計は戻ってくるが、返せなければ時計は質屋のものになる。

ソフトバンクグループは、これと同じことを桁違いの規模でやっている。預けているのは腕時計ではなく、英半導体設計大手アームの株だ。株を担保にお金を借りるこの仕組みは、マージンローンと呼ばれる。

同社が持つアームの株は、6月末の時点で約9億2300万株。アームの発行済み株式の9割近くにあたる。ブルームバーグによると、5月の時点で、そのうち7億6900万株が担保に入っていた。持っているアーム株の8割強が、いわば質屋の棚に並んでいる。

このローンは、年を追うごとに大きくなってきた。2023年に85億ドル(約1兆3000億円)で始まり、2024年に135億ドル(約2兆1000億円)、2025年に200億ドル(約3兆2000億円)。そして今年9月、250億ドル(約4兆円)に広げた。ブルームバーグによれば、ソフトバンクグループが求めた上積みは30億〜50億ドル(約4700億〜7900億円)だったが、貸し手からは約70億ドル(約1兆1000億円)分の申し出が集まった。アームの株価が、年初から2.4倍に値上がりしていたからだ。6月末の時点で、このローンには41の金融機関が加わり、借入残高は3兆2000億円あまりにのぼっていた。

ソフトバンクグループは、このローンの仕組みを投資家向けの資料で説明している。お金を借りるのは資金調達用の子会社で、返済の責任は担保の株に限られ、親会社のソフトバンクグループには及ばない。借りる額は、最初の担保価値の2〜4割程度に、保守的に抑えてあるという。ただし、株価が一定の水準を下回れば、追加の担保を差し入れるか、期限より前に返す必要が出てくる。いわゆるマージンコールである。

その株価が、大きく下げている。アームの株価は、6月末の354ドル57セント(約5万6000円)から、10月16日には227ドル80セント(約3万6000円)へ。3か月半で3分の1以上値下がりした。半導体株の全面安に加え、13日には、米クアルコムとの契約をめぐる裁判で、アームが契約に違反したと陪審が認めた。賠償額はわずか2ドル(約300円)だったが、ロイターによれば、判事の判断次第では、クアルコムが5年間、アームに使用料を払わなくてよくなる可能性が残った。

では、担保の厚みはどれくらい残っているのか。5月時点で担保に入っていた7億6900万株を、16日の終値で計算すると約1750億ドル(約27兆7000億円)になる。借入枠の250億ドルに対して、まだ7倍ほどの厚みがある。ただ、6月末の株価で同じ計算をすると、当時の借入枠200億ドルに対して14倍近くあった。わずか3か月半で、クッションの厚みは半分になった計算だ。

すぐにマージンコールが来る水準ではない。それでも、アームの株価が下がるほど、ソフトバンクグループが新たに借りられる余地は縮む。投資助言会社アシンメトリック・アドバイザーズのアミール・アンバルザデ氏は、8月の時点でロイターにこう指摘していた。「アームの評価が下がっても、それを担保にした借金の額は下がらない」。

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ソフトバンク株とOpenAI株にも、借金がつながっている

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担保に入っているのは、アーム株だけではない。

ソフトバンクグループは、国内の通信会社ソフトバンクの株を約191億株持ち、この株も担保にして1兆2000億円近くを借りている。もっとも、こちらは心配の種になっていない。通信会社の株はAI株のようには揺れず、ソフトバンクの株価はむしろ6月末から2割近く上がった。持っている株の値打ちを19日の終値で計算すると4兆7000億円ほどで、借入額の4倍近くある。

目を凝らすべきは、OpenAI株にひもづいた、もう一つの借金だ。ソフトバンクグループの決算短信によると、8月5日、ビジョン・ファンド2号の子会社が、米ゴールドマン・サックスやJPモルガン、三井住友銀行など5つの金融機関と、100億ドル(約1兆5800億円)の借入契約を結んだ。返済期限は2028年8月。担保は借り手の現金口座で、OpenAI株そのものではない。その代わり、ソフトバンクグループが返済を保証している。

