「都市油田」とは何か——都市鉱山の弟分として生まれた言葉

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 「都市油田」とは何か——都市鉱山の弟分として生まれた言葉 - 章扉

「都市鉱山」という言葉はよく知られている。使用済みの家電やスマートフォンに含まれる金・銀・インジウムなどを、天然鉱山に対する「もうひとつの鉱山」と見立てる考え方だ。田中貴金属の解説によれば日本国内に蓄積された金は約6,800トンで世界の埋蔵量の約16%、銀は約6万トンで約22%に相当する。金鉱石1トンから採れる金がわずか5グラム程度なのに対し、回収された携帯電話1トンからは約280グラムの金が取れるという歩留まりの良さが、この比喩を成立させている。

「都市油田」はその炭素版である。都市で使われ、捨てられていく石油由来の物質——廃プラスチック、廃食用油、工場から出る廃溶剤や廃油、そして可燃ごみそのもの——を、輸入原油に代わる炭素の供給源とみなす発想だ。金属と違って炭素は「掘り出して精錬する」のではなく「分解して元の分子に戻す」必要があるため、技術のハードルはむしろ都市鉱山より高い。

この言葉は突然生まれたものではない。日本経済新聞は2017年12月の記事で、可燃ごみからエタノールを生産する積水化学工業の技術を「『都市油田』で資源大国に」と表現している。愛知県で20年以上プラスチック油化還元装置を製造販売する伸光テクノスの社長は中日新聞の取材に「廃プラは身近に眠る都市油田」と語り、中東情勢の悪化以降、装置への問い合わせが急増していると証言した。同社の装置は、ペットボトルのふた1トンを投入すると4〜5時間で約1,000リットルの再生油が得られるという。得られた油をさらに精製すれば軽油やナフサになり、船舶燃料としても使える。

そして2026年7月、日経ビジネスは横浜市臨海部で進むレゾナックの新技術実証を「『都市油田』の開発が進んでいる」と書いた。かつては環境活動の文脈で語られた言葉が、いまはエネルギー安全保障と産業競争力の文脈で使われるようになっている。この意味の変化こそが、以下で取り上げる4銘柄の投資テーマの核心にある。

言葉の射程は廃プラスチックにとどまらない。廃食用油から持続可能な航空燃料(SAF)を作る動きも、川島グループのような回収事業者は「地域で掘り出す都市油田」と呼ぶ。コスモ石油・日揮ホールディングス・レボインターナショナルの合弁SAFFAIRE SKY ENERGYは堺製油所内に年約3万キロリットルの製造設備を構え、2025年4月から供給を開始した。半導体工場から出る廃溶剤の再生も、炭素を輸入せず国内で回すという点で同じ発想の延長線上にある。

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2026年、日本の石化を襲ったナフサ危機が「都市油田」を主役にした

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なぜいま都市油田なのか。2026年に日本の石油化学産業を襲った原料危機を抜きにこの問いは語れない。

2026年2月の米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃を契機に、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥った。三菱UFJ銀行経営企画部経済調査室は4月3日付で「ホルムズ海峡の事実上封鎖と世界経済への影響」と題する調査レポートを出している。日本にとってこれは他人事ではない。大和総研の畑中宏仁氏がまとめたレポートによれば、国内向けナフサ供給の約4割は国内製油所で生産されるが、その原料である原油は9割以上が中東産であり、輸入ナフサと合わせると日本はナフサ供給の8割超を中東に依存している。輸入ナフサに限れば約74%が中東産で、UAE・クウェート・カタールの3カ国だけで約68%を占める。

影響は数字にはっきり出た。石油化学工業協会が4月23日に発表した3月の生産実績によると、国内エチレンプラントの実質稼働率は68.6%となり、1996年の統計開始以来の最低を記録した。生産量は27万2,600トン。日本経済新聞も「エチレン稼働率が最低 3月、ナフサ調達難響く」と報じている。その後も回復は鈍く、6月の生産量は28万9,100トンで前年同月比19.1%減、実質稼働率は66.5%だった。価格も跳ね上がり、2026年4〜6月期の国産ナフサ基準価格は1キロリットルあたり11万8,900円と前四半期から5万3,200円上昇。価格・上昇幅ともに過去最高となった。大和総研の試算では、ナフサ価格が80%上昇した状態が続けば企業間取引を表す投入物価は1.1%、消費者物価は0.23%押し上げられ、供給が半減するテールリスクが顕在化すれば実質GDPは0.43%程度押し下げられる。

この状況は、廃プラスチックの経済的な位置づけを一変させた。バージン原料が潤沢で安いときには「割高な理想論」でしかなかった再生炭素が、原料が来ないときには「確実に国内にある炭素」に変わる。レゾナックのカーボンリサイクルグループリーダー・手塚記庸氏が日経ビジネスに語った「国内にある炭素資源を有効活用することが、レジリエンスのある社会につながる」という言葉は、2026年の日本ではコストの議論ではなく供給の議論なのである。

ただし皮肉なことに、ナフサ高は短期的には石化各社の決算を押し上げてもいる。三菱ケミカルグループの2027年3月期第1四半期は、中東情勢による数量減がありながら、ナフサ価格上昇に伴う在庫受払差の改善とMMAモノマー市況の上昇でコア営業利益が前年同期比101.7%増の1,141億円に膨らんだ。原料危機は「在庫を持っている者への一時的な追い風」と「構造的な逆風」の両方の顔を持つ。

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日本の廃プラ911万トン、その9割は「燃やされて」いる

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都市油田の埋蔵量はどれくらいあるのか。一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表するマテリアルフロー図によれば、2024年の日本の廃プラスチック総排出量は911万トン、有効利用率は89%に達する。数字だけ見れば世界屈指の優等生だ。

