検査用光源装置とは何か——イメージセンサに「正解の光」を当てる装置

スマートフォンで写真を撮るとき、レンズが集めた光を電気信号に変える半導体がイメージセンサだ。人間の眼でいえば網膜にあたる。CCDとCMOSの2種類があり、現在の主流は各画素にアンプや転送回路を作り込んで直接信号を読み出すCMOSイメージセンサである。小型化しやすく、低消費電力で、高速処理ができる。
問題は、この半導体をどうやって「良品」と判定するかだ。ロジックICやメモリなら電気信号を入れて出てきた信号を期待値と比べればいい。しかしイメージセンサは光を入力とする素子なので、電気だけでは検査が成立しない。数百万から数億個ある画素の一つひとつに、決められた明るさ・決められた色・決められた角度の光を、ウエハ全面にわたってムラなく当て、返ってきた電気信号が仕様どおりかを見る必要がある。画素の欠落、変色、感度のばらつきは、この「正解の光」を当てて初めて見えてくる。
インターアクションが作っているのは、その光を作り出して照射する装置である。同社の用語集は光源装置を「CCDおよびCMOSイメージセンサーの良否を判定するための検査に必要な光を作り出し、その光を高精度、高速で検査対象に照射する装置」と定義し、テスターと呼ばれる測定機器に接続して使うと説明している。同社の公式FAQも「顧客の求める光には細かい条件が定められており、角度、色温度、明るさ等、厳しく制御された光の照射が求められる」と書く。単なる照明ではなく、光学・機械・電気・ソフトウェアが一体になった精密機器だ。
製品ラインナップを見ると、その要求の細かさがよくわかる。イメージセンサテスト用の「IA-OPT585WXR」はテストヘッドに内蔵して色温度補正ができるモデル、「IA-OPT576WC」は各照度で色度を補正して高い色度再現性を実現するモデル、「OPTPATH-4A」はパッケージテスト向けに4個のデバイスを同時測定しF値を3種類切り替えられる。さらに測距センサ向けには、iToFセンサ用に810ナノメートル・850ナノメートル・940ナノメートルの3波長を切り替えられる「IA-NIR200W」、dToFセンサ用に905ナノメートルと910ナノメートルを切り替える「IA-NIR201W」といった近赤外光源が並ぶ。用途ごとに波長も光学系もまるで違う。
もう一つの主力が、同社が商標を持つ「瞳モジュール®」(Pupil Lens Module)だ。これはスマートフォンに組み込まれるカメラモジュールのレンズ部分を再現した光学部品で、検査工程に組み込むことで実使用に近い条件でセンサを評価できる。ウエハ検査の段階で最終製品と同等以上の光学特性を作り出せるため、後工程まで不良を流さずに済み、歩留まりが上がる。顧客ごと、機種ごとにレンズ仕様が違うので、案件ごとの都度設計になる。
光源装置と瞳モジュールは単体では動かない。ウエハ検査の現場では、プローバーがウエハ上のチップ1個ずつにプローブ針を接触させ、プローブカードがチップの電極とテスターをつなぎ、テスターが電気的な良否を判定する。光源装置と瞳モジュールはその光学側を担当する。だからこの分野では、装置メーカー同士の擦り合わせが不可欠になる。2025年11月に福岡で開かれた半導体ウエハテストの国際会議「SWTest Asia 2025」で、同社はプローブカード大手の日本電子材料と共同技術発表を行い、従来は専用治具でプローブカードに接続していた瞳モジュールを2つに分割し、一部のレンズをプローブカードに直接取り付ける新構造を示した。治具の機械的ばらつきによる位置ずれを減らし、レンズとプローブカード開口の小型化にもつながる。同時測定数の増加とプローブカードの電気特性向上が期待できるという。