肝心なのは、契約に付いた条件だ。この借金が参照しているOpenAIの優先株の公正価値が大きく下がるなど、一定の事態が起きた場合には、現金を担保として差し入れたり、期限より前に返したりする条項が働く。親会社には返済の責任が及ばないアーム株のローンと違い、こちらは親会社の保証付きだ。OpenAIの値段が大きく崩れれば、ソフトバンクグループの手元の現金に、直接はね返る仕組みになっている。

フィナンシャル・タイムズの元編集長で、孫正義氏の評伝を書いたライオネル・バーバー氏は、18日付の英紙オブザーバーへの寄稿でこう書いた。「ソフトバンクはOpenAIに投じるためにお金を借り、そのOpenAIの帳簿上の値上がりが、同じ借金を支えている。伝染のリスクは現実のものだ」。そして孫氏を、綱渡りの芸人というより、皿回しの芸人にたとえた。回している皿の一枚一枚が、次の皿のための担保に差し入れられた持ち株だ、と。

会社が公表する数字の上では、ソフトバンクグループの財務にはまだ余裕がある。借金を保有株の価値で割ったLTVという指標は、6月末で13.0%。平時は25%未満、異常時でも35%を上限とする自社の基準を大きく下回る。ただ、この数字の土台は2社に偏っている。6月末の保有株の価値83兆円あまりのうち、アームが6割、OpenAIが2割近くを占める。

しかも、格付け会社の物差しは違う。米S&Pグローバル・レーティングは、投資先の株を担保にしたマージンローンも借金に数えるため、3月末のLTVは、会社の計算の17%に対し33%になるとしていた。S&Pのアナリストは8月、ロイターに「アームの信用力はしっかりしているが、OpenAIは非常に弱い。AIの技術革新のリスクが大きく、競争も激しいスタートアップだ」と語っている。

それでも、ソフトバンクグループは借りることをやめていない。9月には、ドル建てとユーロ建てで合わせて111億ドル(約1兆7500億円)の社債を発行した。格付けが投資適格に届かない、いわゆるジャンク債として過去最大規模で、金利は最も高いもので年9.75%。8月に米アルファベットが発行した社債の5.2%の倍近い。この資金を用意したうえで、10月1日にOpenAIへの追加出資の最後の100億ドル(約1兆5800億円)を払い込んだ。

傘下のビジョン・ファンドを運営するソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのアレックス・クラベルCEOは、ロイターに「値上がりが続くと考える資産を売りたくないから、お金を借りている」と説明し、「OpenAIのこれまでの値上がりを考えれば、9.75%でもなお妥当だ」と語った。ソフトバンクグループはかつて、エヌビディア株や米Tモバイル株を売ってOpenAIへの資金を作った。いまは、手持ちの株を担保に入れ、借金で賄っている。

市場の警戒は、株価より先に借金の値段に表れている。ニューヨーク・タイムズによれば、ソフトバンクグループの借金100万ドル(約1億5800万円)分を倒産から守る保険の料金は、年初の2万7000ドル(約430万円)弱から、4万ドル(約630万円)超へと5割近く上がった。

調査会社MSTファイナンシャルのアナリスト、デビッド・ギブソン氏は、ロイターにこう語っている。「以前のソフトバンクは、ルーレットでいくつもの数字に賭けていた。いまは赤か黒かだ。すべてを失うか、すべてを得るか」。アンバルザデ氏も「賭けの大きさは、これまで見たことがないほどだ」として、株の空売りを勧めている。

それでも孫氏は手を緩めない。FTは、孫氏が中東の投資家から最大1000億ドル(約15兆8000億円)を集め、企業を買収してAIで経営を立て直すファンドをつくろうとしていると報じた。週末に伝わったアライド・ユニバーサルの買収検討も、その延長線上にある。