しかし内訳を見ると景色が変わる。有効利用89%のうち、マテリアルリサイクル(再生材として使う)は20%、ケミカルリサイクル(分解して化学原料に戻す)はわずか3%にすぎない。残る67%はサーマルリサイクル、つまり燃やして熱や電気として回収する方法である。国際的にはこれをリサイクルとは呼ばない。未利用の11%(101万トン)は単純焼却8%(69万トン)と埋立4%(32万トン)だ。

つまり日本の都市油田は、9割方が「掘られる前に燃やされている」状態にある。参考までに、2025年度の国内ナフサ需要は経済産業省の見通しで約3,395万キロリットル。仮に廃プラの熱分解で7割程度の収率が得られると仮定すれば——出光興産子会社が年2万トンの使用済みプラから年1万4,000トンのケミカルリサイクル油を生産する計画がこの水準に当たる——排出量911万トンは決して無視できる規模ではない。同時に、既存の焼却・発電インフラという「先客」がいるため、原料をケミカルリサイクル側に引き寄せるには、燃やすより高い価格を払えるかどうかが問われる。ここが4銘柄すべてに共通する勝負どころだ。

なお、日本は廃プラスチックの一部を輸出してきたが、2019年のバーゼル条約附属書改正(日本では2021年1月1日施行)で汚れたプラスチック廃棄物の輸出には相手国の事前同意が必要になり、輸出量は縮小傾向にある。国内で処理を完結させる圧力は年々強まっている。

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レゾナック(4004)——日本初の国産アンモニアが、世界唯一のガス化リサイクルになった

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レゾナックの都市油田事業は、同社の創業神話とほぼ地続きにある。

源流をたどると、房総の海で漁業と海藻加工から身を起こした実業家・森矗昶(もり・のぶてる)に行き着く。1908年の総房水産に始まり、1926年に日本沃度、1928年に昭和肥料を設立。そして1931年4月、川崎の埋立地で、当時は不可能とされていた国産技術・国産機械による日本初のアンモニア合成に成功した。輸入技術に頼らず合成硫安を作るというこの一点が、後の昭和電工のアイデンティティになる。1939年6月に日本電気工業と昭和肥料が合併して昭和電工が発足し、森が初代社長に就いた。第二次大戦下の川崎工場は7回の空襲で全設備の74%を失うが、終戦の年のうちに生産を再開している。

その川崎で、2003年に始まったのが「川崎プラスチックリサイクル(KPR)」である。宇部興産と荏原製作所がNEDOの委託で実証した加圧二段ガス化システム(EUPプロセス)のライセンスを昭和電工が取得して事業化した。使用済みプラスチックを低温ガス化炉と高温ガス化炉に通して分子レベルまで分解し、水素と二酸化炭素を主体とする合成ガスにする。その水素からアンモニアを作り、二酸化炭素はドライアイスや飲料用・医療用の液化炭酸ガスとして製品化する。定常運転中は化石燃料を一切使わない。

規模は年間約7万トン。これは日本のケミカルリサイクルの約22%にあたる。年間12万トンのアンモニアを製造し、2022年1月には累計処理量100万トンを突破した。20年を超えてガス化ケミカルリサイクルを商業ベースで連続運転している設備は世界でここだけだ。もっとも、初期のガス化炉は2週間から1カ月しか連続運転できず頻繁に停止していたという。20年の運転ノウハウそのものが参入障壁になっている構図である。

2023年1月1日、昭和電工は2020年に約9,600億円で買収した日立化成(昭和電工マテリアルズ)と統合し、レゾナックとして再出発した。社名は「Resonate(共鳴する)」と「Chemistry」の頭文字Cを組み合わせた造語だ。

足元の動きは大きく二つある。第一に、2025年9月30日、経済産業省の水素社会推進法に基づく「価格差に着目した支援」の対象として全国初の認定を受けた。これを踏まえて同社は10月6日、アンモニアの原料水素を2030年4月稼働の新設備で100%使用済みプラスチック由来に切り替えると発表した。現在は原料の60〜70%が自治体回収の使用済みプラスチック、残り30〜40%が都市ガス由来の水素だが、これを全量廃棄物由来にする。日本触媒が、この低炭素アンモニアの利用事業者として共同申請している。原料の幅も広げており、2024年からは使用済み衣料の実証も始め、伊藤忠商事との「ARChemiaプロジェクト」でアクリロニトリルを経由した繊維の資源循環を目指している。

第二に、より野心的な次世代技術だ。2026年7月、レゾナックは横浜市で高さ約2メートルの実証設備を公開した。ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、塩化ビニルなどが混ざった廃プラを、いったん油にせず、エチレンやプロピレンといった基礎化学品に直接戻す技術である。日本経済新聞によれば投入した廃プラの6割以上が基礎化学品として回収できており、既存技術と比べてかなり高い水準だという。ケミカルリサイクル由来の樹脂は通常バージン材の2〜3倍の価格になるが、同社は油化技術などと比べて2割のコスト減を目指す。ロードマップは2027年にパイロット設備で試験、2030年に大規模実証、2030年代半ばの事業化。NEDOのグリーンイノベーション基金事業に「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」として採択され、2032年度までの総額80億円が措置されている。目標は製造時のCO2排出量を現行プロセス比で半減させることだ。

強みは明快である。20年の連続運転実績、自治体からの原料調達ルート、アンモニア・炭酸ガスという「値が付く出口」を自前で持っていること、そして水素社会推進法という政策支援。日揮ホールディングスなどエンジニアリング会社と組んだライセンスパッケージの構築も進めており、技術輸出という収益源も視野に入る。