「世界シェア7割」の中身——100億円のニッチと、顧客ベース75%以上

同社の世界シェアについては、いくつかの数字が流通している。会社自身はIoT関連事業のページや決算説明資料で「世界シェアトップ」とだけ書き、具体的な比率は示していない。中期経営計画(2026-2030)の資料では、Yoleの「2023-2029 CMOS image sensors market forecast」を出典に2023年のイメージセンサ市場を217.9億ドル(約3兆4,000億円)と示したうえで、「当社装置はイメージセンサ主要メーカーに採用されており顧客ベースで75%以上をカバー」と記している。船井総研のサステナグロースカンパニーアワードのレポートは、スマートフォン用カメラ検査光源という世界市場100億円規模の超ニッチ市場で70%以上のシェアと書き、マネーポストWEBなど複数の投資メディアは「世界6〜7割」と表現している。日本経済新聞は2019年10月の主要商品・サービスシェア調査で同社を「半導体検査向け光源装置」の項目に取り上げ、CCD・CMOSセンサー検査用の光源装置で世界シェアトップと報じた。
数字に幅があるのは、市場そのものが小さすぎて第三者の調査対象になりにくいからだ。世界のイメージセンサ市場が4兆円規模であるのに対し、その検査に使う光源装置の市場は100億円前後にすぎない。大手装置メーカーが本気で参入するには小さく、しかし作るのは難しい。この「小さくて難しい」という条件が、同社の30年来のポジションを支えている。
参入障壁の中身を、会社は中期経営計画でこう説明する。イメージセンサテストは品質維持に高い再現性が必要なため、同一メーカーへのリピートオーダーが主流になる。いったん採用された光源装置を別メーカーの製品に置き換えれば、検査条件の作り直しと相関取りが発生し、歩留まりデータの連続性も切れる。この品質担保と高いスイッチングコストが障壁となり、高いシェアの維持を可能にしている、と。強みとしては「業界のデファクトスタンダードを確立している高い技術力」「エンジニアが顧客の現場に足を運ぶことで培われているマーケティング能力」「製造現場に根付いた製品コスト意識」の3つを挙げる。
もっとも、この牙城は完全な聖域ではない。会社自身が2026年5月期決算説明資料で、ベース売上高の減少要因として「瞳モジュール®シェア低下により減少」と明記し、今後の打ち手の筆頭に「国内シェアの奪還」を掲げている。中期経営計画では瞳モジュールの国内シェアを50%と開示しており、こちらは光源装置本体ほどの寡占ではない。カスタム設計品であるがゆえに、顧客が複数社購買に切り替える余地が残っている。
規模感を示す数字を一つ挙げておく。2026年5月31日時点で、グループ全体の従業員は123名(ほかに臨時57名)。うちIoT関連事業に属するのはわずか39名である。この39名が2026年5月期に29億5,200万円を売り上げ、13億4,500万円のセグメント利益を稼いだ。売上総利益率は連結で60.5%に達する。