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コアウィーブ、暴落の1週間

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10月13日、火曜日の夜。シリコンバレーの著名投資家チャマス・パリハピティヤ氏が、X(旧ツイッター)に1枚のグラフを投稿した。コアウィーブが2032年に返済する約束の社債の利回りが、15%に触れたことを示すグラフだった。添えた問いは、「AIの建設ラッシュは、プライベートクレジット、つまり銀行以外の貸し手による融資のバブルを生んでいるのではないか」。この投稿に、イーロン・マスク氏が一言だけ返した。「うわっ(yikes)」。

翌14日、コアウィーブ株は15.5%下げた。同じ日、FTはコアウィーブの共同創業者で資金調達を担うブラニン・マクビー氏のインタビューを掲載した。借金に格付け会社の高い評価を取りつけ、保険会社からもっとお金を借りたいという内容で、マクビー氏は保険会社のお金を「世界中のお金がそこにある」と表現した。CNBCは、この記事も売りに拍車をかけたようだと伝えている。ロイターによれば、この1日でコアウィーブ株を空売りしていた投資家は、約8億ドル(約1300億円)の利益を手にした。

マイク・イントレーターCEOは、社内メモでこう反論した。「新しい種類のテクノロジー企業を築いていると、市場が誤解し、不合理に振る舞う時期がある。われわれは受注残に自信を持っている。受注残は、すべての債務を賄って余りある」。CNBCが入手したメモの一節だ。

15日には、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが、スウェーデンのストックホルムでブルームバーグの取材に応じた。「コアウィーブの力は日々強まっている。私は楽観している。彼らの資金調達のコストは、実際には下がっている」。エヌビディアは、コアウィーブの株式の約1割を持つ大株主でもある。フアン氏は、エヌビディアがコアウィーブの後ろ盾になる必要はないとも語り、株価は6%近く戻した。

だが16日、株価は再び12%近く下げた。1週間の下落率は25%。2025年6月につけた最高値と比べると、株価は3分の1になった。

オプション市場では14日、約190万ドル(約3億円)分のプット・オプションがまとめて買われた。12月18日までに株価が37ドル50セント(約5900円)を割れば利益が出る、いわば暴落に備えた保険だ。この水準は、2025年3月に上場したときの公開価格40ドル(約6300円)をも下回る。CNBCの取材に応じたトレーダーは、これを「バブル・プット」と呼んだ。

一方で、下げを拾う投資家もいた。著名投資家キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストのファンドは、2日間で38万株あまりを買い増した。個人投資家の買い越し額も、この週だけで6600万ドル(約100億円)と、過去2番目の大きさになった。ロイターは16日、イントレーター氏とその関係先が、上場以来10億ドル(約1600億円)近い株を売却していたことも報じた。大半は、あらかじめ決めておいた計画に沿った売却だった。

株より先に悲鳴を上げた「社債」と「倒産保険」

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コアウィーブの騒ぎで、市場の専門家が本当に注目したのは、株価よりも社債だった。

社債は、会社が投資家からお金を借りるときに渡す借用書のようなものだ。満期まで持っていれば、額面どおりのお金が返ってくる。ところが、返してもらえるか怪しくなると、借用書は額面より安くしか売れなくなる。安く買えるほど、満期まで持った人が得る利回りは上がる。コアウィーブが6月に年9.675%の利回りで発行したばかりの社債は、この週、利回りが15%まで跳ね上がった。2031年10月が満期のドル建て社債の利回りは、15日に一時16%を超えた。

もう一つの物差しが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる「倒産保険」だ。火事の起きやすい家ほど火災保険料が高いように、借金を返せなくなりそうな会社ほど、この保険の料金は高くなる。コアウィーブのCDSは年10%を超え、過去最高になった。100億円の貸し倒れに備えるのに、毎年10億円以上かかる計算だ。ロイターは、5年以内に債務不履行が起きる確率に換算すると63%近くになり、1年前の約30%から倍以上に跳ね上がったと伝えている。同じ日のソフトバンクグループの保険料率は年4.24%、オラクルは2.88%だった。