課題も明快だ。KPRを含むケミカルセグメントは2025年12月期に売上収益1,744億円に対しコア営業損失55億円を計上した(内訳は化学品884億円、黒鉛電極などグラファイト847億円で、赤字の主因は黒鉛電極の市況低迷)。2026年12月期上期も売上収益918億円に対しコア営業損益は6億円の赤字で、前年同期の82億円赤字からは75億円改善したものの黒字転換には届いていない。8月6日に示した通期のセグメント計画はコア営業利益40億円で、全社1,960億円のうち1,950億円は半導体・電子材料が稼ぐ。同社は2030年に売上1兆円超の50%以上を半導体・電子材料が占める姿を掲げており、都市油田事業は「稼ぎ頭」ではなく「社会的責任と将来オプション」の位置にある。

会社全体の数字を押さえておく。2026年12月期上期は売上収益6,768億円(前年同期比5.4%増)、コア営業利益888億円(同2.6倍)、中間純利益485億円(同146.5%増)。AI向け後工程材料の伸びが想定を超え、半導体・電子材料は上期だけでコア営業利益815億円を稼いだ。8月6日には通期予想を修正し、コア営業利益を1,400億円から1,960億円へ引き上げた一方、売上収益は1兆3,100億円から1兆1,650億円へ引き下げている。減収予想の理由は業績悪化ではなく、2026年10月1日に石油化学事業のクラサスケミカルをパーシャル・スピンオフして連結から外すためだ。クラサスケミカルは9月29日に東証スタンダード市場へ直接上場し、レゾナック株主に1株につき1株の割合で現物配当される。レゾナックの保有比率は20%未満となり、持分法適用からも外れる。ソニーグループが2025年に分離上場したソニーフィナンシャルグループに続く、パーシャルスピンオフ税制の活用2例目である。

切り出されるのは大分コンビナートを軸とする石油化学事業であり、川崎のKPRとアンモニアはレゾナック本体のケミカルセグメントに残る。スピンオフ後もこの事業は本体の資産である。

株価は8月20日時点で1万5,945円、時価総額は約3兆458億円。予想PER25.70倍、PBR3.84倍、配当利回り0.41%。年初来高値は5月14日の2万495円、安値は1月5日の6,635円と、AI半導体相場に振り回された1年でもあった。みんかぶ集計のアナリスト平均目標株価は8月13日時点で2万533円、コンセンサスは「買い」となっている。

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - レゾナック(4004)——日本初の国産アンモニアが、世界唯一のガス化リサイクルになった - 図表1眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - レゾナック(4004)——日本初の国産アンモニアが、世界唯一のガス化リサイクルになった - 図表2

三菱ケミカルグループ(4188)——超臨界水で国内最大級、しかし本体は石化分社という岐路に

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 三菱ケミカルグループ(4188)——超臨界水で国内最大級、しかし本体は石化分社という岐路に - 章扉

三菱ケミカルグループの出自は、石炭から出るコールタールという「副産物の活用」にある。1934年8月1日に日本タール工業として設立され、戦後の1950年に集中排除法で分割(旭硝子と新光レイヨンが分離)、1952年に三菱化成へ改称した。一方、石油化学の担い手として1956年に三菱油化が設立され、1994年10月1日に両社が合併して三菱化学が発足する。2005年10月には三菱化学と三菱ウェルファーマの株式移転で三菱ケミカルホールディングスが誕生し、2017年に三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンが統合、2022年に現社名となった。廃棄物や副生物を化学品に変えるという発想は、実は創業時から染みついている。

都市油田の現場は茨城県神栖市の茨城事業所にある。ENEOSと共同で建設した廃プラスチックの油化ケミカルリサイクル設備が2025年7月2日に竣工した。処理能力は年間2万トンで、国内最大規模。採用したのは英Mura Technologyの超臨界水熱分解技術(HydroPRS)だ。高温高圧下で液体と気体の中間の性質を持つ「超臨界水」を溶媒に使ってプラスチックを分解する。熱分解に比べて過分解やガス発生を抑えられ、エネルギー効率が良く、混合素材や不純物を含むプラスチックも扱えるため選別の手間が減る。生成した油はENEOSの石油精製装置と三菱ケミカルのナフサクラッカーに原料として投入され、マスバランス方式で石油製品や各種プラスチックに再製品化される。

見逃せないのは、原料となる使用済みプラスチックの回収・調達を、4銘柄目に取り上げるリファインバースグループが担っている点だ。大手化学メーカーの巨大設備と、廃棄物の現場を知る小型企業が、都市油田のバリューチェーン上で直結している。

三菱ケミカルにはもう一つ、独自性の高い都市油田がある。アクリル樹脂(PMMA)のケミカルリサイクルだ。マイクロ波加熱でアクリルを熱分解し、原料であるMMAモノマーに戻す。再生MMAから作ったPMMAは製造工程のCO2排出量を従来比で約70%削減できる。ホンダとテールランプのリサイクルに取り組み、東京海上日動火災保険とは使用済み車両からの回収実証を進めている。MMAは同社の世界シェア約3割・生産能力世界首位の中核事業であり、ACH法・C4直酸法・新エチレン法(アルファ法)という主要3製法を世界で唯一すべて保有する。その最強事業に循環を組み込むという発想は、他社に真似しにくい。炭素繊維でも、CFRPから炭素繊維を回収・分離してバージン同等の中間材料に再生する構想を掲げており、原料から回収まで一貫して手掛けられる唯一の企業だと位置づけている。

課題は都市油田そのものではなく、その土台にある石化事業だ。2026年5月25日、同社は石油化学事業を主体とする基礎化学品事業の分社化検討を開始したと発表した。2027年度中の実行を目指し、他社との統合・再編を加速させる狙いである。基礎化学品事業の2026年3月期売上収益は約5,700億円でグループ全体の16%を占めるが、コア営業損益は141億円の赤字だった。中国の過剰生産で市況が崩れたことが大きい。同社は2021年12月にも石化分離の方針を掲げ2023年度中の共同事業体設立を計画したが交渉が難航して実現しなかった経緯がある。前回が非中核事業を切り離す「カーブアウト」だったのに対し、今回は分社化後も主体的に運営に関わる方針だという。なお現時点で世界シェア首位のMMAは対象に含まれていない。