顧客、競合、サプライチェーン——ソニーと韓国勢のあいだで

顧客構成は、有価証券報告書の「主要な顧客ごとの情報」を時系列で追うとよく見える。売上高の10%以上を占めた相手先として繰り返し登場するのがソニーセミコンダクタマニュファクチャリングで、2024年5月期には38億6,572万円、2025年5月期には22億1,368万円を計上している。韓国勢も存在感が大きく、2021年5月期にはTESNA Inc.が18億8,056万円でソニーを上回る筆頭顧客となり、2023年5月期にはTESNAが13億8,200万円、LB Semicon Inc.が7億7,600万円を占めた。さらに遡ると2018年5月期にはサムスン電子が8億6,132万円で名を連ねる。会社は決算説明資料で顧客名を出さず「国内主要顧客」「海外主要顧客」と表記するが、その実体はソニーの製造子会社と、韓国のテストハウスおよびサムスンである。国内売上と海外売上の比率は、公式FAQによればおおむね半々だ。
2026年5月期は、この二極の明暗が真逆に振れた1年だった。国内主要顧客の設備投資需要は落ち着いた状態が続き、IoT関連事業の売上高は前期比22.9%減。一方で海外向けは好調で、欧州顧客向け売上高が過去最高を更新した。決算説明会の質疑応答によれば、欧州向けの規模はおおよそ6億円から7億円で、既存顧客がスマートフォン向けの一部デバイス案件を獲得したことに伴う能力増強案件だったという。
そして2026年4月8日、同社は「大口受注に関するお知らせ」を開示する。イメージセンサ検査関連製品で22億7,800万円、売上計上時期は2026年6月から2027年2月。社史上最大の受注である。会社はその背景を「最終アプリケーションの競争環境の変化を受けた、顧客側での新規顧客開拓の進展があるものと推測」と、あくまで推測の形で説明した。
この「推測」の中身は、韓国側の公開情報と突き合わせると輪郭が見えてくる。台湾のDigiTimesは2025年10月、サムスン向けテストを主力とする韓国のOSAT、斗山テスナ(Doosan Tesna)が1,700億ウォン超(約1億2,000万ドル、約190億円)を投じてテスト装置を新規調達すると報じ、調達先としてサムスン系のセメス、日本のアドバンテスト、そしてインターアクションの3社を名指しした。納入時期は2026年から2027年3月。インターアクションの大口受注の売上計上時期とほぼ重なる。DigiTimesは、この投資が同社の総資産の21.76%に相当する過去最大級の設備投資であり、サムスンがアップル向けCMOSイメージセンサの生産を立ち上げることに備えた動きだと業界関係者が見ている、と伝えている。斗山テスナの2024年売上高の9割超がサムスンのファウンドリおよびシステムLSI部門向けで、うちCISが35%を占めるという。
サムスン側の動きについては、韓国のThe Elecをはじめ複数のメディアが、テキサス州オースティンのS1ラインの一部をCIS生産ラインに転換し、月産1万枚規模で2026年3月から稼働させる計画だと報じている。フォトダイオード層、トランジスタ層、AD変換層の3枚のウエハを銅パッドで貼り合わせる3層積層ハイブリッドボンディング技術で、iPhone 18世代向けとされる。アップルとサムスンはこの供給関係を公式に発表しておらず、報道はいずれも業界筋や求人情報などに基づくものだ。ただ、ソニーが長く独占してきたiPhone向けイメージセンサに第二の供給者が生まれるという構図は、インターアクションの海外主要顧客が突然過去最大の発注をかけてきた理由として、最も整合的な説明になる。
一方の国内は、時間軸が違うだけで枯れたわけではない。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは熊本県合志市に新たなイメージセンサ工場を建設しており、経済産業省は2026年4月17日、この案件に最大600億円を助成すると発表した。熊本日日新聞や日刊工業新聞の報道によれば、総投資額は1,800億円、生産能力は300ミリウエハ換算で月産1万枚、供給開始は2029年5月を目指す。スマートフォン向けが主力だが、自動運転など車載向けの高機能センサの需要も見込む。インターアクションが「顧客の新工場にて、車載やロボティクス等のフィジカルAI向けイメージセンサの生産ライン構築が検討されている」と繰り返し書いているのは、この案件を指していると読める。ちなみに同社の熊本事業所も同じ合志市にある。
市場全体はどうか。Yole Groupの「Status of the CMOS Image Sensor Industry 2026」によれば、2025年のCIS市場は253億ドル(約4兆円)で前年比9%増と過去最高を更新した。地域別の製造拠点シェアでは日本が51%で首位、中国が21%で2位に浮上し、SK hynixの撤退があった韓国は17%にとどまる。企業別ではソニーセミコンダクタソリューションズが売上の約5割を占め、サムスン電子が2位。中国勢ではオムニビジョン、SmartSens、GalaxyCore、Gpixelが成長を牽引している。同レポートは2031年に303億ドル(約4兆8,000億円)、年平均3.1%成長を見込む一方、2026年は小幅なマイナス成長を予想している。SK hynixが2025年3月にCIS事業から撤退してAIメモリに人員を振り向けたことは、ハイエンドの寡占とローエンドの中国勢台頭という二極化を象徴する出来事だった。
サプライチェーン上のインターアクションの立ち位置は、決算説明会での社長発言が端的に示している。検査用光源装置は「毎月平準的に受注が発生する性質のものではなく、顧客、テスターメーカー、プローブカードメーカー等との協議を踏まえたうえである程度まとまった大口受注として計上される傾向にある」。つまり同社は、センサメーカーの投資判断とテストセルを構成する各社の仕様調整が固まった最後の段階で、まとめて発注を受ける。売上が塊で来る構造は、この位置取りに由来する。



