3Dプリンターとは何か——「削る」でも「流し込む」でもない第三の製造

3Dプリンター製造。ニコン(7731)、DMG森精機 (6141)、ローランド ディー.ジー. (6789)、ミマキエンジニアリング(6638) - 3Dプリンターとは何か——「削る」でも「流し込む」でもない第三の製造 - 章扉

ものづくりの方法は、長らく二つの系統に大別されてきた。金属やプラスチックの塊をドリルや刃物で削り出す「除去加工(切削・旋削)」と、溶かした材料を金型に流し込んで固める「成形加工(射出成形・鋳造)」である。3Dプリンターはこのどちらとも異なる第三の系統に属する。設計データ(3D CAD)を水平方向に薄くスライスし、その断面を下から一層ずつ積み上げて立体を再現する「付加製造(Additive Manufacturing、AM/積層造形)」だ。型が要らないため、中空構造や格子状の内部、有機的な曲面といった切削では削り出せない複雑形状を作れること、そして一個ごとに形を変えても追加コストがほとんど増えないこと——この二点が最大の強みである。裏を返せば、大量に同じ物を安く早く作る局面では射出成形にかなわない。3Dプリンターが「試作と少量多品種、そして高付加価値部品」の道具として育ってきた理由がここにある。

技術の起源は意外に古い。1986年に米国のチャック・ハル(Chuck Hull、3D Systems創業者)が、液体の光硬化樹脂に紫外線を当てて固める「光造形(SLA)」を実用化・特許化したのがAMの原点とされる。その後、方式は大きく枝分かれし、現在は国際標準 ISO/ASTM 52900 が七つのカテゴリーに整理している。家庭用でおなじみの熱溶解積層(FDM/FFF)は、熱で溶かした樹脂の糸をノズルから絞り出して輪郭を描く方式で、いわば精密なグルーガンだ。Stratasysが持っていた基本特許が2000年代末に失効したことでオープンソース機が花開き、今日の中国Bambu Labなどによる低価格機ブームの土壌となった。冒頭の光造形(SLA/DLP/LCD)は歯科のクラウン(被せ物)やサージカルガイド、ジュエリー鋳造の原型、補聴器といった精密分野を担い、Formlabsや3D Systems、Carbonが代表格である。

産業用途で存在感を増しているのが金属を扱う二方式だ。一つは「粉末床溶融結合(PBF)」で、金属の微粉末を薄く敷いてはレーザーや電子ビームで断面だけを焼き固める作業を繰り返す。砂に光で絵を焼き付けるような要領で、チタンやインコネル、ステンレスから航空機のブラケットや燃料ノズル、チタン製の人工関節・脊椎インプラント、タービン部品を生み出す。EOS(独)、ニコン傘下のNikon SLM Solutions、GEの流れをくむColibrium Additive、Trumpf、Renishawが主要プレイヤーだ。もう一つが「指向性エネルギー堆積(DED)」で、ノズルの先から金属粉やワイヤを供給しながらその場でレーザーで溶かして肉盛りしていく。溶接ロボットに近く、大型部品のニアネットシェイプ造形や、摩耗・損傷したタービン翼などの補修に強い。DMG森精機のLASERTECや三菱電機のAZ600がここに属する。このほか、粉に接着剤をインクジェットで吹き付けて固め量産を狙う「結合剤噴射(Binder Jetting)」、光硬化樹脂の微細な液滴を紙のインクジェットのように吹いてフルカラー・多材料を実現する「材料噴射(Material Jetting/PolyJet)」——ここにミマキが挑む——、そして用途の限られる「シート積層」が加わり、計七方式となる。本稿の主役である日本4社は、この地図の上で見事なほど別々の場所に陣取っている。

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世界市場の現在地——「成熟期入り」した3.9兆円産業

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業界の羅針盤とされるWohlers Report 2026(2026年2月17日公表、ASTM International傘下のWohlers Associatesが編纂)によれば、世界のAM売上高は2025年に242億ドル(約3.9兆円)に達した。数字だけ見れば過去最高だが、前年からの伸びは10.9%にとどまる。コロナ禍前に当然視されていた「年20%超の成長」からは明確に減速しており、同レポート自身が業界は急拡大局面から「成熟(maturity)」へ移行したと位置づけた。内訳を見ると、造形を請け負うサービスが全体の48%と最大で、装置販売と保守が26%、材料が20%、ソフトウェアが6%という構成である。とりわけ象徴的なのは成長率の差だ。サービスが前年比15.5%伸びたのに対し、装置販売は3.6%増にとどまった。「新しい機械を買う」より「すでに導入した機械の稼働率を上げて使い倒す」局面に入ったことを示しており、これは供給過剰と淘汰が進む成熟産業に典型的なサインでもある。地域別ではアジア太平洋が19.8%増と最も速く、米州の12.6%増、欧州・中東・アフリカの9.0%増を引き離した。