茨城の油化設備は、この分社化議論の対象になり得る基礎化学品と隣接している。ナフサクラッカーへの投入を出口としている以上、クラッカーの帰趨は都市油田事業の設計にも影響する。ここが投資判断上の最大の不確定要素だ。

業績を確認する。2026年3月期は売上収益3兆7,040億円(前期比6%減)、コア営業利益2,250億円(同2%減)。田辺三菱製薬をベインキャピタルに約5,100億円で譲渡した案件が2025年7月に完了し、7〜9月期に約950億円の譲渡益を計上した。2027年3月期の通期予想は売上収益3兆8,000億円(2.6%増)、コア営業利益3,050億円(35.6%増)、親会社帰属当期利益1,270億円、1株当たり年間配当32円。第1四半期は売上収益1兆42億円(14.0%増)、コア営業利益1,141億円(101.7%増)、親会社帰属四半期利益577億円(194.0%増)と好調で、7月31日に上期予想のみを売上収益2兆430億円・コア営業利益1,940億円・親会社帰属中間利益860億円へ引き上げた。ただし「下期業績の見極めが困難」として通期予想は据え置いている。中期経営計画2029では2029年度に売上収益4兆9,500億円、コア営業利益5,700億円、コア営業利益率12%、ROIC8%を掲げる。

株価は8月19日時点で1,132円、時価総額約1兆6,317億円、予想PER12.11倍、PBR0.84倍、配当利回り2.83%。PBRは1倍を割れたままだ。みんかぶ集計のアナリスト評価は8月11日時点で強気3・中立8・弱気1のコンセンサス「中立」、平均目標株価は1,158円と株価とほぼ変わらない水準にある。市場は石化分社の実行を見極めようとしている。

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 三菱ケミカルグループ(4188)——超臨界水で国内最大級、しかし本体は石化分社という岐路に - 図表1眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 三菱ケミカルグループ(4188)——超臨界水で国内最大級、しかし本体は石化分社という岐路に - 図表2

三和油化工業(4125)——目に見えない油田を掘る、半導体の「静脈」

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 三和油化工業(4125)——目に見えない油田を掘る、半導体の「静脈」 - 章扉

4銘柄のなかで、名前に「油」を持ちながら最も知名度が低いのが三和油化工業だろう。だが都市油田という定義に最も忠実な企業でもある。

創業は1965年3月、名古屋市での個人創業だった。自動車関連企業に金属加工油や工業用洗浄剤を売るところから始まり、1970年6月に法人化。1979年11月に本社を愛知県刈谷市へ移した。転機は1989年12月の産業廃棄物中間処分業許可取得である。油を「売る」会社から、使い終わった油を「引き取って再生する」会社への転換だった。1994年に第一低沸蒸留設備を新設して有機溶剤廃液の再資源化を開始、1998年には第二低沸・高沸蒸留設備で電子材料向けの高純度化学品製造に踏み込む。2009年にはリン酸回収プラントが稼働した。2021年12月23日に東証JASDAQスタンダードと名証二部へ上場し、2022年4月に東証スタンダードと名証メインへ移行している。

同社が掘っているのは、半導体・電子部品・電池・液晶・自動車といった工場から出る使用済みの有機溶剤、廃酸、有用金属を含む産業廃棄物だ。これを蒸留や溶媒抽出といった化学的手法で分離・精製し、元の用途や塗料・洗浄剤・表面処理剤の素材として再び売る。半導体工場が使うイソプロピルアルコールやリン酸のような薬液は、輸入依存度が高いうえに純度要求が厳しい。それを国内で回して戻せることの意味は、2026年の供給網環境ではかつてなく大きくなっている。事業はリユース、リサイクル、化学品、自動車、エンジニアリングの5区分だが、単一の環境関連事業セグメントとして開示されている。

成長投資が二つ走っている。ひとつは北九州の新工場だ。2024年6月にエア・ウォーター・マテリアルとの合弁でサンワマテリアルソリューションズを設立(議決権65%)し、AGC北九州事業所内の借地約2万3,000平方メートルに半導体化学品の再生工場を建てる。2025年8月に本格着工し、2027年4月の完成を目指す。当初の投資額は約60億円だったが、建設コストと機材価格の上昇で約80億円に膨らんだ。年間処理能力1万トンで立ち上げ、2030年代に倍増させる構想だ。TSMCの熊本進出に象徴される九州の半導体集積が需要の裏付けになっている。2027年3月期の設備投資計画約86億円のうち60億円が北九州向けで、うち20億円は環境省の補助金を見込む。

もうひとつはM&Aだ。2025年10月1日、貴金属・レアメタルの分離回収精製を手掛けるエー・アンド・エイチ・ジャパンの全株式を7億円で取得し完全子会社化した。同社の2024年9月期は売上高39億7,000万円、営業利益1億9,900万円。三和油化は液体系の処理に強い一方で金属系が弱かったため、この買収でインジウムを含むレアメタル処理能力を補完する。リユース事業に占める金属リサイクルの比率を約10%から40〜50%へ引き上げる計画だ。都市油田の会社が都市鉱山に片足を踏み入れた格好である。

業績は劇的に改善している。2026年3月期は売上高202億6,300万円(前期比26.3%増)、営業利益15億4,300万円(同84.6%増)、経常利益17億100万円、純利益10億7,100万円。営業利益率は7.6%と2.4ポイント改善した。A&H Japanの連結寄与に加え、再生溶剤の販売が数量・単価とも前年を超え、廃棄物由来燃料への引き合いも強かった。エンジニアリング事業ではPCB案件が計画を大幅に超過している。2027年3月期の会社予想は売上高235億円、営業利益17億円、経常利益16億2,000万円、純利益11億円。第1四半期は売上高64億円(前年同期比61.7%増)、営業利益6億9,100万円(同210.1%増)と極めて強い滑り出しで、通期予想は据え置かれた。配当は2026年3月期に7円増配の年間50円とし、2027年3月期も50円を計画する。