木地英雄——四畳半とコピー機から始まった創業

創業者の木地英雄は1952年12月生まれ、神奈川県の出身だ。1977年に若狭光学研究所へ入社し、光学製品の開発に従事した。転機は1980年代後半から90年代にかけての撮像半導体の急速な立ち上がりである。社長名鑑のインタビューで木地は、前職の会社が光学技術には長けていたものの電気やソフトウェアが弱く、進み方の速い半導体分野では顧客に迷惑をかけてしまうと感じたと語っている。39歳だった1992年6月、横浜でインターアクションを設立する。
創業の環境は、世界シェア7割の会社の出発点としては極端に貧しかった。妻の実家を間借りした四畳半の畳の部屋。トタン屋根で、クーラーもない。備品はコピー機と製図台だけ。1990年にバブルが崩壊した直後で、大手企業の設備投資予算は凍結され、木地は当時を「世の中がしーんとして、まるで太古の昔に帰ったような感覚」と振り返っている。単価の低い仕事しか取れず資本金は目減りし、サラリーマン時代の知人からも「実績を出してください」と突き放された。
起業から半年ほどで、木地は一つの結論に行き着く。つぶれる会社と生き残る会社の違いは何かを突き詰めた末に出てきた答えが「人の役に立つかどうか」だった。ここから「クライアントファースト」が経営理念として据えられる。世の中に必要とされれば生き残り、必要とされなければ淘汰される——この一文は、30年以上経った今も同社の事業報告の「対処すべき課題」に、創業以来のモットーとして書き込まれている。
国内が動かないなら海外へ、という判断も早かった。日本企業が様子見に入る2年をどう埋めるかを考え、海外ビジネスに先行投資する。最初の顧客は韓国のLGだった。木地は社長名鑑のインタビューで、LGから光源装置の開発要望を受けてテスト機能付きの光源を独自に設計したことが事業の出発点であり、その後テキサス・インスツルメンツやサムスンからも開発オーダーを受けるようになったと語っている。「光に関することはすべてやろう」という方針が、そのまま製品領域になった。
国内の本命は1995年に来る。同年4月に横浜市金沢区で本社・工場を拡張移転して光源装置組立工場を新設し、6月にソニー向けCCD光源装置の量産を開始した。1997年に現在の本社がある横浜金沢ハイテクセンターへ移転。2001年2月、創業から8年余りで東京証券取引所マザーズに上場する。
顧客対応の徹底ぶりは、この時期のエピソードに集約されている。一人で経営していた頃も遠方の顧客を月1回訪問し続け、東京・ダラス・韓国を飛び回って緊急対応に備えた。米国で装置トラブルが起きた際は現地で30分で原因を特定したという。「損得を含めて最後まで面倒を見る、責任を持つ」「相手の予想を超えた成果で応える」。属人的な献身に見えるが、リピートオーダーが前提で切り替えコストの高いこの市場では、それがそのまま参入障壁になった。

挫折と再建、そして完全引退までの歩み

シェアの高さは、裏を返せば顧客の設備投資サイクルに業績が丸ごと乗るということだ。同社はその弱点を早くから自覚し、2000年代後半から多角化に走る。2001年に光ファイバセンサを事業化し、2005年にはソニーセミコンダクタ九州向けにLCDパネル光学検査装置の供給を始めた。2009年には中国に太陽光関連の現地法人を設立し、翌年以降はソーラーホームシステムやメガソーラーへと踏み込んでいく。
しかし多角化が実る前に、本業が崩れた。2008年5月期は売上高17億2,400万円で営業損失1億5,900万円、2009年5月期は売上高7億円へ6割近く落ち込み、営業損失6億300万円、当期純損失は10億3,000万円に達する。2010年5月期も6億7,200万円の純損失。2011年5月期まで4期連続の赤字が続いた。この間、熊本工場の閉鎖を含む事業のリストラクチャリングが実行されている。木地英雄が経営の前線に戻り、息子の木地伸雄が2008年に取締役として加わったのはこの局面だ。株価は100円近辺まで沈み、上場廃止の懸念すら語られた。
黒字転換は2012年5月期。売上高14億7,100万円、営業利益3億9,700万円で復活すると、その後はスマートフォンのカメラ多眼化という追い風に乗って伸びていく。2014年5月期に25億円、2016年5月期に50億円を超え、2019年5月期には売上高79億8,600万円、営業利益19億8,000万円という当時の最高益を記録した。
この間、M&Aで事業の柱を増やしている。2014年7月にエア・ガシズ・テクノス(乾燥脱臭装置)、同年10月に明立精機(精密除振装置)、2017年7月に東京テクニカル(歯車試験機)、2020年5月にラステック(レーザー加工機)を子会社化。市場区分も2014年10月に東証二部、2017年3月に一部、2022年4月にプライムへと上がった。一方で2017年には太陽光発電事業から撤退し、2019年にはプラント設計受託事業を譲渡、2025年7月にはエア・ガシズ・テクノスの全株式を売却して環境エネルギー事業からも手を引いた。買っては絞り込むという新陳代謝が続いている。
経営の世代交代は段階的に進んだ。木地伸雄は2008年に取締役、2013年に専務、2016年に代表取締役専務、2017年に代表取締役副社長を経て、2020年に代表取締役社長へ就任する。木地英雄は代表取締役会長として残ったが、2025年5月14日、会社は「代表取締役会長の異動(退任)に関するお知らせ」を開示した。創業者本人からの申し出によるもので、退任理由には「2020年に木地伸雄が代表取締役社長に就任したことを契機に、この数年は次世代への権限移譲を進めてまいりましたが、今般新たな経営体制への移行に目処がついた」と記されている。退任日は2025年5月31日。取締役から退くため業務執行権限は失い、以後は「創業者兼名誉会長」として会社を支える立場になった。
その結果、2026年5月31日時点の取締役会は、社内取締役が代表取締役社長の木地伸雄ただ一人、残る4名がすべて独立社外取締役という構成になっている。創業家が筆頭株主でも支配株主でもなく、社長個人の持株は2.24%にすぎない。2026年8月26日の定時株主総会には、取締役会の議長を取締役会長に固定していた定款第22条を改め、独立社外取締役を議長に選任できるようにする議案が上程されている。会社は2026年8月以降、社外取締役が議長を務める予定だと決算説明資料で明示した。創業者が去った後のガバナンス設計としては、かなり踏み込んだ部類に入る。