この10年の物語を一言でいえば「消費者向けの夢から、産業用の実需へ」である。かつて「一家に一台」と喧伝された家庭用3Dプリンターの熱狂は早々に幻滅へ変わったが、金属AMは着実に最終製品の量産へと歩を進めてきた。その金字塔がGE Aerospace(旧GE Aviation)の航空機エンジン用燃料ノズルだ。従来は約20個の部品を溶接・ろう付けして作っていたものを、粉末床溶融結合で一体成形することで部品点数を1個に集約し、25%の軽量化と5倍の耐久性を実現した。このノズルはLEAPエンジン1基あたり19個組み込まれ、3Dプリント部品としては異例の累計10万個超が量産されてきた。GEはこの3Dプリント製エンジン部品の量産拡大に6.5億ドル(約1,060億円)を投じると発表している。プロトタイプの道具にすぎなかった3Dプリンターが、シリアルプロダクション(量産)を担う実例である。医療分野のチタン製整形外科インプラントや歯科のクラウン・マウスピース、宇宙ロケットのエンジン部品なども、同様に量産採用が現実に進む領域だ。ただし金属AMの世界市場自体は、調査会社The Business Research Companyの推計で2025年に約60億ドル(約1兆円)、2026年に約70億ドル(約1兆1,400億円)規模とされ、AM全体の一部にとどまる。本稿の日本勢にとって、AMがなお「本業の巨大さに比べれば小さい」現実は、この市場構造から来ている。

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サプライチェーンと業界再編——分業構造とSPAC後の淘汰

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3Dプリンター産業は、装置本体だけで完結しない裾野の広い分業構造を持つ。心臓部となる金属粉末は、ガスやプラズマで溶湯を微粒化してつくる特殊な素材で、スウェーデンのHöganäs、米国の特殊合金大手Carpenter Technology、同じくSandvik、GE傘下でプラズマアトマイズを得意とするAP&Cといった専業が握る。日本にも山陽特殊製鋼、大同特殊鋼、福田金属箔粉工業、東洋アルミニウム、エプソンアトミックスといった実力ある粉末メーカーが揃い、素材面ではむしろ層が厚い。樹脂・フォトポリマーではCovestro(旧DSM)、Henkel、BASF、Arkema、Evonikが並ぶ。金属PBF機の性能を左右するレーザー光源は米IPG Photonicsが最大手で、nLight、Coherent、Trumpfが続き、ビームを高速で走査するガルバノスキャナは独SCANLABやRaylaseが代表格だ。設計・シミュレーション・造形準備を担うソフトウェアではベルギーのMaterialise、Autodesk、nTop、Ansys、Siemens、そして受託造形のサービスビューローではProtolabsやXometry、Materialiseが厚みを持つ。つまり、装置メーカーは光源・粉末・ソフトを外部から調達しつつ、自社の統合力と精度で差別化する構図にある。近年はチタンやタングステン、レアアースの中国依存や、防衛・宇宙用途のサプライチェーン国産化が地政学リスクとして意識され、AMは「戦略産業」として再評価されつつある。

日本のエコシステムに目を転じると、政策面では経済産業省・NEDOが主導した技術研究組合「TRAFAM(次世代3D積層造形技術総合開発機構)」を核に、金属AM装置や砂型AM装置の国産化が進められてきた。TRAFAMは2014年に発足し、装置国産化から品質・欠陥予測技術へと重点を移して2023年度に委託事業を終え、組織自体は2025年5月に解散した。得られた知財は経済安全保障上重要な技術として後継の国家プロジェクトへ引き継がれている。装置では、レーザーで金属粉を焼結しながら同時に切削する世界初のハイブリッド金属3Dプリンター「LUMEX」を早くから手がける松浦機械製作所、金属積層と切削を組み合わせるソディックの「OPM」、世界初の空間同時5軸制御を掲げて2022年に発売したワイヤ・レーザーDED機「AZ600」の三菱電機、電子ビーム方式「JAM-5200EBM」を持つJEOL(日本電子)、そして本稿のDMG森精機やミマキが名を連ねる。素材や切削複合機、砂型鋳型では日本勢の存在感は大きく、医療でも金属AM製の脊椎スペーサーを手がける岡山のナカシマヘルスフォースが2026年4月に第10回ものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞(最高賞)を受けるなど、インプラント分野には確かな勝ち筋がある。一方で、純粋な金属PBF装置の世界シェアではEOSやTrumpf、米国勢、中国のFarsoon(華曙)やBLTが上位を占める。実際、EOSが2025年に発表した新型金属機M4 ONYXの日本展開はNTTデータ ザムテクノロジーズが担うなど、量産PBFで日本企業が代理店に回る場面も多く、装置の世界シェアや材料標準化、投資規模の面で日本は出遅れているとの指摘が根強い。