課題は、収益の振れ幅が顧客産業の設備稼働に直結することだ。過去5期を並べると売上高は2022年3月期155億円、2023年3月期174億円、2024年3月期156億円、2025年3月期160億円、2026年3月期203億円。営業利益は16.3億円、18.9億円、12.8億円、8.36億円、15.4億円と一度大きく凹んでいる。半導体・電池業界の稼働調整が直撃した局面では、廃液が出てこないので処理もできない。北九州工場が2027年4月に立ち上がるまでは投資先行の期間が続き、コスト上振れのリスクも顕在化済みだ。化学品事業では電池業界向けの先行きが不透明とされている。

株価は8月19日時点で3,700円、時価総額約159億円、PER14.93倍、PBR1.16倍、配当利回り1.35%、ROE8.28%。時価総額160億円規模の小型株であり、流動性の制約は投資判断上考慮すべき要素になる。

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 三和油化工業(4125)——目に見えない油田を掘る、半導体の「静脈」 - 図表1

リファインバースグループ(7375)——「東京に油田を見つけた」ベンチャーの22年

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - リファインバースグループ(7375)——「東京に油田を見つけた」ベンチャーの22年 - 章扉

リファインバースグループの創業者・越智晶氏は、もともと投資する側の人間だった。化粧品メーカーに5年勤めた後、大前研一氏の投資会社でベンチャーキャピタリストとして年間1,000件近い新規事業案件を審査していた。そこで出会ったのが、産業廃棄物処理業者が持ち込んだ「廃棄タイルカーペットの再資源化技術」だった。

タイルカーペットは表面がナイロン、裏面が塩化ビニル樹脂という二重構造で、当時はリサイクル不可能とされていた。だが高度成長期に建てられたオフィスビルの再開発が進み、大量の建築廃材の処理が問題化していた。越智氏はこの技術の価値を高く評価して投資を決め、社外取締役を経て、2003年12月に自らリファインバース株式会社を設立して代表取締役社長に就いた。「出資者としてではなく、フルコミットで取り組むビジネスだと思った」と本人は語っている。2006年7月に千葉県八千代市でカーペットタイルリサイクル工場が竣工した。

同社は塩ビ樹脂を削り取って分離する技術を確立し、再資源化率90%を達成。再生素材は従来樹脂の半値という価格競争力を持った。ただ既存の生産設備では効率が落ちるため、カーペットタイルメーカーに設備投資込みの提案を行うという戦略を採り、2011年に住江織物などと共同開発した「ECOS」シリーズの発売でようやく結実した。越智氏が最も苦労したと語るのは資金繰りで、創業期の研究開発投資による累損が重かったという。素材分野への新規参入の困難さがうかがえる。2016年7月に東証マザーズへ上場し、2021年に持株会社体制へ移行した。

現在の製品ラインは二本柱だ。使用済みカーペットタイル由来の再生塩ビ材「リファインパウダー」と、廃漁網を原料とする再生ナイロン樹脂「REAMIDE(リアミド)」である。REAMIDEはバージンのナイロン6と比べてCO2排出量を約85%削減でき、アパレルやオフィス家具の原料に採用されている。海洋プラスチック問題への貢献という文脈で語られることが多いが、経済的な本質は「誰も回収していない素材を集められる仕組み」を持っていることにある。2026年7月には下田海中水族館で廃漁網の回収・選別プロジェクトも実施した。

そしてもう一本、2026年7月からポリオレフィンリサイクル事業を開始した。梱包資材などに広く使われるポリエチレン・ポリプロピレンを対象に、千葉県富津市のリファインバースイノベーションセンター(RIVIC)内に製造ラインを新設する。2028年6月期に売上高10億円規模の事業化を目指す。

投資家として注目すべきは、同社が大手のバリューチェーンに深く食い込んでいる点だ。三菱ケミカルとENEOSの茨城油化設備には、原料となる使用済みプラスチックの回収・調達で参画している。2026年2月には三菱UFJ銀行・三菱ケミカルと、オフィスから排出される使用済みプラスチックの再資源循環に関する覚書を締結した。2025年2月には茨城県鹿嶋市・三菱ケミカル・東洋製罐グループホールディングス・キユーピー・カスミとの6者連携協定で、調味料キャップの循環に取り組んでいる。時価総額40億円弱の会社が、日本の都市油田インフラの「入口」を押さえている構図である。

業績は回復基調にある。2026年6月期は売上高44億6,400万円(前期比9.7%増)、営業利益3億2,000万円(同75.9%増)、経常利益2億8,200万円(同86.9%増)、親会社株主帰属当期純利益2億5,500万円(同74.9%増)。カーペットタイルの調達量が前年同期比128%に伸び、再生塩ビ材と高機能樹脂の双方で大口需要家への供給が拡大した。2027年6月期の会社予想は売上高58億円、営業利益6億3,000万円、経常利益5億9,000万円、純利益4億円と、大幅な増収増益を見込む。

課題は財務だ。過去5期を並べると2022年6月期の売上高37.3億円・営業利益2.6億円から、2023年6月期は売上44.7億円ながら純損失5.1億円、2024年6月期は営業利益0.3億円まで落ち込み、2025年6月期に1.8億円へ戻し、2026年6月期に3.2億円まで回復した——という激しい上下動である。自己資本比率は2026年5月時点で6.1%と極めて低く、総資産は35億円規模。PBRが8.36倍という一見異常な数値も、株価が高いというより自己資本が薄いことの裏返しだ。予想ROE85.5%という数字も同じ理由で、健全性の証明ではない。金利上昇局面では資金調達コストが直接効いてくる。株価は8月19日時点で1,168円、時価総額約39億円、予想PER9.78倍、無配。ポリオレフィン新事業の立ち上げ費用をどう吸収するかが、当面の焦点になる。