「ファブレス」なのか——資産を持たない会社の強みと課題

インターアクションはしばしば「ファブレス」と紹介される。だが、同社の公式FAQは明確にこう答えている。「光源装置と瞳モジュール®は、全てインターアクションの本社(神奈川県横浜市金沢区)にて製造しております」。事業報告の「主要な営業所及び工場」にも、本社と山下町オフィス、熊本事業所、長崎のインキュベーションセンターが並ぶだけで、独立した工場は載っていない。つまり同社は、製造そのものを外部に丸投げしているのではなく、賃借した本社ビルのフロアで最終組立まで自ら行っている。厳密な意味でのファブレスではない。
それでも「ファブレス的」と語られるのには理由がある。2026年5月期末の連結総資産120億6,100万円のうち、有形固定資産はわずか7億9,188万円、比率にして6.6%しかない。建物及び構築物の純額は2億7,178万円、機械装置及び運搬具は2億817万円。一方で現金及び現金同等物は85億1,900万円を積み上げ、自己資本比率は89.5%に達する。有利子負債は短期・長期合わせて5億5,000万円程度だ。装置産業の外形をまとっていながら、バランスシートは設計会社のそれに近い。光学部品、光源、機構部品、電装部品といった構成要素は外部から調達し、同社が担うのは光学設計と擦り合わせ、そして最終の組立・調整という付加価値の高い工程に絞られている。
この構造の強みは3つある。第一に、固定費が軽いため利益率が高い。2026年5月期の売上総利益率は60.5%で、中期経営計画の2030年目標「50%以上」を大きく上回る。第二に、需要が半減しても赤字にならない。売上高が27.7%減った2026年5月期でも営業利益7億200万円、営業利益率14.6%を確保した。第三に、案件ごとに仕様が異なるカスタム品に対応しやすい。生産ラインを固定資産として抱えていないぶん、顧客の要求に合わせて都度作り込む体制が取れる。
課題も、同じ構造から生まれる。まず、生産能力の実体が人であるということだ。IoT関連事業の従業員は39名。受注が塊で来る事業で、需要が急増したときに供給側がボトルネックになりうる。会社はこの点を認識しており、従来は手組みだった瞳モジュールの製造を熊本事業所で自動化する投資を進めている。決算説明会でも「品質向上、納期短縮及びコスト低減が期待されることから、既存顧客のみならず海外顧客に対する提案力の向上にもつながっている」と説明した。ただし2026年5月期決算説明資料には「瞳モジュール®自動製造ラインの構築完了に一部遅れが生じている」との補足が入っている(受注計画および売上計上時期への影響はないとしている)。
第二に、業績の振れ幅である。2026年5月期の初回ガイダンスは、売上高43億2,500万円から55億1,500万円、営業利益2億1,200万円から8億3,800万円という異例に広いレンジ形式で出された。顧客の設備投資タイミングが流動的で、点で予想を置けなかったからだ。2026年1月に売上高46億6,200万円・営業利益5億9,000万円へと点の予想に修正し、第3四半期時点でさらに47億6,700万円・7億2,200万円へ引き上げ、着地は48億2,200万円・7億200万円だった。四半期別に見ると、第3四半期は売上高15億7,000万円・営業利益4億1,000万円だったのに対し、第4四半期は11億2,000万円・4,300万円。同じ会社の3か月とは思えない振れ方をする。
第三に、原価低減が終わらないテーマであり続けることだ。事業報告は「対処すべき課題」の一つに「原価低減と生産効率の向上」を挙げ、「製造メーカーにとって高品質を維持しながらの原価低減並びに生産の効率化は永遠のテーマ」と書く。同じ課題リストには、売上高の約6割をイメージセンサ用検査関連装置が占めるという依存度の高さ、そしてマーケティング力の強化も並ぶ。中期経営計画の自己分析はさらに厳しく、「既存ビジネスモデルの優位性が確認できた一方、他事業への展開に課題」「自社の強みを市場機会に結びつける企画力や、顧客ニーズを的確に把握するマーケティング能力が不足」と、社外に向けて書いている。
会社が課題の解として置いているのが「ベース売上高」という独自指標である。設備投資に依存せず、売上総利益率・一人当たり営業利益・資本効率の改善に資する製品・サービスの売上を指し、具体的には瞳モジュール、過去に納入した光源装置の改造案件、そして新規開発の半導体関連計測製品が該当する。2026年5月期のベース売上高は7億5,500万円(過去5年平均は7億8,900万円)。これを2027年5月期に14億〜18億円、2030年5月期に30億円へ引き上げる計画だ。会社は瞳モジュールで10億円以上、光源装置の改造で30億円以上の市場拡大余地があると見ている。