そのグローバル市場でいま起きているのが、激しい業界再編である。2020〜2021年の低金利とSPAC(特別買収目的会社)ブームに乗って、Desktop Metal、Markforged、Velo3D、Shapeways、Fathomといった新興AM企業が相次いで上場した。しかし過剰な成長期待は続かず、多くが上場来高値から9割超も株価を落とした。上場AM大手の統合機運も空回りしている。2023年5月にはStratasysがDesktop Metalを全株式交換(約18億ドル=約2,930億円)で統合すると発表したが、同年9月に株主投票で否決されて破談。3D SystemsがStratasysに約12億ドル(約1,960億円)で対抗買収を提案したものの、これも成立しなかった。淘汰を象徴するのがイスラエルのNano Dimensionだ。同社は2025年4月2日にDesktop Metalを1億7,930万ドル(約292億円)で、続く4月25日にMarkforgedを1億1,600万ドル(約189億円)で相次いで買収した(Desktop Metal買収では、いったん手を引こうとしたNano Dimensionにデラウェア州衡平法裁判所が完了を命じる一幕もあった)。ところが買収された当のDesktop Metalは重い債務を抱え、2025年7月に連邦破産法第11章(チャプター11)を申請、9月までに中核資産が防衛・エネルギー系の投資家Arc Impactへ売却された。Nano Dimensionはこの整理で2025年第2四半期に1億8,110万ドル(約295億円)のGAAP純損失を計上する。さらに、そのMarkforgedをStratasysが4,250万ドル(約69億円)の全額現金で買い直す確定契約が結ばれ、2026年下期のクローズが見込まれている。1年前に1億1,600万ドルで取得された会社が、その3分の1近い値段で転売される——業界の価値破壊を象徴する取引だ。Stratasys自身も2026年第1四半期の売上高は1億3,270万ドル(約216億円)と前年割れで、2026年通期ガイダンスを5億6,500万〜5億7,500万ドル(約920〜940億円)に置き、成長回帰を目指して航空宇宙・防衛・ドローン用途へ軸足を移そうとしている。この荒波を念頭に、本業という母艦を持つ日本4社を一社ずつ見ていく。

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ニコン(7731)——光学の巨人が挑む金属AMと906億円の減損

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ニコンのAM事業は、半導体露光装置(リソグラフィ)で培ったビーム制御・精密・光学の技術を金属積層へ応用する発想から出発した。中核は2022年に発表した独SLM Solutions(リューベック)の買収である。ニコンは買収目的子会社を通じて1株20ユーロ、総額約6億2,200万ユーロ(買収当時のレートで約870億円)で公開買付を仕掛け、2022年11月末までに92.38%を取得、2023年1月にクロージング、同年9月にはスクイーズアウト(少数株主の締め出し)を経て完全子会社化し、社名をNikon SLM Solutions AGとした。同社の旗艦機NXG XII 600は、出力1kWのレーザーを12本備え、600mm角の大型造形を標準機の約20倍の速度でこなす金属PBF機で、2025年12月には通算900台目をフランスのSafranへ納入している。防衛の国内調達要件に応えるため、米サウスカロライナ州での現地生産("American Made")も始めた。もう一つの柱がDED方式の「Lasermeister」だ。2019年の初号機100Aから2024年発売の産業機LM300Aへと進化し、3DスキャナーSB100と組み合わせてタービンブレードや金型の補修用ツールパスを自動生成する。さらに、2021年に取得した米Morf3D(航空宇宙向け金属AM)を2024年に「Nikon AM Synergy」へ改称し、汎用受託から撤退して防衛・航空宇宙に特化、拠点をカリフォルニア州ロングビーチへ集約した。これら装置・部品・補修・計測を束ねたのが「デジタルマニュファクチャリング(DM)」セグメントである。

しかし2026年5月8日に発表された2026年3月期決算は、この戦略が高い授業料を伴うことを突きつけた。ニコンの連結売上収益は6,771億円(前期比5.3%減)、営業損益は1,124億円の赤字、親会社株主に帰属する当期損益は860億円の純損失と、過去最大の赤字に転落した。最大の要因は、DMセグメントで計上したSLM関連の「のれん・無形資産」の減損906億円である。2022〜2023年の買収時に置いた成長シナリオが楽観的すぎたことを、会社自らが認めた格好だ。DMセグメント単体では、売上高280億円(前年比20.3%増と防衛・宇宙向けの大型機販売で計画を上回った)に対し、営業損益は1,062億円の赤字。減損などの一過性要因を除いた実質的な事業赤字も年150億円前後で、黒字化にはなお距離がある。DMの売上は全社の約4%にすぎず、映像事業(2,900億円)や精機事業(1,672億円)と比べれば小さい。しかもその精機(半導体露光・FPD)までもがこの期に営業赤字へ転じ、「稼ぐ事業が育てる事業を支える」という資金循環モデルに負荷がかかった。