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世界の都市油田はいま選別局面——破綻・撤退・凍結が相次いだ2026年

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日本の4社が設備を立ち上げている一方、欧米の同業は2026年に入って厳しい淘汰局面に突入した。この落差を理解しないと、日本の都市油田銘柄を正しく評価できない。

象徴的なのが英Plastic Energyだ。2015年設立で、TAC(熱嫌気性転換)プロセスによる熱分解油「Tacoil」を掲げ、SABICやTotalEnergiesと合弁を組んできた業界のパイオニアである。だが2026年4月27日、FRP AdvisoryのGeoff Rowley氏らが同社および持株会社の管財人(administrator)に選任された。管財人によればグループ内に再建計画を実行するだけの流動性がなかった。スペインの稼働中2工場は手続の対象外で操業を続けた。同社は2026年8月6日、新たな所有構造の下で手続を完了し、創業者のCarlos Monreal氏がCEOに復帰したと発表している。

破綻はこれだけではない。Chemistry Worldの報道によれば、Viridor傘下のQuantafuelは北欧3拠点を閉鎖した。熱分解油の収率70〜75%を達成していたにもかかわらず、この分野は「商業的に成立しない」と判断されたという。Mura Technologyは、Dowがスチームクラッカーを閉鎖したことに伴い、独ベーレン計画を中止した。米国ではBraven Environmentalのノースカロライナ州ゼブロン工場が環境規制当局の命令で閉鎖され、2026年6月には設備の搬出が進んでいた。同社は5月にテキサス州テクサーカナの計画も断念している。Freepoint Eco-Systemsはオハイオ州ヒブロンの熱分解工場の操業を停止した。

投資撤退も相次いだ。Agilyxは2026年2月4日、米国のケミカルリサイクル事業から実質的に手を引くと発表。ヒューストンの選別拠点の持分を合弁相手のLyondellBasellとExxonMobilへ譲渡し、ダラス・フォートワースの新設計画の最終投資決定を撤回、Cyclyx Internationalを100%子会社化した。ExxonMobilとの年5万トンのオフテイク契約は維持しつつ、資本支出と運営費のエクスポージャーを大幅に削減する。CEOのRanjeet Bhatia氏はこれを「事業を単純化しリスクを減らす決定的な一歩」と説明した。同社は2025年10月に買収した欧州のGreenDotに軸足を移し、2030年にEBITDA1億ユーロ(約185億円)を目指す。

米Eastmanのケースは政策リスクを示す。同社はテネシー州キングスポートに年11万トンのメタノリシス設備を2024年3月に立ち上げ、世界最大級の分子リサイクル拠点としている。だがテキサス州ロングビューに計画していた12億ドル(約1,900億円)の第2工場は、米エネルギー省(DOE)の3億7,500万ドル(約590億円)の助成金を失ったことを受けて2年間保留となった。

計画遅延も広がる。LyondellBasellが独ヴェッセリンクに建設中の年5万トンのMoReTec-1は、EUイノベーション基金から4,000万ユーロ(約74億円)の支援を得ているが、2026年1月に予定していた稼働は実現せず、2027年開始に後ろ倒しされた。仏Carbiosの酵素法PET解重合プラント(ロンラヴィル、年5万トン、総投資2億3,000万ユーロ=約425億円)は、確定済みの公的資金4,250万ユーロ(約78億円)を確保しているものの、同社は2026年8月3日、9月30日を期限としていたファイナンシャルクローズが達成できない見通しだと発表した。試運転は2028年上期を予定する。韓国SK geo centricが蔚山に建設していた総額1兆8,000億ウォン(約2,200億円)の先端リサイクルクラスター(ARC)も、SKグループの事業リバランシング方針を受けて段階化された。熱分解プラントを先行させ、PP抽出とPET解重合の建設判断は後回しとなり、投資額は当初の半分以下、年32万トンとしていた処理量も大幅に縮小される見通しだ。

Chemistry Worldがまとめた数字は現状を端的に示す。欧州のケミカルリサイクル能力は年28万9,000トン(Quantafuel閉鎖前)、パイプラインにある65件のプロジェクトのうち9件がすでに中止された。化学的にリサイクルされた材料はEUのプラスチック生産のわずか0.2%(2024年)にとどまり、EUの廃プラの70%は依然として焼却・埋立に回る。EUでリサイクルされるプラスチックの約20%は輸入原料に依存している。そして熱分解油は化石原料の2倍の価格で取引されているという。Viridorのリー・ホダー氏は「数億ドル規模の話をするのだから、投資を支えるには確実性が必要だ」と語った。

明るい材料もある。ExxonMobilはテキサス州ベイタウンの3基目を2026年2月2日に稼働させ、同拠点の能力を年約11万3,400トンに引き上げた。世界で年50万トンという2026年末目標には距離があるが、着実に積み上げている。PureCycle Technologiesは2026年第1四半期に840万ポンドという過去最高の生産を記録し、原料処理量は約1,000万ポンド、5四半期連続の増収を達成した。アイアントンの定期修繕は予定より早く予算内で完了し、P&G向け2製品の商業化承認も得ている。Eastmanは2026年、メタノリシスでISO 59014認証を取得した。

日本国内も一枚岩ではない。積水化学工業は2025年12月11日、可燃ごみをエタノールに変える技術の実証プラントを撤収し、子会社の積水バイオリファイナリーを解散すると発表した。2026年3月期に減損損失148億円を計上し、設備は2026年3月で稼働を停止、従業員77人はグループ内で再配置される。技術の実用化の目処は立ったものの生産コストが高く、資源循環の価値を上乗せした価格を市場が受け入れるには時間を要すると判断した——8年前に日経新聞が「『都市油田』で資源大国に」と紹介した、まさにその事業である。