なぜ、コアウィーブなのか。6月末の時点で、同社の借入金とデータセンターのリース債務は、合わせて約520億ドル(約8兆2000億円)にのぼる。一方、1〜6月の売上高は46億ドル(約7300億円)で、最終赤字は14億ドル(約2200億円)だった。売上の72%は上位3社の顧客から来ており、その中心はマイクロソフトとOpenAIだ。米S&Pの格付けは、投資適格より下のB+である。

FTによれば、コアウィーブの借金の多くは、顧客との契約から入るお金を真っ先に返済に回す仕組みになっていて、売上1ドルのうち親会社の手元に届くのは20セントほどだという。ニューヨーク・タイムズは、データセンターを15年以上の長期で借りる一方、顧客にはそれより短い期間で貸すという点で、同社を経営破綻した米シェアオフィスのウィーワークになぞらえる見方を紹介した。コアウィーブの広報は「資金調達の複雑さは規律の表れであり、われわれの誇りだ」と反論している。

会社側の支えは、受注残の厚さだ。6月末の受注残は約1040億ドル(約16兆4000億円)あり、その4割余りは2028年までに売上になる予定になっている。売上の98%は、使っても使わなくても代金を払う長期の契約から来ていると、コアウィーブは強調する。

それでも債券市場の専門家は、この動きを一社の問題とは見ていない。ゴールドマン・サックスによれば、AI関連の高利回り社債の上乗せ金利は、13日から14日のたった1日で0.25%広がり、過去最高を更新した。AIと関係のない社債は、ほとんど動いていない。英バークレイズは、危ういAI向けの融資に投資家が求める上乗せ金利が、この半年で5割以上広がったとしている。

債券データ会社9finのマックス・フルームス氏はロイターに、「コアウィーブはまさに炭鉱のカナリアだ。AIブームを支える融資の値段、量、仕組みの転換点になる」と語った。独ドイツ銀行のジム・リード氏は、設備投資を手元の現金ではなく借金で賄う時代に入る以上、社債の値動きをますます重く見なければならない、と書いている。

痛みは同業にも広がった。オランダに本社を置くネビウス(Nebius)も、この週に株価が25%以上下げた。調査会社ガートナーは、2030年までにネオクラウドの8割が、独立した事業として立ち行かなくなると予測している。

ソフトバンクG株価、1か月で25%超の下落。OpenAIの43.6兆円の赤字、CoreWeave(コアウィーブ)の暴落、SBエナジーIPO延期。何が起こっているのか - 株より先に悲鳴を上げた「社債」と「倒産保険」 - 図表1

SBエナジー、止まったままの上場

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オハイオ州南部の人口2000人ほどの村、パイクトン。かつてウラン濃縮工場があった国有地に、SBエナジーは巨大なデータセンター群を建てようとしている。必要な電力は、およそ10ギガワット。原子力発電所10基分に近い。日米の5500億ドル(約87兆円)の投資合意の一環として、ホワイトハウスが2月に発表した計画で、3月の起工式には孫正義氏と米国のラトニック商務長官が並んだ。

SBエナジーは9月1日、米国での株式上場を申請した。ロイターによれば、企業価値500億ドル(約7兆9000億円)を目指していた。ところが9月21日、ニューヨーク・タイムズは、狙った値段で十分な買い手が集まらず、上場が延期されたと報じた。国際金融情報誌IFRは、ある銀行関係者の「評価額の開きが大きな問題だ」という声を伝えている。米証券取引委員会(SEC)の開示システムでは、9月21日に修正した届け出を出したあと、10月19日の時点まで、上場の価格帯を記した新しい書類は出ていない。

投資家がためらう理由は、目論見書を読むと見えてくる。SBエナジーの受注残は4390億ドル(約69兆円)と巨大だ。ところが、そのうち2年以内に売上になるのは10億ドル(約1600億円)にすぎない。6年以内でも430億ドル(約6兆8000億円)で、8年以内でも全体の2割に届かない。FTによれば、データセンターの契約を果たすには、1740億ドル(約27兆5000億円)の資金が必要になる。