2027年3月期の会社計画は、売上収益7,400億円、営業利益100億円、純利益100億円と黒字回帰を見込む。DMセグメントは売上340億円へ伸ばしつつ、減損の非反復と構造改革で営業赤字を40億円まで縮小させる計画だが、セグメントとしてはなお赤字であり、事業黒字化の目標は2028年3月期に置かれている。新社長・大村泰弘氏のもとで策定された新5カ年計画(2026年4月〜2031年3月)は、半導体露光と3Dプリンターなど成長領域に5年で約3,500億円を投じ、2031年3月期にグループ全体で売上1兆円・営業利益800億円を目指す。強みは明確だ。露光装置由来のマルチレーザー技術、900台超の設置基盤、Safranやボーイングといった航空宇宙・防衛の顧客、そしてこの赤字期でも投資を続けられる大企業の資金体力である。課題もまた明確で、恒常的な赤字、本業に比べた規模の小ささ、長い部材認証サイクル、中国勢を含む競争激化、そして減損が示した「買収時の過大評価」の後始末が重くのしかかる。Zarringhalam AM事業CEOの「多くの案件は認証・試験の段階で死ぬ(Things die in qualification and testing)」という言葉は、金属AMを最終製品へ育てる道の険しさを物語る。

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DMG森精機(6141)——「削る」と「盛る」を1台に統合するハイブリッドの雄

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DMG森精機の立ち位置は、他の3社とも大きく異なる。同社はマシニングセンタや旋盤、複合加工機を主力とする世界最大手級の工作機械メーカーであり、AMはあくまでその延長線上にある。金属AMは二系統を持ち、いずれも「LASERTEC」ブランドを冠する。一つは2017年に独Realizer社の株式50.1%を取得して手に入れた粉末床溶融結合(LASERTEC SLM)で、2024年発表の30 SLM 3rd Generationは最大4本のレーザーを搭載し、造形後の冷却待ちを解消する交換式「造形コンテナ」で非稼働時間を減らした。だが同社の真骨頂は、もう一方のDED方式「LASERTEC DED hybrid」にある。ノズルから金属粉を吹き付けてレーザーで肉盛りする積層と、5軸の切削加工を同一機・ワンチャックで統合するこの発想は、工作機械メーカーならではのものだ。65 DED hybrid、125 DED hybrid、そして2024年のJIMTOFで世界初公開した3000 DED hybridは、最大3,062mmの長尺ワークに対応する。この3000 DED hybridでは、自社の工作機械主軸部品「ドローバー」の製造を従来の約2週間から約2時間へ短縮し、製造コストを約80%削減した実例が示された。汎用の金属AM専業が粉末床でゼロから造形するのに対し、DMG森精機は「削る」と「盛る」を一台に融合し、大型部品の造形・補修・保全という土俵で戦う。2025年4月には「DMG森精機Additive株式会社」を設立し、奈良の第二本社内に「AMイノベーションセンタ」を開設して、ダイカットロールやポンプシャフトの補修、金型といった量産適用の事業化フェーズへ踏み出した。

もっとも、投資家がこの会社を見るときの主眼はAMではなく、工作機械本体の設備投資サイクルにある。開示セグメントは機械販売の「マシンツール」と保守・部品の「インダストリアル・サービス」の二つだけで、AMは独立セグメントとして切り出されておらず、その売上高は非公開だ。全社売上(2025年12月期で約5,150億円)に占める比率はごく一部にとどまるとみられる。12月決算の2025年12月期は、受注5,234億円(5.5%増)に対し売上収益5,150億円(4.8%減)、EBIT(営業利益)は約190億円(56.6%減)と本業は踊り場だったが、純利益は約240億円と前期の約3.1倍に膨らんだ。これはロシア政府による現地製造子会社の株式収用に伴う保険金(報道で約170億円)という一過性要因が押し上げたものだ。その反動で2026年12月期の当初計画は純利益105億円(56%減)と保守的だったが、第1四半期の好調を受けて5月に受注5,800億円・売上5,650億円・EBIT280億円・純利益150億円へ上方修正された。実際、2026年1〜3月期の受注は1,554億円(28.8%増)と四半期ベースで過去最高を記録し、全地域が2桁増、航空・防衛・宇宙、エネルギー、データセンター/半導体、医療、金型が牽引して、弱いのは自動車くらいという強さを見せた。日本工作機械工業会も2026年の受注見通しを当初の1.7兆円から2兆円へ引き上げている。