投資家が見ているもの——18%を握るケイマンのファンドと、ボストンのアクティビスト

この会社の株主構成は、この1年半で劇的に変わった。
2026年5月31日現在の大株主上位は、SilverCape Investments Limitedが156万1,500株・15.11%で筆頭、JAPAN ABSOLUTE VALUE FUNDが123万8,700株・11.98%で2位、日本マスタートラスト信託銀行が99万600株・9.58%で3位。代表取締役社長の木地伸雄は23万1,024株・2.24%で6位にとどまる。創業者の木地英雄は上位10名に入っていない。
SilverCapeはケイマン諸島籍の投資運用会社で、マネージング・ディレクターはケルビン・チュウ(Kelvin Chiu)。同氏のLinkedInやPreqinのプロフィールによればシンガポールを拠点とするファミリーオフィスの運用体である。同社が7725株について最初に大量保有報告書を提出したのは2025年3月17日の5.02%。そこから淡々と買い増しを続け、2025年12月18日に12.25%から13.32%へ増やして筆頭株主となり、2026年7月28日には18.00%(207万株)に達した。保有目的は変更報告書に「純投資又は場合により重要提案行為を行う可能性がある」と記載されている。日本の小型株を静かに買い集めるスタイルで、ヤマトインターナショナルやブロードバンドタワーでも大量保有が報告されている。
2位のJAPAN ABSOLUTE VALUE FUNDは、ボストンのカナメ・キャピタル(Kaname Capital, L.P.)が運用するケイマン籍のファンドで、無限責任組合員はKaname Capital GP, L.P.、住所はボストンのワシントンストリート201番地、ワンボストンプレイス スイート2600。カナメ・キャピタルの大量保有報告書に記載された住所と一致する。カナメ・キャピタルは2018年にGMO出身のトビー・ロデスとエリック・イカウニクスが設立した日本中小型株専門の運用会社で、「バリュー、クオリティ、ガバナンス」を掲げ、30社未満に集中投資する。2026年4月には、あるドラッグストア企業に対して100ページの白書と株主提案でCEO解任を求めるキャンペーンを展開したことでも知られる。同ファンドがインターアクション株について最初に5%を超えたのは2025年4月15日で、2025年10月14日には12.63%まで積み上げた。保有目的は純投資と届け出ている。
この2社だけで議決権の3割前後を占める。しかも同社は2026年5月期に約11億9,200万円の自己株式取得を実施しており(期末自己株式は136万4,807株、前期末は53万7,807株)、分母が縮んだぶん保有比率は自動的に上がる。
会社側の施策は、こうした株主の関心に正面から応える内容が並ぶ。2025年2月に株主還元方針を変更してDOE(株主資本配当率)4.0%以上を導入。2025年7月にエア・ガシズ・テクノスを売却してノンコア事業を切り離し、環境エネルギー事業の報告セグメントを廃止した。2026年5月期の1株当たり配当は44円(中間10円・期末34円、配当性向85.2%)、2027年5月期は特別配当10円を加えて55円を予想する。2027年5月期から2029年5月期のキャッシュアロケーションは総額110億円に拡大し、戦略投資30億円、新規事業投資20億円、既存事業投資35億円、株主還元25億円という配分になった。既存事業投資は旧プランから20億円の積み増しである。役員報酬制度は株式給付信託をBBTからBBT-RSへ変更し、給付対象を社外取締役にも広げ、全額株式給付・退任まで譲渡制限付きとする。株価下落リスクまで株主と共有させる設計だ。
株式市場の評価はまだ定まっていない。2026年8月19日の終値は1,763円(前日比4.96%安)、時価総額は約203億円。会社予想ベースのPERは17.05倍、実績PBRは1.66倍、配当利回りは3.12%。年初来高値は5月12日の2,288円、安値は3月9日の1,291円で、半年足らずで1.8倍の値幅がある。2026年5月期は減収減益、2027年5月期は営業利益2.3倍という予想の落差に、株価が素直に反応した形だ。