一方で立ち上がる案件もある。出光興産子会社のケミカルリサイクル・ジャパンは2026年4月27日、千葉県市原市で油化ケミカルリサイクル設備の商業運転を開始した。触媒を使った接触分解システムで年2万トンの使用済みプラを処理し、軽質原油に相当するCR油を年1万4,000トン生産する。生産した油は出光グループの製油所・石化装置へ投入され、マスバランス方式でリサイクル化学品となる。太陽石油は長崎工業と組み、中国・四国地方で排出される使用済みプラスチックを対象に年800トン規模の地域分散型リサイクルを始動、2025年12月にISCC PLUS認証付きの分解油を四国事業所(愛媛県今治市)で初受け入れした。サントリーなど12社が出資するアールプラスジャパンは、米Anellotechと共同開発してきた混合プラスチックのケミカルリサイクル技術の実証を2025年9月に完了し、事業化フェーズへ移行、2027年の実用化を目指している。PETのケミカルリサイクルを手掛けるJEPLANは、2026年4月に再生材HELIXがキリンの「ホームタップ」用1リットルPETボトルに採用されたほか、AxensおよびIFPENと繊維から繊維への商業規模実証を進めている。

この対比から読み取れる教訓は一貫している。倒れたのは「熱分解油を作って売る」だけの単機能プレーヤーであり、生き残っているのは、原料を安定的に集める仕組みか、製品を確実に引き取る出口か、そのどちらかを自社で握っている企業だ。レゾナックがアンモニアと炭酸ガスという出口を、三菱ケミカルがナフサクラッカーという出口を、三和油化が半導体メーカーとの相互取引を、リファインバースが回収ネットワークという入口を持っていることの意味は、この文脈で評価すべきである。

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制度が需要をつくる——改正資源有効利用促進法、PPWR、そして1兆円計画

眠れる資源、都市油田。関連銘柄4選。レゾナック(4004)、三菱ケミカルG(4188)、三和油化工業(4125)、リファインバースG(7375) - 制度が需要をつくる——改正資源有効利用促進法、PPWR、そして1兆円計画 - 章扉

都市油田が経済的に成り立つかどうかは、技術ではなく制度が決める。再生材はバージン材より高い。誰かが買わなければ市場は生まれない。2026年は、その「誰か」を法律が指名し始めた年だった。

日本では2026年4月1日、改正資源有効利用促進法が施行された。2025年6月に成立した改正の柱は再生プラスチックの利用義務化である。対象として容器包装(食品用・医薬品用を除く)、家電4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)、自動車が検討されており、これらの製造事業者や輸入販売事業者には再生プラスチックの利用目標を含む計画の提出が義務づけられる。初回計画の提出期限は2027年6月末、2028年度以降は前年度実績の定期報告が毎年必要になる。リチウム蓄電池内蔵製品の回収・再資源化促進も併せて盛り込まれた。

その前段には、2024年5月29日成立・2025年11月21日全面施行の再資源化事業等高度化法がある。大規模な産業廃棄物処理業者に再資源化の実施状況の報告・公表を義務づけ、高度な再資源化事業の認定制度を新設した。単にリサイクル量を増やすのではなく「高品質な再生材の安定供給と脱炭素の両立」を掲げている点が、従来の廃棄物政策との違いだ。

そして2026年4月21日、政府は循環経済に関する関係閣僚会議で「循環経済行動計画」を決定した。国内の資源循環基盤を強化するため、2030年までに官民合わせて約1兆円規模の投資目標を設定している。プラスチックに加えて鉄・アルミニウム・銅・永久磁石といった重要資源も対象で、2030年までにアルミニウム展伸材の再生原料比率を約40%、銅と永久磁石を約30%、グリーン鉄用の高品位鉄スクラップを年約200万トン追加確保するという定量目標を掲げた。この背景には2023年策定の「成長志向型の資源自律経済戦略」があり、循環経済関連ビジネスの市場規模を2020年の約50兆円から2030年に80兆円以上、2050年に120兆円へ引き上げる構想が置かれている。

海外の制度は日本企業の輸出にも直接効く。EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)は2024年末に採択、2025年2月に発効し、2026年8月12日から適用が始まった。2030年1月1日までに全ての包装をリサイクル可能な設計とし、2035年からは「大規模に」リサイクル可能であること——つまり既存インフラで収集・選別・リサイクルできることが求められる。再生材含有率の義務も具体的で、2030年までに接触感応性PET包装(単回使用飲料ボトルを除く)は最低30%、2040年に50%。PET以外の接触感応性プラスチック包装は2030年に10%、2040年に25%となる。

一方、より上位の枠組みは足踏みしている。プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(プラスチック条約)の交渉は、2025年8月にジュネーブで開かれたINC-5.2で合意に至らなかった。生産規制や有害物質の規制をめぐり、産油国を中心とする反対派との溝が埋まらなかったためだ。2026年2月7日に開かれたINC-5.3は役員選出などの組織的・事務的事項に限られ、実質交渉は行われなかった。チリのフリオ・コルダノ氏が新議長に就任し、非公式協議を重ねて2026年末から2027年初めの本交渉再開を目指す動きが報じられているが、環境省によれば次回再開会合の日程は調整中である。

制度が需要を作る一方で、足元の市況は厳しい。再生樹脂市場では、バージン材の歴史的な安値と構造的な供給過剰が再生材の採算を圧迫してきた。日本産OPPスクラップのアジア向け価格は2年前の300米ドル超から140米ドル(約2万2,000円)台まで下落したと報じられている。市場は低品質材と高品質・認証付き材の二極化に向かっており、トレーサビリティと認証が取引条件と価格を左右する時代に入りつつある。ISCC PLUS認証を取得しているかどうかが、企業の交渉力を大きく分ける。