ここで一点、しばしば誤解される事実を正しておきたい。DMG森精機(日本本体、6141)は独DMG MORI AG(旧ギルデマイスター)を2016年発効の「支配・利益移転契約」によって経済的に統合し、その利益を日本本体に取り込んでいるが、法的な完全子会社化・非上場化は完了していない。DMG MORI AGはいまもドイツで上場を維持しており、少数株主には通常配当に代えて保証補償が支払われ、2026年5月にも株主総会が開かれた。強みは、工作機械の世界的ブランドとフルラインナップ、切削と積層を融合したハイブリッド機という独自ポジション、全地域に広がる販売・サービス網、そして航空宇宙・防衛・金型・医療・エネルギーといった価格弾力性の低いハイエンド需要への強さにある。保守・補修(MRO)のストック収益がリカーリング基盤として下支えする点も、AMの補修用途と親和性が高い。課題は、金属AM市場そのものの小ささ、EOSやNikon SLM、Trumpf、Velo3Dといった専業との競合、工作機械特有の景気敏感性、中国市場の減速と自動車需要の弱さ、そしてユーロ建て売上比率の高さゆえの為替リスクである。証券アナリストのコンセンサスは「中立」寄り(2026年6月時点で平均目標株価3,032円との集計)で、関心はAMよりも本業の受注回復とマージン改善に向いている。

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ローランド ディー.ジー.(6789)——非公開化した「切削中心」のデジタルものづくり

3Dプリンター製造。ニコン(7731)、DMG森精機 (6141)、ローランド ディー.ジー. (6789)、ミマキエンジニアリング(6638) - ローランド ディー.ジー.(6789)——非公開化した「切削中心」のデジタルものづくり - 章扉

4社の中で、ローランドDGは特殊な位置にある。まず押さえるべきは、証券コード6789がもはや有効な上場銘柄ではないという事実だ。同社は2024年9月3日に東京証券取引所プライム市場を上場廃止となり、米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズ支援のMBO(経営陣が参加する買収)によって非公開化された。この買収劇は日本のコーポレートガバナンス史に残る一件でもあった。2024年2月にタイヨウ側の買収目的会社「株式会社XYZ」が1株5,035円でMBOを公表すると、3月にブラザー工業(6448)が取締役会の同意なき対抗TOB(5,200円)を仕掛けた。タイヨウ側は4月に価格を5,370円へ引き上げ、ブラザーは5月9日に増額を見送って事実上撤退。最終的にMBOは発行済株式の約75%の応募を集めて成立し、取得総額は約660億円(海外M&Aデータでは4億1,600万ドル)に達した。ローランドDGがブラザー傘下入りを退けられた決め手は「ディスシナジー」防衛策だった。同社は自社のインクジェットヘッドの約8割を競合ブラザー以外のサプライヤーから調達しており、ブラザー傘下に入ればこの提携が毀損して2026年12月期に営業利益約50億円のディスシナジーが生じる、との試算を突きつけたのである。日経ビジネスや東洋経済は、これを日本初の「同意なき買収」不成立事例として、企業価値をめぐる論争の象徴的ケースと位置づけた。

事業の中身を見ると、ローランドDGを「3Dプリンターメーカー」と括るのは実態と少しずれる。主力は看板・広告・車両ラッピング・アパレル向けの大判インクジェットプリンター(TrueVIS、SOLJET、VersaUVなど)で、グループ売上の約4割を低溶剤(エコソルベント)の大判機が占める。3D関連は2017年に設立した100%子会社「DGSHAPE(ディージーシェイプ)」に集約されているが、その主軸は歯科用ミリングマシン「DWX」シリーズ——つまりジルコニアやPMMA、コバルトクロムを削り出してクラウン(被せ物)やブリッジ、アバットメントを作る「切削(除去加工)」である。DWXの累計出荷は世界2.5万台を超える。付加造形すなわち3Dプリンターとしては、義歯の型などを作る光造形機DWP-80Sや卓上機monoFabを持つが、これらは歯科の補完的なラインにとどまり、現行の主力からは外れている。要するにローランドDGの「デジタルものづくり」の実態は、大判インクジェット(印刷)と歯科の切削が二本柱で、積層造形は副次的なのだ。

非公開化されたため直近の詳細業績は開示されないが、最後の公開情報である2023年12月期は売上高540億円と過去最高を更新した一方、営業利益は52億円と前期比で約14%減っており、増収でも利益率が圧迫される構図が鮮明だった。この成熟した大判印刷市場の停滞こそが、タイヨウのもとで構造改革を進めるべく非公開化に踏み切った背景と見られる。強みは、大判インクジェットで世界トップ級とされるシェア、インクや保守という消耗品・サービスの安定収益、そしてDGSHAPEが握る歯科デジタルの2.5万台超の設置基盤にある。課題は、3Dプリンター専業ではなく積層造形の比重が小さいこと、主力の大判印刷市場が成熟していること、そして非公開化によって外部からの実態把握が難しくなったことである。投資家の視点では、ローランドDGは「AM銘柄」というより、エンゲージメント型ファンドによる非公開下の事業再構築の実験場として観察される存在になった。