数字で見る2026年5月期と2027年5月期——受注残30億円が語ること

2026年5月期の連結業績は、売上高48億2,200万円(前期比27.7%減)、営業利益7億200万円(同50.5%減)、経常利益8億3,500万円(同39.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5億300万円(同45.8%減)。セグメント別ではIoT関連事業が売上高29億5,200万円・セグメント利益13億4,500万円、インダストリー4.0推進事業が売上高18億6,000万円・セグメント利益1億200万円。後者は精密除振装置と歯車試験機がともに低調で、利益が6割減った。
ただし、損益計算書より雄弁なのは受注の数字である。2026年5月期の受注高は59億3,564万円(前期46億9,420万円)、期末受注残高は30億2,814万円(前期14億9,845万円)で倍増した。IoT関連事業だけを見ると受注高45億6,648万円(前期比84.2%増)、受注残高26億4,558万円(同169.8%増)。4月の大口受注22億7,800万円が丸ごと乗っている。
これを踏まえた2027年5月期の会社予想は、売上高72億1,200万円(前期比49.6%増)、営業利益15億9,900万円(同127.7%増)、経常利益16億2,000万円(同94.0%増)、当期純利益10億4,900万円(同97.8%増)、1株当たり当期純利益103.41円。セグメント別ではIoT関連事業51億円、インダストリー4.0推進事業21億200万円を見込む。売却済みの旧環境エネルギー事業を除いた比較ベースでは、2019年5月期の68億5,400万円を上回る過去最高売上高となる見通しで、両セグメントとも過去最高を更新する計画だ。
利益率が売上の伸びほどには回復しない理由も開示されている。決算説明会の質疑応答によれば、研究開発費を前期実績比で2億円から3億円程度増やす計画であり、海外売上高の拡大に伴うエージェントフィーの増加も織り込んでいる。会社は新規顧客開拓に向けた幅広いラインナップの装置開発と、新製品である半導体関連計測製品の開発を進めており、販管費は増える見通しだ。
投資家にとって最も示唆的だったのは、社長の木地伸雄が説明会で述べた需要規模の見立てだろう。「今回の大口受注を含め、現在確保できているのは全体の4分の1ほどと捉えております。裏を返せば、残る4分の3は今後の獲得余地であり、それだけ大きな需要の広がりが見えている」。明確な市場予測モデルに基づくものではなく、顧客の生産能力や設備投資の傾向、商談状況から総合的に判断したものだと同氏は但し書きを添えたうえで、今回の受注のみで投資需要が一巡するとは考えておらず、2027年5月期および2028年5月期においても旺盛な需要が継続する可能性があると述べている。
なお同社は2025年8月22日、大口受注の開示基準を「単日1億円以上」から「単日5億円以上」へ引き上げた。事業規模の拡大に基準が追いついていなかったためで、今後は5億円未満の受注は個別開示されない。2025年9月5日に開示された5億2,900万円の受注が、新基準適用後の最初の例である。