目論見書には「現在稼働しているデータセンターはない」と、はっきり書かれている。データセンターの借り手はソフトバンクとOpenAIの関連会社だけで、「関連のない借り手はいない」。さらに「OpenAIは現時点で投資適格の借り手ではない」とも記す。そのためオハイオの計画の最初の部分は、借り手が払えなくなった場合に、エヌビディアが最大1050億ドル(約16兆6000億円)まで価値を保証する仕組みで支えられている。

MSTファイナンシャルのギブソン氏は、「ソフトバンクはAIへの熱狂に乗じて、比較的小さな売上に非常に高い評価をつけ、現金化しようとしている」とロイターに語った。

立ち止まったのは、SBエナジーだけではない。10月8日には、エヌビディアが出資するオーストラリアのAIデータセンター会社ファーマス(Firmus)が、上場を直前で取りやめた。予定どおりなら企業価値は306億ドル(約4兆8000億円)。ブルームバーグによれば、2026年度の売上高のおよそ600倍にあたる値段だった。ロイターは、ファーマス、SBエナジー、そして米ブラックストーンが支援するエアトランクの不動産投資信託の上場が、相次いで撤回されるか保留されたと伝えている。英法律事務所フレッシュフィールズのハリー・エバンス氏は、「話題は『どんな代償を払っても成長』から、質への厳しい目へと移った」と語る。

建設の現場にも逆風が吹く。FTが伝えた規制情報会社レグレイヤーの集計では、今年、米国で遅れたり、撤回されたり、阻止されたりした大型のデータセンター計画は、少なくとも47件にのぼる。米調査会社バーンスタインのアナリストは、米国で計画されているデータセンターのうち、実現の見込みがあるのは35%ほどにすぎないと見積もった。オハイオの計画では、米東部の送電網を運営するPJMが、必要な送電線や発電所の検討を始めたところだ。

ソフトバンクG株価、1か月で25%超の下落。OpenAIの43.6兆円の赤字、CoreWeave(コアウィーブ)の暴落、SBエナジーIPO延期。何が起こっているのか - SBエナジー、止まったままの上場 - 図表1

引き金は「金利」だった

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10月の売りの根っこには、お金の値段の変化がある。

中東では、イランをめぐる戦争でホルムズ海峡の通航が滞り、原油の値段は1バレル100ドル(約1万6000円)前後で推移している。16日には101ドル台と、1か月ぶりの高値をつけた。そのため米国の物価が下がらない。9月の消費者物価指数は前の年より3.7%上がり、8月の3.4%から伸びが加速した。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日、2023年以来となる利上げに踏み切り、政策金利を3.75〜4.00%に引き上げた。物価統計が出た14日には、長期金利の目安となる米10年物国債の利回りが一時5.3%前後に達し、市場では次の会合での追加の利上げを見込む声が強まった。

住宅ローンの金利が上がると、同じ家でも買える人が減り、建てる側も慎重になる。AIのデータセンターでも、同じことが起きる。しかもAIの建設は、借金に頼る割合がどんどん大きくなっている。金融情報会社LSEGによると、アルファベット、アマゾン、メタ、オラクルの4社が今年発行した社債は、13日時点で2280億ドル(約36兆円)を超え、2025年1年間の2倍以上に達した。

ブロードコムのホック・タンCEOは12日、シンガポールの会議で、「多くの投資家は、自分が何に投資しているのか分かっていない」と語り、いまのAI投資を「まるでカジノにいるようなものだ」と表現した。そして、AIの成長を最も縛るのは、半導体や電力ではなく、お金かもしれないと述べた。同じ壇上にいた米インテルのリップブー・タンCEOも、投資家は資金のコストとAI投資のリターンを厳しく見始めていると応じた。

国際通貨基金(IMF)も13日、タイのバンコクで開いた年次総会で同じ点を突いた。クリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は、「世界経済はいま、AIという一本足で立っている。その足がぐらついたらどうなるか」と問いかけた。IMFは、AIへの投資が急減すれば、2028年までに世界の国内総生産(GDP)が1.1%、米国では1.8%押し下げられるという試算も示している。

米ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのルイス・アルバラード氏は、CNBCにこう語った。「今年の最初の9か月に味わった『楽なお金』の時代は、消え始めている」。

シリコンバレーの投資家が問う3つのこと

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シリコンバレーの投資家たちの議論は、突き詰めると3つの問いに集まる。

1つ目は、「その売上は、誰のお金で立っているのか」。

パリハピティヤ氏は15日、Xにこう書いた。「AI企業の売上の7〜8割は、ベンチャーキャピタルから資金を得た別のAI企業から来ているのではないか。これは循環取引の問題ではない。売上の質の問題だ」。同氏が率いるソーシャル・キャピタルの集計では、9月までの米国のベンチャー投資の約83%が、AIと機械学習の企業に向かった。商店街の店どうしが互いの品を買い合って売上を膨らませているなら、本当に問うべきは、外からどれだけの客が来ているかだ、という指摘である。パリハピティヤ氏は、2010年代前半から半ばに、ネット経由で使う業務ソフトの会社に投資が殺到したときにも、同じことが起きたと振り返っている。

この問いは、OpenAIにも向けられる。ヴァーディクト・キャピタルのマイケル・ファーティック氏はCNBCで、OpenAIの上場計画について「本気なのかよく分からない。数字を少し見せるたびに、あまり美しくは見えない。損失も込み入っている」と語った。OpenAIの大口株主スライブ・キャピタルを率いるジョシュア・クシュナー氏は、8月に出資者へ送った書簡で、「優れた会社が、どんな値段でも良い投資になるわけではない」と書いている。

2つ目は、「計算機の稼ぎは、借金の金利を上回るのか」。

セコイア・キャピタルのデビッド・カーン氏は、AIへの投資を回収するのに必要な売上を、毎年試算してきた。2023年に「2000億ドルの問い」と名付けたその額は、今年7月の試算では約3兆ドル(約474兆円)にまで膨らんだ。今年1年のAIインフラ投資、1兆5000億ドル(約237兆円)を正当化するのに必要な売上だという。セオリー・ベンチャーズのトマシュ・トゥングズ氏は、今後5年でAIデータセンターのために借りられるお金を4兆ドル(約632兆円)と見積もり、その利払いだけで毎年2600億〜3000億ドル(約41兆〜47兆円)かかると試算している。しかもこれは、借りる金利を6.5〜7.5%と置いた計算だ。コアウィーブの社債の利回りが15%に跳ね、ソフトバンクグループが9.75%を払ういま、その前提は早くも揺らいでいる。

3つ目は、「契約の長さ、GPUの寿命、借金の期間はそろっているのか」。この点では、見方がはっきり割れる。

コアウィーブに出資してきたネオステラー・キャピタルのエバン・シュロスマン氏はフォーチュン誌に、コアウィーブの契約は、使っても使わなくても代金を払う「テイク・オア・ペイ」で、相手はマイクロソフトのような一流の財務基盤を持つ企業だと説明し、返済の道筋は見えていると語った。これに対し、会計の調査報道で知られるフランシーン・マッケナ氏は、マイクロソフトが契約を守ってコアウィーブを救ってくれると考えるのは甘い、と切り捨てた。需要が冷えれば、マイクロソフトは容赦しないという見立てだ。

貸す側の仕組みも、急速に変わっている。エヌビディアは8月、米ブラックストーンなど金融大手と組み、GPUを担保に5000億ドル(約79兆円)以上を集める資金調達の基盤をつくると発表した。FTによれば、ブロードコムの信用力を裏付けにした、アンソロピック向けの600億ドル(約9兆5000億円)の融資も組成が始まった。半導体を売る会社が、買い手の借金の信用まで貸し出す。IMFや国際決済銀行(BIS)は、こうした資金の循環を金融システム全体のリスクとして挙げているが、フアン氏はかねて、そうした見方を「ばかげている」と退けてきた。