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ミマキエンジニアリング(6638)——1,000万色フルカラー造形のニッチトップ

3Dプリンター製造。ニコン(7731)、DMG森精機 (6141)、ローランド ディー.ジー. (6789)、ミマキエンジニアリング(6638) - ミマキエンジニアリング(6638)——1,000万色フルカラー造形のニッチトップ - 章扉

長野県東御市に本社を置くミマキエンジニアリングも、本業は産業用インクジェットである。看板・広告向けのサイングラフィックス、産業印刷、テキスタイル(捺染)を主戦場とし、2026年3月期の売上構成では消耗品のインクが最大品目(39.3%)を占める「本体+消耗品」型の収益モデルを持つ。海外売上比率は73.4%と高い。この会社の3Dプリンターが面白いのは、本業のUV硬化インクジェット技術をそのまま3D積層へ転用している点だ。フルカラー3Dプリンター「3DUJ」シリーズ(旗艦機3DUJ-553、小型機3DUJ-2207)は、CMYKに白とクリアを加えたインクを微細な液滴として吹き付け、その場でUV-LEDで硬化させる「マテリアルジェッティング」方式を採る。最大の差別化は、CMYKの階調混合で1,000万色以上という業界最多クラスのフルカラー造形を実現することと、水だけで溶かせる水溶性サポート材を使い劇薬を要さないことである。競合を色数で比べると、Stratasysの主力PolyJet機が36万〜64万色、3D SystemsのColorJetが480万色であるのに対し、ミマキは全機で1,000万色以上を一貫して掲げる。小型の3DUJ-2207は約3万9,000ドル(約630万円)とフルカラー機の参入障壁を下げ、Stratasysの高価格機(J55で約9万9,000ドル=約1,610万円)とは異なる裾野を狙う。

用途は「機能部品」ではなく「意匠・ビジュアル」に寄る。CT/MRIデータから患者そっくりの解剖モデルを作る医療教育(独Erler Zimmerと豪モナシュ大学が献体スキャンからフルカラー解剖模型を製作した事例をTCT Magazineが「医療教育を変革しうる」と評価)、彩色済みのフィギュア原型、ドローン測量データを立体化した建築模型やGIS地形模型、靴のデザイン工程での意匠確認、そしてスキャンした縄文土器をフルカラー復元する文化財レプリカ(SMARTTECH3Dとの協業)まで幅広い。多材料や機械特性ではStratasysのPolyJetに譲るが、色再現とオフィス設置性で独自の地歩を築いている。

決算は堅調だ。2026年3月期は売上高837億円(0.3%減)ながら、原価低減と製品ミックス改善で営業利益94.3億円(3.5%増、営業利益率11.3%)、純利益67.4億円(9.5%増)と過去最高益を更新した。営業利益率は2年前の7.3%から11.3%へと大きく改善しており、増収がなくとも利益を伸ばす「筋肉質化」が進む。2027年3月期は売上高910億円(8.7%増)を見込む一方、投資先行と保守的な為替前提から営業利益95億円(0.7%増)・純利益61億円(9.5%減)の増収減益計画を置いた。ただし3Dプリンター単体の売上は開示されておらず、全社に占める比率はごく小さい。2022年の日経報道では3D関連を長期的に「100億円規模」へ育てる目標が示されていたが、これは実績ではなく当時の目標である。2025年5月に発表した中長期戦略「MI30」では、2030年3月期に売上高1,500億円・営業利益率8%以上を掲げ、5年間で780億円を投資して3Dを新たな柱へ育てる方針を打ち出した。強みは、ヘッド・インク・色管理という本業インクジェットの資産を横展開できること、フルカラーという唯一無二の差別化、全世界の代理店網と消耗品収益、そして着実な収益性改善である。課題は、3Dがなお小規模でニッチなこと、フルカラー3D市場そのものが意匠用途中心で小さいこと、本業の印刷市場の競争と成熟(為替を除くと実質売上は微減)、そして海外比率の高さゆえの為替感応度にある。証券会社の継続カバレッジは薄く、株価指標(2026年7月時点でPER約10倍、PBR約1.6倍、配当利回り約2.5%)で語られることが多い。

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VC・投資家はどう見るか——「幻滅」を越えて防衛・リショアリングの実需へ