これから何が「計測」されるのか

短期のチェックポイントは目の前にある。2026年8月26日の定時株主総会で、取締役会議長を独立社外取締役が務められるようにする定款変更議案が諮られる。翌8月27日には2026年5月期の有価証券報告書が提出され、そこで初めて同期の「主要な顧客ごとの情報」——売上高の10%以上を占めた相手先の名前と金額——が公になる。海外主要顧客が誰なのか、国内主要顧客の比重がどこまで下がったのかが、ここで確認できる。
次は2026年10月中旬に予定される2027年5月期第1四半期決算だ。22億7,800万円の大口受注は2026年6月から売上計上が始まっているため、四半期の売上高がどこまで跳ねるかで通期計画の確度が測れる。以降、第2四半期は2027年1月中旬、第3四半期は同年4月中旬、通期は同年7月中旬に発表される。この間、単日5億円以上の受注があれば「大口受注に関するお知らせ」が出る。斗山テスナの装置納入が2027年3月まで続く計画であることを踏まえると、その先の追加発注が出るかどうかが、会社の言う「残り4分の3」の第一の答え合わせになる。
中期では3つの軸がある。1つ目は瞳モジュールで、熊本の自動製造ラインが立ち上がれば品質・納期・コストの3面で提案力が変わる。国内シェアの奪還と韓国市場での量産導入が実現すれば、設備投資に左右されにくいベース売上高が構造的に積み上がる。会社は2027年5月期のベース売上高を14億〜18億円と見込む。2つ目は新規事業の半導体関連計測製品で、製品①は2026年に開発、2027年にローンチとプロモーション、2030年5月期にそれぞれ4億〜5億円のベース売上高を目指す。同様のパートナーシップを5件構築する計画で、現時点では技術パートナーとして光学製品メーカーA社と実務協議中、半導体製造装置メーカーC社ともコンタクト中、マーケティングパートナーとして研究機器商社・生産財商社・光学機器商社にアプローチ中、さらにAI関連企業複数社と新製品2件を企画中と開示されている。3つ目は国内顧客の設備投資復調で、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの合志市新工場が2029年5月の供給開始を目指す以上、装置の発注は2027年から2028年にかけて動く可能性が高い。
長期の絵として会社が描くのが「フィジカルAI」である。ロボットやモビリティの分野で、カメラやセンサを通じて周囲を把握し自律的に判断・動作する技術領域を指す。同社は決算説明資料で、スマートファクトリー関連市場が2024年の1,549億ドル(約24兆5,000億円)から2030年に2,726億ドル(約43兆円)へ約1.8倍、モビリティが2026年の1,046億ドル(約16兆5,000億円)から2033年に3,784億ドル(約59兆8,000億円)へ約3.6倍、ウェアラブルAIが2026年の615億ドル(約9兆7,000億円)から2034年に3,593億ドル(約56兆8,000億円)へ約5.8倍に拡大するとの見通しを示し、その先にイメージセンサ検査需要の拡大があると位置づける。ただし社長自身、説明会で「現時点では、顧客から具体的な製品要件や案件が明確に提示されている段階にはない」と述べ、今後3年間程度を見据えて準備を進める方針だと語っている。
そして最も野心的なのが、事業モデルそのものの転換構想だ。同社は2026年5月期第3四半期の決算説明資料で、世界シェアトップの製品を通じてのみ取得できる波長・角度・強度・微細な光学特性といったイメージセンサ品質データを継続的に蓄積できる体制があると説明し、これを一次データ統合基盤に集約してAI解析エンジンで分析し、製造現場向けには歩留まり予測やダウンタイム短縮、経営層向けには最適投資判断やリスク回避支援といった価値を提供するSaaS型サービスを検討していると開示した。「製品を売って終わり」から「顧客の課題を解き続けるパートナー」へ——フェーズ1(1〜3年)でコア基盤を固め、フェーズ2(3〜5年)でパートナーシップによる新製品を立て、フェーズ3(5〜10年)でAIソリューションカンパニーへ、というロードマップである。2030年5月期の財務目標は、ベース売上高30億円、売上総利益率50%以上、一人当たり営業利益3,000万円、営業利益成長率(CAGR)15%以上、連結ROE15%以上。2026年5月期の実績はそれぞれ7億5,500万円、60.5%、800万円、マイナス53.4%、4.7%だから、埋めるべき距離は小さくない。
四畳半とコピー機から始まり、世界の主要イメージセンサメーカーの検査ラインを押さえた会社が、創業者の完全引退と、議決権の3割を持つ海外ファンド、そして社外取締役が議長を務める取締役会の下で次の30年を設計しようとしている。2027年5月期は、その最初の答え合わせの年になる。