ウォール街には、楽観論も根強い。テック株の強気派として知られるアナリストのダン・アイブス氏は、今回の売りを「同じ台本で、配役が違うだけ」と表現した。今年、AIに仕事を奪われるとの不安からソフトウエア株が売り込まれた局面になぞらえ、「AIインフラにとっての『SaaSの黙示録』の瞬間だ」と語り、そのときと同じく株価は戻るとみる。調査会社ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーのパトリック・ムーアヘッド氏も、ディープシークの衝撃や関税ショックを引き合いに、「またひとつ、驚かされただけだ」と述べた。米エバーコアのアナリストも、市場は社債の利回りの上昇を「事業モデルが行き詰まった証拠」と受け止めすぎているとして、強気の評価を据え置いた。

一方で、米ベアードのテッド・モートンソン氏は、コアウィーブ、ネビウス、オラクルの3社は、手元に残る現金の面でテック業界の「おそらく最下位」だと指摘し、資金のコストの上昇と、資金の循環への厳しい目を挙げる。米運用会社ジャナス・ヘンダーソンのジョン・ロイド氏は、逆の角度から見る。新しい計画への資金の流れが細れば、すでにある計画とAIインフラの価値は、むしろ高まるという見立てだ。

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各紙・各サイトはどう報じたか

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この1か月、流れをつくったのはFTのスクープだった。OpenAIの5年で2780億ドルの現金流出、年換算売上高500億ドル、コアウィーブの保険会社からの借り入れ構想、ソフトバンクグループの中東での1000億ドル集め。いずれもFTが最初に報じた。18日には、米国のAIインフラ建設が資金の逼迫と工事の遅れに試されている、という特集も載せた。記事に登場する米コロンビア大学の経済学者は、2025年から2032年までの米国のAIインフラ投資が、10兆ドル(約1580兆円)を超えうると見積もっている。

ブルームバーグは、OpenAI側の「年末に700億ドル」という見通しや、フアン氏の「後ろ盾は不要」という発言を伝えた。アーム株を担保にしたローンの増額や、アライド・ユニバーサルの買収検討を最初に報じたのもブルームバーグだ。ファーマスの上場中止には「データセンターの寵児の300億ドルの夢、48時間で砕ける」と見出しを打ち、17日には「コアウィーブの苦境が、AI向けジャンク債市場を閉ざしかねない」と書いた。

ロイターは、コアウィーブを「炭鉱のカナリア」と呼ぶ専門家の声を繰り返し伝え、ソフトバンクグループのジャンク債を、AIへの「全賭け」の上積みと分析した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ファーマスの件を「AIブームの限界を示す」と報じ、アライド・ユニバーサルとの交渉が初期段階にあることも伝えた。ニューヨーク・タイムズは17日、「AIの借金に弱い環が見え始めた」と題し、コアウィーブ、オラクル、ソフトバンクグループが業界の弱い環にすぎないのか、それとも、より深い問題の前触れなのかを問うた。英紙オブザーバーでは、先に触れたバーバー氏が、孫氏はOpenAIに自らの評判を賭けたと書いた。

日本では、日本経済新聞が19日、ソフトバンクグループ株の約2カ月半ぶりの安値を、AI投資への懸念と結びつけて報じた。金融情報会社フィスコは同じ朝の相場見通しで、巨額の負債を抱えながらAI投資を進めるソフトバンクグループには資金調達コストの上昇が波及するおそれがあり、株価の下落が信用への懸念をさらに強める悪循環に陥ることが警戒される、と書いた。

AIに懐疑的な論者は勢いづいている。批評家のエド・ジトロン氏は、OpenAIの売上騒動を受けて、粉飾決算で破綻した米エネルギー会社エンロンの名を冠した「年換算エンロン率」という文章を発表した。認知科学者のゲイリー・マーカス氏は、「最先端のAI研究所にとっての、ウィーワークの瞬間か」と問いかけた。

今後——11月に来る「答え合わせ」

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この先、市場の見方を左右する材料は、10月末から11月に集中している。