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AMは、株式市場でもベンチャー投資でも、二度の熱狂と幻滅を経験してきたテーマだ。2013〜2014年には3D Systems(DDD)とStratasys(SSYS)が「一家に一台」の消費者ブームを背景に急騰し、その後の需要不発で株価を大きく落とした。2020〜2021年にはSPACブームがDesktop MetalやVelo3D、Markforged、Shapewaysを次々に上場させ、やはり多くが上場来高値から9割超も下落した。前章で見たNano DimensionによるDesktop Metal買収→破産→資産投げ売り、そしてMarkforgedが取得額の3分の1近い値でStratasysへ転売される一連の流れは、この「SPAC後の冬」を象徴している。機関投資家の視点で見れば、ニコンが計上した906億円の減損も同じ物語の一部だ。3D Printing Industryはこの減損を「撤退ではなく成長期待のリセット」と評し、GEが2020年にGE Additive関連で計上した8億7,700万ドルの減損や、Desktop Metalの顛末と同型の「業界全体の過大評価パターン」に位置づけた。買収時の高い成長前提が、実需の立ち上がりの遅さと長い部材認証サイクルの前で修正を迫られる——これがAMを株式・M&Aテーマとして見るときの中核リスクである。

もっとも、淘汰は一様ではなく、勝ち負けの二極化が鮮明だ。2026年7月下旬時点で、かつて統合合戦の主役だったStratasys(SSYS)の時価総額は約6.9億ドル(約1,120億円)、SLA発祥の3D Systems(DDD)は約4.2億ドル(約680億円)と、往時の勢いを欠く。金属AM専業のNano Dimension(NNDM)は買収の後始末で直近12カ月に3億3,800万ドル(約550億円)もの純損失を計上して時価総額は約3億ドル(約500億円)へ縮み、2026年7月21日にはアクティビストとの委任状争いの末に最高経営責任者が交代した。その一方で、2024年にニューヨーク証券取引所から上場廃止となり店頭市場へ転落したVelo3Dは、防衛・航空宇宙の需要を追い風に生産能力を3倍化し、2026年6月にラッセル3000指数へ復帰、株価も二桁ドルを回復させた。医療とソフトに強いベルギーのMaterialise(MTLS)は売上高約3億ドル(約500億円)で黒字を維持する数少ない安定株であり、HPもMulti Jet Fusionの新機種を投入して事業を続けている。崩れたのは「消費者ブームと過大なロールアップ」であって、防衛・医療・ソフトという実需に根ざした企業はむしろ生き残っている。母艦を持つ日本4社の相対的な安定も、この選別の文脈で理解できる。

一方で、悲観一色というわけではない。潮目を変えつつあるのが防衛・宇宙・リショアリング(国内回帰)の文脈だ。米国では国防総省やDIUが予備部品の増産やサプライチェーン強靭化にAMを戦略活用し、2022年の「AM Forward」など中小サプライヤーのAM採用を後押しする政策も動く。その象徴が、3Dプリント製ロケットを掲げるRelativity Spaceである。元グーグルCEOのエリック・シュミット(Eric Schmidt)が2025年3月に同社のCEO兼会長へ就任し、報道によれば約8億ドル(約1,300億円)を拠出して支配的持分を握った。同社は中大型の再使用ロケット「Terran R」の2026年打上げを目指し、約30億ドル(約4,900億円)の打上げ契約を抱える。スタートアップにも、淘汰と並行して選別された資本が向かい始めている。デジタルな金属量産を掲げるMIT発のVulcanFormsは、2026年1月にEclipse VenturesらからシリーズDで2億2,000万ドル(約360億円)を調達し、累計調達額は約5億7,500万ドル(約940億円)に達した。脱炭素を掲げる金属エリアプリンティングのSeurat Technologies(2023年にNVIDIAのNVenturesらが主導する9,900万ドル=約160億円のシリーズC)、元SpaceX勢がAIと金属積層を組み合わせたFreeform、そしてAIロボットによる板金成形でトヨタ系Woven Capitalから2026年2月に1億2,400万ドル(約200億円)を集めたMachina Labsなど、防衛・量産・国内回帰に軸足を置く企業に資金が集まる。NVIDIAが複数の金属AM新興に出資している点も、AI×製造という新潮流を映す。「オンデマンド・分散製造」を戦略産業とみなす再評価が、消費者ブーム崩壊後の第三の投資テーマとして立ち上がりつつある。