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投資家はどう見ているか——4銘柄の位置づけと今後のカタリスト

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4社を並べると、都市油田というテーマに対する「効き方」がまったく違うことがわかる。

レゾナックは時価総額約3兆458億円の大型株で、株価を動かしているのはAI向け半導体材料である。2026年12月期のコア営業利益予想1,960億円のうち、半導体・電子材料が1,950億円を占める見通しで、KPRを含むケミカルセグメントの計画は40億円にすぎない。都市油田事業が業績に与えるインパクトは小さく、この銘柄の株価を都市油田テーマで説明することはできない。むしろ注目すべきは、20年超の運転実績とライセンス化という無形資産、そして水素社会推進法の価格差支援という政策的な下支えが、事業の継続性を担保している点だ。目先の最大のイベントは9月29日のクラサスケミカル上場と10月1日のパーシャル・スピンオフ実行で、これによりレゾナックは半導体材料企業としての姿がより鮮明になる。次のマイルストーンは2027年の新技術パイロット設備、2030年4月のプラ由来水素100%設備稼働、そして2030年代半ばの基礎化学品直接製造の事業化である。

三菱ケミカルグループは、都市油田が「本業を守る技術」として位置づけられている。PBR0.84倍と1倍を割れており、アナリスト平均目標株価1,158円は現値とほぼ同水準。市場が待っているのは2027年度中を目指す基礎化学品事業の分社化と、その先にある業界再編の具体像だ。茨城の油化設備もPMMAのケミカルリサイクルも技術的には先行しているが、株価のドライバーになるには石化の構造問題の決着が先に来る。逆に言えば、分社化の枠組みが固まり、再生材が「再編後の新会社の差別化要因」として明確に位置づけられれば、評価は変わり得る。2027年3月期の通期予想は据え置かれたままで、下期の見極め時期が次の情報開示のポイントになる。

三和油化工業は、4社のなかで最も「都市油田そのもの」で稼いでいる会社だ。時価総額約159億円、PER14.93倍、PBR1.16倍。2027年3月期第1四半期の営業利益が前年同期比3.1倍という数字が示すとおり、A&H Japanの連結効果とリユース事業の伸長が同時に効いている。注目すべき時期は2027年4月の北九州工場立ち上げで、そこから年1万トンの処理能力が加わる。九州の半導体投資が続く限り需要は堅い。半面、投資額が60億円から80億円に膨らんだ経緯があるとおり建設コストのインフレ耐性は課題で、半導体・電池業界の稼働調整が起きれば廃液そのものが減るという構造的な感応度も残る。

リファインバースグループは、テーマへの純度は最も高いが財務の脆さも最も大きい。時価総額約39億円、自己資本比率6.1%、無配。2027年6月期に売上高58億円・営業利益6億3,000万円という会社予想を達成できるかが最初の関門で、7月に始動したポリオレフィンリサイクル事業が2028年6月期に売上高10億円規模へ育つかが次の関門になる。三菱ケミカルやENEOS、三菱UFJ銀行といった大手との協業案件は、事業の実在性を裏づける材料であると同時に、単独では資本を出せない小型企業の生存戦略でもある。

VC・投資家サイドの潮流も押さえておきたい。世界のサーキュラーエコノミー系スタートアップへのベンチャー資金は2025年に6億7,000万ドル(約1,060億円)超が投じられた。2026年に入ると資金は絞られつつも集中し、7月時点で開示付きエクイティラウンドを実施したのは24社。うちリサイクルプラットフォーム分野が8件・5億5,600万ドル(約880億円)を集め、全体の86%を占めた。ただしその中身は電池・レアアース・重要鉱物に紐づくものが中心で、汎用プラスチックの熱分解は資金の集まりにくい領域になっている。投資家が「循環」に払うプレミアムは、いまや素材の戦略性——供給網リスクと経済安全保障——に連動している。逆に言えば、三和油化が半導体薬液に、レゾナックが低炭素アンモニアに軸足を置いていることは、この資金の流れと整合的だ。

市場規模の予測は調査会社によって大きく割れている。Grand View Researchはプラスチックのケミカルリサイクル市場を2023年の148億2,000万ドル(約2兆3,400億円)から2030年に268億8,000万ドル(約4兆2,500億円)へ、年率9.4%の成長と見る。一方Allied Market Researchはケミカルリサイクル市場を2025年の40億2,700万ドル(約6,360億円)から2035年に143億9,470万ドル(約2兆2,700億円)、年率13.6%と推計する。同じ言葉を使いながら5倍近い開きがあるのは、定義に何を含めるかが定まっていないためだ。この種の数字を投資判断の根拠にするのは危うい。

今後、具体的に何を見ればよいか。2026年後半では、9月29日のクラサスケミカル上場と10月1日のスピンオフ実行、そして下期に入ってからの三菱ケミカルGの通期予想再設定が近い。2027年前半では、4月の三和油化・北九州工場立ち上げ、6月末を期限とする改正資源有効利用促進法に基づく再生プラスチック利用計画の初回提出——ここで各社が掲げる数値が、再生材の実需を初めて可視化する。同じ2027年には、レゾナックの新技術パイロット設備の試験着手とアールプラスジャパンの実用化目標、三菱ケミカルGの基礎化学品分社化の実行が重なる。国際交渉では、プラスチック条約の本交渉が2026年末から2027年初めに再開されるかどうかが焦点になる。

都市油田は、まだ「掘れば儲かる油田」ではない。欧米で相次いだ破綻と凍結は、技術があっても原料と出口がなければ事業は成立しないことを証明した。だがナフサの8割超を中東に依存する国が、その海峡を封鎖されるという現実を経験したいま、国内に911万トン積み上がる炭素を燃やし続けるという選択肢の合理性は確実に低下している。投資対象として見るなら、掘削技術ではなく、誰が原料を集められ、誰が確実な出口を持っているかを見るべきである。


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