最初の山は、10月27日から28日に開かれる、FRBの金融政策を決める会合だ。9月に続く追加の利上げに踏み切るかどうかで、AIインフラ全体の借金の値段が変わる。同じころ、米大手IT企業の決算発表が相次ぐ。アイブス氏は、警戒すべき信号として、大手の設備投資の削減、契約の取り消し、そしてGPUの貸出料金の下落の3つを挙げている。大手がデータセンターへの投資計画を維持するかどうかが、最初の答え合わせになる。

11月4日には、アームが7〜9月期の決算を発表する。日本時間では5日の朝だ。ソフトバンクグループにとっては、担保に入れた株の値打ちを左右する決算になる。クアルコムとの裁判で、判事が使用料をめぐってどう判断するかも、アームの株価を揺らしうる。

11月10日には、ソフトバンクグループが7〜9月期の決算を発表する。OpenAIの株式の価値をどう見積もったか、アーム株の下落でLTVがどこまで上がったか、マージンローンの状況をどう説明するか。中東での資金集めやアライド・ユニバーサルの件について、孫氏が何を語るかも焦点だ。同じ11月には、コアウィーブも7〜9月期の決算を発表する見込みで、利払いの額、利益率の改善、保険会社からの借り入れが実現したかどうかが問われる。その後には、エヌビディアの決算も控えている。

11月は、アンソロピックの上場手続きも本格化する。ブルームバーグによれば、早ければ11月9日の週に投資家への売り込みを始め、26日の感謝祭の前に取引を始める日程が検討されている。最先端のAI研究所に、初めて株式市場が値段をつける。その値段は、OpenAIの評価、ひいてはソフトバンクグループが持つ資産の価値を測る物差しにもなる。シンガポールのデータセンター会社デイワンも、早ければ11月に最大50億ドル(約7900億円)規模の上場を目指しており、データセンター株への需要が戻ったかどうかを測る試金石になる。SBエナジーについては、上場の価格帯を記した届け出が出るかどうかが、再始動の合図になる。

日々の値動きで追える物差しもある。コアウィーブの社債の利回りと倒産保険の料金、ソフトバンクグループの倒産保険の料金、そしてハイパーリキッドの先物に表れるOpenAIの値段だ。これらが落ち着けば、市場は「借金で建てるAI」を、もう一度受け入れ始めたことになる。

さらにその先には、もっと大きな山がある。FTの報道どおりなら、OpenAIが3月に集めたお金は2028年に底をつく。1兆4000億ドルの評価で300億ドル以上を集める交渉と、2027年以降とされる株式の上場は、その穴を埋めるための手段だ。ブルームバーグによれば、アーム株を担保にしたローンの期限は2027年9月。OpenAI株にひもづいた100億ドルの借金は、2028年8月に返済期限を迎える。コアウィーブなどのネオクラウドがGPUを担保に組んだ借金も、数年のうちに借り換えの時期が来る。そのとき担保のGPUは、何世代も前の型になっている。

数字を見る限り、人気店の客足は落ちていない。OpenAIの年換算売上高は7〜9月に77%伸び、アンソロピックは1四半期で売上を45%増やした。AIを使いたい人と企業は、いまも増え続けている。

変わったのは、厨房を建てるお金の値段と、貸し手の我慢の長さだ。金利が上がり、厨房が売上を生むまでの時間が長く見え始めた途端、市場は、借金が多く、借り手が少なく、売上が遠い順に、値段を付け直した。コアウィーブの社債、SBエナジーの上場、そしてOpenAIに賭け、アーム株を質に入れてまで資金を注いできたソフトバンクグループの株は、その列の先頭に並んでいた。

孫氏が回す皿は、まだ一枚も落ちていない。ただ市場は、その皿の一枚一枚が、次の皿の担保になっていることを、ようやく数え始めた。


ソフトバンクG株価、1か月で25%超の下落。OpenAIの43.6兆円の赤字、CoreWeave(コアウィーブ)の暴落、SBエナジーIPO延期。何が起こっているのか - 今後——11月に来る「答え合わせ」 - 図表1