では、日本4社は投資家にどう映るのか。市場評価には既にくっきりと差がついている。2026年7月下旬の東京市場で、ニコン(株価約2,247円、時価総額約7,500億円)の予想PERは74倍前後と一見割高だが、これは黒字回復初年度の利益予想が低いことの裏返しであり、PBRは1.26倍、配当利回りは0.89%にとどまる。国内証券のなかにはAM赤字と本業不振を背景に「中期的な業績ドライバー不在」として投資判断を「売り」に置くところもあり(フィスコ、2026年7月21日)、英国のバリュー投資家Silchester International Investorsは2026年7月16日基準でニコン株の保有比率を7.08%から6.06%へ引き下げた。減損・減配の局面で長期保有型の大株主が持ち高を削ったこと自体が、市場の視線の厳しさを映す。大村社長が半導体露光装置への重点投資とカメラの動画シフトを打ち出したように、投資家の関心はAMよりも本業の立て直しに向かっている。DMG森精機(株価約3,615円、時価総額約5,145億円、予想PER約34倍、PBR1.50倍、利回り2.90%)は、営業利益率が2023年12月期の10.3%から2024年12月期の8.1%、2025年12月期の3.7%へと3年で急低下したのち回復を見込む、典型的な設備投資サイクルの谷にある。株価の主ドライバーはAMではなく工作機械の受注回復とマージン改善であり、アナリストの見方は中立に寄る。ミマキ(株価約2,209円、予想PER約10.5倍、PBR1.60倍、利回り2.49%)は4社で最も割安な一方、株価は上場来高値圏にあり、地道な収益改善を市場が正当に評価している構図だ。ローランドDGは既に非公開化され、AM銘柄というより「同意なき買収を退けた企業価値防衛」のガバナンス事例として記憶される。4社に共通するのは、AMを「本業の巨大さに比べれば小さいが、将来オプションとして手放せない」二面性を抱えている点であり、純粋な上場AM専業が総崩れとなった局面で、母艦となる本業を持つことがむしろ生存条件になっているという逆説である。

3Dプリンター製造。ニコン(7731)、DMG森精機 (6141)、ローランド ディー.ジー. (6789)、ミマキエンジニアリング(6638) - VC・投資家はどう見るか——「幻滅」を越えて防衛・リショアリングの実需へ - 図表13Dプリンター製造。ニコン(7731)、DMG森精機 (6141)、ローランド ディー.ジー. (6789)、ミマキエンジニアリング(6638) - VC・投資家はどう見るか——「幻滅」を越えて防衛・リショアリングの実需へ - 図表2

今後の展望——いつ、何が動くか

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短期のカタリストは、まず各社の四半期決算に集中する。ニコンは2026年8月6〜7日ごろに2027年3月期第1四半期(4〜6月期)を発表する予定で、減損の後始末を経た黒字回帰計画の初速と、DMセグメントの赤字縮小ペースが問われる。ミマキも8月7日ごろに第1四半期を開示し、増収減益計画に対する実績の出方が焦点となる。DMG森精機は例年8月上旬に上期(1〜6月)を発表する見込みで、四半期過去最高を記録した受注の勢いが続くかどうかが試される。日本工作機械工業会が2026年の受注見通しを2兆円へ引き上げた追い風のなか、AI半導体・データセンター・航空宇宙・エネルギー向けの設備投資がどこまで持続するかが、DMG森精機とニコン精機の両方に効いてくる。同じ8月中旬には米国の上場AM専業(Stratasysは8月12日を予定、3D SystemsやNano Dimensionも続く)が第2四半期決算を出し、業界全体のセンチメントを占う早い手掛かりとなる。

秋には業界の焦点が展示会へ移る。まず2026年9月14〜19日には米シカゴで隔年の工作機械見本市IMTSが開かれ、続く10月26〜31日には東京ビッグサイトで隔年開催の日本国際工作機械見本市「JIMTOF 2026」が催される。JIMTOFは、DMG森精機がハイブリッドAMの次世代機を、ニコンが金属AMの新提案を披露する舞台となる公算が大きい。そして11月17〜20日には、世界最大のAM専門展「Formnext 2026」がフランクフルトで開催される(前回並みなら出展者約800、来場者約3.8万規模)。ここはNikon SLM Solutionsやミマキが新製品を投げ込む場であり、業界全体の温度を映す鏡でもある。より中期では、ニコンが掲げるDM事業の2028年3月期黒字化と2031年3月期のグループ売上1兆円、DMG森精機Additiveによる量産適用の事業化、ミマキのMI30(2030年3月期売上1,500億円)と2026年6月提供開始の造形前処理ソフト「3D Print Prep Pro v2.0」による用途拡張が、それぞれ進捗を測る物差しになる。グローバルでは、StratasysによるMarkforged取得(4,250万ドル)が2026年下期にクローズし、Nano Dimension系の再編がどこへ着地するかが観察点だ。総じて、AM業界は消費者ブームの幻滅期を抜けて、防衛・宇宙・医療・航空宇宙という実需分野で「量産採用がどこまで本物か」を証明する局面に入っている。母艦となる本業を持つ日本4社にとって、この成熟局面は、専業のような一発退場のリスクが小さい代わりに、AMを本当に収益の柱へ育てられるかという長期の実行力が問われる時間帯となる。


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